牛魔王。魔王様の教育係である。
v:読書
x:机に向かわず逃げる魔王様
朝食前、ギアの具合が悪いの、とすあまが告げた。とたんまおーさまは勉強の時間がなくなったとはしゃぎ回り、ナシゴレンはミントたちに食事を供してから、自分だけ席につかず台所に戻り、粥を作り始めた。心配でたまらないミントは、食後、ナシゴレンが粥を運ぶときに同行しようとしたが、
「まだ、いい」
と言われ、ついていくのを許してもらえなかった。しばらくやきもきしていると、空になった食器を持って廊下を戻ってきたナシゴレンに、
「もう、いい」
と呟かれたので、勢い勇んでギアの部屋に向かう。
「ギアさん、入っていい?」
どうぞ、と声が返ってきたので、部屋の扉を開いたミント。そこには、大きなベッドに横たわる、牛魔王ギアがいた。
「ミントさん」
来客に相見えようと、横たわった状態から半身を持ち上げようとするギア。
「あっ、寝てないと、ダメ」
「だいじょうぶですよ。せっかくミントさんが来てくださったのだから、少しお話がしたいんです」
そう言って笑い、上半身だけ起き上がると、むむむと難しい顔をした。
「昨日買ってきたハーブティーがあります。淹れて差しあげたいのですが」
「な、何にもしなくていいから、寝ててって!」
慌ててミントがギアを制す。後ろめたそうに微笑むギアが、ベッド脇の椅子にミントを座らせた。
オシリのところがほのかに冷たい。さっきまでナシゴレンが座っていたからだろう。
「どんな感じなの?」
「少しめまいがして、立っていると切ないのです。すみません、ミントさんに心配をかけて」
「ううん。それより、お医者様呼ばなくていいの」
「それほどたいそうなものではないですから」
笑顔を崩さず、ギアが応える。
「食欲はありますし、今日1日休めば治ります」
「そっか、よかった」
重い病気や怪我でないことがわかり、なによりギアが苦しそうでないので、ミントはほっと息をついた。
「昨夜の魔王様は珍しく受けばかりでしたので……」
「え?」
「いえ、なんでもないです」
「? あ、何か欲しいモノありますか、お水とか、氷枕とか」
「水差しはナシゴレンさんが持ってきてくれましたし、熱はないので氷嚢もなくていいですよ」
「うー」
ギアに何かしてあげたいのに、何も思いつかない。いつもいろいろなことを優しく教えてくれる、センセみたいな牛魔王様。たまには、役に立ちたい。
「そんなに睨まないでください」
しかめっ面のミントに少し驚いて、またにっこりと笑うギア。
「ごめんなさい」
「謝らなくてもいいですよ。そうですね。そんなに言うなら」
「! 欲しいモノ、あるの?」
こくり、と頷いて、ギアは机の上を指差す。水差し、コップ、透明な小瓶、お盆。
「その小瓶に、精液を貰ってきてもらえませんか?」
「うん! わかった。小瓶にせいえき……せいえきぃぃぃぃ」
手にした小瓶を取り落としてしまうかと思うくらい、ミントは慌てた。大声を上げてしまいそうになったので、空いた左手でマズルを覆う。それから、口に出した言葉を頭の中で反復する。せいえき、せいえき、精液。つまり精液が欲しい、とギアは言っている。やっぱりびっくりして視線を向ければ、今度は苦笑い。
「昨夜、魔王様の相手をさせていただいたのですが、珍しく私に攻めばかりお求めになられまして、搾り取られたのですよ」
「は、はうはう」
さらっと、本の1節でも読み上げるように、性行為について述べるギア。ミントは顔を赤くする。
「なので、補給したほうがいいかな、と思いまして」
「は、はうはうはう」
ミントの頭から湯気が上がる。ヤラしいこととは縁のなさそうなギアに性談義をされると、マジメなのかヒワイなのかわからなくなってしまう。
「ミントくん?」
「は、はい! と、取ってきます!」
「すみません、お願いします。できれば、昼ゴハンの前に服用させてください」
にっこりと、最上の笑みをミントに向ける。困惑した頭の中で、ひとつだけ、ミントは確認をしておきたいと思った。
「あの、だ、誰の、せいえ……が、いいのかな」
カンジンのところは、もごもごと口を濁す。
「誰のでも構いません。もちろん、魔王様のは格別ですが、いまごろ遊びに夢中でしょう。ミントさんの話を半分も聞かないと思いますから」
「そうですね」
教育係の苦笑いに、ミントも頷く。
「あの、それじゃ、行ってきます」
「ええ、よろしくお願いします」
「あうー、どうしよー」
小瓶を両手に抱えて、ミントは途方に暮れている。
「せ、せいえき、ください、なんて……恥ずかしいこと言えないよぉ」
ギアもすあまも、もちろんまおーさまも、精液とかオチンチンとかオシリの穴とか、ミントが恥ずかしいと思うことをすらすら口にする。まだ行為にも言葉にも馴染めないミントにとっては、ギアから託されたお願いはハードルが高すぎる。でも、役に立ちたい。
「んーと、えーと……」
◇やっぱりまおーさまに頼もう
◇すあまさんなら言わなくてもわかってもらえるかも
◇ナシゴレンさんにお願いしようかな
→せ、「せいえき」なんて誰にも言えないよぉ
「や、やっぱりダメ」
自分の部屋に戻って、イメージトレーニングを終えたミントは、「精液ちょーだい」と口にすることを諦めた。
「ど、どうしよう、誰にも言えないのに、誰のせいえ……きを」
目線が小瓶から手元に、そして下腹部に。自らの股間をまじまじと見つめて、
「……ん」
頬を赤くして、決心したようである。
「誰も、来ないよね……」
まおーさまは中庭で遊びまわっているし、すあまさんは午前中いっぱい洗濯のはず。ナシゴレンさんはそもそもミントの部屋に来るどころか、用がなければ地下牢と台所を往復するだけ。そしてギアさんは自室。これならだいじょうぶだ。
ベッドに腰かけて、ズボンを脱ぎ、パンツを下ろす。露出した下半身には、萎えた小さなオチンチンがぶらさがっている。下だけ裸の状態に違和感があったので、シャツも脱いでしまい、ベッドの上に四つんばいになる。ぷらんと垂れるオチンチンの先端が示す先に、小瓶を置いた。
「このカッコで、……出せば、ちゃんと入るよね」
自信なさげに呟いて、ミントは自らの手をオチンチンに添えた。先端を包む皮をやわやわと揉みほぐす。
「ふぅっ……」
この城に来るまでは自慰など知らなかったが、数日のうちに経験させられたカラダの動きと疼きが、しぜんとその手を上下に動かしていた。次第に呼吸が荒くなる。
「んっ、んんっ」
くちゅ、と最初のひとしずく。包まれたままの先端を濡らし、次いでとくとくと流れる先走り。オチンチンの細い管から粘液が流れていく、その感触がきもちいい。量も感度も、すっかり性欲の倍増してしまったミントのカラダが、さらなる快楽を求める。
「んくっ、んくっ」
くちゅくちゅと水音を立てながら、己の屹立をしごいていく。まだ幼い勃起は皮をかすかに上下させ、拙い愛撫にビクビクと反応する。あんまり激しく攻め立てるせいで腰が浮き、その振動がベッドに伝わり、小瓶が倒れてしまう。
「あ、あわ」
イジっていないほうの手を差し伸べて、小瓶を立て直そうとするけど、オチンチンに刺激を与えるもうひとつの指が、手が止まらない。
「あっ、あれっ、ぼく、ヘン」
左手で小瓶を押さえて、右手で軸をすりあげる。溢れる先走りに指も袋もトロトロになって、すべりを帯びた硬直が上下運動をなめらかに受け流す。そのたび、竿も先端もこすれて気持ちよくて、ミントの手の中にすっぽり収まっているオチンチンが、淫楽に微動を繰り返す。蓄積してゆく射精欲。溜まりに溜まって、動きがいっそう激しくなっていく。欲望のまま、快楽のままに手淫を続ける。
「はっ、はふっ、ぼく、ダメっ……んっ!」
限界に達し、射精が始まった。脳天に突き抜ける極上の快感。それでも頭のどこかに残っていた義務感が、慌てて左手をオチンチンのほうに動かし、小瓶の口を先端に触れさせる。
「つめっ」
ヒヤッ、とした感触。それでも射精は止まらない。びゅくびゅくと白濁を小瓶の口に向けて打ち出せば、ガラスの底に当って跳ね返る硬質の音が響く。何度も何度もオチンチンが痙攣して、ギアの望みどおりに精液を放出する。音が精液同士の跳ねる水音に変わったころ、放出が収まった。
「はぁ、はぁ……」
つつー、と左手に生暖かい半液体の感触。目標を外れて小瓶の端に振りかかった迸りが、垂れ落ちていく。
「あ、あっ、ダメ」
自身から解放した白濁に制止を求め、指でつっと中に収めてから、瓶に蓋をする。これで準備は万端だ。
「ふわ……」
心地よい疲労感に襲われ、意識がベッドに吸い込まれそうになったところで、鐘が鳴った。
「あ、お昼ゴハン!」
太陽が真上に登ったことを示す鐘の音を合図に、ミントはがばっと跳び起きて、瓶を手にわたわたとギアのところへ向かった。
「ホントに持ってきてくださったのですね。ありがとう、ミントさん」
「ううん、だってギアさんにはいつも優しくしてもらってるから」
「ふふふ。うれしいです、精液。まだあったかいですね」
真っ赤になって差し出すミントの手を取って、しばし。鼻をひくつかせるギア。
「これは、ミントさんが出したもの、ですね」
「な、なんでわかるの」
「それはもう。ミントさんのは初々しいですから、すぐわかります」
そんなふうに言われると、恥ずかしい。
「私のために、自分でイジってきてくれたんですね」
そう云ってギアはミントの手を引き、ぺろ、と瓶ごと舌を這わせた。
「わ、ギアさん」
「この指で、精液を取り分けてくださったのですね」
瓶を受け取ったかと思ったら、持つものがなくなったミントの指を、1本ずつ口に咥えるギア。
「くすぐったい」
ちゅく、と音を立て、先端に吸い付いたり、側面を舐めあげたり、ていねいに舌で愛撫する。
「精液の匂いがします。ミントさんの指、オチンチンみたいですよ」
「や、やめてよぉ、恥ずかしい」
早く持っていくことばかり考えて、手を洗ってこなかった。真っ赤になって、言葉を制するよう願うも、ギアは止めてくれない。
「このままじゃ、匂いが残ってしまいますから。キレイにしますね」
ちゅぱ。最後の1本。指のあいだをちろちろとくすぐられて、手の平も甲もぺろぺろと舐めつくされて、ミントはまるでその刺激を全身に受けたかのように、びくびくっと身震いした。
「ん……」
ギアのマズルがミントの手から離れる。ぺろり、と口の周りを舐めて、でもまだ物足りなさそうに。
「ミントさん」
「は、はいぃ」
「この精液は、ミントさんのオチンチンからさきほど出たものですね」
「はい……」
「それでは、ミントさんのオチンチンは、精液まみれだということですね」
「は、恥ずかしいよ、ギアさん」
舌なめずりをしながら、ギアがミントとの距離を縮める。
「それはもったいない。ミントさんの精液を、私の滋養にさせてください」
そう云って、ミントのズボンに手をかけた。
「ギ、ギアさん、ダメです」
「ミントさんは私に精液をくれると約束してくれたでしょう?」
「う」
正論である。
「だから、私にください。ミントさんのオチンチンもキレイになりますから、利害が一致します」
ベッドにミントを招き入れ、膝立ちにさせる。
スルスルとズボンを下ろし、
「ほら、パンツにも沁みができています。もったいない」
ちゅ、と軽く口づけて、ギアはミントのパンツを満喫する。
パンツも足首まで脱がせると、小さく萎えたミントの竿と袋が、あらわになった。ギアは股間の前に跪き、マズルの中にすっぽりとミント自身を含む。
「あっ、ああっ、うんっ」
暖かいギアのマズルの中で、舌がくるくると踊り、ミントのオチンチンを味わい尽くす。ちゅぱちゅぱと唾液と淫液が交ざる音、吸い上げる水音、熱い吐息の音。みずからの下半身が奏でる音色に、ミントは恥ずかしくて、気持ちよくて腰が抜けてしまいそうだ。さっき出したばかりなのに、ミントのオチンチンはまたかちかちになってしまった。いちど口を放したギアが、愛おしそうに屹立を眺める。
「ああ、ミントさん。もうこんなに。私にもっと精液をくれるのですね」
「ギアさん、ダメぇ」
「ダメですか?」
ギアは精液を欲しがっている。それはミントもよくわかっていて。
「ダメじゃないけど」
2回も出したら、ヘンになっちゃう。そう口にする前に、
「それじゃ、ミントさんの精液、いただきますね」
ギアの口元がミントの秘部に触れ、その硬直を持て余す。竿に舌を這わせ、先端を口の先で包みこみ、袋の中の玉をひとつずつ口中で転がす。
「ギア、さんっ、ぼく、もう」
いちど出しているので存分に持久力のあるかと思われたミントだったが、涙目で限界を訴えている。ミントのオチンチンも涙目である。
「わかりました。ミントさんの精液、直接飲ませてくださいね」
ちゅっ、と先端に口づけたかと思えば、マズルを激しく前後に振り、ミントのオチンチンを攻め立てる。かたやミントも快楽に流され、ガクガクの足でかろうじて姿勢を保っている。
「あっ、出ちゃう、せいえ、き、また出ちゃう!」
ミントのオチンチンがぶるりと震え、ギアの口中にびゅくびゅくと欲望を放出する。射精のそばからギアが細管を吸うので、よけいに勢いづいた精液がミントのカラダから流れだし、オチンチンを勢いよく抜ける感触に今までにない快感を覚える。ようやくギアのマズルから解放されたあと、ミントは力尽きてぺったり座りこんでしまった。
「はにゃあ」
「んっ」
ごくごくと喉を2、3度鳴らして、ギアがミントの精液を嚥下していく。
「すみません、少し強引でしたね」
とミントに微笑みかける。
「ふふふ、ミントさんの精液はとろとろで、活力に溢れていますね。私もすぐに元気になれそうです」
「ほ、ほんと?」
腰を抜かしたミントであったが、ギアに喜んでもらえてうれしそうだ。笑顔で応答する。
「それでは、こちらもいただきますね」
さっき渡した小瓶を、愛おしそうに胸に寄せた。
「ミントさんもいかがですか?」
「え、えええ?」
まさか自分で出したのを飲まさせるのかと思ったが、そのときドアノック。慌ててパンツとズボンを引き上げ、ベッドから這い出すミント。
「はい」
「ありがとうございます、ナシゴレンさん」
料理番のナシゴレンが、お椀をふたつ運んできた。促されて受け取るミント。
病床におなじみ、すりおろしりんごである。
「わぁ、ほしいほしい!」
「ふふ、それじゃ、どうぞ」
片方のお椀をギアに渡し、自分の取り分を口に運ぶ。息の上がった喉とカラダにやさしい、あまずっぱいリンゴの味が広がる。
「おいしい!」
「それは、よかった」
こくこくと飲み干して、ミントはお椀を置いた。満足そうに舌なめずりをするミントを、目を細めて見守っていたギアが、ミントの1回目の精が入った小瓶の蓋を取り、すりおろしりんごの上からとろとろと流し込んでいく。スプーンでくるくると軽くかき混ぜて、マーブル状になったところでマズルに運び、ぐいっと呷る。
「んっ……」
自らの精液を食べ物に混ぜて飲むギアを目の当たりにして、羞恥に頬を染めるミント。直接飲まれるのよりも恥ずかしいかもしれない。
「ごちそうさまでした。とっても甘くて、おいしかったですよ」
「だ、だって、ほとんどはりんごだもん……」
「精液の苦みが、りんごの甘みを引き立てて、ほのかなとろみが喉越し豊かで。ミックスするにはとてもよいコンビなのです」
「そうなの」
「ミントさんもぜひ、やってみてください。もし精液が欲しかったら、次は私がご馳走しますよ」
そういってウインクをする牛魔王。
「は、はうう……」
突拍子もない申し出に、ミントは目を丸くするしかなかった。