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しろしろ

ナシゴレン

どれい。地下牢に監禁されている。

v:調理
x:辻褄

2日目:地下牢のどれい

 お皿に載せた蝋燭を持ったギアが先頭。胸を張ってずんずん進む魔王様。おどおどついていくミントと、さらにおどおどしているすあま。4匹で螺旋階段を下っていく。
 「城の地下にはどれいが監禁してあるのだ」
「ど、どれい」
「いうことを聞かないので、お仕置き中なのです」
「お、おしおき……」
 まおーさまはともかく、ギアのいうことはいい加減ではないだろう。聞き慣れない、しかし意味はわかるその言葉に、ミントはごくりと唾を飲みこむ。
「あ、あのね」
「スアはしゃべるな」
「すあまさんはしゃべらないでくださいね」
「きゅぅ」
 何か言葉を紡ごうとして、まおーさまとギアに制され、すあまは両手で口を押さえた。
「ミントもオレ様に逆らうとどれいにしてくれるぞ!」
 コワがらせようとするまおーさまと。
「お仕置きはあまりしたくないので、ミントさんはなるべく魔王様のいうことを訊いてあげてくださいね」
 苦笑するギア。
 思ったほど深くない地下階に到着し、石牢に入る。そして、
「わああああああああ!」
「ふはははははははは!」
 ミントの絶叫と、まおーさまの高笑いが重なって響く。
 石牢の壁には、手首足首を繋がれ、尖った耳を左右でぴこぴこさせた亜人が、紫色の肌を蝋燭の光に反射させていた。それよりなにより、
「コックさん!」
 お城に来てからミントが食べた、ゴハンをキッチンで作ってくれたコックさんが、今、鎖で壁に繋がれていることに、びっくりした。
「このコックはオレ様に逆らったので、3日3晩縛りつけの刑に処しているのだ」
「でもさっき朝ゴハン作ってくれたよ」
「ミントさん。そういう設定ですから」
「せってい」
 意味はよくわからないが、ギアの表情が穏やかなので、つまるところはウソだということだろう。まおーさまはときおり突拍子もないことを言ったりしたりするので、ミントは振り回されっぱである。
「うむ!」
 腕組みして満足そうに頷き、まおーさまはすあまに合図を送る。かちゃかちゃとその束縛を外していくすあま。
「これにて解放してやる。これ以上の狼藉は打ち首じゃ」
「うちくび」
 まおーさまがコワい言葉を使うので、ミントはビクビクものである。
「ありがたき、しあわせ」
 まおーさまの前に跪いたコックさんが、礼を口にした。
「ふはははははははは!」
 そしてまた高々と哄笑し、まおーさまは地下牢をあとにする。ギアはミントにウインクを投げてまおーさまを追い、心配そうにしていたすあまは、コックさんがこくりと頷くのを見てから、2匹についていった。
 残されたのはコックさんとミント。
「コックさんっ、だいじょうぶ?」
「心配、要らない」
 姿勢を崩し、ばたりと横になる。石牢の床にすれた紫色の素肌は、ミントが心配するよりも丈夫で、かすり傷ひとつできない。
「股間のおもちゃを止めてほしい」
「オモチャ?」
 ミントが視線を動かすと、コックさんの股間に桃色の棒が刺さっており、「う」に濁点のついた音を立ててブルブル震えているのがわかった。
「あ、これ」
「止めてほしい」
「はい」
 わたわたと手探りでスイッチを探す。
 かち。
 途端、音と振動が一回り大きくなり、オモチャはグルグルと円を描いてコックさんの股間を蹂躪し始めた。
「んっ……スイッチを逆に入れてほしい」
 表情も抑揚も変えず、かすかに声を漏らしてから、コックさんは再度ミントに要求した。
「ご、ごめんなさい」
 再度わたわたと、スイッチを切った。停止したオモチャを股間から引き抜いて、コックさんは続ける。
「ありがとう」
「ううん。それよりまおーさま、ヒドいんだねっ、こんなコトしてさっ」
 悲哀な声で、コックさんの体を気遣うミント。
「だいじょうぶ、ここは感じない」
「え?」
「この股間の切れ込みは、何も感じない」
 コックさんが言い直した、より具体的な説明に、ミントは顔を赤くする。
「そ、そうなの」
「だから、誰の、何を挿れても、構わない」
 じー。
 コックさんの視線がミントとかちあって、それから下降し、股間に辿り着く。
「そ、そうなの」
「魔王様は、配下の者のイヤがることはしない」
「そっか」
 ホントの“どれい”や“おしおき”でないことがわかり、ほっとするミント。
「しかし、お客様は違う、かもしれない」
「え!」
 とつぜんの警告に、“お客様”のミントは面食らって固まった。
「……ミントも、魔王様の配下に下るとよい」
 しばらくして、コックさんが助言をくれた。無表情のまま、見開いた瞳でミントを見つめる。
 「あの、コックさん、お名前教えてくれる? ぼくはミント」
 螺旋階段を登りながら、ミントが背中に声をかけた。ランタンを持って先を行くコックさんが、振り返らずに答える。
「ナシゴレン」

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