ここは、何処にでもありふれた村の神社の参道。参道の寮端に植えられた桜の木が、
綺麗な桜の花を咲かせ風に吹かれ花弁を散らせていた。
ザザッ・・・ザザッ・・・
その参道の真ん中で、一人の子供の狼獣人が箒を片手に桜の花弁を掃除していた。
「ふぅ、もう少しで終わるかな」
長時間掃除をしていたのだろうか、子供の近くには桜の花弁が山を成していた。
ザザッ・・ザザッ・・ザザッ
作業の終わりが見えてきたためか、子供の動きは早さを増していく。
コツ・・コツ・・
箒の掃く音と風の音だけが響いていた参道に、石の地面を叩く靴音が響く。
御宮から、お盆を持った一人の雌龍人の巫女が参道を歩いてくる。
「獣冶君。お疲れさま、一服どう?」
「あ、里恵さん」
獣冶と呼ばれた子供は、箒の動きを止め自分より身長の高い龍人の顔を見上げた。
里恵と呼ばれた雌龍人は、麦茶の入ったコップが乗せられているお盆を近くの
売店の前のベンチへと置き腰掛ける。
「丁度、掃除も終わるところだったから休憩しようかな」
売店小屋の壁に箒を立てかけ、雌龍人の隣に腰掛け自分が掃除した
道を見渡す。
視界に入るものと言えば、見事に花を咲かせる桜の木々と自分が掃除して
作り上げた桜の花弁の山
「そういえば、この中に本が入った箱があるのだけど物置に運ぶのを
手伝ってくれないかしら?」
「うん。手伝うよ」
お盆の上に置かれた麦茶を飲み干し雌龍人と一緒に売店小屋の中へと入る。
小屋の中は、売り物の各種お守りと御札が入った小箱と御神籤の箱が並んでいた。
その一角に、うっすらと埃を被った木箱が置かれていた。
「里恵さん〜この木箱?」
「ええ、重いから二人で運びましょ」
「一人で大丈夫だよ〜。うわぁっ!」
ドタ!バタバタバタ!!
獣冶が木箱を一人で持ち上げ一歩踏み出そうとした瞬間、足元に落ちていた
桜の花弁に足を滑らせ木箱を放り投げ転ぶ形となり内容物をばら撒く。
「だ!獣冶君 大丈夫?」
「だ・・・大丈夫・・・。里恵さん、ごめんなさい・・・」
「大丈夫よ。よかった、怪我が無くて」
ひゅうぅ・・・
突然、隙間風が吹き獣冶と里恵と獣冶の前に一枚の写真をヒラヒラと落ちる。
写真には、4人の龍人と一人の狼獣人が写っていた。
「何だろう、この写真。この人達、軍服着てるよ〜」
「きっと戦時中の写真ね。神主に聞いてみたら、分かるんじゃないかしら」
「そうだね。せっかくだし、聞いてみようよ」
片付けるはずだった本を雑に木箱に戻し、小屋を飛び出し神主が居る
物置へと駆け足で向う。
「お父さん〜。この写真見て〜」
「ん?どうした。獣冶」
「これは・・・!」
父親らしき獣人が、写真を受け取った瞬間。目を見開き写真を持つ手を振るわせた。
そして、目から涙が零れ写真を塗らした。
「と・・・父さん?」
「あれは・・・今日のように・・・桜が咲誇りよく晴れた日だった・・・」


歴史は語る・・・真実を
龍桜・特別攻撃隊
桜の如く散りぬ

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