魔鏡 2 kyousuke作
 この村の神社は”鏡神社”と言われており、全国津々浦々から呪われた鏡が送られ、浄化する……最盛期は明治の中頃で近代化の煽りで破壊された神社に御神体とされた銅鏡が多く、鏡神社の神主一族では手が足りずに分家までも動員したほどだったらしい。大抵の鏡(御神体)は浄化できたがどうしても浄化できない銅鏡は村人達が丁寧に祭り上げる事にした。
 最大の魔鏡なのが大正時代に東京に住むある大富豪が態々馬車や汽車貨物の運賃まで運ばれた大きな姿見三枚……これは人の業が詰まりに詰まった品物であり、夏祭りのきっかけにもなった。
 この鏡は明治初期に吉原にある遊郭に設置され、幾多の男女の営みを映して来た……その後、この鏡は少年/少女娼婦を扱う宿に引き取られ、禁忌の行為を映したのである……その宿で女娼と男娼の心中事件が起きた、二人はその姿見の前で互いの胸を包丁で刺して絶命し血飛沫はその鏡にかかった。
 その後その姿見は夜な夜な童貞や処女の子供を誘惑し互いに性行為に及ばせると言う怪現象が起き、キリスト教の悪魔祓いが出てくる騒ぎになった……。軍隊が銃で銃撃しても元に戻り、困り果てていた所で鏡神社の噂を聞いた大富豪は自らの足でこの村に赴き、魔鏡化した姿見三枚に憑依する悪霊を払うように依頼したのである。成功報酬は900円、だがそれは当時としてはとんでもない大金である。

 戦いは一族総出で三日三晩続き、子供の何れも両性具有化して乱交状態になったが三日目の晩に元に戻った。払う事が出来なかったがお札を貼り付けた和紙で鏡面を多い、しめ縄で固定した大きな戸板で封印する事に成功したのだ。そこで依頼主はこの三枚の姿見を鏡神社がある村へと運ぶ事にした……この鏡を悪用されない為であって、それが彼に残された贖罪だった。そう事の発端となった心中事件の関係者の一人なのだ。
 姿見に憑依する二人の霊は子供の守り神として崇められ、この二人は子宝繁盛の神へとなった。そして村人達はこの村で生まれ育った少年少女を例外なく一二歳になると夏祭りに霊を憑依させたのである。これが今に続けられているのは見返りがよかった。なぜかこの村の出身者は夫婦円満で子宝繁盛で、一生を得る事が出来るからだ。
 祭りはほぼ夏休みに入ってから始まる。ヨリシロを経験した者は男衆と女衆と呼ばれており既婚と未婚と区別される。そしてヨリシロを経験した未婚女性は例外なくこの時期は両性具有になり、彼女達の一番絞りを鏡神社に収めるのが家長の役目である。家長に関しても息子が満二十才になったら継承させるのが普通だ……この村は極端に男女の比率が悪くはないので子供が偏らないのでこの制度が維持できるのだ。
 これが終わると、未婚の男女はあちこちでアオカン(ヤカンというべきか……)、夜這いとなる。既婚者も今時で言うスワッピングをするわけだ、何せこの村で生まれ育ったら複雑な恋愛関係を経験するので分別は出来る。普段は鴛夫婦だがこの時期になると気心知れた友人夫婦と互いのパートナー交換する光景も見受けられる。


 続
魔鏡 3
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