お化けテナントビルとは通学路から少し離れた場所にある建物でバブル時代からある……噂ではお化けが出ると言う事で素行が悪い中学、高校生が肝ためしに使う事もあったが老朽化が激しく一部が崩れて小学生が大怪我する事故も起きている。
ゆんは入った事がないが久実の事を考えると侵入しざる得ない……彼女は
自転車を近くの公園の駐輪場に置き連絡用に持たされているケータイの非常通報機能を押すと自転車に付いているバックの中に入れると彼女はお化けテナントビルへと入る……ドアが開いていてゆんは気を集中していた……埃が立ち上り天上に設置された採光窓からの光は月夜の物だった。
「うふふふっ……一人で来てくれるなんて…」
ゆんは声がした方を見ると二階の吹き抜けにあの女性がいた…いや少女と言うべきだろう。
「私の名前は銀河帝国軍の雷叶……貴方をスカウトしに来たの…」
「ふざけないで!」
ゆんが叫ぶと周囲から戦闘員が出現した。
「それにあの子はわが帝国にとって興亡の運命を握る者なの……私が雷叶の上司で神弥(かみや)で銀河帝国の人間、即ち宇宙人と言う事」
ゆんは冗談にしろ本当にしろ危機的状況になっていた。映像が映し出され下着姿で眠っている久実が映し出された。
「我が軍団に与すれば彼女…妖精王女の近衛隊長として迎え入れるが…」
「断る!」
ゆんは二人の元に近付こうとしたが戦闘員が襲い掛かる。
「どけぇ!」
ゆんは次から次へと蹴りと突きを食らわし戦闘員を倒していく。彼女はナックルガードを装着し戦闘員の戦闘能力を訓練モードにしているとは言え一撃で倒せるとは思いもしなかった。
「雷叶…」
神弥が言うと彼女は持っていたスクリューウィップを振りゆんの胴着を切裂くと同時に黒い三つの人影が襲い掛かり彼女は押さえつけられていた。
「げっ!次朗に清二に宏!なんで……」
三人はスイムパンツ一枚だけであったが筋肉が異常に着き過ぎている……心なしか股間の物も危ないと感じるのは雌のDNAなのか本能なのかゆんも危ないと感じ暴れるが三人の力はしっかりと彼女を押さえつけた。すると三人の体から獣毛が出て来てお尻からは尻尾が生えてきた……頭部も耳が尖り鼻先や口が犬の形状になった。スイムパンツは破れ一物も勃起し叢から肉の凶器が除き出るとゆんは恐怖を感じた。
「お預け!」
三体は直ぐに雷叶の袂に行きお座りをするが彼女はナイフを投げ柄に付いた球体状の物体からガスが出てゆんは眠ってしまった。
「後、人を呼ぼうとしても貴方が入った時点で結界に覆われているの…このビルはね」
神弥が言う言葉は本当だった……外では警察が何度か通り過ぎたが異常に気が付かずに通り過ぎたからだ。
ゆんが気が付いた時には自分とは一生縁がない下着を着けられてベットに寝ていた。自宅のものではなく寧ろファンタジーに出てくる王室の寝室に近い。
「気が付いたかしら……貴方の友人の願いで丁寧にあつかっているけど……選択権はないの…」
雷叶が出現し手には注射器が握られていて針から垂れる薬剤の雫がゆんに恐怖感を与えそれが判断を狂わせ彼女の首筋に注射針が刺さった!
「いっ!」
ゆんの体が動けなくなり戦闘員が抱えていくと隣の部屋に連れて行かれた。
「貴方にもっと力を授けてあげる……可愛い妹が出来るから…嬉しいわ」
手術台に載せられゆんの意識も朦朧としていた…自分はどうなるんだろう?
「朝日 久実ちゃんの正体を教えてあげる……私は地球出身で神弥様の力で今の姿になったけど神弥様は別の時空にある銀河帝国から派遣された神官武人で妖精女王の子供を捜した……帝国がある時空には若い純血の妖精は絶えている…帝国が確保した女王は先の戦いで能力を使い果たした…それは新たなる生命を別の時
空に飛ばしたから…」
後ろから神弥が言うと雷叶は頭を下げる。
「妖精の能力は軍事面ではなく帝国領民の延齢化や不老が享受できた……しかし最近になって遺伝子上疾患で問題になっているの……だから我々は妖精女王の血を持つ子を探した…」
「それが…久実ちゃん…」
空間に立体映像が出る。ベットに寝転がり呆然としている久実の様子が見て取れ背中にはトンボの様な透明な羽があった。
「……証拠に七色の羽………そして黄金に輝く粒子…汪家の証拠…後は改造した後で話してあげる」
装置がゆんの身体を固定し医療器具が装着されたアームが迫る…その時ゆんの身体が光り輝き医療器具が破壊された!
「な!ナンダ!」
側に居た医師が腰が抜けて叫ぶとゆんを固定した器具が破壊されゆんの背中にも羽が形成され光が下着姿だった彼女の姿を変えていく。
「馬鹿な…武装妖精は武器が触媒になっているのに……まさか…格闘妖精!!!?」
彼女の瞳はグラデーションになっていたが自分がする事は判っていてその部屋から飛び出し羽で飛び回る。雷叶が慌てて指示を出していたが神弥は藁っていた……これは手に入れれば本国での評価は上がると。