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「いやあっ、さっきのアレは楽しかったねぇっ♪ね、クロウ君?」

ホテルの部屋に戻ると、パームは楽しそうに話しかけてきた。まださっきの女の子の驚いた表情がが忘れられないのか、
時折クスッっと笑いがこみ上げてくるのを堪えている。

「俺はその前の急降下で楽しいって思うヒマは無かったよ。テクノタワーで落ちそうになったこと思い出しちまった…。
パームってイタズラ好きな所があるんだなぁ。」

「あははっ、実は天使になる前は結構イタズラをしていたんだよねぇ、ボクって。でも、ああいったイタズラだったら良いよねっ…?
女の子だってビックリしたあの後は大喜びしていたんだし。」

「ま、それもそうだな…。」

俺はそう言うと、窓の外に移るベイの街へと目を向けた。太陽は先程沈み、今は僅かに残った夕焼けが弱々しく移っている。
街も闇の色に包み込まれ、あちこちの建物で明かりがつき始めていた。

「良い街だよなあ…。ここにパームと一緒に旅行に来れて良かったよ。」

「ふふ、それはボクの台詞♪おっと、着替えてくるね。折角の旅行なんだし、もうちょっとココらしい服になったっていいよねぇ。」

パームはそう言うと、ニコッと笑顔を俺に見せて立ち上がった。角に消えたパームの姿を見届けると俺はソファに腰掛けたまま
そのままベランダの外に映る町並みを見続けた。街の明かりをよく観察してみると、随分とオレンジ色っぽい光が多く見えている。
光都の夜景はもっと白っぽい色をしていたっけ。街によって夜景って違うんだな…。
そういえば、光都のテクノタワーから見た夜景‥綺麗だったな。俺とパームと結婚した思い出の場所だ。‥俺達はそこで結ばれて‥。

「おまたせ〜♪」

パームの声に俺はふっと回想から引き戻された。パームの方を振り向き…。

「うわわっ!?」

俺は驚きで椅子から滑り落ちそうになった。パームは先程まで来ていたシャツとショートパンツを脱ぎ、パレオビキニの水着を
身につけていた。露出の高い水着で上は極薄の布で胸のラインが先端まで露わになって見えている。
下のパレオスカートも極端に短く、おまけに…その下ではパームの彼処が露わになっていた。スカートの下はノーパンだった。

「ぱ、パームッ?」

「誰にも邪魔されない二人きりの場所だもの、ボクだって‥こうしたくなっちゃうよ。」

ふわりとした翼を部屋一杯に広げると、パームは真っ赤になって俯いた。秘部も覆い隠して居るどころか通常でも
ギリギリちょっとでも動くたびにスカート彼処の一部がずっと見え隠れしたままだ。

「…かかかええええっはうりゅっ!?!?」

何か言葉を出そうとしたが驚きで頭と舌がこんがらがってうまく話せない。二人きりの場所では普段も露出の多い天使の服を
身に纏っていたけれど、ここまで凄いものは久々だ。

「ふふふ、どうかなあっ?クロウ君が大喜びしそうな服装を選んで持ってきたんだけれど。その様子だとどうやら
大当たりみたいだねぇっ♪」

イタズラっぽい笑みを浮かべると、パームはクルリとその場で回って見せた。その拍子にスカートが捲れ見え隠れしていた
秘部がハッキリと見えた。結婚以来相変わらず綺麗な色をしていたけれど、毛に埋もれていた割れ目が以前より見えやすくなり、
もうもの凄いエッチな光景がありありと目に入った。

大喜びなんてもんじゃない、もう天国そのものだ。

「すごい…本当に僕の天使…いや女神様といったっておかしくないよ。凄く素敵だ…。」

「ふふっ♪そう言ってくれるとボクも嬉しいなぁ。そんな素敵な旦那様にはこうしてあげるっ♪」

(チュッ)

ニコッとパームは笑うと。両手を俺の肩に置き、そのまま顔を寄せて口を塞いだ。ぺろっと俺の舌の先端が舐められた感触が伝わった。

これがトドメとなった。もう愛する妻にこの姿でこんなことをされたら我慢出来ないっ!

俺は襲いかかるように抱きしめると、勢いでそのままベットに倒れ込んだ。倒れ込んだ余波でパームの柔らかい毛の感触と
心地よさが俺の身体に伝わってきた

「わぁっ♪クロウ君のエッチ♪」

ベットに揺られスカートが捲れたまま。彼処はもう完全に露わになっていた。毛を少し掻き分けると以前と変わらない
綺麗なピンク色の彼処が毛の中に隠れているのが見えた。

彼処に顔を近づけるとクチュ…という音に、濡れた感触が俺の鼻先に伝わってきた。よく見ると捲れた水着のスカートも、
しっとりと濡れているのに気が付いた。もうパームも俺のものを待ち望んでいた…。

(ズニュッ…)

「きゃあ♪…あん…。」

舌を入れるとパームの羽根がピクッ…っと跳ね上がった。声も徐々に甘い息づかいが混ざってきているのが耳に伝わってきた。
もう数え切れないくらいパームを抱いたけれども、彼処は搾り取る位にきつい名器のままだった。

(ペロ…ペロッ…ツプッ…)

「はぁ…ああん…クロウ…くんっ♪これだけじゃ…我慢できないよ…。」

「う…うん…。俺もそうさ…」

顔を彼処から離すと、俺は倒れていたパームの身体を抱き起こした。丁度俺の膝の上にパームが乗る体勢になる。
背後ではパームの翼がベットからはみ出るくらいに広がり、微かに羽ばたいていた。

「もう…舌だけじゃ我慢できない…。やっぱり…旦那様ので根元まで激しく…。」

艶めかしい声でそう言うと、パームは入れやすいように股を開いた。片手で俺のモノを秘部の入り口へと導いていく。
けれどももうパームが誘うまでもなかった。既に虜にされていた上に、股間のモノは大きく膨らみビクビクと震えていた。

もう見るだけじゃ我慢できない、パームの中で貫いて激しく動きたい!!だからパーム……もう…一緒にっ!!!!

(ズニュウウウウウッ!!!!!)

「ひゃあ…ああん!!!!」

感情が爆発したと同時に、俺はモノをパームの膣内へと一気に貫いた。入れた途端に暖かく湿った中がキュウっと締め付けてきた。
ピクピクとした刺激が、俺のモノから身体へと伝わってくる。

「はぁぁ…んんっ…。クロウ君のうんと大っきいんだから…。……ボクの中が熱くなって来るみたいだよぉ…。」

耳にパームの荒い息づかいが伝わってきた。羽根と尻尾がかなり揺れ、口は大きく開かれパームの牙歯がチラリと見えた。

「あ…ん…。ボクの奥にこんなに入れちゃって…。多分もう我慢…できない…よね?」

「あ…ああ…。出来れば膣内で思い切り動きたい…。」

「いいんだよ遠慮しなくって…。だって、ボクはもうキミだけの…奥さんなんだよ。僕の翼も尻尾も…そして彼処もクロウ君だけ
のモノなんだから…。だから…もうボクの中で一杯……して…。」

甘い声でそう言うと、パームは俺を色っぽい目で見つめてきた。ヒスイ色の目が俺の顔をしっかりと捕らえ、俺は目が離せなくなった。
そんなパームの姿に俺の理性は適わなかった。もう…妻になったパームに遠慮なんているはずがないっ。

(ズニュウッ……)

「ひゃあんっ!?」

(ズンズンズンズンズニュッ!!!ズンズングチュッ!!)

「はあああああんんっ!!!!」

俺は思いきりモノを膣内で動かした。彼処には俺のモノが猛烈に出入りし、もの凄い快楽が俺へと流れ込んでくる。
パームの顔は快楽の波に流され、艶めかしく見えた。もう俺には腰を止める事なんてできなかった。快楽に溺れても、
最後までパームの中で動き…たいっ!!

「あ…はああ!!!!」

激しい突き上げにパームの胸が揺れ、辛うじて胸を隠していたビキニから胸がこぼれ落ちた。柔らかそうに目の前で
フルフルと揺れているのが目に入り、思わず俺は胸にむしゃぶりつくように吸い付いた。頬にもう片方の胸の感触が
むにむにと伝わってくる。

(んぐっ…ングングングッ!!)

「あ…はぁ…ボクの胸…嬉しい…。」

結婚して胸を吸って一層膨らんだ胸だ…。まだ母乳は出ていなかったけれど、不思議と甘みが口いっぱいに広がってきた。

(グチュッ…グチュッ…グチュッ…)

パームの翼の後ろでは街の夜景がチラリと見えた。初めて交尾したときも、パームの背後で高層ビル群の赤い証明が
点灯していたっけ…。あの時と同じように俺は今…、愛するパームとこうやって……んんっ!!!

(ビクビク…ビクッ!!)

一瞬の回想の後、突然パームがギュッとしがみついた。喘ぎ声が激しくなり彼処もキュウキュウ…っと一気に締め付けてくる。

「クロウ…君!!もう…もうだめ…いきそう…だよぉっ!!」

パームが俺の耳元で叫ぶ。同時に俺ももう膣に覆われたモノが震える感触を感じていた。俺もパームも、もう限界だった。

(ズニュッズニュッズニュッズンズンズンズンズニュッ!!!)

外か中か…そんな選択も迷いも俺の頭にはなかった。俺の突き上げは一層激しくなり、奥の奥へと突き入れようとしっかりと抱きしめた。対するパームも、俺の子種を一滴も逃すまいと、俺の腰へとギュッと足を絡めてきた。

「いいんだよ…きて…きて!!いくらだってクロウ君の子供なら産んで上げるから♪
だから…だから…は…ぁ…ぁぁぁあ!!!」」

夢中で動く俺の耳に、パームの声が響く。同時に彼処がこれまで以上に猛烈に締め付けてきた。

も、…も…もうだめだ………パーム……いくっ…!!!!!!

(ズニュウッ…!!!!!   ドクンドクンドクドクドクドクドクンッ!!!)

「あ…は…ぁあああ!!!…熱い…!!」

ナカでの爆発はあっという間だった。奥に突き入れた途端、大量の子種がパームの膣の奥の奥へと注ぎ込まれた。
同時にパームの翼が大きく広がり、純白に光る翼が視界を多い、本当の女神のように見えていた。

(ハァ…ハァ…ハァ…)

大量の子種が注ぎきったとき…。俺とパームの荒い息使いが重なって聞こえてきた。接合部からは子種が溢れだし、
パームと俺の毛を湿らせているのが目に入った。

「凄い……クロウ君…本当に量が多いんだから。こんなに激しいとボクの彼処本当に壊れちゃうよ…もうクロウ君のエッチ…♪」

「パームの凄い名器だから彼処が壊れても…激しくなっちゃうよ…。あ、でもお腹に子どもが出来たら、ここまで激しくしても大丈夫かな…。」

「大丈夫…。ボクも天使なんだから赤ちゃんだってこれくらいへっちゃらさ…。ふふっ、それにしてもクロウ君が旦那さんになって…。
こんな幸せなことは本当にないよ。」

パームは毛が密着したお腹を撫でつつ、ギュッと抱きついてきた。まだ荒い息のままだったが、パームがニコッと笑いかけ、
俺は照れくささで真っ赤になった。俺はパームの頬に頬を合わせてしっかりと抱きしめると、そのまま口を重ねてゆっくりと
ベットに横たわった。

背後では、残照が消えて夜になったベイシティの街が、様々な明かりを包み、点滅を繰り返していた。

 

 

 

 そのままベットで横になった俺たちが起きあがったのは、ディナータイムが大分過ぎた時だった。パームとキスをし、
繋がっている余韻を
たっぷりと楽しんだ後、俺達は着替えてレストラン街へ向かうことにした。

 俺達が宿泊したベイ・リーリアホテルの2階には、宿泊客用のレストランもいくつか併設されていた。メニューや得意料理は
レストランによって様々で、宿泊客は好きなところを選べる仕組みになっている。ただ、最高級の店舗では正装をせねば
入店ができないので、俺は堅苦しさを避けてカジュアルなショー付きのレストランを予約していた。無論、カジュアルとはいえ
味の方は折り紙付きだ。

「本当、ここのって凄い美味しいっ‥♪」

レストランのテーブルの向かいでは、普段着ている天使の服を身にまとったパームが、嬉しそうな顔でパームナッツのスープ
すくっていた。部屋で愛し合ってで過ごすのも良いけれど、こうやってパームと楽しむのも俺は好きだ。

「ホテルは豪華な大宮殿だけでも凄いことだけれど、料理もとっても美味なんだから驚いたよ。天界の大宮殿の食堂だって
ここまで美味しいのはそうそう出来ないなぁ‥。」

「ああ、大同感だっ。我ながらココを選んで良かったよホント‥。あ、このスライスチップもうまいぞ、パーム。俺はこの手のものって
あまり美味しいって思わないんだけれど、ココのだけは例外で好きなんだよなぁ。‥ホラ。」

「どれどれ‥♪ あ、ホントだぁっ。」

俺の言葉に、前菜として置かれていたパンノキのチップスを頬張ると、パームはニコッと笑顔を見せた。俺にもパームにとっても、
ここの食事は大御馳走だ。無くなる頃を見計らって、ボーイがメインの魚の包み焼きをいくつも持ってきてくれていたが、
あっという間に食べ尽くされて次々と下げられてしまっていた。下げられるお皿は綺麗そのもの、野菜の切れ端一切れすら
見つからない。

暫くの間俺達のテーブルではそんな光景が続き、ようやくジャスミンティーで一息ついたところで、パームが目を輝かせながら
話しかけてきた。

「もうクロウ君最高、もうクロウ君と結婚して本当に良かったと思うよぉ♪」

「良かった…そう言ってくれるとココまで車を飛ばして来た甲斐があったな‥。」

「ふふっ、それにさっきのベットの上のこともボクは嬉しかったけれどねぇ…。クロウ君のって太くてでっかいし、凄い激しいのに、気持ちよかったし。絶対待望の赤ちゃんがボクのお腹の中に出来…♪」

「しぃぃぃぃぃっっ、パーム‥声が大きいって!」

慌てて俺が答えたそのとき、急にホールの明かりが消え、周囲は黒い闇に包まれた。前方を見ると、コンサート会場にあるような
大ステージがスポットライトに照らされ青く光っているのが見て分かった。ショーの開始を告げるアナウンスが流れ、フロア内は
食事を追えた観客達のザワザワとした声で騒がしくなった。

「おや…?いよいよショータイムの始まりかな…?」

パームの声は嬉しそうだった。程なくしてステージの中央にパレオを身に纏ったキツネの女性が現れ、ショーの内容を弾んだ声で
説明していった。中身はベイシティ独特のトロピカルダンスらしいが、このホテルのことだ、専属のプロダンサーが居るのだろう。

「それでは、ホテルが誇るダンサーによる神秘的な南国の世界を是非ともお楽しみ下さい!!」

終始明るい声の女性が退場するのと同時に、ステージは再び闇に包まれた。と思う間もなく、赤色のスポットライトに照らされ、
ステージに立つダンサーに、バックグラウンドのバンドを映し出した。彼らが音楽を流し出すと 前方にもスポットライトが当てられ、
同時にダンサー達がサッ身を翻した。その瞬間ほぉぉぉっ…と左右のテーブルから驚きのため息が漏れた。

「凄いや…。」

感心したようにパームが呟いた。ステージで踊るダンサー達のチームワークも抜群でだった。手足に尻尾の振り、耳の動きを
じっと見つめても寸分の狂いすら見あたらない。相当の経験を積んだプロ達のようだった。その上、みんなかなりの美獣ぞろいだ。
真っ白な身体の白い猫の少女にフワフワ尻尾を揺らした銀狐の子に…。おや…?

「あっ!」

俺は思わず小さな声で叫んでしまった。隣のテーブルのお客が見ているのに気が付き、慌てて口を抑える。

「どうしたんだいクロウ君?」

「ご、ごめん…。さっき浜辺で見たシバイヌの女の子、あの子も舞台で踊ってるよ。ほら、今前列に移動した一番右の娘、
間違いないっ。」

声は潜めていたものの、口調はやや早口気味になるのは抑えきれなかった。踊るシバイヌの彼女の胸元にチラリと見えて
いるのは、確かにレインツリーの花だ。

「あ…ホントだっ、さっき空で見つけた女の子だなぁ…あれって。あの花もあの時ボクが落とした花に間違いなさそうだねぇ。
あれだけ落ちてきたんだから、一個じゃなくて全部持ってきても良かったのになあ♪」

「おいおい、全部って花でドレスでも作らせるのかい…。花を落としたときはあの子半分花に埋まっていたの覚えてるだろ?
相当驚いていたぞあの子…。」

「あははは、多ければ多いほど効果出るかな〜って思ったけれどねぇ♪」

そう言って笑うパームだったが、不意に彼女をジッと見つめると、不思議そうな顔を見せた。

「あれ‥、おっかしいなぁ。どういうことだろう…?」

「ん?パーム一体どうし…?」

そう言いかけたとき、彼女の胸元に飾られていた何かがキラリと光った。激しいダンスで隠れていた光るモノがハッキリ見える
ようになったのだ。よくよく見ると、俺の手のひらに収まりそうな羽が、レインリリーの花と繋がれてで青く輝いていた。

「あの羽って…?もしかして…キューピットの羽じゃないのか…?」

「うん、天使の羽なのは間違いないね。でもおかしいんだよねぇ…。普通だったら自分の羽だって直ぐにわかるのに、あの子の
持っている羽はあんなに青く光っているけれど全然気が付きもしなかったよ。そもそもここに来てから羽は一枚も落としていない筈だし…あ、これ凄く美味しい…。」

パームがデザートのハウピアをスプーンでつつきながら呟く。

「あれ…あの羽ってパームのじゃないのかい…?」

「違うねぇ。それに大きさもボクの羽より一回り小さいみたい。多分、他のボクみたいな天使の羽を拾ったんじゃないのかなぁ。」

「えっ?それじゃあ他にもパームのような天使って地上にいるのかい?」

「勿論居るよ。ボク達って天界のキューピットだけれど、地上に愛を伝えることを目的に10人位のチームを組んで地上に降り立ったんだよ。
地上に降りてからは世界中に散って行動していたけれどね。多分そのチームメンバーの一人があの子の願いを叶えるために、
今頃近くに居るはずだよ。あの女の子の所にもうちょっと長く居たらメンバーと出会っていたかもねぇ。」

「良かった。あの子の恋だけれど、キューピットが応援してくれるならもう大丈夫だよね。」

「もっちろん♪ボク達はどんな恋だってかなえてみせるんだからっ♪ボクの出番がないのがちょっと残………あれっ…?」

パームは途中で言葉を切ると、そのまま何かを凝視するように視線が動かなくなった。パームの視線の先を追ってみると、
そこには新たに舞台の正面に登場した猫の女の子が見えた。胸にはライトストーンで飾られた布が巻かれ、下はロングパレオに
似た柔らかい薄布のスカートを履いている。かなり身軽にステージの上を飛び跳ね、身体が宙に舞う度に、青いロングヘアと尻尾が
揺れて客席からは拍手が湧きおこる。

「凄い可愛い子じゃないか。あの子がどうかしたのかい…?」

「うん…あの子って…もしかして…。」

パームが女の子に目を向けたまま呟いた。ステージのダンスはクライマックスに差し掛かり、猫の女の子は脇からステージ中央へと
進み出てくる。背後から響くスネアドラムの音が雰囲気を盛り上げ‥。

「ああっやっぱりマリーだっ!!!」

突然、パームの叫び声がレストランじゅうに響き渡った。その声にビクッと女の子の身体も反応し、一瞬大きく見開いた目をパームに
向けたがその瞬間にバランスが崩れ、女の子の身体がぐらっと傾いた。

「あ、危ないっ!」

立ち上がりかけたその時、マリーと呼ばれた女の子はサッと空中で一回転、尻尾と髪を翻すとそのまま向かい側のテーブルの上に
フワリと着地した。

(パチパチパチパチ…パチパチパチ)

お客が一瞬どよめいたが、彼女が笑顔でポーズを取るとあちこちから大きな拍手に包まれた。女の子もこちらに気が付いたのか
アピールしてテーブルからぴょんっと飛び降りると、嬉しそうな顔でパームに飛びついてきた。

「わぁいっ、やっぱりパーム姉ちゃんだあっ!久しぶりだなあっ♪こんなところで会えるなんて♪」

「あはは、それはボクもだよっ。ここでマリーと出会えるなんて、一人で生活大変じゃなかった…?あ、クロウ君はハジメマシテだから
紹介するねっ。この子はセンヌマリー=ジェコット。ほらっ、今さっき話した天界から一緒に地上に降り立った恋のキューピットだよ♪」

「お、おう…初めまして…だな。」

「初めましてぇ…♪あっ?この狼さんが噂の旦那さんのクロウさん?」

「うんっそうだよっ♪…ってマリーったら今ここで話してちゃまずいんじゃ?」

パームがステージを見渡す。ステージを見ると女の子達が退場して行くのが目に入った。

「あっ、とりあえず一旦戻らなくっちゃっ。後で行くからホテルのロビーで待っててえっ。それじゃあ、またあとでねぇ♪」

マリーはそういうと退場する踊り子達の後をとってステージの影へ消えていった。

「ふふ…楽しいことになりそう…♪」

マリーの背中を見送りながらパームは笑顔で呟いた。その後のショータイムで他のダンサーのパフォーマンスを見せているなか、
パームは嬉しそうだった。

 

 ショーが終わり、待ち合わせのロビーのソファに座っていると、程なくして着替えを済ませたマリーがやってきた。マリーに連れられて
ホテル隣接する従業員用の宿舎へと移動すると、俺とパームは2階にあるマリーの部屋へと案内されたのだった。フロントの前では
ぺこりとお辞儀をして物静かな様子だったが、尻尾が背後で嬉しそうにピコピコ動いてるのを俺は見逃さなかった。

「わああいっ、もうパーム姉ちゃん達とここで出会えるなんて…もう、嬉しいにゃあっ!!!あっ、改めて初めまして、キューピットの
マリーだよぉっ♪」

部屋に入ってリビングに到着した途端、マリーは上着を脱ぎ捨て嬉しそうに俺達にとびつかんばかりに話しかけてきた。地上に
降り立ったキューピット達の中でもパームと仲が良かったのだろう。

「それにしてもびっくりしたあ、踊っていたら急に目の前に居るんだもの。でも、こんな嬉しいことってないよぉ♪ここには噂の旦那様と
デートでやってきたの?」

「あったりぃ♪噂になっているくらいだからクロウ君のことはもう知ってるよね♪」

「しってる〜〜〜、天界でパームねぇちゃんがクロウ兄ちゃんと結婚したことって大ニュースになったものっ。地上界のことが天界中の
トップニュースになったのは地上界でスペースシップが開発された時以来だよっ?」

「何だってえっ!?」

聞いた途端に俺は飛び上がった。そんなニュースが天界に広がって居るなんて聞いてないぞ。

「ぱ、パーム、もしかして俺って天界中に顔を知られているのか?」

「うん、知られているねぇ。だって天界のキューピットが地上の子と結婚したのって初めてだもの。ごめんね、クロウ君には天界での
出来事は余り話さないようにしているんだ。やっぱり教えて貰いたかったかな?」

「い、いやそれはいい‥。こちらこそよろしく、マリーちゃん。そう言えば天使っていうけれどマリーちゃんには羽根が見えていないような…。」

「あはは、ボクとおんなじで隠すことができるんだよ。マリー、ちょっと羽をクロウ君に見せて貰えるかなっ?」

「うんっ♪実際に羽根ならほら♪」

マリーが得意そうに尻尾と背筋をピンッ伸ばす。すると、背中に透き通った羽根が浮かび上がったかと思うと、あっというまに
白銀色の羽がマリーの背中一杯に広がっていった。くいくい…と動く尻尾にはパームの左耳と同じ金色のリング。
パームの話だと、確か天使で一番気にしている所に現れるらしい。

「天使のマリーをよろしくっ♪ここならこの姿になったっていいよねっ?」

マリーが嬉しそうにぺこっとお辞儀をすると、一度だけ大きく羽ばたかせた。間近でよくよく見つめると、予想以上に小柄で、
背丈はパームの胸くらいまでしかない。パームよりも年は随分と下なのかもしれない。

「綺麗な翼だなぁ‥、パームに負けないくらいだよ。マリーはいつからこの街で暮らしているのかな?」

「地上に降り立った時からだから半年‥かなぁ?この街って恋の匂いがすっごい集まっていたからねっ。甘い香りにつられて
ここで落ち着きながらみんなの恋をかなえようと思ったの。マリー達天使にとってすっごく素敵な所だものねぇ。」

「あ〜、確かにココって凄くいい所だと思ったよ、ボクも♪」

「それでここのホテルの踊り子になったんだな。でも凄いな…、ここでみんなの恋をかなえながら暮らすのって大変だろ…?」

俺はそう言うとマリーの部屋をぐるりと見渡した。部屋の設備は、俺達が泊まっている部屋より簡素で装飾は見られなかったが
広さは殆ど同じくらいで一人暮らしの割には広すぎるくらいだ。所々に置かれている絵を見ると、羽や大空の写真が所々に貼ら
れているけれど、普通の獣には天使だっていうことはまず分からないだろう。

「ふふんっ♪前に話したでしょう?僕たちキューピットって地上の世界に紛れ込んでいる事が多いって。意外とその背後で
ボク達が見ているかもしれないよっ♪」

パームの言葉に俺はそっと背後を振り返った。見届けているのは良いけれど、まさかパームとの夜の最中まで見届けていないだろうな…。

「あ、そういえばアレはマリーだったんねっ?ほらっ、マリーの前に踊っていたシバイヌの女の子が持っていた羽根の持ち主って。」

「踊っていたシバイヌの子‥。あっ!うんっ♪アレはマリーがやったの!あのお姉ちゃんライアって名前なんだけれど、
最初に会ったときに恋をしているって直ぐわかったのっ♪好きになったお相手が、一筋縄ではいかない男性だったから、
マリーが恋愛成就のお手伝いをしているんだっ♪ライア姉ちゃんのためにも頑張らなくっちゃ。」

「ライアっていうのか…。その一筋縄でいかないお相手って一体どんな獣なんだい?」

「う〜ん、実際に見た方が早いけれど、そう簡単に会えないからねぇ…。いきさつを含めて説明するけれど…聞きたい?」

「もっちろん♪」

パームが頷くと、マリーはその返事を待っていましたとばかりに、身を乗り出すようにして話し始めた。

「事の起こりは3ヶ月前、ライアさん…ううんライア姉ちゃんの大学に、ベイ・シティ地方じゅうの大学生が集まってきました。」

「ふんふん…あれ、話しを遮ってすまないけれど、あのライアさんって女子大生だったんだ?」

「そうだよっ。大学が休暇の間にアルバイトとダンスの練習を兼ねてここで踊っているのも、いるんだからねえっ。
その時は、大学生の年に一度の交流会だったのっ。ライア姉ちゃんはその交流会でも、みんなを歓迎する踊りを踊って
いたんだけれど、そこに居たのが、カイ兄ちゃ‥ううんカイオウインというおぼっちゃんだったのです。」

「カイ‥オウイン?あれ、まさかカイオウイン=ルインのことかっ!?ルイン財団の御曹司だぞ?」

「あ〜〜、クロウ兄ちゃん良く知っていたねっ♪」

「知ってるよっ。ホテルにあったルイン財団関係の雑誌で名前が載っていたもの。名前が珍しかったからパッと見だけれど
記憶に残ってた。パピオンとコリーのハーフだっけ‥。写真だと随分優男…いや優しそうな顔をしていたっけなぁ‥。」

「うんうんっ!もうすっごいお金持ちだけじゃなくて優しいんだから!!たちまちライアさんも一目惚れして、踊りの合間に
彼の傍らにさりげなく居るようになりました。話しかけることもしたみたいだねぇ‥。あ、そういえばこのカイ…オウインに
話しかけられた時は結構嬉しそうにしていたかなぁ。もうこの時点で脈有り‥って思ったみたい♪」

手近にあったクッションをギュッ‥と抱きしめてマリィが休まず立て続けに喋るまくる。二人のことを話すのが、かなり嬉しいのだろう。

「何度かそんなやりとりが続いたあと、ライア姉ちゃんはとうとう手紙を書きました。内容は‥、あ、ライア姉ちゃんに
断らずにこれ言うのはマズイかなっ。」

「言わないでいい。恋文の中身は書き手と受け手の心にだけ留めるのが一番だろ。それで、どうなったんだい?」

「うん。そうしたらなんと、すぐに手紙が帰ってきたのっ!内容は…あ、コレも詳しく言うわけには…。」

「それも言わなくていいって。その様子だと返事はOKだったんだね?」

「あったりぃっ♪こうして二人は恋に落ちて‥きゃああああああっ、もうっ、すっごいロマンチックなんだからあっ♪」

「わ、わかったからクッションを振り回すな‥。危な‥ぶはっ、イテエッ。」

「ワワッ、ゴメンナサイッ。でもライアさんの恋の馴れ初めってすっごくステキだよねぇっ。マリーも憧れちゃうなぁ♪」

マリーはそう言うとボフッ♪と抱きしめていたクッションをテーブルの上に置き直した。

「あはは、ボクだって素敵な旦那様が出来たんだからマリーだって大丈夫さっ♪ところで一つ気になることがあるんだけれど、マリー?」

「えっ、なぁに?」

「さっき言っていた「一筋縄でいかない」のは一体どうしてなのかなっ?今の話しだと、カイ君もライアさんもお互いに想いを
寄せているみたいだから、もう恋愛でゴールインしたも同然だと思うけれどっ?」

パームがそう問いかけると、笑顔だったマリーは表情を曇らせた。

「うん、それが相思相愛の所までは行ったのだけれど‥、肝心の二人きりになる隙が全然ないのよねぇ。カイオウインの両親や
周囲にいる人達がすっごい厳格でねぇ…。絶対に彼を一人にしようとしないんもんっ。周囲にいるのって衛兵…いやボディーガード
って言うのかな…。いつも彼の周囲を見張ってるもの。」

「ボディーガードだって?そんなのが居るのか?」

「いるよっ。屋敷から一歩出たらエントランスに車を横付けして半強制的に移動させられるし大学にだってついてくるの。
もちろん、誰かが近寄ってきたら即座にその人に職務質問、カバンの中身までチェックされるんだからっ。」

「うへぇ、酷え話だっ。」

「この人がいつでもどこでも付いているから二人きりにしようと思っても、そこに強面のボディガードがやってくる…という始末なの。
あれじゃデートも恋愛の雰囲気もあったもんじゃないよっ。」

マリーはそう言うとため息を付いた。聞いていて何故恋のライバルが居ないかが不思議だったが、これで納得がいった。
それにしても金持ちって随分と不便だな。いくら金があったってそんなの生活は俺にはまず無理だ。

「う〜ん、マリーが手こずっているなんて相当手強いなぁ。あ、クロウ君に言っておくけれどこれでもマリーって優秀なキューピットだよっ。
天界でキューピットになるには試験があるんだけれど、マリーは史上最年少記録で試験に合格した天才なんだからっ、
凄いんだよ、本当に?」

「ああ、その天使の試験のことは前にも聞いたから知っているよ。でもしかしそんなマリーちゃんでも苦戦しているとなると、
その黒服相当な石頭だな。恋愛の概念なんて頭の片隅にすらないんじゃないのか…?」

「全くだねぇ。恋愛のお邪魔虫なんてどこにでも居るけれど、ここまで酷いのはボクも出会ったことはないね。でも、逆に二人を
くっつけようと闘志が湧いてきたよ。マリー、キューピットとしてボク達もこの恋愛成就に協力してもいいよねっ!」

「ええっ!?」

これにはマリーも驚いたのだろう、背後の尻尾はピンッ…と伸びきり。大きく見開いた目でパームを見つめ、身を乗り出す。

「パーム姉ちゃん…いいのっ!?」

「もっちろん!ボクだって恋を実らせるキューピットだものっ。ボク達が力を合わせれば大丈夫さっ。クロウ君、それまで
この街に居たって構わないよね?ねっ?」

「ああ、それは構わないけれど、恋愛成就をキューピット二人がかりっていうのもアリなのか?」

「もちろんアリアリ♪世界中に愛を育ませることが目的だからバラバラに散っていったけれど別に二人、三人がかりで恋を
かなえちゃいけないって規則はないものっ。」

嬉しそうに話すパーム尻尾が大きく揺れ、目がキラキラと星のように輝いていた。この時のパームは大抵…ん?ボク達三人
がかりってことは俺もそれに含まれているってことか?

「ようし、これで決まり!手伝えることだったら手伝うから何でも言ってねっ♪ようし、マリー、ソレで良いかなっ?」

「うんっ!それなら明日にでも、ライア姉ちゃんに二人を紹介するねっ。きっと二人なら大丈夫!!ありがとうっ♪」

「のわあ!こら抱きつくなっ。」

部屋にあわてふためく俺の声に笑うパームとマリーの声が重なった。マリーは無邪気な笑顔を見せていたが、
彼女の青い瞳は僅かに潤んでいるように見えた。

 

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