「なんだよコレ」
「あー繊ちゃん、ダメだよ、まだ作りかけなのに。ちゃんと完成したら見せてあげる」
用事があって帰りに寄った生徒会室。持ち主が留守のあいだにふと見えたデスクトップのディスプレイには、あられもない姿で頬を赤らめた自身の姿が、映し出されていた。戻ってきた橙色狐人に詰問するも、飄々とした様子。
「作りかけ、っていうのは、この冗談のコトだよな?」
「まっさかぁ、モノもなしに広告打ったりしないよー。もうすぐサンプルができあがるころだねー」
生徒会長、稲荷棊子麺が、めいっぱい胸を張る。
「企画は購買研、制作は生徒会。ありとあらゆる技術を使って、最先端のトレンドアイテム、作っちゃいました」
「販売中止」
「そんなぁ」
「ところで、禅裸はコレ、知ってるのか」
放送研の名物コンビで、本件の犠牲者の片割れ。いちおう、相方の安否を気遣う。
「えー? 完成した暁には一番乗りでプレゼントするよ、って言ったら、禅ちゃん嬉しそうに教えてくれたよ、繊ちゃんのカラダのディティール。もう張り切っちゃって。あんな先っぽやこーんな奥まで」
「繊維ぃ! 今夜からこの抱き枕を使ってくれ!」
ばたーん、と勢いよくドアを開けた赤銅西洋竜人の手には、商品サンプルとおぼしき抱き枕プリント。
「繊維にはオレのだっきまっくらっ、オレには繊維のだっきまっくらっ♪ ほら、ココなんかすっごくリアルで……繊維? どうした?」
俯いてワナワナ震える黒山羊。怒るのか恥ずかしがるのか、どちらにせよ、次の禅裸のセリフは平謝りだろう。