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しめぶりまほうつかいちらりん#01

▽#01「しめぶりまほうつかいにされる」

▼Aパート
 高峰ちらりは中修部2年の赤銅西洋竜人である。
 今朝も2人分の弁当を作り、2人分の朝食をちゃぶ台に並べ、それから火曜日の場合、深夜アニメ「甘露忍者組粋逸」を観てから眠った兄を起こさねばならない。
「お兄ちゃん、朝だよ」
「うー」
「お兄ちゃんってば」
「弟よ!」
「お兄ちゃん」
 幾度と呼んでも兄は寝言を返すばかり。
 しかたなく弟は掛け布団を剥ぎ取る。褌一枚の寝姿は多感な年頃には刺激が強すぎると思われるが、ちらりにとっては物心付いたころから見慣れているのでもうそれほど驚きもしなくなっている。さすがに前袋から肉棒が零れているときには目を覆ってしまうが。
「お兄ちゃんって……わわっ」
 三つ折りにした掛け布団を運ぼうとすると急に禅裸の腕が伸び、ちらりを引き寄せた。胡坐の姿勢の胸板に抱き寄せられたまま聞く、寝惚けた声。
「ちらりー、お兄ちゃんのこと好きか?」
「お兄ちゃん、起きてよ」
 弟は態度を変えない。
「兄は兄にゾッコンな相手に起こしてほしいのだよ、おさななじみやお隣さんや親族に」
 左右に揺れる兄。
「もー、お兄ちゃんアニメの見すぎ」
「ちらりが好きって言ってくれなきゃ起きない」
「うー」
 自分勝手な兄である。ちらりはたしかにお兄ちゃんのことが大好きだし尊敬していなくもないのだが、朝自分で起きないトコとか下着姿のいぎたなさとか好きになれない部分も多い。
「……お兄ちゃん、好きだよ」
 それから、こんな言葉を強要されるのもあんまり好きじゃない。ほとんど裸の相手に布団の上で睦言を囁くなんて、気恥ずかしいし、なんだか特別な関係みたいじゃないか。そういうのは、特別な相手ができたときまで取っておくものじゃないのか。でも、兄の耳に小さくそう呟くのはさいきん日課になりつつある。先週から始まったあのアニメに感化されているらしい。
「よし、はっしーんっ」
 そしてようやく禅裸は立ち上がり、ちらりを肩車して居間に向かう。これも春アニメの影響だと思う。

 放課後ちらりはまっすぐ家に帰っていた。部屋に戻って鞄を机の横にひっかける。そのあとは冷蔵庫のところに貼ってある買い物メモを手に、街へ夕ご飯の買い物をしにいくつもりだ。
 ちらりの部屋は中修部に進学したときに貰ったものである。それまでは兄と同じ部屋で、机を並べて本を読み、布団を並べて眠っていた。部屋が変わっても、兄を起こしにいくのはちらりの役目で、ずっと変わらない。そろそろ目覚まし時計の使い方を覚えてもいいころだと思うんだけど、とちらりは思う。
 夕暮れの淡い光が窓から差し込む。暗くならないうちに行ってこなくちゃ、そう思った矢先、闇夜のように黒い毛並みのちっちゃな山羊が、太陽を背にこっちに向かって飛んでくるのに気がついた。ぴっちりとしたボクサーブリーフの膨らみがちょっと恥ずかしい。その手には何か布きれを持って、窓のところをふよふよしている。目を逸らすこともできず、網戸を開けた。
「こ、こんにちは」
 動揺しつつも挨拶をする。
「こんにちは、ちらり」
「なんで僕の名前を知ってるの?」
「鞄に書いてある」
「あ、そうか」
 窓を開けて招き入れると、黒山羊はちらりを畳の上に仰向けになるように促した。素直に従うちらりの胸の上に、ちょこんと乗る。
「さっそくだが、この魔法のブリーフに穿き替えてほしい」
「え」
「ちらりにはしめぶりまほうつかいちらりんとして街の平和を守ってほしいんだ」
「し、しめぶ……まほうつかい?」
「そう、しめぶりまほうつかいちらりん」
 なんだか空想めいた単語がちらほら。
「ブリーフは好きではないか?」
「ううん、僕いつもブリーフだけど」
「愛用者か、都合がいいな」
「なんだかさっぱりわかんないよ」
「説明するより実際にやってみたほうが早い」
「ん、わかった」
 魔法使い、なんて言われて、兄と見ていたアニメの一幕を思い出す。
「あ、待って」
「どうした」
「正体がバレたらヘンな姿にされちゃうんだよね?」
「そうだな、場合にもよるが」
「僕、隠しゴトってあんまり得意じゃなくて」
 正直に告白すると、黒山羊に真摯な瞳で見つめられる。
「問い詰められたときにうまくごまかせないかも」
「そういうときは、俺が助ける」
 じっ、と目線が交差する。
「よかった、頼りにしてるよ、……えっと」
「センちゃんと手軽に読んでほしい、と書いてある」
「うん、センちゃん、よろしく」
 微笑むちらりに受け渡される魔法のブリーフ。白地に赤い線が入った、普通の下着に見える。首を傾げた赤銅竜が浮遊する黒山羊に尋ねた。
「これ、穿けばいいの」
「穿くだけでは足りない」
「ん」
 ひとまず立ち上がって部屋の隅に立ち、こっちを見ないようにとセンちゃんを牽制して着替えるちらり。
「真っ白じゃないブリーフなんて初めて。なんだか、くすぐったい気持ち」
 その場でくるくると回って、姿見で試着を確認してみる。シッポの上で留めたボタンは変に曲がっていないだろうか。
「初々しいな」
「だって、初めてなんだもん、赤いのなんて」
「この店の下着は着たことないのか」
「なくもないけど、あんまり」
 ちらりの家は褌屋である。それゆえ、兄は寝ても覚めても褌だが、ちらりはずっとブリーフだ。引き出しにあるシンプルな下着で充分だと思っているし、店先に並ぶカラフルな褌に心奪われることもない。
「これで、魔法が使えるようになってるの? ばびゅーんって空飛んだり」
「着るだけじゃ、ダメだ」
「そっか。ステッキとか、コンパクトとか要るのかな」
 あいまいな魔法使いのイメージを頭から引っ張り出すちらり。
「いや、道具はあくまで魔法を引き出すものだから、あまりこだわらなくていい」
「そうなの」
「それよりも、体の芯から熱源を取り出すことが重要なので、それをする」
「熱源」
「いうなれば、魔法の素」
 そこまで説明して、また横になるよう促される。また畳に身を委ねるちらり。
「力、抜いていて」
 言うが早いが、センちゃんはちらりのブリーフを引き下げた。
「わ、わっわっ、なにするのっ」
「体の芯から熱源を取り出す」
「って、芯って、ソコなのっ」
 可愛らしい性の象徴。少し先端を覗かせる軸に、適度に引き締まった袋。ブリーフを太腿のところまで引き下げると、センちゃんはあらわになった部分を口に含んだ。
「んっ」
「んっ……んぅ」
 突然のあったかい感触に驚いたのはちらりだ。そのままくちゅくちゅと唾液を絡ませられて、初めての刺激に混乱するばかり。かたやセンちゃんは次第に反応を返し硬くなるそれに、なんとか機能は果たせそうだと安心する。口を離すと、中空に立ち上がりぴくぴくと震え、さっきよりも桃色の表面積を増やした先端が体色と同じ包皮を押しのけて露出し、ぬらりと光っている。
「いい感じだな」
「あっ、センちゃん、なんかヘンな感じ……」
「自分で触ったことはないのか」
 目の端にうっすらと涙を浮かばせて、こくこくと頷く。羞恥と快楽の狭間で揺れ動くちらりの心。初めて続きの今日の出来事の中でも、体の奥にどくどく伝わってくるこの感覚は、とびきり胸と下腹部を灼熱させる。よくわかんないけど、解き放ってしまいたい。
「センちゃん、恐い」
「だいじょうぶ、任せて」
 股の上の黒い塊は、次に指をそっと軸に這わせ、先端と雁首のそれぞれを摩擦で襲った。黒山羊の唾液とそうでない体液が滑りを良くして、ちらりの腰を浮かせる。
「はっ、はっ、ダメっ、こんなのっ」
「家には誰もいないから、声を挙げても問題ない」
「んっ、なんか、出ちゃうよっ」
 限界に近いちらりの挙動を見計らって、センちゃんは赤いゴムを上に引っ張り上げ、めいっぱい張り詰めた器官をその白い布地の中に、ぱしん、と収めた。
「はぁぁぁぁぁっ!! んっ!」
 軽い衝撃に耐えかねて、ちらりの雄が爆発する。どくん、どくんと細い管を伝って、熱いぬめりのある液体が放出される。体の奥底から搾り出されるような感覚。それはブリーフの白い部分と前開きの縁を彩る赤い部分にたっぷりと染み込んで、ほんのりと湯気を発散させ、同時に独特の香ばしさを放つ。二、三度跳ねたちらりの下半身から注がれた初めての精液で、ブリーフの前の部分は充分に湿り、冴えた赤の色味を鈍くする。精通を終え息を荒げるちらりは、鼻に付く匂いと粘つく下半身の気だるさ、それと途方もない快楽が混ぜこぜになり、ただ目の前のセンちゃんを虚ろに見つめることしかできなかった。

「これで準備はできた」
「じゅん、び」
 息を切らせて応えるちらり。
「魔法を使える準備。立てるか」
「う、うん、なんとか」
「それじゃ、まず変身からだ」
「変身、するの」
「魔法使いだからな、俺が変身用BGMを歌うあいだにとにかく着替えて」
 股を覆う蒸れた布地は心地良いものではないが、仕方ない。ちらりは意を決して立ち上がった。
「ぅー、なんかふわふわする」
「がんばれ、るるーるるるー、ちらりーん」
 一言励ましてから歌を歌い始めるセンちゃん。するとちらりの周りが桃色のもやもやに包まれ、中空からエプロンとフライ返しが現れた。
「こ、これ?」
「そうだな、るるるー、ちーらりーん」
 名前の入った恥ずかしい曲に合わせて、ちらりはエプロンを腰に巻き、フライ返しを手に取る。なんとなしに、びしっと腕を伸ばして決めポーズを取る。
「まほうつかいちらりーん。と」
 歌い終えたセンちゃんがふよふよと寄ってくる。
「ちらりの火のイメージは料理なんだな」
「そうなの?」
「しめぶりまほうつかいは火のブリーフを司る。術者の火のイメージがその衣装を貌取る」
「そっか」
「詳しい説明と、助けに行くのとどちらが先がいい」
「え、えええ、助けに、って、誰か困ってるの」
「高峰禅裸がすぽゆにまほうつかいに学庵で襲われている」
「お、お兄ちゃんが」
 それは一大事だ。
「た、助けに行くよ」
「わかった」
 玄関に向かおうとするちらりを制止し、念じることで空中浮遊することを教えるセンちゃん。なんとか体を浮かせたちらりといっしょに窓から飛び出し、遠隔操作で窓ガラスの向こうの鍵を閉める。しめぶりまほうつかいちらりんは兄を救うため、黒山羊のマスコットと夕暮れの空を飛ぶ。

▼Bパート
 八獣学庵体育館。
 高峰禅裸はバスケットゴールの四角い板のところに、ちょうどリングに両足を開かせられるようなかたちで縛りつけられていた。
「降ろせよっ、離せよっ、お前誰なんだよっ、あと飛べるのいいなぁっ、教えてくれよ」
 ものすごくはしゃいでいる。
「……わりと余裕があるな」
 その眼前で浮いているのは陸上のユニフォームを着たチーター獣人。
「おとなしくバスケユニに着替えてほしいだけなんだけどな」
「な、何かほかにないのかっ!? 俺がこの世界の運命を握っている鍵だとか」
「ない」
 あっさり切り返す。
「じゃあどうして俺なんだよっ」
 何か自分が捕まった特別な理由が欲しいらしい。
「褌穿いてるから。ダメだよ褌は」
「褌は俺の愛用の下着だっ」
「やっぱムリヤリひっぺがすしかないか」
 そういうとすぽゆにまほうつかいは禅裸のズボンのボタンを外し、ファスナーを開けていく。大きめの隆起が褌を押し上げているのを確認し、ズボンを膝の辺りまでずりおろす。
「こんなに大きいんだからさ、バスケユニ着ようよ」
 布越しに頬擦りしながら笑って誘うも、禅裸の心は揺らがない。
「俺の膨らみを受け止められるのは褌だけだっ」
「はやたん、話が噛み合ってるのかないのかよくわかんなくなってるよ」
「そうだな、リスカル」
 リスカルと呼ばれたプレーリードッグ獣人がこのすぽゆにまほうつかいのマスコットらしい。同じく陸上のユニフォームを着て、はやたんの肩に乗っかっている。
「禅裸にはこの世界にスポユニを知らしめるトップランナーになってほしいんだ」
 はやたんの持つ緑のバトンが禅裸の太腿に軽く突きたてられる。
「だから、褌はダメ」
「痛くしないから、あんまり暴れないでね、高峰君」
「うわああああああっ」
「やめてえええええっ」
 体育館の扉を開いて現れたのは、フライ返しを持ったエプロン姿の赤銅西洋竜人。さっき射精と変身を覚え、どうにかこうにかまっすぐな飛び方を体得し、いましがた学庵に辿り着いた、新たな魔法使いである。
「お兄ちゃんを放してっ」
「お兄ちゃん」
「お兄ちゃんー」
「お兄……ちゃん」
 チーターとプレーリードッグと実兄に輪唱される。
「あ」
 はっとセンちゃんに向き直るちらり。おろおろしている。
「ど、どうしよう、お兄ちゃんに僕がまほうつかいってことバレちゃうよっ」
「だいじょぶ、そのカッコのときはぜったいバレない仕組みになってる」
「ほっ、良かったぁ」
 小声で安堵する。そんな遣り取りに興味を示したのか、それともあきれたのだろうか。チーターがこちらに降下してきた。
「ふーん、エプロンね? お仲間じゃないのは間違いなさそうだけど、何属性なのさ? あ、オレはすぽゆにまほうつかいはやたん。相方はリスカル」
「こんにちはー」
「こ、こんにちは」
「で?」
 問われても答えがない。センちゃんに向き直るちらり。
「じ、自己紹介したほうがいいのかな、それに属性って何」
「しめぶりまほうつかいちらりん。相方はセンちゃん」
「しめぶりまほうつかいちらりん、相方はセンちゃんっ」
 見事な鸚鵡返しである。
「へー、ブリーフなんだ?」
 ぐるぐるとバトンが回されるのと同時に、軸を取り巻くように渦ができ始める。びゅうびゅうと音を立てて、やがて中空で円柱状に成形される。
「いちおう、確認、ね……渦巻く風よ!」
 詠唱とともにバトンを前に突き出したはやたん。ものすごい勢いでちらりんの足元に渦がぶつけられる。驚いて腕で目の前を覆い、吹き飛ばされないように足に力を入れたちらりんだったが、風力にエプロンは跳ね上がり、気が付いたときにはその下着と太腿があらわになっていた。
「わ、わわっ!」
 前に浮き上がったエプロンを押し下げるちらりん。
「かーわい。まだちっちゃいじゃん」
下着の膨らみを見定められた。
「なにするのっ」
 恥ずかしさに抗議しても、はやたんののらりくらりとした姿勢は変わらない。
「あ、恥ずかしいんだ。初々しくていいね。オレのも見とく?」
 そういうとはやたんはユニフォームの太腿のとこを掴んで引っ張り上げ、軽く中身を見せつけた。
「すぽゆにまほうつかいの場合、アンダーサポーターで素を受け止めるんだよ。ちらりん、初めてだろうから教えておいてあげる」
「はやたん、サービス良すぎるよ」
「いいじゃん? 世代交代、ってやつだよ」
「それはどうかと」
「せせせセンちゃん、なにがなにでどうなってるの」
「しめゆにまほうつかいの属性は風。だから風で攻撃する」
「荒ぶる風よ……そーいうことっ!」
 はやたんの詠唱はさらに強い風を生じ、ちらりんのエプロンを狙う。足元から潜り込んだ強風はちらりんのブリーフに直撃し、精液を乾かす気化熱でどんどん下腹部の熱を奪っていく。
「冷たいよぉぉぉぉ」
「ちらりん。そのブリーフの精液が乾ききってしまうと、魔法が解けてしまう」
「えええっ」
「逆に、相手の精液を薄めてしまえば、ちらりんの勝ちだ」
 びゅんびゅんと吹き荒れる風。ちらりんのブリーフは次第に周辺からぱりぱりとしていく。これはキケンだ。
「そのフライ返しを相手に向けて、呪文を唱える」
「じゅ、呪文って」
「何でもいい。ブリーフは火を司るから、それっぽいのを」
「ん……んん……クリームシチュー」
 叫ぶと、べちゃっ、と染みついた。
 フライ返しの先端から熱い白濁液が飛び出し、はやたんとリスカルを包みこむ。ニンジンとタマネギとコーンが色とりどりである。
「熱っ、前見えないっ、なんか美味しいけどしょっぱい」
「はやたん、マズいよこれ。スポユニに染み込んで精液、薄くなってく」
「マジ」
「見た目はたんなるぶっかけっぽいけど、確実に魔法力削ってくね」
「帰って着替えたほうがいいか」
 と、はやたんが諦めると同時に、体育館に響く風鳴りが止まった。捲れ上がったエプロンを再度直すちらりんを尻目に、その場を去っていくすぽゆにまほうつかい。
「ちらりん、ね。覚えとくよ。次はこうはいかない……うう、べちゃべちゃする」
「キノコ入ってるの好きー」
 白くぬめった線をフロアに残しながら、入口へ向かうはやたんとリスカル。いっぽうのちらりんはどうにかバランスを取りつつ浮遊して、括りつけられていた禅裸を救出した。
「だ、だいじょうぶ、お兄ちゃ……禅裸さん」
「助けてくれてありがとうっ、魔法使いさんっ、俺、こーゆーの憧れてたんだっ」
「う、うん……」
「相当なヒロイズム耽溺だな」
「でもわかってる、正体はまだ明かしちゃいけないんだよな」
「かえって都合は良さそうだな」
 センちゃんが呟く。
「あ、あの、禅裸さん、僕、もう行かなきゃ」
「そうか、もうすぐ変身が解けちゃうんだな、わかった、ありがとうちらりんっ」
 満面の笑みでこちらに手を振りながら、体育館入口に駆けてく禅裸。残されたちらりんがぺちゃっと床に座り込む。
「……つかれたぁぁ」
 すると桃色のもやもやに包まれて、ちらりの変身が解けた。ブリーフ一枚の姿に、とっさに膝を抱え込むちらり。
「ど、どうしよう、こんなカッコじゃ帰れないよ」
「もっかい変身するしかないか」
「もっかい?」
「もっかい」
 言うが早いがセンちゃんはちらりのブリーフに手を掛けた。
「むりぃぃぃぃっ」

 ふらふらになったちらりが家に着くと、隣の部屋から兄の声が聞こえる。
「ふんどし魔法使いらぜんらっ!」
「将来有望だな」
「お兄ちゃん……」
 ちらりは兄の適応力にあっけにとられるばかりであった。

▼次回予告
 「やっ……ダメ、んっ、んんっ」
 戦いの途中でブリーフを乾かしきってしまったちらりん。でももう出ない。そこでセンちゃんが助言するには「ほかの誰かの精液を用いてもいい」とのこと。いちばん近くにあった家には同じクラスのキリン獣人、七味箪笥。咥え込んで啜り上げ、口移しでぽたぽたとブリーフに垂らしていざ出陣。
 「せんちゃんとおなじことをする」お楽しみに。

▼Cパート
 風呂場でボクサーブリーフを脱いだ姿は、ちらりより二回りか三回り体格の大きな、黒山羊獣人だった。
「せ、センちゃん!?」
「ん、どうした、ちらり」
「おっきい」
「しめぶりまほうつかいのサポートのときは肩に乗らないといけないからな、ちっちゃくなるんだ」
 足腰がへなへなになったちらりは、センちゃんの言葉に甘えて背中を流してもらうことにした。いざお風呂場で居合わせたのは、ちっちゃなマスコットではなく、すらっとした黒い体躯。兄以外で、このくらいの年齢の相手の裸を見るのは初めてで、つい目を伏せてしまう。それでも、筋肉質で骨肉隆々な兄とは違う、細身の腕、すらりとした足、それから、ボリュームには欠けるがしっかりと形成された、性の部分に気を取られてしまう。
 湯気の中、背中をセンちゃんに流してもらうちらりであった。

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