……あれから2週間、アイツは医者も舌を巻くほどの驚異的な回復力を見せ予定よりも2週間も早く退院する事になった。
俺は病院の外で音楽を聴きながらアイツが出てくるのを待つ。
病院の中は薬品の匂いがして好き好んで入っていこうとは思わない。

ちょうどアルバムの最後の曲が流れ終え次のアルバムのイントロが流れだしたそのとき、いつもの様に浴衣を着こなす虎獣人ー榊さんが晴れやかな顔をして現れた。
「やっ氷上! わざわざ迎えに来てくれたの?」
俺の顔を見るやすぐに手を振って駆け寄ってくる。
俺は自分の尻尾をこれでもかと振るの必死で押さえ何とか平静を装いながらも答える。
「た、たまたま近くを通りかかっただけで…っ! それに…ちょ、ちょっとは心配だったから…」
そう言って思わず赤くなる俺の頬を見て
「心配するだなんてうれしいこと言ってくれるじゃないか♪ それにほっぺをこ〜んなに赤くして〜♪」
と言いながら俺に覆いかぶさってくる。
今度は顔全体が真っ赤になる番だった。
「は、放して下さいよ!人だって見てるし…!!」
「ちぇ〜、まぁいっか♪ 早く帰ろ?」
渋々俺から放れるとこれまたいつものごとくマイペースに自分だけ歩き出す。
まぁもう慣れたがな…
軽く溜息をつきながらも、俺も「日和見荘」へと歩を進めるのだった………






「着いた〜!」
病院から徒歩20分、俺たちの住処である「日和見荘」に辿り着いた。
榊さんにしてみれば2週間ぶりなんだから思わず叫びたくなる気持ちもわからなくはないが…せめてもう少しトーンを落としてくれ。
「これじゃ近所に丸聞こえじゃないか…」
思わず心の声を口に出し、肩をすくめる俺。
「さぁ氷上! 退院祝いの酒盛りするぞ!! 俺の部屋で、今から!!!」
「今からぁ!?!?」
なるほど…だからこんなに酒を買ったわけか…
実は帰り道にあるディスカウントストアで俺たちの両手一杯の酒を買って来ていたのである。
「多すぎる、とは思ったんだよなぁ…」
そう言って俺の肩が再び下がったのは言うまでもないだろう。
そんな思いは露知らず、榊さんはすでに階段を登っているところだった…



榊さんの部屋は珍しく綺麗に片付けられていた。
それは当然で、何を隠そうこの俺が入院中に片付けておいたんだからな。
まったく、あのAVの山を片付けるためにどれ程の収納スペースが犠牲になった事か…
榊さんはと言うと早速買ってきたビールに手を伸ばし
「氷上ぃ〜早く飲もうよ〜」
などとほざいている。
まったく誰が片付けてやったと思ってるんだ…
苦笑しながらも俺も酒には目のない方なのでこの場は何も言わない事にした。
俺もビールの缶を取り、榊さんの方に寄っていく。
榊さんはそれを見て満面の笑みを浮かべ
「かんぱぁ〜い!!!!」
と高らかに音頭を取った。
こうして男二人の真昼間からの宴会が幕を開けるのだった…



「あぁ〜やっぱ酒は最高っすね〜!! さかきすぁ〜ん」
酒宴が開始してから既に6時間、外はほとんど闇に包まれ、笊である俺もほろ酔い加減に包まれていた。
榊さんはビールを持った手を俺の肩に回して言う。
「おぉ〜最高だよなぁ〜」
どうやらこちらも出来上がっているらしい。
そのまま俺の肩に回している手を自らの顔に持って行った。
必然的に俺の顔が榊さんに近づく。
手に持ったビールをぐいっと飲み、俺の方を向く。
「なぁ〜氷上ぃ〜俺達はさぁ〜付き合ってるんだろぉ?」
「…へ?」
いきなりの質問に一気に俺の思考が現実に引き戻される。
「だったらさぁ〜ヤろっか?」
そう言うや否や榊さんは俺にキスしてきた。
ここで完全に俺の思考回路が働き出し俺は唇を離す。
「ちょ、ちょ、ちょ榊さん!? 確かに付き合うって言っt」
俺が言葉を発しきらないうちに再び榊さんがキスをしてくる。
今度のキスは一度目とは違い舌まで入れる、いわゆるディープキスだった。
猫科特有のざらついた舌が俺の舌に絡まりなんともいえない快感をもたらす。
その快感がもっと欲しくて自分からも積極的に舌を絡める。
いつしか部屋には互いの口腔を貪る淫らな音のみが響く。
「ぷはぁ…」
どちらかともなく口を離し、互いに見詰め合う。
榊さんの瞳の奥には決意に満ちた光を見た気がする。
「大丈夫だよ、氷上…」
俺の瞳に微かな怯えの色を見たのか、榊さんが優しく呟く。
榊さんは俺の服の下に空いた方の手を這わせ俺の肉体を優しく撫でる。
「ひゃぁあぁ…」
その手が俺の胸の突起を捉え、思わず声を出してしまう。
今度は榊さんの舌が俺の首筋をゆっくりと舐める。
一段と声を出す俺。
「ヤバイ、気持ち良いぃ…」
快感に犯される思考の中にはこの行為を中断するという選択肢は最早ない。
肉棒もそろそろ限界に達しようとしている。
榊さんはそれらの行為を行いながらいつの間にビールを置いたのか、先ほどまで俺の肩に回していた方の腕を下げ俺の股間をもみしごく。
「んあぁぁ!!!」
3部位からの刺激に耐え切れず、俺はパンツの中で射精してしまった。
「あらら〜氷上ぃもうイっちゃったの? お漏らししちゃ駄目じゃな〜い♪」
愉快そうに言うと榊さんは愛撫を止め俺の下半身ーパンツ、下着まで全て一気に脱がす。
外気に晒される俺の肉棒。
射精したばかりだというのに未だに硬さを失わず聳え立っている。
「うわぁ〜すごいね氷上! 出したばかりなのにびんびんじゃん!!!」
あまりの恥ずかしさに畳に寝転び顔を背ける俺…その顔は赤く染まっている。
「そうやって照れてるところがかわいいんだよなぁ…」
榊さんはそう言って帯を解き浴衣を脱ぐ。
仕事で来たえられた無駄のない筋肉質の体が俺の前に曝け出される。
「榊さんこそびんびんじゃないっすか…」
大きさ、太さ共に俺より立派な肉棒からは透明な汁が少し漏れ出していた。
「しょうがないじゃん、氷上がこんなにかわいいからだよ…」
そう言って榊さんは俺のシャツを脱がせ、俺の上に覆いかぶさり向き合う。
榊さんは俺の裸体に舌を這わせどんどん下の方へと降りていく。
「あぁ…あぁぁ………」
俺の口からは微かな喘ぎ声が漏れ出す。
そしてとうとう予想していたとおりに榊さんの舌が俺の肉棒に達した。
一度舌を離し精液とあふれ出る先走りでぐちょぐちょになった俺の肉棒を食い入るように見つめた後、榊さんは一気に俺の肉棒を咥えた。
「ああああぁぁぁああぁ!!!!!」
あまりの快感に俺はつい声を張り上げてしまった。
しかし榊さんのざらついた舌が俺の亀頭を舐めるたびに俺の体には電流のように快感が駆け巡る。
「さ、榊さん! 俺、俺またぁ!!!」
再び射精感のこみ上げてくる事を榊さんに伝えても榊さんは顔を離そうとせず、寧ろより積極的に舌を肉棒に絡めてくる。
「だぁ…だめぇぇ!! イくうぅぅ!!!」
俺は榊さんの口腔内に思いっきり精を放つ。
榊さんは顔色一つ変えずに放たれる精を全て飲み込んでいく。
本日二度目の射精を終え、その余韻に浸る俺。
榊さんは肉棒から口を離し顔を上げ尋ねる。
「氷上の精液うまかったよ〜ねぇ、気持ちよかった?」
俺はその問に素直に頷く。
「じゃあ今度は俺が気持ち良くなる番ね〜♪」
榊さんはそう言うと自らの指を口に含み、唾液まみれになった指を俺の菊門に当てる。
「まずは一本ね〜」
…ずず…ずぷ…
ゆっくりと体内に進入してくる指。
そこを使うのが初めてなだけに襲ってくる異物感は半端なものではない。
榊さんは萎えている俺の肉棒に刺激を与え少しでも異物感を取り除こうとする。
そのかいあってか大分楽になってきた。
「じゃあ次行くよ〜」
早速二本目が挿入される。
一本目のときに慣れたから異物感はそうはないが今度は痛みが襲ってくる。
榊さんは今度は俺にキスをして全身をリラックスさせようとする。
何とか二本目も挿入する事ができた。
「じゃあ動かしてみよっか♪」
そう言って俺の体内にある指を腸壁を擦るように動かす。
「気持ちいいぃ…」
肉棒を内側から刺激されるような快感の前に俺の理性は完全に崩壊した。
もっと、もっと欲しい…
「さ、さかきさぁん…」
「ん? どうしたの氷上??」
「もっと…、もっとください……」
そこにもう氷上という人格はなく、ただの一匹の淫獣と化した狼がいるのみだった。
「よしよし♪ じゃあ今度は俺と一緒に気持ちよくなろっか?」
その言葉と次に行われるであろう行為に期待し俺の尻尾ははちきれんばかりに宙を振る。
だが榊さんが俺の意に反して体内から指を一気に抜き取った。
「あぁ!!」
その刺激に声をあげる俺。
一方榊さんは俺の腸液てぐちょぐちょになった指を自身のいきり立つ肉棒に塗りつけている。
それを見てこれから行われるであろう行為を迎合する俺がいる。
「さぁそれじゃイってみよっか…」そう言って榊さんは俺の両足を脇に挟み互いの下腹部を密着させる。
榊さんの獣毛が俺の肉棒に擦れただけで喘ぎ声が漏れるほど今の俺は感覚が鋭敏になっていた。
榊さんは自身の肉棒を掴みまだかまだかとひくついている俺の菊門にあてがう。
そのまま勢いよく挿入される榊さんの肉棒。
「あぁああぁあああ!!」
初めての挿入…しかもそれが巨根とあっては叫び声の一つも出るものだろう、何しろ太さが指の比ではないのだ。
「だ、だいじょうぶ? 氷上ぃ…」
思わず心配そうな声を上げる榊さん。
未だに互いの下腹部が密着してないところから考えるとどうやらまだ半分ほどしか入っていないらしい。
「も、もうちょっとゆっくりして…」
痛みを堪えながら呟く。
榊さんは俺の意を汲み俺のナカが解れた頃合を見計らって少しずつ少しづつ挿入を進める。
そうしてゆっくり挿入される事十数分、ようやく俺たちの体が完全に繋がった…
ゆっくりと挿入されたおかげでもう痛みはほとんど感じない。
感じるのは体内にある肉棒の温かさと齎される快感のみだ。
「じゃあ氷上、動くよ…」
ず…ずず…
榊さんがゆっくりと腰を振る。
「…ぅあっ! ああぁ!」
腰が突き出される度に口からは喘ぎ声と涎が止め処無く溢れる。
最高だ…こんなに気持ち良いんだ…
「氷上のナカ、温かくてきゅうきゅう締め付けてくる…」
榊さんもあまりの気持ち良さにどんどん腰を振る速度が速くなりインサートも大きくなる。
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
俺の肉棒からは先走りが溢れ、菊門からは腸液が流れ出し榊さんの獣毛を汚していく。
「ああぁぁあぁああ!!! 榊さん! さかきさん!!!」
快感によがり狂いながら愛しい人の名前を叫ぶ。
「氷上! 氷上!!! ひかみぃ!!!」
呼応する様俺の名前を叫ぶ榊さん。
「さ、さかきさん!!! 駄目だ!おれもぉ…っ!!!」
俺の絶頂が近い事を伝える。
「俺ももう限外だ! 出すぞ!!!」
『ああぁあああああぁ!!!!!!』
雄叫びと共に俺たちは同時に果てた。
俺の肉棒から出された精液は榊さんの腹部と俺の顔を汚し、榊さんは俺のナカに精を出す。
そのまま榊さんは俺に覆いかぶさったままで共に余韻に浸った…

…じゅぽぉ…
俺の体内から肉棒が引き抜かれ、栓を失った精液が畳を汚していく。
榊さんは俺の横に並んで横たわり
「どう? 気持ち良かった?」
などと歯を覗かせながら尋ねてくる。
「………」
俺は沈黙しながらもこくんと首を縦に振る。
「だろうねぇ♪ 氷上のあのよがり様はすごかったなぁ〜♪」
顔から蒸気が出るほど真っ赤に紅潮する。
「俺も初めてだったけど気持ちよかったなぁ♪」
「ちょっと待ってくださいよ!榊さん初めてなのにあんなに的確に性感帯刺激してくるなんて!!!」
「俺だって吃驚♪ 元からそっちの才能あったのかもねぇ〜」
暢気に俺の問に答える榊さん。
やれやれ…、といった風に軽く溜息をつく。
「あとね氷上、俺達は付き合ってるんだから敬語とか止めようよ。俺の事も榊って呼んでいいからさ♪」
「じゃあ今度からそう呼ぶよ………榊」
そう顔を紅潮させて言う俺を榊は自分の方へ抱き寄せる。
「そうやって照れてるところが可愛過ぎだよ〜氷上!!!」
そう言って頬にキスをする榊。
「ねぇ〜氷上ぃ。一個お願いがあるんだけど…」
「ん?」
俺は榊の方へ向き直り尋ねる。
「もう一回ヤろ?」
「はぁあ?」
「だってさぁ〜ライト付けっぱなしだから雰囲気も出ないし…それに俺駅弁も一回やってみたかったんだぁ〜♪」
無邪気な子供の様にすらっと言ってのける。
考えるまでもない…俺の返事は決まってる。
微笑を浮かべ立ち上がってライトを消し、今度は俺が榊の上に圧し掛かる。

俺達の夜はこうして更けていくのだった…




事故編へ

夏へ