不思議なペットシップ 2 kyouske作
 私の店は昆虫も扱ってますが、これも完全予約し種類によっては断らせて頂いております。これも生態系保護の為であり、動物や昆虫を扱う私の信念です。

 近所の高校……私は愛用の箒に跨り屋上に降り立ちました。魔法使いの会合は頻繁にあり、目的はこの世界に漂う”魔力”の正しい調整を担うのが目的で、地元高校は会合の場所です。若者は私だけで後は十年来のベテランが殆どで表の職業も様々……。
「おお、篠原の若さんか……地域全般の小学校の動物問題の解決、誠に助かりました」
「いえ、いえ……社会に役に立てるなら、少々の”勉強”も……」
 私と話しているのが小学校の教頭先生をしている人で私もお世話になった。
「川瀬さんは?」
 川瀬とは私が預かっている猫耳少女の事であり、数ヶ月前までは普通の女子高生でありましたが、事もあろう黒魔術を扱ったばかりに召還した悪魔に魂を喰われ、あわや淫魔になりかけましたが私達が総力を持って撃退し長老が召還した下級悪魔の親玉である上級悪魔との会合で今の様な姿になっている。昼間は店員であるが夜になると月光の魔力で猫になる訳であるが、店内だと魔方陣の影響で呪いも半減になる訳だ。
 我々は従者と呼ばれる使い魔を持ち、魔力で生み出すか、戦って契約するかが普通であるが彼女の様なケースもあるのだ。
「皆さん、集まって頂き誠に感謝してます……実は最近魔界から来るテキ屋の中に協定違反する者がいて、魔界テキ屋組合は捜査協力を要請してます」
 長老が開口一番に言うと私は手を上げて言う。
「動物系ですか?」
「そうです、奇しくも数日後には夏祭りが開始されるので……皆さん、よろしくお願いします」

 私は店に戻ると事情があって引き取ったペット達が済むフロアへと足を向けた。大きな杖を持ち呪を唱えると煙と共に人になる。
「なんですかい!オヤブン!」
 片目に大きな傷がある如何にも”ヤクザの兄貴”と言う感じの和服を着た男が立っていた。
「ボス、数日後に夏祭りがあるが……魔界人のテキ屋が禁制の品を売る……排除するぞ」
「ヘイ!篠崎の旦那に世話してもらっている手前……お勤め致します」
 ボスは猟犬であったが飼い主が山に捨てる目的で置き去りされた。その後は同じ境遇であった仲間と共に生活し人食い熊との死闘を演じた。彼とも出会いは数年前の東北地方のある県で頻発した人食い熊退治に駆り出され、廃墟になった神社の境内で見つけた。
 その時は野犬の死骸と血で地獄であり、ボスもその死骸に埋もれる形で深手を負っていた。人食い熊の正体は魔界熊で時々時空のぶつかりで迷い込む事がある。彼の協力もあって魔界熊は仕留められボスを引き取る事にした。
「旦那、それにしても数年前の騒動で締め付けが厳しい筈ですが……」
「あちらさんによれば、無許可でする奴が多いって言う事だ……桜?」
「分ったわ……それと無く皆にも話しておく」
 キャットタワーにてマタタビを咥えている女性……普段は猫である。

 数日後、私達は神社にて問題のテキ屋を探していた。情報によれば生き物を扱っているが、魔界昆虫であり人間と融合する種が多い。魔法の道具してはなくてはならない物で人間界に持ち込むときは乾物化が義務つけている。この手の業者は参道ぞいにある奥まった所で開いている事が多いのでボス達はさりげなく歩き回り匂いを嗅ぐ。魔界人の匂いは人間とは違いキツイが人間の鼻では魔法で誤魔化す事が可能であるが元来霊感が強い猫や犬は感知する事が出来る。
「ボス…」
 浴衣姿でシナモンステックを咥えた桜が目線はある出店に向けられていた。昆虫を売っているらしく二人は近寄る。
「ここの責任者は?」
「自分だが…」
 店にいた若いテキ屋も眼孔が鋭くなった。
「あんさん、この世界に持ち込んではならぬもの持ち込んだな……」
 テキ屋の青年はバッとジャンプした。服は破け、頭に複眼、手足は剛毛に覆われ。胴体から四本の足が出ていた。樹木にしがみ付き威嚇する。
「あんさん、大人しく引き払ってや……」
「そうは行かんよ!」
 クモ男になった若いテキ屋は糸を吐き出すがボスと桜も半獣モードになる。
「人間に尻尾ふりあがってぇ!」
 地上に降りたクモ男の足が鎌状になり、地面に突き刺す。
「すばしっこいな……こいつを見ろ!」
 クモ男の子分らは二人の少女を抱えていた。
「既にワイの子種を流し込んでいる……この二人だけでは無い!二匹とも上等な餌にしてやる!」
「この外道が……」
 ボスが持っているポン刀を構え、クモ男らの部下等は捕獲しようと糸を吐くが二人の足元に魔方陣が出現し一人の少女が日本刀を持ち切裂き、背広に大きな杖を持つ青年が宙に浮いていた。
「雫のお嬢さん!篠崎の旦那!」
「二人ともありがとう……さて、時間が無いので……雫ちゃん」
 雫にも狼耳と尻尾に袴着姿であり袖口には獣毛も見えていた。着地すると、彼女は裸体の少女を捕まえているクモ男の部下の腕を切裂き、獣人化しているタローが片手で掴む。
「くっ!」
 クモ男らが逃げようとしたが篠崎は召還したドラゴンの炎に焼かれた。黒焦げになっているが簡単には死なないのだ。これだけの騒動であるが、祭りに来ていた人は察知されなかったのは結界が張ってあってからだ。

 数時間後、魔界から取締官が魔界テキ屋集団を引き取りに来た。
「犯行の動機はノルマか…確かに喰われるもんな…」
 私はヤレヤレと言った感じで瓶にある魔界蜘蛛を見ていた。あの後二人の少女は近所の診療所に運び、そこの女医さんのお陰で蜘蛛化は免れた。彼女も魔女であり、魔力を含んだ精液により、慌てて魔界蜘蛛は体から這い出した所で私が捕まえたのである。
「マスター、メッセンジャーが来ましたよ」
 診療所の庭に降り立った少女の片手には箒を持ち、メッセンジャーバックを持っていた。
「これを、スコットヤードまでね……」
「分りました」
 少女は瓶を鞄に入れ、箒に跨るとフワッと浮く。

 数日後、親父から手紙で蜘蛛二匹は無事に魔界に送ったと言う事だった。


 終

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