孤児の少女
「たべものちょうだい」
俺と目があったキツネの女の子はそう言うと、俺にお願いするように近寄ってきた。
不意に声をかけられてきた俺は一瞬困惑したが、
彼女の顔をじっと見つめた立ち去らずにその場にしゃがみこんだ。
しとしと雨が降り続けるとある肌寒い夜のことだ。
賑やかな街の表通りから1ブロック外れた静かな裏通りを俺が歩いていたとき、
路地の影から虚ろな目でトボトボと歩いている女の子に出会った。
彼女の髪の毛はぼさぼさで伸び放題、身につけているモノも、
およそ服とは言うことの出来ないボロボロの布切れになっていて、靴も履かずに茶色になったむき出しの足が見えていた。
体毛がひどく汚れていてハッキリとは分からなかったが、頭から出ているとがった耳と後ろに垂れている大きな尻尾で、
かろうじてキツネの女の子のようであった。この格好から見てどうやらこの近くを彷徨う孤児なのだろう。
傘を持たずに歩き回ったせいでぐっしょりと濡れた服と体毛から滴が滴り落ちていたが、
彼女は気にせず身体を震わせたままそのまま立ちつくしていた。
「お腹…空いているのか?」
やせ細った身体を見れば一目瞭然であったが、書ける言葉が見つからず、俺はそう尋ねた。
(コクン)
彼女はそう頷くと、ねだるような表情をして、俺の顔を見つめてきた。
背後の垂れた尻尾がユラユラと静かに動き、指をもじもじさせている。
「食べ物って言っても特にコレと言ったモノは…、あ、こんなモノでよかったらあるけれど…。」
鞄の脇に携帯食料を常備していたことを思い出すと、俺は鞄から携帯食料のパックを取り出して彼女に手渡した。
携帯食料を僅かに震える手で受け取った彼女は夢中で包みを破り、そのまま食料に齧り付いた。
余程お腹が空いていたのだろう……
乱暴に包み紙を破ったせいで至る所に包み紙の切れ端が残っていたが、女の子はっそれにかまわず齧り付いていた。
夢中で携帯食料にかぶりつく彼女をみて俺の心は暗い湿った気持ちに包まれた。
どうしてこんな子が、こんな思いをしなくちゃ行けないんだろう…。
俺はため息をつくと、傘を持つ手を伸ばし、彼女の上に差してあげた。
気休めかもしれないけれど彼女にとっては少しはましなはずだ。
よく見ると、ボロボロの服の腕の部分に結びつけられているリボンに辛うじて「クリィ」と書いてあるのが見て取れた。
多分、これが彼女の名前なのだろう。
「美味いか…?」
女の子は答えなかったが、夢中で食べているところを見ると、お腹がすいていた彼女に取ってはご馳走だったに違いない。
あっという間に携帯食料を平らげると、指についた食糧の粉も、一粒も残すまいと夢中で薄汚れた手を舐め続けていた。
やがて、味がしなくなったのか名残惜しそうに手を舐めるのをやめると、再び俺の顔を見つめ、ぺこりと一つお辞儀をした。
どうやらお礼のつもりらしい。
「別に構わないよ、鞄にたまたま入っていた物だったからね。それより、これだけで満足したのかな‥。」
「‥。」
彼女は答えず再び俺の顔を見つめたきた。先ほど出会って俺に食べ物をねだった時と同じような表情をしている。
「その表情は‥まだ‥食べ物欲しいみたいだな。」
「うん‥まだ‥お腹空いてる‥。」
そう言うと、彼女は俺の顔をジッと見つめたまま、腕にくっついてきた。
正直女の子にこんな表情をされると辛いが、持っていたのは先ほどあげた携帯食料が一つだけ。無いモノを出せるはずがない。
飴の一つでも仕舞い忘れていないかポケットや鞄を奥まで引っぺがえして見たモノの、
食べ物はもうそれ以上は何も出てこなかった。
「ごめんね、もう食べ物は無いみたい‥‥。あ、でもちょっと待った、帰るのはまだ早いよっ!」
俺がすまなそうにそう言った途端、彼女は首を落とした状態で背を向け立ち去ろうとしたので俺は慌てて呼び止めた。
あんな姿を見たら、お人好しかもしれないけれど正直放っておけなくなってしまう。
おまけにこのままご飯もろくに食べられないままずぶ濡れで放り出したら、肺炎にかかって倒れるのは目に見えている。
「‥?」
不思議そうに首をかしげる彼女に、俺はその手に傘を差しだし握らせると笑いかけた。
「ちょっと歩くけれど食べ物ならまだあげられるよ、あと雨露を凌げるところもね。」
そう言うと、俺は自分の家に向かって歩き出した。そのすぐ後を、彼女が傘を差したまま着いてくる足音が聞こえてきた。
「ほら、玄関に立ちつくしていないで上がっておいで。あと靴は‥そっか履いていないからこの桶で足を洗って‥そう。
それと服が濡れてるから応急処置でタオルで拭くからじっとしてて。」
自分の家にクリィを連れてきた俺は、とりあえず彼女の水気と汚れを簡単に落とすと、
廊下の先の突き当たりにある部屋にまで連れて行った。
(名前を聞いたところ、やはり肩のリボンに書かれていた通り、クリィと呼ばれていたらしい)
ここは居間と台所を兼ねた部屋で、奥の方に置かれているボックスの中に食料が詰め込まれている。
俺がボックスの蓋を開けると、彼女が目を大きく開いてぎっちり詰まった保存食品を見つめているのが分かった。
「どれが食べたいかな?欲しいのがあったら何でも食べてもいいよ」
俺はそういうと彼女に向かって笑いかけた。ところが、彼女は食料に手を出そうとはせず、じっと見つめている。
「どうしたんだい?食べたいものがありすぎて迷ってるのかな。」
笑いながらそう言ったとき、俺はクリィの動きがどことなくおかしいことに気がついた。
食い入るように食料を見つめ、時折、ちらちらとこちらを伺うように見つめている。
先ほどの様子から見てお腹が空いていないはずはないのに、どれを食べようか考えている様子ではなさそうだ。まさか‥。
「ちょっと奥の部屋を片づけてくるね、その間に食べたいものを決めておくといいよ。」
俺は少し考えた末、クリィに向かってそう話しかけると、その部屋を出て廊下を歩き出した。
2.3歩歩いたところで足を止めて回れ右をすると、俺はソロソロと足を忍ばせて部屋の戸口まで戻って聞き耳を立てた。
すると部屋の中から乾いたプラスチックや、布のこすれる音が部屋から漏れて俺の耳に届いてきた。
そっと戸口から中を伺うと、こちらに背を向けて、近くにあった布鞄に次々と食料を詰め込んでいる彼女の後ろ姿が目に入った。
予想した通り、俺が居ない隙に大量の食べ物を持ち逃げすることを考えていたようだ。
「こら、そんな一度に持って行こうにも鞄の底が抜けて持てないよ。」
落ち着いた口調でそう声をかけたとたん、クリィの尻尾がピンッと跳ね上がり、彼女は慌ててこちらに身体を向けた。
俺がいたことに余程驚いたのだろう。背後に隠れた尻尾の毛が不揃いに逆立ち、左右に揺れていた。
彼女に1.2歩近寄ったところで、彼女は鞄をかけたまま俺の横をすり抜けようとしたが、
大量の食料が詰まった思い鞄のせいでだろう、2.3歩駆けだしたところで足がもつれて床にうつぶせになって転んでしまった。
辛うじて上半身を起こした彼女は痛そうな顔をしていたが、近寄ってくる俺と目が合うと、怯えの表情がそれに加わった。
「盗まなければ生きてゆけなかった気持ちは分からないでもないよ。でもね、盗む必要が無いときに盗るのは良くないよ。
この食料、盗まなくたってみんな君にプレゼントしてあげるつもりなんだから‥そうやってころころして盗むことはないよ。」
彼女を怖がらせないために俺はのんびりした口調でそう言うと、穏やかな表情で彼女の側にしゃがみ込んだ。
何されるか分からないと思っていたようで身体を小さく震わせて鞄にしがみついてた彼女だったが、
この俺の言葉に怯えた表情をしつつも不思議そうな顔でこちらを見た。
俺はゆっくりとした動きでクリィの側に座りこむと、暖かく見守るような表情で彼女の頭を撫でてやった。
「ごめん‥なさい‥」
俺が怒ったりどなったりする様子がないことに少し安心したのか、身体を小さく丸めながら小さな声でそう呟いた。
よく聞こえるウサギの耳がなかったら聞き取れないほどの小さな声だ。
「別に怒らないから安心して。お腹がすいて食べなくちゃいけない気持ちはわかるよ。でもね、
君はもったいないことするところだったよ。もっともっと沢山の食べ物貰えるのに欲しくなかったのかい?」
「もっと…?」
彼女が目を大きく開いて聞き返した。もっと食べ物が貰えると話したところでで頭の耳がピクッと動いたのが見て取れる。
「そうだよ、確かにここのボックスにある食べ物を持ち出せば少しの間は持つと思う。
でも、そんなの持って一ヶ月程度。それを過ぎたらまたもや食べ物に困る生活が待っている。
そんなたかが一ヶ月分の食べ物じゃなくて10年・20年分の食べ物‥欲しくない‥?」
「‥?」
不思議そうに首をかしげる彼女に、俺は静かに笑いかけた。
「君さえ良かったら好きなだけここにいていいし食べ物だってあげるよ。君のご飯分のお金は何とか稼いでるからね。
但し、字の読み書きやなりたいことを見つけるために、色々と勉強を頑張らないといけないけれど。」
「‥!?‥本当に‥いいの?」
「勿論さ、ここにいていいよ。もうスラムに戻る必要なんか‥ってうわっ。」
俺の言葉が終わらないうちに、クリィはわっと泣きついてきた。
「‥う、‥う‥うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‥!!!!!」
家の外にまで聞こえるんじゃないかと心配する位の大声だった。
涙を気にせず、俺の服にかじりついている彼女の身体の汚れと涙で服がべとべとになったが、
俺は構わず背中をさすり、片手で軽く抱きかかえてあげた。
可愛そうに、この子余程愛情に飢えていたみたいだな…。
「くすん…くすん、こうやって抱きしめてくれる‥優しくしてくれる…欲しかったの‥。
優しいお父さんが欲しかったの…欲しかったの‥。守ってくれるお兄さん欲しかったの‥。
でも、でもいつも一人ぼっちで‥寂しくて‥寒くて‥毎日お腹が空いて目が覚めてばかりで‥う‥うわぁぁぁぁぁん‥!!!!!」
涙を流れるに任せたまま、これまでの無口とはうってかわって彼女は堰を切ったように一気にしゃべり始めた。
無口だったのは多分これまでの辛いことをずっと心の奥にしまい込もうとしていたせいなのかもしれないな‥。
「うんと泣いたっていい‥泣いて泣いて‥嫌なこと全部忘れるといい‥。ずっと辛いことばかりだったろうに‥。」
「辛いことだらけ‥もう一杯ありすぎて思い出したくない…怖い…。」
「その‥傷つけること言ってしまったら謝るけれど‥。パパと‥ママはどうしたんだい‥?」
「わからない‥、みんな最初にパパとママが居たって聞くけれど、
わたしにパパとママが居たかどうかすらわからないもん…。ずっと‥ひとりぼっちだったもん‥。」
そう言うと彼女は再び大きな鳴き声を上げて、泣き続けた。
彼女の話から推察して、物心着いたときには、既に両親は居なくなってしまったみたいだな。
「じゃあ‥それまでずっとスラム‥いや、あの建物が沢山あるところのコミゴミしたところにいたのかい‥?」
俺の問いかけに、彼女はコクンと頷いた。
「ずっとあの辺りを彷徨っていたから お兄ちゃん程じゃないけれど
優しい人も少しはいた。けれど、怖いヒトも沢山いた‥」
おそらく経験してきた怖いことを思い出したのだろう、自分の胸に顔を押しつけ、尻尾を俺の腰にまで回して抱きしめてきた。
孤児の子が社会に放り出されれば、危険が多く待ちかまえていることは聞いている。
無理矢理労働をさせられたり、大人の相手をさせようと企む連中だって少なくない筈だ。
頭で分かっているつもりでも、実際にそんな子を目の当たりにするとやっぱり心が痛む。
「もうそんな思いはさせないよ。僕が父親なり、お兄さんの代わりになってあげるさ。
でも、俺なんか信用して大丈夫なのか?君に食べ物をあげたのくらいしか‥。」
「うん、だって食べ物盗んだときにお兄ちゃんみたいなこと言ってくれるヒト、スラムにはいなかったもん。
だから大丈夫だって思ったの。それとも、お兄ちゃんを信じちゃだめ‥?」
そう言うと彼女は首をかしげ、じっと俺の顔を見た。
俺は首を横に振ると嬉しそうな表情で顔を俺の頬にすり寄せたために、俺の顔はべっとりとした尻尾や髪の毛に覆われた。
きつい臭いでお世辞にも良い気分とは言うことは出来なかったが、
その仕草と表情は小さな女神様のように凄く可愛く見えた。
一瞬、俺は彼女の顔に見とれてじっと見つめたが、次の瞬間、むせて、激しく咳き込んだ。
「大丈夫?」
「なんとか‥でも君の身体や髪の毛に付いていた湿った埃を思い切り吸い込んで気管支が一瞬詰まった。
最近お風呂‥いや水浴びしていないんじゃあ…。」
「う〜ん、この間水浴びしたよぉ。確か30日…う〜んと40日…。」
「いや、正確な数言わなくても大体分かったよ。 どのみち濡れた身体を温めてあげたいからまずはお風呂入りなさい。
ほら、これ食べて良いから。」
とりあえず彼女が盗もうとした鞄に入っていたビスケットの大袋の包みを開けて、半分ずつ分け合って食べると、
俺は嬉しそうに首に抱きついたままの彼女を抱き上げて、そのままお風呂場へと歩き出した。
「とりあえずお風呂に入っている間にその服は洗濯機に入れておくね。
その前に裁縫で破れているところ治した方がいいかな…、ってどうしたんだい?」
「お風呂で一人に入るの怖い。お兄さんと…一緒に付いていてくれる?」
「!お風呂って…一緒に!?」
「だ…め…?」
不安そうな表情で俺の顔を見つめてきた。どうも彼女にこの顔をされると、なんだか断りにくくなってしまう。
「わかった」
ため息を付きつつも俺は折れた。すっかり安心しきった途端、なんだか急に甘えんぼになったみたいだな…。
ボロボロの服を脱がして洗濯機に放り込むと、彼女にタオルを持たせて俺は一緒に湯気のたつお風呂場へと入った。
女の子の裸を見るのは初めてだったが、別段やましい気持ちは起こらなかったし起こそうとしなかった。
むしろ、彼女のべっとりと汚れた毛皮とやせ細った身体が目に付いた。まずは、綺麗にしてあげないと…。
「とりあえず、汚れを全部落としてあげるから、尻尾をピンとして大人しくしててね。」
「うんっ。」
素直に頷きちょこんと洗い場に座った彼女を、俺は持っていたボディブラシで身体も髪もみんな一緒くたに洗い始めた。
クリィが大人しくしていたので意外と洗いやすかったが、案の定汚れがもの凄かった。
大量に液体石鹸を使って彼女の身体が大量の泡で包まれたが、
その泡は灰と茶の混ざった見たこともないような色をしている。これまでちゃんと洗うことが出来なかったんだな…。
「どう…身体は痛くないかな、大丈夫?」
「面白いし暖かくて気持ちいい…でもちょっと目がチカチカする…」
「あ、目を開けちゃダメだよ、今お湯を流すからじっとしてて。」
そう言いながら片手でシャワーで全身の泡をを洗い流しつつ、
俺は彼クリィ背中から目を離しボディブラシに液体石鹸を付け治した。
再び彼女に目を戻り汚れが洗い流された身体を見たその時、俺はアッと叫びそうになった。
栄養失調ですこしやつれてはいたものの、全身の泡が消え去った彼女の身体には茶色だった汚れは殆どが消え去り、
身体と尻尾は黄金色と純白のフワモコの毛に包まれていた。
おまけに、茶色の混ざった灰色の髪は、鮮やかな銀色を取り戻し、綺麗に輝いていた。
驚いた俺がもう一度念のために身体を洗ってお湯を弾くと
その身体の輝きは更に増し、滅多に見かけないような凄く可愛いキツネ娘になっていた。
まさかこんなに綺麗な子だったなんて……
俺はシャワーを握りしめたまま、暫くそのまま眩しくなった彼女に見とれていた。
「どうしたの…?」
何もせずに見つめている自分に気が付いたのか、
彼女が不思議そうに振り向いた。泡と一緒に洗い流されたのだろうか、
先ほどまで見られたうつろな表情も消えて無くなっている。
「凄い…可愛い…。」
ぽつんとそう漏らした途端、俺は慌てた。今、その凄く可愛い子と身体がくっつく位の距離でお風呂に入ってるのを忘れてた。
「可愛い…?ウソ、そんなこと誰にも言われたこと無いのに…?」
「ウソじゃないよ 鏡を見てご覧。」
そう言うと、俺は湯気で曇った鏡を手で拭き取った。ハッキリ見えるようになった鏡を彼女が見た途端、目を大きく見開いた。
「これが…私…?」
驚きと嬉しさがあわさった顔をして彼女がつぶやいた。鏡に顔を近づけていたり髪や尻尾を目の前で靡かせていたが、
クリィの目が鏡を見ている俺の目とあうと、不意に彼女は俺の首に飛びついてきた。
「嬉しい…!お兄さんに会えて、本当によかったよぉ…」
「わが…わがわが…!」
可愛い子に抱きしめられ、俺は真っ赤になり、心臓がバクバク早鐘を打ち止まらなくなってしまった。
慌てて彼女から視線を外そうと思ったが、もう彼女の身体から目を離すことは出来なかった。
…湿っているがフワフワそうな胸のフサ毛、白い毛に包まれた柔らかそうなお腹、
そして…俺のモノを入れられたら凄い快感が得られそうな小さくてきつそうな彼処…。
「お兄さん、やらしいこと考えてる?」
(ドキッ!!!)
「! ば、馬鹿っ、いきなり何を言い出すんだ。」
慌てて俺は否定したものの、とっさと問いかけに真っ赤になった顔を隠し通すことは出来なかった。
第一、既に股間のモノが大きく膨らみきっているのが彼女にも悟られてもう言い逃れはできそうなかった。
認めたくなかったが彼女の身体を見て煩悩が沸き上がっているのが自分でも分かった。
嫌われたか…と内心不安になったものの、暫く経っても俺を抱きしめる手が離れないので首をかしげた。
胸に埋まったままの顔を上げようと思ったその時、
不意に、クリィは俺の顔にフサ毛のある胸を押しつけて
その上からフワフワの尻尾で包み込んで俺を抱きしめた。
「…!?」
「わたしはいいの。ここまで優しくしてくれたお礼…わたしの身体で払っても…。」
初めて出会ったときのような媚びるような声にに似ていたが、今回の声はそれに妖艶な雰囲気を含んでいた。
フサ毛の下は発達していないと思った彼女の胸は僅かに膨らんでおり、それが俺の顔に密着してきて凄い気持ちよかった。
おまけに、俺の胸の毛に押しつけられていた彼女の湿った秘部からは、暖かい愛液が俺の胸に伝っている感じだ。
もう彼女が俺を誘っているのは火を見るより明らかだった。
「く…。」
このまま彼女を押し倒したくてたまらなくなったが、俺は理性を振り絞って辛うじて踏みとどまった。
「本当は君を抱きたい、でも、ここで押し倒したら、もう…君の保護者になれない…。」
それが目的でつもりで助けたつもりじゃないし、第一ここで押し倒したらもう保護者でいられなくなってしまう。
繋がりたい気持ちをどうにか抑えると、俺は彼女を抱きかかえて優しく離し、そのままゆっくりと膝の上に乗せようとした。
ところが、あと少しで膝の上に彼女の身体を乗せられる…というところでそれは起こった。
突然、クリィを抱きかかえていた腕の感触がなくなったと同時に、彼女の身体が俺の腕の中からすっぽ抜けたのだ。
幸か不幸か、彼女の身体はは丁度僕のモノの真上にあった。
その結果は…もう避けることはできなかった。
(ぎゅっ…ズプププ…!!!!)
「く…!!」
「!!ひ、ひぎゃああああん!!!」
俺のうめき声と彼女の絶叫がお風呂場で鳴り響くのはほぼ同時だった。
自由落下した彼女の秘部は丁度待ちかまえていたかのように真下にあった俺のモノで貫かれ、
そのまま全体重が接合部にかかり根本まで押し込められた。快感と衝撃が俺の身体中を走った。
「痛い…痛い痛い痛い裂けちゃう…!!!!」
クリィが悲鳴に近い大声が響いて耳の奥へと伝わってくる。
彼女の秘部は俺のを受け入れるための準備は出来ていたものの、
子供のような彼女の小さな身体で受け止めるには俺のモノは大きすぎた。
ましてや、全体重の力で一気に根本まで挿入されたのだからその衝撃は計り知れない。
現に彼女の膣とお腹は俺のモノによって膨らみ、その接合部からは愛液に混ざって少なからぬ血が滴り落ちていた。
「ご、ごめんっ…今抜……!?」
「だめ…絶対もう抜いちゃやだっ!!」
慌てて抜こうとして抜こうとしたその瞬間、彼女は足を俺の腰に回してあらん限りの力で抱きしめてきた。
(ズニュ…!)
その瞬間俺のモノを奥の奥まで貫こうとする力が更に増した。
同時に膣内のきつい締め付けと全身を走るもの凄い快感が更に強くなった。
「く…凄く気持ちいいけれどこれじゃ君が…やっぱり抜…」
「嫌…痛いけれど抜いちゃいや…わたしの膣を初めて奪って…そのまま中途半端で終わらせるの嫌…。
それと…さっきの言葉取り消す…やっぱりお父さんやお兄さんは欲しくない…。」
「ええ、どうして…?」
「だって他に欲しいのが出来ちゃったの…お父さんやお兄さんだといずれは別れていなくなっちゃう。
わたし別れるの嫌…。
だから、優しい…旦那さんが欲しい‥。
それなら、一生ずっと一緒でいられるもん…。
あなたのモノを受け止めて上げるから、エッチなこといっぱいして良いから……それに…あなたの子供沢山産んで上げるから…。だからお願い、わたしの旦那さんになって…。いっぱい中にだして…。ずっと一緒にいて私を守って‥!」
ギュウギュウに締め付ける小さな膣の気持ちよさに加えて、
涙を頬に伝わせながら震え声で話すこの彼女の言葉がトドメの一撃となった。
俺の理性は崩壊し、彼女を思いきり抱きしめるともう煩悩に任せるままに座ったままの形で一気に突き上げ始めた。
(ズンズンズニュ!ズンズンズンッ!!)
「痛い…凄く痛い…けれど凄く嬉しい…!!嬉しいっ!」
下から激しく俺のモノがまだ痛むらしく、時折痛みを我慢するかのように俺を抱きしめる手に力が入り、
目から涙がこぼれ落ち床に滴り落ちていた。
けれども、その表情は大きな喜びを手に入れたような幸せそうな表情をしていた。
そんな彼女を見て、俺は更に動きが激しくなった。快楽と煩悩、そして彼女への気持ちが俺の身体を動かしていた。
もうこんな可愛い彼女を絶対離すものか…、俺がうんと幸せに…。
(ビクビクッ…!!)
そう思ってクリィを一層愛おしく感じたとき、彼女が一層僕のモノを締め付けるのと、俺が射精の兆候が現れたのは同時だった。
(ビクンビクンビクン…)
噴火前の微動は、俺のモノを伝って、彼女のきつきつの膣内へも伝わっているのがわかった。
「も…もう…!?」
「あ…お願い…、外に出しちゃい…や…!!全部残らず…わたしの…な…かに出して…!!!!
一滴残さず…わたしの…膣の中へ…!」
クリィはそう叫ぶと手足に力を入れてしがみついた。
更に大きな尻尾で俺の腰を包むと、ギュッと軽く締め付け、彼女は俺に身体を密着させた。
俺も、彼女を抱きしめ返すと、再び奥の奥にまで俺のモノを差し入れた。
「…く…そんなことされたら気持ち良…くっ!いくっ!残さず君の中に…!」
「き…て……全部欲しい…。」
(どくん‥どくん‥どくどくどくん‥)
猛烈な快楽とともに、俺は煩悩と愛しさで溜まりに溜まった全てのモノを彼女のきつい膣内へと注ぎ込んだ。
大量に注ぎ込まれた彼女の小さな身体では全てを受け止めきれず、
行き場を失った残りの精液は、太ももを伝ってお風呂場の床や排水溝へと流されていった。
「嬉しい…お腹の中…幸せで一杯…。ずっと…この幸せで…いさせて…。」
接合部には快楽の余韻が残り、彼女は先ほどの激しい行為で疲れたように俺に身体をもたれかけていたが、
顔には幸せをいっぱい満たされた…そんな表情を浮かべていた。
「良かった…。お金と引き替えに身体を売ろうかって思ったときもあったけれど売らなくて良かった。
お兄さ…ううん、あなたがうんと満足出来たみたいだもの。最初はわたしも痛かったけれど…最後は気持ちよかった…。」
俺と接合部が繋がったまま、クリィが嬉しそうに顔を俺の胸に埋めていた。
もう身体も表情にも、最初に出会った時の面影は殆ど消え去っていた。
「あなた…か、そう言われると照れるけれど嬉しいよ。でも…その欲しかった旦那さんが俺なんかで良かったのかな…?」
「そんなこと言っちゃ嫌、わたしにとっては王子様だもん。そんなあなたがそんなこと言ったら、わたし落ち込んじゃう…。」
「ごめん。でもこれだけは絶対に言える…。君が大好きで…そして絶対一生幸せにしてあげる…ってね。
ここまで一緒にいたいって気持ち、生まれて初めてだったもの」
「嬉しい…、あなた…。」
クリィが呟いた。余程照れくさかったのか、あなたと言った瞬間に、恥ずかしそうに顔に腕の中に潜り込ませた。
「これからも…よろしくね。」
「うん…。」
(その後…)
こうして、キツネの孤児だったクリィは俺の最愛の妻となり、ずっと寄り添って暮らすようになった。
痩せた小さな体と甘えん坊なところは相変わらずだが、体つきに貧弱さはなくなりフサ毛と胸は以前より膨らみを増していた。
何より、今ではお腹に4人目となる新しい命が宿り、お腹が大きくなりかけていた。
子供達が眠り、夫婦二人きりのお風呂の中で、今日も俺と彼女は繋がって幸せな時を過ごしていた。
初めて繋がってから毎日何度も繋がっているが、
今でも猛烈な快感と名器にどうしても湯船が激しく波立つ程動きまくって止められなくなってしまう。
それでも最愛の妻である彼女もその激しくされるのが好きみたいで、
激しく動くたびに波音に混じって彼女の可愛い声がお風呂場の中で響いていた。
やがて、クリィの全身が尻尾の先までがピンと張りつめ、膣内の締め付けがひときわ強くなった瞬間、
俺は彼女をギュッと抱きしめ子種を膣内へと大量に子種を注ぎ込んだ。
(ドクンドクンドクン…)
快楽が俺から彼女の膣内へ伝わっていくのが分かり、
クリィの小さな子宮と膣内に入りきれなかった大量の子種が接合部から溢れ、お湯が濁った。
「本当に幸せ…。」
嬉しそうな表情で俺にもたれかかるるとクリィはそう呟いた。俺はそんな彼女の背中と尻尾をゆっくりと撫でてやった。
「俺もだよ。もし、あのときに‥手がすっぽ抜けなかったら、君とこうやっていられることなんて出来なかっただろうな。」
「うん…今だから白状しちゃうけれど。あれ、本当はわたしがこっそり仕組んだの。」
「えっ…仕組んだってどういう…?」
「優しいあなたと結ばれて、ずっと一緒に居たかったもん。だから膝に乗せようとした瞬間に手足の力を緩めたの。
まさかあんなに痛いだなんて思わなかったから、思い切り突き入れられたときは、わたしの彼処裂けちゃうんじゃないかと思ったけれど。」
彼女の思いがけない告白に、俺は唖然とした表情で聞いていた。これって…俺はキツネに包まれた、いや化かされたの…かな?
そんな表情に気が付いたのか、彼女が不安そうな顔で尋ねてきた。
「ねぇ‥もしかして…こんなわたし‥嫌いになっちゃった…?」
「好きさ、大好きさ。もう絶対に離すモノかっ…。」
俺は即答すると、彼女を強く抱きしめた。嬉しそうに彼女が尻尾と手足で俺にしがみつく。
「これからもずっと一緒に生きる、大事な奥さんだよ…。いつまでもね…」
「ありがとう…。できたらわたしも子どもたちも大切にしてね‥子どもたちに、昔のわたしの経験を味あわせたくないから‥。」
俺は笑って頷くと、繋がったまま愛する伴侶と口を重ね合わせた。
彼女のお腹の中で、4人目の子どもが、ゆっくり動いたように感じられた。
(おしまい)
あとがき