梅雨である。
窓の外を見つめる蒼場が、ふう、と溜息をついた。
「蒼場?」
「繊維さん。長雨ですね」
“さん”付けの呼称にもすっかり慣れた繊維が、近くの空席に腰かけながら会話する。
「この国の雨季は、なんとも過ごしにくいですね」
湿気が高いため、ほんのり重たい毛皮を疎ましく思いつつ、蒼場が繊維に笑う。
「蒼場の故郷は、こんなに降らないんだもんな」
「そうですね。砂嵐や雪のほうが多いです」
雨音が続く。
「太陽が拝みたいものです」
「週末まで止まないらしいぞ。予報だと」
眉間に皺寄せる蒼狼。
「それはまた、哀しいことですね」