八獣学園高修部オカ研。丘陵好きの集まりではない。
オカルト研究会。それが正式名称らしい。「らしい」というのは、菱餅も詳しい結成の経緯はわからない、ということである。先代から引き継いだ会誌があるにはあるのだが、古代文字のようなもので書かれており読めない。
入口に掛けられたプレートは菱餅のお手製。カタカナの「オ」をひっくりかえして、「カ」を鏡文字にし横倒しにする。それを組み合わせて「丘」の意匠を模り、「研」と合わせて木の札に墨入れして、以前の古くなったモノと差し替えた。簡単なシジルとなっている。
引き戸を開けて、右手のテーブルに用意された出席簿に印を付ける。日付のところに名前を記入する代わりに、顧問お手製のハンコを押した。菱餅のマークはやっぱり菱形だ。
「んあ」
妙な声を挙げたのは、ひとつ上の星形のマークが示す通り、奥の黒机で読書中の同門を見つけたから。菱餅の口から漏れた言葉に反応して、横向きに生えた紫色の尖り耳が、かすかに跳ねた。
「こんにちは、ナシゴレンさん」
「……」
こく。頷く。そしてまた目線を書籍に戻し、紫色の指でぺらりとめくる。
ナシゴレンのマークは七芒星である。