水乞い祭り〜絡み〜冬風 狐作
「それでは、服を脱いでもらおうかしら。」
 そう先代は沙耶に命じた。沙耶は先程の事があってか何も口に挟む事無く、素直に従ってその白い着物の帯を解いていくがその手付きは緩慢で遅い。見ているだけでじれったくなる様なものであった。彼女にしてみれば決してそれは、抗議や抵抗と言った意思を示した事による物ではなくただ単に疲れ果てただけ、何をするのにも無気力に陥りかけている事による物だったのだ。そしてそれは先代には曲解して伝わっており、先代は間も無く限界へと達した。
「あなた、本当やる気が無い様ね。」
「いえ、その様な事はありません・・・。」
 先代の声は軽く震えていた、まだ懲りていないのかと言う諦めと怒りの感情が入り混じっている事は否が応にも感じられ、彼女の中の遅れの原因となっていた真の感情、諦めと怯えを増幅させるだけの効果しかなかった。
「そうかしらねぇ?とても、そうは見えないわよ・・・。いいわ、そんな態度を取るのならこちらにも考えがあります。」
「で、ですから・・・。」
「黙りなさい。」
 誤解を解こうとした沙耶の行動は事態を悪化させたに過ぎなかった。恐らくこれからしばらくは何も言っても無駄であろうと悟った彼女は、すっかり口を閉じて顔を俯き加減に下に向けると着物を脱ぐ作業を再開しようとした瞬間だった。彼女を襲う強い刺激、一瞬感じる息苦しさ・・・だがそれは先程と違って一瞬に過ぎず今度は背筋を電撃が走り、思わず猫背になっていた沙耶は反射的に背筋をピッとわずかな歪みも無く伸ばす。
"な・・・何なのよ・・・。"
 苦しくなるほどまで背筋を伸ばしている間、彼女は幾度と無くその言葉を頭の中にて反芻した。しかしそれはあくまでも前座でありまだ本番ではなかった。疑問に思っている内に何かが自分の中に入り込んでくるのを言うなればゲートを無理矢理押し退けてなだれ込んでくる群衆、その様な感じに何かが沙耶の中へと入れ掛けているのを感じた。そして襲う経験の無い強い不快感、再び呼吸が荒くなり息苦しくなる中彼女はその侵入者を外へ押し返そうと必死で抵抗したが、それの正体も知る事を出来ずに押し切られ沙耶の意識は侵入してきた何者かによって隅へと押しやられ事実上封印されてしまったのである。
「うん、決着が着いたみたいね。本当はこんな事はしたくないのだけれど、あなたが抵抗するからしたの。時間も余り無いし・・・まぁ自業自得ね、取り敢えず残されたわずかな場所から変化を堪能なさいな・・・ふふふふ・・・。」
 まるで蝋人形の様に身動き一つせずその場で固まってしまった沙耶に対し、先代は愉快そうに言い放った。
"自業自得なんて・・・何をしたのよ、私に何をしたのです?"
 体が意のままに動かせず言葉すら発せない事に気が付いた沙耶の意識がそう思うと、見下すような顔をして今度は次のように言われた。
「あなたにはね・・・まぁ聞いていると思うけど、私の魂の一部を送り込んだの。だから体は違うとは言え今のあなたは私の一部、私の思った事命じた事には素直に従うわよ。事が終わり次第も元に戻してあげるけど、今はまぁじっくりと見ていなさいね・・・では続きを。」
 すると突然、それまではどの様に思っても動かなかった体が動き出したではないか。沙耶の意識ははっきりとそれが侵入者、つまり先代の魂の一部によって自分の占有物である筈の体が使われているのだと認識した。悔しくて出来るものならこの社から飛び出し、よりしろとしての使命を今後非難されても良いから投げ出したいと思った。だが思う以外には何も出来ず、体を乗っ取られた挙句に自らのプライドを粉々に打ち砕かれたまま事の推移を見守る他はなかったのだった。

 先代の魂の一部に乗っ取られた体はそれまでの沙耶自身による動きが何だったのかと思えるほど、手際良く着物を脱ぎ捨てて全くの全裸となった。その間に先代もまた着物を脱ぎ捨ててその異形の体を、全身を蛇の鱗に覆われ蛇顔と蛇尾を持つその姿を露わにした。その姿はこの薄暗い社の中で白く輝きある意味神々しくもあったが、どうも目には馴染まなかった。だがそれはあくまでも沙耶の思う事、乗っ取られた体は言われるがままに応じて先代へと近付き唇を重ねて舌を絡ます。双方の口腔の中にて互いの舌が、先代の先が二股に分かれて細目の蛇舌と人の沙耶の舌が絡み合いしばしそれに耽る。
 そして離されると先代はそのまま沙耶の体の口元からすすっと首筋を経由し、体の中心線をなぞる様に舌を走らせて股間の割目へと至る。その走る感覚はあの先程の冷やしてあげると言われて感じた筆の様な感覚そのものであった。割目へと達すると先代は決して割れ目の中には舌を入れようとはせず、焦らす様にその周辺の敏感な箇所を刺激し回る。自ら己の魂の一部が入った体を焦らしているのだから間接的にかなり興奮している先代と共に、体の主導権を奪われているとは言え受ける感覚はそのままの沙耶の意識もまた興奮していた。
 そもそもまだうら若い10代前半の彼女にとってこの刺激は初めて、つまり性的な刺激は初めてのものであった。友達との話の中で自慰等の知識は多少なりとも持ってはいたが、実際にそれがどの様な物なのかはやった事が無いので確かめようが無く、何時かは知りたいと言う思いを抱きながらも実行に移す機会無くここまで至ったと言う事である。
 そんな彼女にいきなり加えられる焦らし、少しでも経験のある者ならば耐えられただろうが結局の所沙耶にとっては無理な話に他ならず、間も無くして彼女はイった、生涯初めて彼女はイってしまったのであった。その感覚は間接的とは言えかなり衝撃的な物であり、未知の話の中の物に過ぎなかった感触にしばらくその意識は動揺を抑える事が出来ずにいた。
"中々感じたようね・・・初物はこれだからいいのよ・・・まぁあとしばらくこのままにしておくとしましょう・・・。"
 当然、その動揺は接している魂の一部を介して沙耶の意識から先代の意識へと伝わっていた。先代にとっては取るに足らない刺激で少し興奮し、上気こそしたもののまだまだであり、そんな彼女にとって沙耶の初々しい反応は見ているだけで何とも楽しい物、一種の娯楽だった。そしてそれによって一時的に満足すると共に更なる刺激によって徹底的に反応させたいとの想いが募り、すぐに姿勢を取り直すと今度は臍に舌を走らせた。
「あっあぁぁぁ・・・!?」
 その刺激に対して言葉にならない声を漏らし呻く沙耶、中々の好感触を得たと取った先代は今一度臍に加えた後、臍は指に任せて残った片手にて右の乳房を揉み下し舌にて左の乳首を舐め回しては甘噛みをする等、とにかくやりたい放題に先代は沙耶を弄り回した。
"次は・・・何をしようかしら、しっかりともてなさないとね・・・久し振りの来客なのですもの・・・。"
 臍、乳房、乳首、首筋・・・沙耶の全身のありとあらゆる所を先代は徹底的に"おもてなし"た。意思を封じ込めてしまっているので予想よりも喘ぎ声等が聞けないのは残念だったが、その反面当人の意識が分からないので相手の様子を気遣う必要がなく好きなだけ弄り回せると言うメリットも大きかった。
 そして先代が楽しみ続ける一方、その意思を露わにする事の出来ない沙耶は意識の片隅に封じ込められた中で、次から次へと緩急無く激しく加えられる刺激に当初こそ抗していたが、初めて絶頂に達して以来その動きも弱くなって今ではすっかりそれに埋没してある意味狂いの境地に入りつつあった。もう今の彼女には自尊心や羞恥心、抵抗と言った感情は微塵も無くただただ次なる人外の者がもたらす未知で人外の刺激と快感を求め反応する肉人形と化して狂いかけている。
 意識だけの状態、つまり体と言う鎧を外した素の状態でこうもなってしまうのだから、仮に肉体を持っていたらどうなるのか?今はまだ先代の魂の一部と言う一種の鎧の中にて感じているのだから、これが無くなり、体の主導権が彼女へと返還されたらどうなるのか。それを予測する事は余りにも容易く、その中でも絶対確実と言えるのは先代が望むとおりの姿になると言う事。そしてそれこそが先代の狙いでもあった、最も強い刺激と快感を味わうその時にいきなり入れてある己の魂の一部を抜いて元通りにする・・・その時はもう間も無くに迫りつつあった。

 先代があれだけ密着させていた体を離した時、もう沙耶の全身はある一箇所を除いて余す所無く先代によって汚されていた。その全身は唾液と汗とでてかてかとニスの様に反射しており、先代とは別の意味で輝いている。
"さて・・・そろそろ時間だわね。もう終わりか、一年なんて呆気無いものね・・・ありがとうございました、水神様。それでは・・・。"
 これまでとは全く違う様相で瞠目してその様に思った先代は目を開くとそっと股間に手を当てた。そして触れる硬い感触、硬いしなる棒、それもまた全てを鱗に覆われており先端の穴からは静かに液が漏れている・・・先走り、そうそれはペニス、2本のペニスがそこにて起立している。感慨深げにそれをしばし食い入る様に見詰めた彼女は一本ずつ強く握ると、息を吐いて目の前の床の上に仰向けになって寝転がっている沙耶へと視線を移した。そして、一旦屈みこんで姿勢をうつ伏せにすると桃尻の間から露わになる2つの穴、ワギナとアナルへ舌を走らせて具合を確かめる。
 数時間に渡る他の部位への刺激は直接は触れていないその場所を、間接的にすっかり解き解しており2つの穴は良い具合に弛緩していた。蛇顔ながらニッと笑った先代は自らも横になって体を少し曲げてそのまま2つのペニスを上手くアナルの口へあわせると、すぐさま沙耶の中に入れていた魂を己へ戻して元通りになった事に沙耶が気が付く間も無くペニスを突き刺した。
 その途端、部屋の中に沙耶の悲鳴、いや喘ぎ声がこだまする。突然の事の連続で驚いたのだろう、急に先代の魂が消えたと思ったらいきなりペニスを挿されたのだから。それもワギナに加えてアナルにまで入れられたのだから、これで驚かずに平静としている方がどうかしている。そしてその反応に再び微笑んだ先代は後は何も気にせずに、一気にペニスを押し込んだ。処女膜は鱗の生えたペニスの前には一瞬にして無残にも押し破られ、破瓜の血が滲み出て沙耶は顔を激痛に歪ませた。
 その間に子宮口へと達し、そこで留まらずに奥へと先端を通過していたペニスを、先代は腰を自ら動かしてグラインドさせる。その姿は獲物を捕らえた肉食獣の様であり、沙耶に覆い被さった先代はとにかく腰を振り続けた。時には緩急を付けて落ち着かせる事もあったが、基本的には荒々しい破壊的な動きだった。余りの事に幾ら解されているからとは言え未開発のアナルとワギナは擦り切れ、血が滲み出る始末だった。だが血の匂いによって一層興奮したのか構う事無く先代は腰を振り続け、そして射精した。
 射精は盛大な物だった、5分余りは続いただろう。中に注がれ出口はペニスによって栓がなされていると言うのに、仄かに匂いが漂い沙耶の腹は妊婦の如く膨れ上がっている。音も響いていた、子宮壁と直腸に精液が叩き付けられ攪拌される音が鈍く響く中、先代の姿に変化が起きつつあった。全身を覆っていた白い鱗が解ける様に同化して行き、やがてそれは人の皮膚となって白から肌色へと染まり尻尾も尾てい骨の辺りへと収束されて消えていく。
 顔も同様に蛇の平べったい顔から次第に膨らんで歪み、目口鼻と言った主要な部位はそれぞれバランスが取れる位置へと異動し定着する。耳が現れる頃にはすっかり人の少女の顔がそこにあった。そして傍から見るとそこにあるのは蛇人と少女の重なり合った姿では無く、似通った体型の少女が2人全裸で重なり合って寝転がっている姿だけがあった。
 そしてその2人の内の上に乗っている少女こそあの先程まで先代として、蛇人であった者の真の姿である。しばらく死んだ様に目を閉じて寝転がっていた彼女は、ようやく目を開けると顔を赤らめて立ち上がり急いで脇に畳んでおいた着物。それは沙耶の着てきた着物を身に纏うと足早に何度か振り返って社の出口まで行き、扉を閉めて外へと出て行った。彼女の役割は終わったのである、先代の昨年のよりしろとしての役目は沙耶に精を放った事によって終わりを迎えたのだった。
 あの少女が朝日の中小走りに掛けて行く音が遠ざかりやがて消えて行く中、ただ沙耶は瞳を閉じて眠り続けていた。その内に日が昇り社の中へと障子越しに日が差し込む頃になると、腹の膨らみが静かに縮小して行くと共にワギナとアナルからは触手の様な物が伸びて絡み合い、球体を形作って膜となり殻となってその中へと沙耶の姿を包み隠して行く。そして数分も立たぬ内に1つの大きな卵がそこに鎮座していた。そしてその卵は次の新月の夜、嵐の中にて覚醒するその時まで静かにその姿であり続けるのであった。


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