「強欲の帝国」を読む
- 2014/09/22 20:23
- カテゴリー:読書
チャールズ・ファーガソン著「強欲の帝国-ウォール街に乗っ取られたアメリカー」
藤井清美・訳/早川書房/2014年
この本を知ったのは神戸新聞の書評欄で取り上げられていたからだ。
題名に興味を持ち、購入して読んだのだが、正直なところ「これがアメリカの
現状なのか」と愕然とした。
この本で取り上げられているのはアメリカの金融業界(ウォール街)で
行われてきた(いや、今でも行われていると言うべきか)金融危機を招いた
金融業界の不正の実態なのだが、その手口はまさに「カネにものを言わせる」
手法である。ウォール街で働く彼らは利益を出すために、ありとあらゆる不正を
行うだけでなく、ロビー活動による金融関連の規正法の緩和や廃止、著名な経済
学者や金融工学研究者を高額な報酬で雇って、自分たちに都合の良い論文や
裁判で有利な証言させたり、近年の大統領(クリントン、ブッシュ、オバマ)が
いかに彼らに有利な人事(たとえば金融危機を招いた金融業界の経営者や
チーフトレーダー、金融業界お抱えの学者たちを政府の金融関係の要職に
つけている)を行ってきたかが、膨大な資料と関係者へのインタビューに
よって描き出されている。
アメリカが「未来さえもがカネで買える国」とまで言われるほどの拝金主義の
国であることは知っていたが、よもやここまで腐敗が進んでいるとは思わなかった。
だが、このアメリカの惨状は作家の真山仁氏が帯で書いているように「日本の
未来像」なのだろうか。確かにそうかも知れないが、このアメリカの惨状を反面
教師として学ぶことはできないのだろうか。今ならまだ間に合うように思う。