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しめぶりまほうつかいちらりん#07

▽#07「みずぎかいがいみをなさない」

▼Aパート

 「けもー!」
「けもー!」
「けもけけもー!」

 海である。
 けものたちも海である。
 だいたい2頭身の戦闘員けものたちも、泳いで磯遊びして潮干狩りである。
「け」
「も」
「け」
「も」
「け」
「も」
 日差し照り返す砂浜で、準備体操である。

 海である。
 まほうつかいもまほうつかいでないのも、泳いで泳いで泳ぎまくるのである。水系なので。
 水泳研のキリン(ジラフのほう)獣人・七味箪笥は、水研合同合宿に参加している。毎年恒例となった海での訓練は、夏大会に向けての実力の底上げに、会内・会外のコミュニケーションに、役立っているような気がする。
 「では、初日のプログラムを発表する。あの島まで遠泳。以上ッ」
 言うが早いが、水球研会長であり夏合宿の元締め、タツノオトシゴ魚人が浅瀬に飛びこむ。そのまま水と砂の飛沫を上げて滑るように遠ざかる会長、追うその他。波打ち際はてんてこ舞いであり、水泳研も水球研も潜水研も、砂浜を後にしていく。
「は、速い」
 泳ぎで後れを取るのは、あまり好きではない。それなりに負けず嫌いなキリン獣人も、飛びこみにかかる。
「あ、準備準備」
 準備体操とストレッチと、深呼吸をしてから。
 そして毛皮組が飛びこんだ後に残された、シンクロナイズドスイミング研、拍子木切氷衣。イカ魚介人の白色半透明なエンペラの薄い部分が、風に戦ぐ。
「オレ長距離はパスねー」
 と誰に聞かれるともなく言い残し、踵を返す。

 「ふはははははははは!」
 高笑いである。悪の総統である。夏の日差しが眩しいビーチに目深なフードで。
 「暑い!」
 そりゃあ暑いだろう。
 「アイスキャンディーを所望するのだ!」
 てこてこ海の家まで歩いていき、アイスキャンディーとトロピカルドリンクと貸しパラソルと貸しビーチテーブル&チェアとそれら組み立て要員を購入し、カードで支払う。
 「うむ」
 くつろぎスペースができて満足した総統はビーチチェアに横になってアイスを舐め始め、けものたちはひと泳ぎ終わったので砂浜に戻り、みんなでビニールシートを敷き、総統に倣って横たわる。
「もけ」
「もけ!」
「ののののー」
 パラソルの影は総統の周りにしか届かない。転げるけものたち。
 「……今日は、『荳菽苑』の夏限定、枝豆塩煎餅」
「もけ!」
「もけけもー!」
 世話係が煎餅を餌に、けものたちを引き連れて海の家に移動する。さっき総統がついでに借りた座敷スペースで円座しぱりぽり。麦茶をごくごく。
「けも!」
「けけもー!」
 そしてさらに元気に海辺へ遊びに行くグループと、
「もけー」
「もけけもー」
 疲れてごろ寝するグループと、 
「もっけけ」
「もけけ?」
「……」
 世話係にひっつくグループ。いっしょに泳ぎたいらしい。
 
 「古来、まほうつかいは精液でヘンシンするらしい」
「へー」
 こちらは、おまもり山に坐する、秘密結社「悪の組織胡麻煎餅」本部。
 こないだの一件を経て、まほうつかいたちを虐待せずに倒す方法を調べているラス・トボスが、古ぼけた書籍を開きカク・シボスに説明している。
 総統から頼まれた仕事は、まほうつかいの殲滅。つまり、まほうつかいがいなくなればよいのであり、へんしん前の獣人たちをこてんぱんにやっつける必要はないワケだ。なるべく穏健案を通したいラスは、書物に目を走らせる。
「精液にはまほうつかいのちから、まりょくが宿っているそうだ」
「ふむふむ」
「そして、その力は固有のものであり、たとえばまほうつかいAの精液でまほうつかいBがヘンシンすることはできない。もっとも、変身後のエナジーとして流用することは可能なんだそうだが」
「むつかしいね」
「そこで仮説なのだが」
「うん」
「まほうつかいAの精液を、まほうつかいBの体内に直接、つまり腔内に流しこむと、まりょくが相反し、まほうつかいBはまほうつかいではなくなるのではないだろうか」
「……えとね」
 赤面するカク。
「ラス、そういう話題は日が暮れてからするものだと思うよ……」
「まだ仮説だ」
「仮説でも定説でも偽説でも真説でもダメだよ」
「む……」
 注意されて口を紡ぐ黒竜。
「まずは、まほうつかいの精液を、調べる必要がある。どんな力が籠もっているのか」
「採ってくる?」
「うむ」
「……まさか、ぼくの番だったりしないよね」
「出番は、交互だ」
 また赤面するカク。

▼Bパート

 「うわ、筋肉痛コワい」
 シャワーで体を流しながら、つぶやく七味。海にほど近い合宿所の共同風呂場で、泡立てたスポンジを毛皮に当てた。筋の重みに骨の軋みに、明朝の肉体を襲う不具合を予期する。
 「はしゃぎすぎだよね」
 「そうですね」
 エビ魚介人・鎧焼マヨネーズと並んで、かわりばんこに背中の流しっこ。湯船のほうでは水球研と水泳研と潜水研がばっしゃばっしゃはしゃいでいる。
 「カラダを洗ったら、早いうちに上がったほうがいいだろう」
 その隣で盥に湯を張りながら、蒲焼寝床が呟いた。日中はバイトで合宿は不参加、眠るためだけに合宿所に寄っている。
 「七味くんはやらしいこと好き?」
 突然の質問。
「ええええええええええ、あの、そんないきなり」
「あ、ゴメン。やらしい意味じゃなくて」
 他に意味があるのか。
「ほら、今年の水球研会長は、過激派だからさ」
「かげきは?」
「うん。やらしいこと好きだから。お風呂でも寝床でも注意したほうがいいよ。あ、この“寝床”ってのは、蒲焼のことでなくてね」
「その注釈、要らなくないか?」
 左右に目線を投げて話題を振りつつ、エビ魚介人が説明を続ける。
「ほら」
 ほら、と指差され、直接見るのを制されて、鏡越しに湯船のほうを確認すれば、5匹くらいの会員たちが、並んで自らの竿を扱いていた。
「たぶん、早出し競争とかなんだろうねー」
「あわわわわ」
 そんな背景に動じず、カラダを流す鎧焼と、すでに洗い終えて更衣室へ戻ろうとする蒲焼。
「先寝るぞ」
「うん。七味くんも、したくないなら早めにねー。ゆっくりお湯に浸かりたいなら朝がいいよ」
「は、はいっ」
 わたわたとスポンジを全身に走らせる七味。喘ぎ声とともに、湯船の色が白濁していく。

 いたたまれずに大浴場を後にして、キリン柄の毛皮を乾かして、布団に潜りこんだ七味。寝室は研究会ごとに分かれているから、水泳研の七味にとってはここまでくれば一安心、である。蒲焼センパイは水球研なので、どこに行っても逃げ場はないけどだいじょうぶなのか、と、隣で日記をつけていた鎧焼センパイに訊いてみると、
「蒲焼は慣れてるからね」
という、何に慣れているのか訊くのがコワい返答。たぶん、「逃げるのに」とか「流すのに」とかが省略されているのだと思いこみ、出した顔を布団にまた引っこめた。
 水泳研のみんなも3割くらいは逃げ損ね、あるいは自ら、大浴場に残ったらしく、ぽつぽつと布団に空きがあるが、気にせず明かりが落とされる。明日も泳いで泳いで泳ぎまくるのである。なにせ夏合宿なのであるから。

 まだ薄暗い朝靄漂う海辺。大波小波の満ち引きが、窓の向こうに静かに響く。
「いたたたたたた、た」
 筋肉の痛みに耐えかねた七味箪笥が、腰を押さえながら起きあがった。
「うー」
 カラダを引きずるようにして、大浴場へ。あっためれば、ちょっとは楽になるかもしれないと思った。
 幸い誰もおらず、濁ってもいない湯船に、とっぷり浸かる。
「ふう」
 ぐぐぐっ、と首を伸ばせば、筋繊維がギシギシと軋んでいるのがわかる。他の水泳研のみんなに比べて、筋肉量の少ないことは七味にとってコンプレックスであった。
「鍛えなくっちゃ!」
 掌をグーに腕を曲げ、志を新たにする。そんなところへふよふよと飛んできた、マスコットのキネドー。水球水着で。
「キネドー、どうしたの」
「わるものがあらわれるそうだ」
「ええええええええええ」
「手早く変身したい」
 といい、トレードマークのへんしんようスイムサポーターを取り出し、差し出す。
「で、でもでも、誰か来ちゃったらどうするの」
「皆おそらくよく眠っているから、だいじょうぶだろう。俺が見張る」
「うん」
「……疲れているほうが、出しやすい、そうだから」
「う、うん」
「それじゃ」
 といい、ふよふよと風呂場入口で待機するため飛んでいくキネドー。水球水着で。
 残された七味箪笥は、ひとりぷれいで衣装を粘つかせないといけない。迫りくる敵に備えるために。
 「うー、そんなにかっこよくないよー、へんしん」
 プラスチックの椅子に座って、鏡の前で自身に触れる。さっきまで湯の中に浸かっていたカラダは、おおまかにタオルに水気を吸わせて。ほこほこ湯気を上げるカラダと卑猥な部位が、目の前の鏡に映りこんでいる。
「ふぅっ」
 ひと呼吸して決心し、手の中に竿を握りこむ。何度かやわやわと揉めば、ゆるゆるとした気持ち良さが生まれ、脳天までゆっくり昇ってくる。キネドーの言う通り、疲れたカラダと非対称的に、固く大きくなり始めたソコ。
 開放的な空間、非日常的な場所は、七味の感覚を敏感にさせる。くちゃくちゃと水音が跳ね、硬度を増した自身から分泌する先走りの匂いが湯気に溶け、淫猥さを醸し出す。浮ついた意識の中で、七味の限界はわりあい手早く迎えられ、竿の先に敷いておいた滑らかな布地に放たれた。より強い香気を吸い、しばし余韻に浸るも、冷水を口に含んで正気に戻り、とろとろのスイムサポーターに海水パンツを重ねて履いて、BGM係のキネドーを呼び戻す。
 「アルゴンカリウムカルシウム!」
「るーるるるるー」

 「こ、こんばんはー……あれ、おはよう? おやすみ?」
 洗い場の上空に魔法陣が開いたかと思いきや、幾何学ドラゴンが顔を出した。白の。
「お、おはようございます」
「『我は、白竜カク・シボス。託された使命はまほうつかいの殲滅である』。えへへ、なんだか恥ずかしい」
 前回の黒の自己紹介をそっくりそのまま流用し、羞恥が優って苦笑する。
「あ、おしごとおしごと。きみがすくみずまほうつかいちみたん。そして相方のキネドー」
「はい」
「うむ」
 律儀に返事。
「あ、順番間違えてた。着地が先。えと、ここはお風呂場だね」
 水に四肢を取られて滑らないように慎重に、カク・シボスが全身を床に移した。収縮し消える魔法陣。
「それでね、せいえきがほしいの」
 そして背中のリュックからコンドームを取り出す。
 攻撃のタイミングをすっかり逃し、ぽかんと立ちすくむちみたんとキネドー。
「え」
「あ」
 「は、恥ずかしいから、2回目は言わない……」
 白い頬を桃色に染めて、白竜が俯いた。

 「あ、ええと」
 大浴場での対峙は続く。
「バトルしないの?」
「ぼく、闘うのニガテ。そういうのはラスがするの」
「ふむ」
「ぼく、探し物とか、物運びとか、そういうのすきだから」
「うん」
「それで、今回はちみたんの、を、取ってくる役目」
「ええと……それは、恥ずかしいから、ヤダ」
「ぼくだって恥ずかしかったけど、ちゃんと言えたもん」
 「精液」と口に出せたことを盾に取って、ちみたんに詰め寄る。
「お願いしてもダメ?」
「お願いされても……」
「お願いされてもな」
 キネドーと顔を見合わせて困惑。 
「それに、さっき、自分でしたし」
「あ、そうなの。出しちゃったんだ」
「あ」
 まほうつかいにへんしんしたから、という意味だったのだが、期せずして、自己処理の告白をしてしまった。顔中を赤くしてうつむくちみたん。
「それじゃ、さ……ぼくのお尻、使っていいから」
「え?」
「ん?」
「2回目、いつもと違う方法だったら、イケると思うんだけど」
「だ、だってそれ」
 それはつまり、情交そのもの、いわゆる「もにもに」じゃないか。
「僕、そんなの恥ずかしい」
 3匹で赤面していても、話は進まない。
 「え、えと、それじゃ、出してくれたら、マッサージしたげる」
 カクが歩み寄る。
「マッサージ?」
 普通、マッサージされた刺激で達するのが手順だよなぁ、とキネドーは考えていた。
「じわじわ遠赤外線でスジからほぐすから、筋肉痛なんてすぐ治っちゃうよ」
 わきわき、と白竜が前足の指を動かして、指圧をアピールする。
「ね、お願いちみたん」
「そんなのおねがいされても……」
 経験のないちみたんにとっては、困惑が先走る。とはいえ、体の痛みが取れれば、今日の練習にしっかり参加できる。それは望ましいと思った。もしかしたら、合同合宿の淫奔な雰囲気に、大浴場の微かな残り香に、影響されたのかもしれない。
 「わかった。でも、僕初めてだから、うまくいかないかも」
「ありがとう! ちょこっとでもいいから、よろしくね」
 四肢を折り曲げ、カクが体を伏せる。それから、足の付け根の上にある入り口を、シッポの先でくいくい、と示す。それから、コンドームをキネドーに渡した。
 すくみずまほうつかいちみたんは、カクの背後に回りこむと、精液でとっぷり染まっているスイムサポーターごと、スクール水着を膝までずらした。完全に脱げきらなければ、まほうつかいのへんしんは解けない。
 「あ、あの、ぼくの前に生えてるのは、気にしなくていいから……」
「前? ……あ」
「気持ちよくしてくれなくていいから」
 尻尾の付け根の下、ラスの股間に赤いモノが見える。さっき着地する前に見えた腹にはなかった質量だ。たぶん、温まってリラックスしたのか、あるいはちみたんとの情交を前にして昂奮したのかで、収納式の棒状突起が顔を出したのだろう。
 そして、目指すはその上方にある、小さな窄まりである。小さいといっても、もともとの図体がちみたんの十数倍、それ相応の器官のサイズを誇っているのだが、外側のつるんとした質感の中に埋もれる秘穴は、やはりきゅっと窄まって、侵しがたい狭さを保っているように見えた。
「うむ」
 キネドーから包みを受け取る。
「あの、僕、つけたことなくって」
「そ、そうか」
 そしてマスコットはゴム製品の使い方を、まほうつかいに事細かにレクチャーし始めた。
「中身を袋の端に寄せて、傷つけないよう封を切る」
「はい。……開いたよ、出した。ちょっとねちゃっとしてる……」
「潤滑剤が付いているからな。そしたら、表になるほうから、精液溜まりを指で押さえる」
「表? んと、丸まってる縁が外側になるのが表だね、はい」
「摘まんだところの裏を先端に当てたら、根本までくるくる引き下げていく。毛を巻きこまないように」
「うん。あ、すごいすごい、伸びてく……」
 さて、ブジにコンドームも着用できたちみたん。
 幾何学の尻に両手を添え、勃ち上がった自身をそこに宛がう。ひくひくと細やかに収縮しているのが、先端から伝わってくる。腰を前に出すと、鞘に対してけして大きくはないちみたんの屹立が、つるり、と飲みこまれた。
「ひゃ、ひゃああああ!」
「くっ……ちみたん、あんまり大きな声、ダメ。……ぜんぶ入ったね」
「ご、ごめんね、一気に」
「いいよ、だいじょぶ。ちみたん、どんな感じ?」
 まほうのスイムサポーターに、自ら絞ってふりかけるときとは大違いだ。意識的に動かす指の刺激ではなく、預かり知らぬところで窄まったり緩まったり、ラスの呼気に併せて動くその筒は、心地よい圧迫感を規則的に送る。
「あ、……出ちゃいそう」
 さっき出したばかりなのに、ちみたんの恥ずかしい箇所はもうぱんぱんに復活し、初めての挿入を味わい尽くすこともなく、限界を迎えようとしていた。
「あ、あの、少しでいいから、動いてくれると、ぼくがうれしい」
「あ、うんっ」
 内襞に摩擦が欲しくてラスがねだると、同調したちらりんが腰を振る。おそるおそる引き抜いて、
「んっ」
「はわっ」
 そのまま、誘われて押しこむ。体毛のない臀部にキリン柄の腹部が軽く叩きつけられて、ぱちゅ、と音がする。
「はぅ……」
 同じくキリン柄の、シッポがくるりと輪になって、また弛緩した。
「もっかい、したら、出ると思う……」
 力なく、白竜にそう伝える。
「ん、わかった。へへ、きもちい?」
「うん、きもちい」
 素直に頷いて、もっかいちらりんが腰を振る。するり、と抜け出そうとすると、逃がすまいときゅうっと締まる白い入り口に、絶頂が導かれて、そのまま慌てて押しこんで。
「はっ、はぅぅっ! 出ちゃっ、ぅ」
 どくっ、どくっ、爆ぜた器官が、内奥に収めた袋にどろどろと精液を流しこむ。
「あんっ」
 そのたび、中に満たされるたびに、カクは甘い声を上げて、またちみたんの情欲を煽る。
 そして、息を切らせたちみたんが、後孔から自らを抜き、後ろに転げるように尻餅を搗くと、
「ありがと、ちみたん。それ、ちょうだいね」
 ぐるりと180度旋回したカクが、ちみたんの股間に前足を伸ばし、白く膨れた半透明の袋を回収する。外して根元をきゅっと縛ると、背中のリュックにダイジそうにしまう。
 「それじゃ俯せになってね」
 前足をわきわき。
 億劫なカラダをどうにかひっくり返し、水着膝上のまま尻を露出すると、カクがそおっとちみたんの腰に指を置く。しばし、熱を送られて、もみもみ。萎えたペニスが床の固いタイルに押しつけられる感触。
 「うん、これでもう大丈夫。練習がんばってねっ」
と言い、ちみたんを起こして額に口付けすると、再度頭上に魔法陣が開く。
 「あ、ありがと」
 笑顔で応え、カク・シボスは帰っていった。
 残された射精後のすぽゆにまほうつかい。まほうのスイムサポーターを履き直し、立ち上がる。
「あ、痛くない」
 腰だけでなく全身の筋肉痛が、遠赤外線効果ですっかり和らいでいた。

「えへへ、ただいま」
「カク。ぴしょぴしょだ」
 そんなふうに、相方は水場から体を拭かずに戻ってくるだろうと予期していた黒竜が、バスタオルを手にして迎える。
「あ、ありがと。ちみたんのせいえき、もらってきたよ」
「ああ」
 すぽゆにまほうつかいのちからのみなもと。これを調べれば、まほうつかいの弱点が、わかるかもしれない。
「あ、あと」
「ん」
 タオルに水気を吸わせているカクが、露出したままのソレを固くしてラスに言い含める。
「ぼく、イッてないから、あとでカクに抜いてほしいなー」
「……ああ」
 黒竜が頬を赤らめて頷き、相方の活躍へのごほうびを約束する。

▼次回予告

 黒白の竜の魔の手がまほうつかいに伸び、そのまりょくが絶えるとき、まほうつかいはまほうつかいでなくなる。次回「まほうつかいをまほうつかいたらしめない」お楽しみに。

▼Cパート

 口中に、まだカクの味が残っている。あのあと解放を待ち侘びるカクの下半身を促して、とっぷり出させて飲みこんで。うれしそうにするカクの顔が艶っぽくて、ラスは自らを昂ぶらせてしまった。それをカクに見つかって、後孔に導かれて発射。それから舌を絡めて、尻尾を舐めて、ともかくカクのカラダを味わわされて、いささか食傷気味である。
 それでも、調査は早いうちにしておきたい。寝床でむにゃむにゃ夢心地なカクを起こさぬよう這い出して、研究室へ。保温庫にしまっておいた早朝の採取物、すぽゆにまほうつかいちみたんの精液入りコンドームを、取り出した。そのまえに真水を一口。
 まるで自分が一日中欲しがって飲精しているのだと思われるのは心外だ、と思いながら、黒竜はその中身を吸い、口に含んだ。舌の上で転がして、魔力を検知する。

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