「雨だな」
「…雨じゃのう」
「元」
「むう?」
「くっついて、いいか」
「なんじゃ。突然」
「いや、別に。…静かだと少し、怖い」
「珍しいのう。最近は泣き言も少なくなったと思っておったのに」
「いいだろ、たまには」
「まあ、良いがの。ほら、来い」
「ああ。あったかいな、元」
「…うむ。暖かい」
「ッは…くうッ!」
「今日は一段と敏感じゃのう、ん?」
「うッ…るさいッ、んがッ!?」
食み合うようなキスを浴びせられながら、下では元の太く膨れ上がったそれが普段より数段強く腰に打ちつけられている。それを受け入れる俺の身体はいつにも増して感度を上げていて、痺れるような快感を脳に受け続けていた。
それでよかった。今日は、それだけ考えていたかった。
「ぐむうッ…出すぞッ!」
「んふあッ、くれッ!中にくれッ!」
俺の肩に顔をうずめ、くぐもった唸り声をあげて元は果てる。きつく俺を抱き締めて、布団に溢れそうなほどの熱い精を流し込んだ後、俺の横に身体を投げ出した。
「いつもの晶らしくないのう。何か、良からぬことでも?」
「別に。いつも通りだよ」
「…。何年過ごしておると思うておるのじゃ」
腕枕をしている元の瞳が俺を射抜く。よほどのことがない限り、こんなふうに俺に目を向けることはない。いつの間にか震えていた手を掴まれ、それは元の温かく厚い胸に当てられた。
「無理に話せとは言わぬ。じゃが震える主を放っておくほど、薄情ではないつもりじゃ」
「…よく、わからない。でも、なんだか寂しくなった」
部屋の外で降り続いている雨のせいかもしれないし、もうすぐ冬がやってくるからかもしれない。だが、この感覚を俺は知っている。
ふと押し寄せる波がすっと引いた時に一瞬感じる、焦りにも似た孤独。全ての扉が閉じていって、声のない叫び声をあげて、それでもどうしようもない、ただ深い、黒い闇。
「カミサマとしてはその願いを叶えられぬ。じゃが」
身体を引き寄せられて、強く強く抱きしめられた。互いの心臓の心臓の音が聞こえるほどに密着した布団の中で、俺は額にひとつキスをもらった。
「一人のヒトとしてなら、儂は主を何度でも抱きしめてやれる」
俺は無言で元の胸に頭をうずめる。それ以上、言葉はいらなかった。