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ご主人様編ニノダテその三
一 十 一 三

 ひくひくと震える、ニノダテのもうひとつの尖塔。さっき達した一本目と同じように包み込んでくれるのを待ち侘びているかのように、先端から透明な先走りをとろとろと零し、切れ込み周辺の白い水溜りを薄めていた。
 「ふふ、すごいね、こんなに透明なの出てる」
 ご主の指が伸びる。持て余された熱が握った掌に伝わってくる。くちゅくちゅと弄ってやれば、刺激を心待ちにしていたのかたちまち硬度を増して、押し込むには充分なくらいに成長する。つられて上の肉塊も昂奮したのか、細い管内に残っていた濃厚な体液を一筋零した。
 「透明なのと、白いのが、ニノダテたんのオチンチンのそれぞれから分泌されてる……かわいいなぁ」
 露骨な説明。
 「ご主、恥ずかしい」
 「ご主人様は使いの恥ずかしがっているところがとても好きなのだよ」
 あいかわらずの調子で顔を綻ばせながら、ご主は上の肉塊を指に挟んで擦り上げ、下の肉塊からまたとくとくと溢れ出るシロップを舌で舐めとる。
 「んっ……んん……はあっ」
 「ニノダテたんかわいいなぁ」
 再度の刺激に敏感に反応し、手の中で跳ねて催促している上の熱棒。置いてけぼりにされた未練を晴らすかのように、硬く張り詰めて口内で暴れまわる下の熱棒。両方に適度な刺激を加えてから、ご主は顔と手を離す。ニノダテと反対の方を向き、四つん這いの姿勢で布団に移動する。
 「はぁ……はぁ、ご主」
 「ん、ニノダテたん、今度は下のほう、入れてね」
 さっきのでめいっぱいほぐされたご主の後孔。ニノダテの一回目を受け止めた肉壁が、さらなる刺激を求めて入口をひくつかせている。中に放たれた欲望は粘度と濃度を薄め、零れてご主の太腿や袋を心地よく濡らしている。
 「ああ、ご主っ、好きだっ」
 求愛の言葉を口にして、ニノダテはご主の背中に圧しかかろうとする。同じく四つん這いになって重なるだけでは、ニノダテの腹はご主の背に届かない。体格差を埋めるため、肘を曲げて姿勢を低くすると、縦並びの肉塊がご主の尾骨のあたりに触れる。我慢できないのか、先端が臀部に触れるたびどちらもびくんと跳ねる。
 「入れるぞ」
 「うん、ニノダテたん」
 ずぷり、と下の尖塔が突き刺さる。二回目を受け入れる後孔はすんなりと肉柱に居場所を与え、中で粘液を絡ませて歓待し、もてなしの言葉の代わりに淫猥な水音を立てた。先客だった上の肉柱は、今は外で前液を垂らし、ご主の腰の辺り、上着の裾をくちゃくちゃにしている。
 今度はさっきと違い、ニノダテはゆっくり動こうとは思わない。それよりも、緩んだ後孔には少し乱暴なくらいに押し込んで引き抜いたほうが、ご主が喜ぶことを知っている。どうやらご主の尻は、少なくとも二回目であれば、龍である自分の肉塊で強めに穿っても大丈夫らしい。
 「んっ、んっ、んっ」
 「はっ、はっ、ニノダ、テ、たんっ」
 ニノダテの腰がご主の腰にぶつかっては、また離れる。肉壁に迎え入れられて内奥を擦り、引き抜くたびに適度な締め付けが肉柱を心地良く送り出す。下のがご主の尻を堪能しているあいだ、上のも柔らかなご主の背中に先っぽを擦り付けて、びくびくと快楽にその身を委ねていた。
 「気持ちいい、気持ちいいよっ、ニノダテたんっ」
 「ご主、私も、気持ちいい」
 囁いて、耳たぶを軽く舐めてやると、びくっとご主の体が震え、肉壁を通して相手の昂奮がニノダテの肉柱に伝わってくる。結合部の前にあるご主の屹立する軸と垂れ下がる袋は、ニノダテの腰に激しく揺すられ、布団に前液を撒き散らしていた。突き刺すたびに、ご主の上着とニノダテの甚平の衣擦れの音、淫靡な水音が互いの耳を刺激する。
 「はうっ、ニノダテたん! もうイっちゃうよぉぉ!」
 「ご主……くっ、いっしょにっ」
 ひときわ深くニノダテが腰を進め、最奥を穿つ。腕と胴とシッポをびくりと震わせて、膨らんだ尖塔の先から体液を放出する。びくんびくんと全身を痙攣させて、二度、三度と溶けた岩のような熱を送り込む。そのたびに肉柱は太さを増して、ご主の後孔を押し広げて締め付けを堪能する。
 荒くなった息が緩やかになり、筋肉の激しい律動も収まってから、ニノダテはご主の体を抱きしめたまま仰向けにごろりと横たわる。ご主の重みを腹の上に感じながら、快楽の衝動を解放したあとの脱力感に身を任せる。
 見れば、ご主は尻だけで達してしまったらしい。布団にできている滲みが如実な証拠である。まだ後孔を埋めたままの肉塊を抜くために、ご主の腰を少し持ち上げる。萎えた肉塊がずるりと抜け落ち、再度ご主の尻が自分の下腹部に密着したとき、ニノダテはあることに気がつく。
 「ニノダテたん、上のも気持ちよかったんだ」
 ご主にも指摘される。さっきの前後運動で、ご主の背中や腰に擦りつけていた上の肉柱も、いつのまにか達していたらしく、腹の上の愛しい相手は上着の背中側を精液でぺちゃぺちゃにしていた。
 「あ、うあ」
 失態。ニノダテはそう思った。いつもはかたっぽずつ制御できるのに。たしかに今日の上のはずいぶん敏感だったと思うが、まさかご主の背中に発射してしまったなんて。
 動揺して返答できないでいると、ご主が上体を起こし、ニノダテの股間で満足げにしている上のを軽く摘まんだ。甘い痺れが太腿に走る。
 「ニノダテたん、上の、もっかい出しちゃったね」
 「す、すまない」
 白く染まったご主の背中を見るのが耐えられない。ニノダテは顔を背けて赤くなる。するとご主は体勢を入れ替えてこっちを向き、もぞもぞと上着を脱ぎ始めた。視界に映るご主の萎えた器官。首から抜いた服を丸めて、ご主はニノダテの射出した体液がたっぷり染みこんでいる部分に、顔を埋ずめた。
 「はうーん、ニノダテたんの精液だぁ」
 「や、やめてくれ」
 恥ずかしさにそれを取り上げようと腕を伸ばすも、ご主は渡してくれない。それどころか今度はその布地に口を吸い付けた。
 「うん。二回目だけど濃くってとろとろ」
 「ご主、恥ずかしい」
 「ご主人様は使いの精液と恥ずかしがっているところがとても好きなのだよ」
 「しかし、そんな、服に付いたのなんて」
 「ニノダテたんの精液だもん、ご主人様の服にも体にも、たっぷりかけて染みこませてくれていいんだよ」
 そういって目配せするご主。応対に途惑うニノダテだったが、申し訳なさは少し和らいだ。ご主はそんなに気にしていないらしい、むしろ喜んでいるのかもしれない。だけど、今後ご主に白濁液をかけることを命じられたらどうすればいいのだろう。もし顔にお願いなんて言われたら、耐え切れないかもしれない。
 「ニノダテたんニノダテたんふにふにー」
 行為の後、いつものように耳や角を撫ぜてくるご主。屈託ない笑顔を見ていると、よりいっそうご主を大切に、愛おしくしようという気持ちが強くなる。もし顔にお願いなんて言われたら、恥ずかしいが、なんとかご主の意向に沿えるようにしよう。
 ニノダテはそう思った。

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