ふと、空を見上げると白い雲の中に一筋の太陽の光りに反射する飛行物体が見える。
最初は、友軍が飛行訓練をしているのだろう。そう思ったが、違った。
ウゥーッ!!ウゥーーン!!
「敵襲ー!敵襲ー!!」
突然、空襲警報を伝えるサイレンと共に見張り台にいた兵士が叫ぶ。
すぐさま、周りにいた兵士がそれぞれの持ち場である地対空機関銃の銃座に走る。
だが、時は既に遅かった・・・
ドッ!ドドドドドッ!!!
高速で飛行してきた戦闘機が、垂直落下で一気に高度を下げ地面すれすれで機首を持ち上げ
低空飛行のまま機銃掃射し辺りを滅茶苦茶に破壊し再び上空へと舞い上がる。
「ぐあぁーっ!!」
周りから、助けを求める声。仲間の苦痛に叫ぶ声が聞こえてくる。
上空を見ると、攻撃を仕掛けてきた戦闘機の姿は既になく。いつもの見慣れた青空が広がっていた。
その後、友恵さんと共に負傷者の搬送を手伝い。復旧作業に追われた。
その夜、龍桜・特別攻撃隊の隊員は全員格納庫へと集められた。
「諸君、今朝の復旧作業及び負傷者救出はご苦労だった。まずは、戦死者に黙祷をささげよう」
「戦死者に、黙祷!」
目を閉じ、今朝の奇襲で戦死した兵士・民間人・整備兵に黙祷を捧げる。
心の中で、(待っていろ お前達の敵は必ず取ってやる。)と誓いながら・・・
「諸君、いよいよ我々。龍桜の出撃日が決定になった。明日早朝、敵艦隊に向け奇襲作戦を開始する。
今夜は最後の日となろう。全員、部屋に戻ってゆっくり休め。以上!解散!!」
格納庫を出て、兵寮へと行くと入り口前で一人の雌龍人が佇んでいた。
その雌龍人に駆け寄り、直前で立ち止まり頭を下げる。
「龍夜・・・?」
「友恵さん・・・俺・・・、明日出撃します・・・」
「・・・そう・・・。じゃ、晩御飯にしましょ」
正直、泣き崩れそうな気持ちになる。でも、出撃前にそんな顔を見せたくない。
最後くらい、笑って出撃しよう。
兵寮の自室に戻り、いつもご飯を食べていた居間のテーブルに座る。
カレーの匂いが鼻腔を突く。前に食べたカレーは無くなったはず、何処から入手したのだろう?
「さっ、お食べ」
「友恵さん・・・このカレーは?」
「また、貰ったのよ。気にせずにお食べ」
友恵さんの優しさと笑顔が眩しい。俺は、気を紛らすために一気にカレーを食べ洗顔所へと足を進ませた
鏡に映った自分の顔を見ると、何処か悲しそうな顔をしている。こんな顔、友恵さんに見せたくない。
何とか、無理に笑顔を作ろうとするが感情が先に出てしまい。中々上手く行かない。
「龍夜・・・」
「友恵さん・・・?」
後方から、友恵さんの声が聞こえてくる。振り向くと、友恵さんが寝巻き姿で立っていた。
寝る前に顔でも洗うのだろうか?俺が洗面台から離れ、友恵さんの傍を通り過ぎようとした瞬間
「彼方が、私を母さんと呼んでくれる日は二度と来なかったわね・・・。血が繋がっていなくても、
私は彼方を息子と思い続けているわ」
「あ・・あああ・・・」
その言葉を聴いた瞬間。何かが切れた。何かが俺の中で音を立て、ぶちきれた。
気付いたら、俺は涙を流しながら友恵さんの胸に顔を埋めていた。
「龍夜・・・。私の可愛い・・・息子・・・」
そんな俺を友恵さんは、暖かい両手で抱きしめながら頭を撫でてくれた。
留まる事の無い涙と感情に、俺は声を上げながら泣き。友恵さんに抱きついていた。
「友恵さん・・・。いや、母さん・・・」
その後、寝室に戻ると友恵さんがいきなり俺を抱き上げ膝の上に乗せ抱きしめてきた。
突然の事と自分が持ち上げられた事に驚きながらも、友恵さんに抱きつきながら目を閉じた。
今の姿勢は、俺が股を開い状態で友恵さんの膝の上に向かい合わせで座っている。
姿勢的には少々恥かしいが、友恵さんが優しく撫でてくれるのと少々甘えたい気持ちがあったため
素直に身を預けた。
「よく、子供が甘えたがった時にこうやって抱きしめてあげていたわ・・・」
友恵さんが背中を撫でる度に、撫でられたところから暖かい何かが流れ込んでくるような感じがした。
ふと、時計を見る。普通、楽しい時ほど時間は早く過ぎるものなのに今日は何故か時間の流れが
遅く感じた。時は、待ってくれないと言うが今日は特別に待ってくれるのだろうか
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