居間へ入ると、既に友恵さんが食事の準備をしていた。部屋の真ん中に置かれた
丸い木製のテーブルの上には、白米の盛られた皿と木製のスプーンが置かれていた。
「さっ、ご飯にしましょうか」
俺が座ると同時に、友恵さんがテーブルの上に置かれていた皿を手に取りカレーを盛り
再びテーブルの上に置いた。食欲をそそるカレーの匂いが鼻腔を強く突き食欲を誘う。
任務後で、腹も空いていた為か直ぐに食べ終え直ぐに眠気が襲ってきた。食器を片付け
寝室へとむかい布団の上に横になり、天井を見つめる。天井の使用されている木材は、
弾薬箱などの軍隊で使用して要らなくなった木材なため所々色々な文字が書かれている。
「んぅ・・・ん・・・」
軍服を脱ごうとしたが、疲れで腕が重く感じそのまま睡魔に身を任せ意識が朦朧とし始める。
ジャー・・・
水の流れ出る音が聞こえてくる。たぶん、友恵さんが食器を洗っているのだろう。
「うっ・・・うっうっ・・・」
友恵さんの啜り泣く声が聞こえてくる。泣いている理由は分からないが、
その泣く声が俺の心を強く締め付ける。俺は、目を強く瞑り早く寝てしまおうと思った。
でも、心に響く泣き声に心が締め付けられ中々眠りにつけない。
・・・・・
・・・・
・・・
・・

どれぐらい時間が過ぎただろうか、窓の外は既に暗く。居間の明かりも消え静まり返っていた。
「すぅー・・・すぅー・・・」
ふと隣を見ると、友恵さんが布団の上で寝息を立てていた。余程疲れていたのだろうか、布団もかけずに
敷布団の上で寝息を立てていた。俺は、そっと、布団をかけ窓の外に目をやった。
窓の外は、暗く綺麗な月が顔を覗かせていた。後、何回。こんな月が見れるだろうか・・・。
そう思った瞬間、急に涙が零れた。なんで、戦争なんだろう。何で、俺達は戦わなきゃいけなんだろう。
何故・・・。頭に、疑問が浮かび上がっては消えていく。
「龍・・夜・・・」
「ん?友恵さん?なんだ、寝言か・・・」
寝ながらも、自分の名前を寝言で呼んでくれる友恵さんに対し俺は苦笑いした。
俺は、愛する人。大切な人の未来を守るために散りに行くよ・・・。
次の日、早朝から龍桜の隊員が全員格納庫へと呼び集められた。
どうやら、出撃の時は近いらしい・・・。
「諸君。ついに、龍桜特別攻撃機が完成した」
龍桜特別攻撃機、龍桜特別攻撃隊が使用する特別攻撃兵器である。
詳細は明かされていなかったが、どうやら完成の時を向えお披露目になるようだ。
バサァッ!!
整備兵が、白い布に包まれたそれを開放した。白い布に包まれていたのは、曲面を描いた純白の機体。
そして、戦闘機でも切り落とせそうなほどの大きな剣。そして、ベルトリンク式の自動機関銃。
全体の形状は、龍人そのものだった。
「諸君、これが我が部隊の兵器 龍桜特別攻撃機だ。形状は、龍人を意識し背面に設けられた
推進器により上空を素早く移動する事が可能だ。機体は、曲面を描いているため風の抵抗も少なく
多少だが弾丸をそらす事も可能だ」
その後、操作方法・戦闘方法などの説明を受け解散となった。途中、狼獣人の整備兵にまだ蕾の桜の一枝を
渡された。整備兵の意図は分からないが、俺はそれを受け取り軍服の胸ポケットへと差し込んだ。
格納庫の外へと出ると、周囲の桜の木々の枝には蕾が所々についていた。もう直ぐ桜も咲くのだろう。
どうせ出撃して死んでしまうなら、せめて桜が咲き散る頃に・・・。桜の様に美しく立派に散りたい・・・
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