アニメ「ワールドトリガー」(東映アニメーション、2014)感想と、アニオリ回・エルガテス編(#49-63)のここがすごい!

 もともとアニメを数話閲覧し、スルーしようと思っていました(2018年末)。
 そのあと、もう少し様子見ようと思って#07「三輪隊の強襲」から視聴再開したのですが、戦略戦術アニメだということに気が付いてドハマリし、コミックス全20巻とデータブックを揃えた次第です。
 また空閑がブートモン千佳ちゃんがミュージモン、陽太郎がアルマジモンというのもデカいね。

 週1アニメにしては毎回の振り返りシーン、作中での使い回しシーンが多く、コミック連載に追いつかないための引き延ばしなど画策していたのかしら。Cパート「ワールドトリガーを100倍楽しむ講座」も実質本編の復習であり(ただし毎回実験映像さながらの様々な試みが見られて興味深い)、まとめ観イッキ観する層にとっては辟易してしまう。

 推しは緑川駿(14)・別役太一(16)・天羽月彦(16)です。
 すきなトリオン兵はラービット(プレーン)。


ボーダー本部がネイバー空閑を確保しようとするところを迅さんが阻むところ:
 迅さんが「俺のサイドエフェクトがそう言ってる」と言うたびに「迅さんがそういうならそうなんだろうな」と思わされ納得してしまうので、語りの技術としてはズルいなぁと思います。他人を言いくるめるときはもっと理屈詰めで攻めるべきだ。

#19「緑川駿の策略」:
 性格悪いショタはサイコーだし、性格悪いところを看破されるショタもサイコーである。そして性格悪いショタを看破するショタもサイコーなので要するにショタはサイコーである。

#23「神の国アフトクラトル」:
 攻めてきたネイバーと間違えられた空閑が、ボーダー隊員に攻撃受けるところは、アクセントとしては最高であり、やはりフレンドリーファイアは鉄板である。
 しかも撃ってきたのは茶野隊! 16歳ショタコンビであり、

「第二の嵐山隊」となるべく結成されたアイドル的部隊 葦原大介『ワールドトリガー オフィシャルデータブック BORDER BRIEFING FILE』(ジャンプ・コミックス、2016)P.186

である。正統派アイドルジュニアが、我らが人外ショタアイドルに噛みついたのである。これを邂逅と言わずに何だというのか。

#37「ヒーローと相棒」:
 戦争の事後処理のひとつがメディア対応であり、やはりドンパチネタは流れるようにマスコミネタに引き続くのが美しいのだなぁと思わせる記者会見。メディア対策室および室長・根付さんの存在は、少年マンガに報道ネタを持ち込むための仕掛けトリガーであり、シナリオ練ってるなぁ、と感心する。

#40「始動! 三雲隊」:
 実況解説席、桜子さんの

ボーダー界きっての愛玩小型犬 武富桜子セリフ
アニメ「ワールドトリガー」(東映アニメーション、2014)#40「始動! 三雲隊」

という紹介を受けて、

ワン! どもッス! 緑川駿セリフ
アニメ「ワールドトリガー」(東映アニメーション、2014)#40「始動! 三雲隊」

と元気に回答する緑川(6:20くらい)。自身のキャラを読みきっていて腹黒い。なおコミックスでは

草壁隊
緑川くんに
お越し頂いて
います! 武富桜子セリフ
葦原大介「ワールドトリガー 10」(ジャンプ・コミックス、2015)P.169
どもっす 緑川駿セリフ
葦原大介「ワールドトリガー 10」(ジャンプ・コミックス、2015)P.169

 と答えただけなので、犬様の掛け合いはアニオリである。

#42「鈴鳴第一の村上鋼」:
 空閑と緑川がソロランク戦をしにいこうと、駆けながら拳をコツンと突き合わせてT字路を相対方向に曲がる(6:17くらい)。仲良さそうで微笑ましいことこの上ない。

#50「姿なき襲撃者」:
 さて#48のED(同曲『ドリームトリガー』は#49以降OP起用)に登場した浅黒少年誰なんだべさ、と思いつつ#49を堪能し(臍チラ+金属バックルは正義)、声誰かにゃー若手の高めの男性声優だにゃーと思っていたら

阪口大助

……あーコレ外しちゃマズいやつだなぁ。枕さんぐっちゃんファンだもんなぁ。あー。

なおカロン:玉川砂記子(旧:玉川紗己子)であり、大御所呼んでいらした感が強いです。「ゲンジ通信あげだま」の九鬼麗。

#56「リリスの謎」:
 水着回。ゼノ様の半裸を堪能しよう。後半ではやられ姿・汚れ姿の半裸も見られるのでたまらん。

#57「ゼノとリリス」:
 アニオリ乱星国家エルガテス&ちょっと若い技術屋ゼノ様CVぐっちゃん=「生きててよかった」「これが『尊い』というやつか」「フード被ったぐっちゃんキャラはほぼハックモン」、と単調な感想しか抱けない今日この頃ですが、皆さん強く生きていますか。私は元気です。

#73:
 最終回。……ではあるが、原作は途中だしアニオリで展開捻じ曲げもしないので、「これからがんばるぞ!」的な終わり方であった。

アニメワートリのアニオリ回・エルガテス編(#49-63)のここがすごい!

大きな柱が3本あって、

「なるべく本編に関わらない時間・場所・人間関係によって話を構成する」ことで、メインストーリーつまり葦原先生の原作の展開にほとんど介入しないよう配慮している
「B級中位ランク戦までのワートリネタを再解釈してぶちこむ」という要素を盛り込んで、本編へのリスペクトと「もしかしたら葦原先生が作ったかもしれない『if』の物語」っぽさを引き出している
「葦原先生/SF戦争モノがやらなそうな、かつアニメとしては魅力のあるシチュエーションやシーンを盛り込む」ことで、アニメ作品製作者としての義務を果たしている

 これらの要素をほどよく満たし、非常にバランスのよいアニオリ話が展開されており、目を引きます。
 この巧さは、話作りにセンスがあるという意味の上手さというよりも、巧妙で技巧的で、いうならば職人芸だと強く感じました。

なるべく本編にかかわらない時間・場所・人間関係によって話を構成する
部隊を三門市から四塚しづか市に移動。ボーダーの合宿所があるという設定。
いまのところ本編のネイバーは皆、惑星国家から攻めてきているので、しばらく干渉してこなさそうな乱星国家からゲストキャラを寄越させる
ゲストキャラの目的は「故郷と地球以外の、静かなところでひっそり暮らす」。これで主人公らがゲストキャラの目的を達したあとは跡形もなくなるので都合がいい
ちなみに、ゲストキャラを追いかけてくる敵、ギーヴ&カロンについても跡形なく処理されます。えーと、ギーヴが自分を裏切ったカロンを巻き込んで自爆。すばらしい。作中でミデンに残ったエネドラ・ヒュースと比較すると、「残しといてもあとあと面倒だしなぁ」感が溢れており名采配。
B級中位ランク戦までのワートリネタを再解釈してぶちこむ
ゼノ様の攻撃方法が「トリオン兵召喚」なんですね。アフトクラトルの人型ネイバーたちは固有のトリガーを持っていて、それぞれ特殊能力を駆使して戦う。であれば何か別の特殊能力をもったキャラを……と考えてもよかったんですけど、作者とカブったらどうしようという若干のリスクはある。であれば、侵攻軍がゲートによりトリオン兵を召喚して攻撃、の手順をショートカットして、トリオン兵を手から召喚して攻撃させるネイバーにしよう→じゃあトリオン兵は武器じゃなくて仲間だと思ってて、その反動で友達がいないキャラにしよう、とここまでがひとつなぎ! これを思いついてしまえば、あとは「トリオン兵にしか心を開けないゼノ様の初めての恋」で逃避行モノは書ける!
ギーヴ&カロンの関係はそのままユーマ&レプリカである。カロンは白い自律トリオン兵(原作にてヴィザに看破された「トロポイの」(8巻P.104)かどうかは不明。おそらくエルガテス製だろう)。アフトクラトル侵攻によりユーマはレプリカを失っているので、その欠落分のヴィジュアル補完、「ワートリってなんか丸くて炊飯器大のロボットが浮いてたよな……」という視聴者の水面下の欲望を満たす効果がある。
#58、空閑VSギーヴ戦にて空閑は仮想空間に閉じ込められて戦闘を強要されるが、これはエネドラ戦の敵味方チェンジ版
葦原先生/SF戦争モノがやらなそうな、かつアニメとしては魅力のあるシチュエーションやシーンを盛り込む
ゲストキャラ2人はカップルで駆け落ち中。これは葦原先生書かないだろうな……。視聴者からすれば「駆け落ち」ほどわかりやすい「ペアの」「通過者」はいないだろう。「ペア」にしたから問題は倍化するし、「通過者」だから通してしまえば全体の展開に影響を与えない!
人工知能あるある。人間に恋をしたとか、自分は人間だと思い込んでいたとかによる葛藤。SFベタネタではあるがこれもわかりやすい
水着回(#56)。露出が少ないトリガー勢の中で、空閑にゼノ様、嵐山隊長、レイジさんまで脱がした功績は大きい
これまでの敵方の目的は、ざっくりいうとアフトクラトル軍が「千佳の誘拐」、先の原作ですがガロプラ軍が「遠征艇の破壊」なんですよね。ピンポイントでローコストハイリターンを狙う、いうなれば頭のいいやり方。
対比してギーヴ&カロンの作戦は、「観光船の客全員をトリオン供給源にして大爆発」「四塚市市民全員をトリオン供給源にして大爆発」。緻密な戦術戦略バトルに対比しての大技大仕掛け大爆発は、たしかにカタルシスではありましたが、「葦原先生じゃねぇぇぇ」感は拭えません。とはいえ、精緻で伏線貼りまくりな原作に相当する物語を、限られた時間で作り込むのは骨が折れる作業ですから、大味であってもピンチが復活ドカーンで巨大化、わかりやすいトラブル解決というのは、手法としてはアリだと思います。
また、カロンの思想「とりあえず大量にトリガーがあればなんでもできる」は、これまで登場した各々のトリガー隊員が、自身の限られたトリオンを駆使し、その多寡によらず皆考えて最善効率で技を繰り出していたことと比較すると、なかなか興味深いし、千佳ちゃんがどこかでその戦法に切り替える未来すら見えてきますね(おれのサイドエフェクトが)。トリオンモンスターの第二の師匠は、もしかしたらカロンだったかも。「まず四塚市市民全員を縛り上げてぇ」「えー……」

 とまぁ、三門市を遠く離れて、原作ネタで使えるところは使う、使わなそうなところも使う、と組み立てていった結果、できたシナリオはゼノ&リリスの愛ベース、大爆発直前ストップのスペクタクル、主要キャラみんなの力を合わせて街を守ろう! という、劇場版みたいなシナリオを擁してうまいことまとめた感じでした。
 原作の展開になるべく迷惑をかけないよう、オリジナル脚本を作ったアニメスタッフは、超気を遣っていて評価されるべきでしょう。
 また、#60「陽太郎の冒険」はエルガテス編と並行しての小編なのですがこちらも佳作。

 余談ですが、上記とまったく真反対の手法、「本編のキャラ借りて独自解釈」「原作でやりそうともとくに思えない」展開でアニオリ話を制作し、枕さんに絶賛されたのが「ミスター味っ子」#18です。