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菱餅クァの不調
03 シマウマセンパイ

 「それじゃ、中も診せてもらうからね」
 昂奮しきって上ずった声で、シマウマ獣人が覆いかぶさってくる。そのぎらぎらとした熱情が向けられる先には、上着だけの白衣を肌蹴させ、性器の軽く勃ち上がった腰を扇情的にひねるアーウィン。
「センパイ、優しくして」
「あ、ああ、もちろんだよ」
 低めに設えたテーブルの上には、いくつかの実験器具が置かれている。四つん這いになったアーウィンが股を開き、ひくつく後孔に自ら指を当てて軽く入口を開く。さきほどまで粘液質の薬品でじゅうぶんに湿らされていたため、受け入れる準備万端といった様子だ。臀部を掲げると、2本足で立ったシマウマの股間とちょうど高さが揃う。
「アーウィン、いくよ」
 呟いたシマウマが、さっきからいきり勃ちっぱなしの陰茎の先端をそこにあてがった。体格差を考えれば、収めるにはサイズ違いかと思われるほどの大きさと長さを持つソレを、ぐりぐりと力任せに押しこんでいく。灰色の腰を掴み、うずめた先端をさらに押し進める。
「んっ、動くよっ」
「はい」
 すっかりすべてを格納してからまもなく、気忙しげに了解を得ると、シマウマの腰が前後に往復を始めた。じゅぷじゅぷとした音が2匹のあいだで奏でられる。アーウィンの長いシッポは横に垂れているのだが、センパイのシッポが浮き上がってはぺちぺちと臀部を叩いており、音に少々興醒めだ。とはいえ、行為に没頭し一心不乱になっている相手にとっては気にもならない。何度か力任せに打ちつけると、限界を感じたのかシマウマが声を挙げた。
「うぅんっ、アーウィン、出すよっ」
「俺も、出る」
 ぱちゅん、とひときわ中まで押し込むと、接合部から溢れ出る粘液で表面がとろとろなシマウマの睾丸がきゅうっと収縮した。肉筒が痙攣し、熱い体液がびゅくびゅくと放出される。外からはわからないが、そのたびに唸るシマウマの声が射精の合図となっているようだ。何度目かの射出に合わせて膨らんだ馬の陰茎が、アーウィンの弱い箇所をそれなりに攻めたのか、灰色の腰がかすかにひねられて、小振りなほうの軸からも射精が始まった。零しながらぴくぴくと震えるその先には、空のシャーレが置いてある。アーウィンの欲望を受け止めて白い分泌液が溜まっていき、ときおり狙いを外れて淵から滴っていく。

 センパイと呼ばれた化学者はプレイに使ったシャーレを水で流し、それから所定の手順で洗浄・乾燥させて棚に戻した。かたやアーウィンは、さきほど下半身にたっぷりと含まされた粘液を適切に処置してきたところ。
「おかえり、アーウィン君。だいじょうぶだったかい」
「問題ない」
 優しく労るセンパイに対し、アーウィンの声は多少そっけなく聞こえる。しかしセンパイの脳内では、ハッスルした自分の欲望を受け止めたあまりに疲弊してしまったんだね、と勝手に変換され、悦に浸らせていた。もっとも、これしきの行為でアーウィンの腰や性器がへたるワケもなく、どちらかといえば物足りなく感じているのだが。夢見がちに語るセンパイにはちっとも届いていない。
「早く僕も立派な研究者になって、プレイじゃなくてホントにアーウィン君を実験サンプルにしたいなぁ」
「ああ」
 アーウィンは帰り道どこに寄っていくか考えている。
「次は学会発表後のアーウィン君を押し倒す、っていうシチュで、礼服を買っておいたんだ。今度持ってくるから、楽しみにしててね」
「ああ、それじゃ」
 アーウィンは引き戸を開けて立ち去った。
「それにしても気持ち良かった、久しぶりだったもんね。最近は研究が忙しくて、もっといっしょにいたいんだけど、そうだ! たまにはデートしようよ、それから野外でなんてのも、あ、ごめんごめん、僕ちょっと妄想入って……あ、あれ」

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