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菱餅クァの苦笑
09 三日目夜

 「ひ、秘密にしてくださいね、このコト。菱餅さん、ナシゴレンさん」
 こく。頷くナシゴレン。菱餅はまだ戸惑うばかりだ。
「話の流れはわかったけど、あの、その、アーウィン? どうするの?」
「どうするか、考えあぐねたので、菱餅に相談することにした」
 ちゃぶ台の上には各種アダルトグッズが並べられている。放課後、購買に立ち寄ったアーウィンは、レジで砂堀サブレに相談を持ちかけられた。黒い紙袋の品々の、使い方を教えてほしい、というコトなので、いっしょに寮に連れてきて、4匹で秘密を共有したトコロ。
「オレ?」
「俺は菱餅としかもにもにしないと決めた。それには、道具を使ったプレイは含まれるのか」
「わああああああ?!」
「きゅう」
 「もにもに」という言葉が飛び出して、慌てる菱餅と縮こまるサブレ。
「な、ななな、アーウィン、恥ずかしいよ」
「確認、しないと」
「そりゃ、そうだけどさ……ていうか、あの、もし含まれないとなると、アーウィンが、その、サブレさんに、いろいろ、教えるの? 手取り足取り」
「頼まれゴトは、ちゃんと遂行したい」
 アーウィンの性道徳は、菱餅とは少しズレている。それは承知しているつもりなのだが、道具を使ったプレイの許容、つまりナマモノを入れたり入れられたりとは違うから誰とでもしていいかどうか、なんて、訊かなくたってダメに決まってるじゃないか。不愉快な感じが声に漏れる。
「……サブレさんには悪いけど、オレ、それはダメだと思う、そんなの」
「い、いえ、そんな、悪いだなんて、菱餅さんそんな」
 さらに縮こまるサブレ。
「ゴ、ゴメン、アーウィン、サブレさん」
 そして気の弱い菱餅が、両者に謝る。
「いい。菱餅の気持ち、聞きたかった。それに、想定済み」
「想定済み?」
「電話、してくる。砂堀さん、待っててほしい」
 席を立つアーウィンが、隣の部屋に籠った。携帯電話で誰かと連絡しているらしい。
「あの、ところでサブレさん、ダイジョブなのかな、その、なんというか」
「ダ、ダイジョブです。覚悟、できてます」
 決意を表明するサブレ。細いシッポがぴんと上を向く。
「覚悟って」
「ボク、購買研究会ですから、売るモノのことちゃんと知っておかないといけないと思います。それで、アーウィンさんにいろいろ教えてもらおうと思って。でも、菱餅さんやナシゴレンさんに迷惑かけちゃって、申し訳ないです」
「迷惑じゃ、ないけどさ」
 こく。ナシゴレンがお茶のお代わりをつぎながら頷く。
「そういうのって、ほら、好き同士とかじゃないと」
「ダイジョブです。ボク、購買好きですから」
「えーと、そういうんじゃ」
「おかえり」
 アーウィンが帰ってきた。
「ただいま。他に手伝ってくれそうな相手、連絡した。来るって」

「お招きありがとう! えっと、道具のコトいろいろ教えてほしいコがいるんだって? こんな僕でもまだアーウィンの役に立てるなんて光栄だよ」
「センパイ、来てくれてありがとう」
「お安いご用さ! アーウィン君のためなら火の中水の中、アーウィン君の中だって……あ、ゴメン、僕ちょっと舞い上がっちゃってて」
「それじゃ。砂堀さん、センパイをよろしく。布団はコレ、シャワーは向こう」
 壁のところに積まれている寝具一式と、浴室の位置を示す。
「あの? よろしくするのは僕じゃないの?」
「はい、よろしくお願いします」
 サブレが頭を下げた。

「だ、ダイジョブなのかな? あのシマウマのセンパイ?」
「だいじょうぶ。道具のエキスパート」
「でもほら、化学の道具とアダルトグッズはまた別物じゃないかな」
「そうかもしれない。でも、センパイはいろいろ詳しいから」
 気が気ではない菱餅。盗み聞きは主義に反するが、同意の上とはいえクラスメイトの貞操が危機なのだからやむをえまい。寝室の壁に貼りついて、隣の居間で繰り広げられているだろうレクチャーに耳を澄ます。なお、ナシゴレンはすでに寝入っている。

「うーん……えーと、僕はどっちかっていうと、こういう用途に使うんじゃない道具をどう使うかのほうが得意なんだけどなぁ」
 さっそくラインナップを見渡して、腕組みをするシマウマセンパイ。サブレも不安そうだ。
「そ、そうなんですか」
「でも任せて、昔はけっこう専用のモノも試してたから。ところでサブレ君は、経験、ないの? 前も後ろも」
「は、恥ずかしいから秘密ですよー……ないです」
「うん。ヒミツヒミツ。そうかー、ないのかー。初々しくていいね」
「きゅう」
「後ろに入れる類から着手しよう。ほかのは、ひとりで実験しててもそんなに危害はないからね」

「ホントに始めちゃってる」
「菱餅、もにもにしよう」
「え、ええ!」
 いつのまにか擦り寄ってきたアーウィンが、菱餅の股間に触れていた。
「ダ、ダメだよ、声聞かれたりしたらどうするのさ」
「菱餅だって、向こうの声聞いてた」
「それは、心配だから、別に聞きたくて聞いてたんじゃないよ」
「したい。菱餅、ダメか」
 そんな目で見られると。おねだりの申し出を拒めない。
「……わ、わかったよ。ああもう、オレこういうの流されるタイプだったかなぁ」
「菱餅、大好き」
 丸裸。さすが、脱ぐのが早い。

「あ、あの、センパイ? 向こうから菱餅さんの悲鳴、というか」
「喘ぎ声、だね。タブン、始めちゃったんじゃないかな」
「は、始めるって!?」
「本番、というか。うん、まあ」
「そ、そうなんですか、アーウィンさんと菱餅さんと、ナシゴレンさん……って……んっ」
 いちばん細いスティックが、サブレの尻尾穴にゆっくりと差し込まれていく。潤滑液をたっぷりとつけて、シマウマセンパイのリードで、少しずつ内部に姿を消していく。
「サブレ君も、声、出していいよ。そのほうが感じるし、力も抜けやすいから」
「で、でも、聞かれちゃいますよ……」

「今日は、コレ、付けてしよう」
 アーウィンが小箱を開けて、中の小さなパッケージを取り出す。
「え、それ」
「うん。感じにくくなるから、長持ちする。声も抑えやすくなる」
 薄膜を傷つけないよう、端に寄せてから封を切る。取り出して、精液溜まりを指で押さえ、菱餅の先端に宛がう。くるくると根元まで引き下げて、できあがりだ。
「な、なんか、ドキドキするよ」
「菱餅。俺にも嵌めて」

「お互い筒抜けだから、いいんじゃないかな」
「そ、そういうもの……ですかぁ」
「アーウィン君は、サブレ君が緊張しないように、わざと壁の向こうで交尾を始めたんだと思うし」

「コレも、サブレさんが?」
「ううん。今日試そうと思って、買ってきた」
 装着するのも初めてなら、装着させるのも初めてで。ぎこちなく指を動かしながらも、どうにかアーウィンの屹立に薄膜を被せた。
「それじゃ、さっそく」
 と、獲物を狙う瞳が煌いたかと思えば、むしゃぶりつかれる。
「ああん! アーウィン! そこ、ダメぇ……っ!」
「直接じゃないのに、あんまり変わらない?」
「ひぃっ、んっ、そんな、舐めちゃ……んくっ! はあっ!」

「まぁ、どっちかっていうとまぐわいたいだけなのかもしれないけど」
「はぁ……んっ」
 引き出せば、スティックの先端と入口を潤滑液の細い線がつなぐ。
「ほぐれてきたみたいだから、太めのに変えるよ」

「ダメっ、アーウィン、なんか激しいよっ」
「そうでもない」
 2日お預けだったのだから、どれくらい激しくなるか予想はしていたが。全身をこすりつけられて、匂いにフラフラになる。先端という先端を甘咬みされ、痙攣が止まらない。
「そんなにされたら、オレっ、声ガマンできなくて……んっ、ナシゴレン、起きちゃう」
「ナシゴレンは起きてても寝たフリしてくれてるから気にしなくていい」
「気にするよぉ……」

「ほら、サブレ君と同じくらいのサイズのが入ったね……気持ちいいかい?」
「わ、わかんない、ヘンな……感じ」
「ココとか」
「んくっ!」
「前立腺。当たってるみたいだね」
「恥ずかしいです……」
「でも、前は嬉しそうにしてる」
 ぴくん。サブレの屹立はさきほどから、触れていないのにとめどなく体液を分泌させている。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいよ、生理的な反応だから。そういう艶かしい顔は、好きな相手とするときのために取っておくといいね」
「は、はい……んっ」
「それじゃ、自分でしごいて出しちゃおうか。僕にされるのヤだと思うからさ」
 サブレの手を取って、陰部を握らせる。
「ひゃん」
「僕がサブレ君の動きに合わせるから、好きなふうにいじっていいよ」
「ひゃあ……いっ」

「最後は、直接注いでほしい」
 菱餅の強張った軸の覆いに指をひっかけて、くるりと取り外す。露わになった弱い器官を、嬉しそうに一舐め。
「アーウィンっ、アーウィンっ……んっ」

「アーウィン君の中、すごく暖かくて、狭くて、それなのに好きに動かさせてくれるんだよ」
「ふ、ふわぁ?」
 くちゅくちゅと水音が響く。夢中で自らを責め立てるサブレは上の空だ。
「サブレ君もさ、好きな相手ができたら、自分の中で気持ち良くなってもらうってのも、ひとつの愛のカタチだよね」
「んっ」
「道具で練習しておくのも必要かもね。あ、もちろん、自分で自分を気持ちよくさせるために使ってもいいし、今みたいに」
「ひぁっ……んっ」
「そろそろだね」

「アーウィいンっ! ……くっ……」

「はぁあああ! んっ!」
 サブレの欲望はその腹の上にぶちまけられて、しばし恍惚に意識を飛ばす。
「前だけいじるよりもいいでしょ?」
「わ……わかんない……」
「そっか。初めてだもんね。でも、こういうのが必要なときもあるってコトは、わかってもらえたかなぁ。ステキな出会いがあるにしろ、ないにしろさ」
「ん……」
「ところでさ」
 オナニーホールを手に、シマウマセンパイが弱音を吐く。
「コレ、使っていいかなぁ……僕も、そろそろツラいっていうか、さすがにアーウィン君が隣で交尾してるのに、おあずけってのも……」

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