Interlude―眠れない夜に

Interlude―眠れない夜に-2

「ん。んむ」

 どうも暑苦しいと思って目を覚ますと、風月がひしと俺を頑なに捕まえていた。息苦しさに起こさないようにそっと腕を解こうとすると、その力はさらに強くなった。

「…すまん。起こしちまったか」
「くるしい。くるしいって」

 寝ぼけ眼で風月を見つめると、風月は小さな子供のような潤んだ目で俺を見つめていた。

「隆星はここにいるよな。オレが抱きしめてんの、ほんとに隆星だよな」
「んあう、そうだっての。どうしたんだよ一体」

 すがるように聞いてくるからうっとうしげに訊いてやると、目の前の虎は今さら恥ずかしそうに目を背けた。

「笑わねえか?」
「早く言えよ。俺は眠いんだよ」
「るせえ。…隆星がいなくなる夢、見た」

 あまりにも子供じみた答えだったから、笑う気も起きなかった。ただ、その感情に覚えがないわけでは、なかった。

「…バッカみてえ」
「な、なんだよ!オレ本気で寂しかったんだぜっ」

 静寂は、あるとき突然に忍び寄ってくる。目の前まで来たそれは無数の刃で俺たちを切り捨て、二度と起き上がれなくさせようとする。それに対抗して俺は幾度となく自分で立ち上がり、時に俺たちは支え合って身を寄せ、それを切り抜けてきた。
 だが、誰かがいても、それに打ち勝てなくなりそうな時がある。そんな時は、それでいい。それでいいのだ。

「…ずっといるから。俺じゃあ心細いかもしれないけど、でもずっと、側にいる。側にいたい」

 恥ずかしいのを承知でぐずる虎の鼻に口づけをしてやると、無言のままで風月は腕の力を緩めた。そのあと背中に回され直されたその腕は、もう震えてはいなかった。

「お前、よくそんな恥ずかしいこと堂々と言えるよな」
「な!せっかく人が心配してやってんのにお前はッ」
「わぁってるよ。…ありがとうな」
「んぐ…。おう」

 体を寄せ合いながら、二度、三度と唇を重ねる。首に腕をまわして、俺たちは二人の時間を貪った。

「久しぶりにすっか。わりい、立ってきちまった」
「…ったく。明日遅刻しても知らねえからな」

 服を捲りあげ、身体に次々とキスを落とされる。鋭敏になった身体は時折ぴくりと跳ねて、次の行為を求め続けた。

「学校行ってから寝りゃいいだけだ。知ったこっちゃねえさ」

 あっという間に服を剥がれ、するりとごつごつした身体が間に割り込まれる。怒張した風月のものは、五分と待たずに俺の中へ入り込んだ。

「ッあ…ん!んう、風月ッ」
「っは、はあっ…隆星っ、隆星っ」

 快感が高ぶるとともに、いろいろな感情がそぎ落とされてゆく。
最後に残ったのは、好き、という気持ちだけだった。

「っあ…!イくっ!イくぜっ…!」
「がッ!あ、熱ぃ…ッ」

 漏れぬように声を殺して、風月は肥大させた肉棒から熱い精を注ぎ込む。風月が身体がびくびくと脈打つのを感じながら、俺は徐々に意識を手放した。

 風月の感じた寂しさを吸い取るように俺は息を吸って、それを共有する。少し薄まった寂しさは、十分二人の中で消化することができた。






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