それから翌日……数人の忍びが秀吉の前に出現する。何れも成年でありオートドックスな格好をしているが眼つきは異様に不気味だ。
「水忍衆です……この度は雫殿の要請が御館様に認められ御頭の命を受け参上いたしました」
「ふむ…所で噂によると人外と言う事だが…」
「その通りです…雫殿は古来棲んでいた大狼を祖先に持ち我らは大蛇を祖先に持ってます……大抵は恐ろしがり忌み嫌う者が多く我らはめったに表の世界に根を張る事はありませんが、御館様は我らを迎え入れてくれました」
秀吉は信長の心意気と男気に関心していた。
その夜……満月の光を浴びると雫は裸体になり獣毛は正しく収穫期の稲穂を様相になり耳が尖り顔付きも狼の物へとなる。
「私の母は陰ながらもお千代様をお守りしてましたが、母親も深手を負い死にそうになった時に貴方様の部下らが手厚く介護し貴方の母親が住んでいる庵へと預けてくれました……ですから、私は一豊様をお守りし山内家再興の為に働きます」
大狼になった雫はそう言うと一豊は槍を持ち馬に跨る。槍は彼女の父親が使っていた槍であり不思議な力を持っていた。
「行くぞ…」
一匹の大狼と一豊の軍勢は静かに動き出した。
一方数人の忍者も変身し顔が尖り手足が胴体へと飲み込まれ尻からは尾っぽが出ると水中を泳ぎ敵城へと這い上がると同時に塞いでいた堤防を爆破する。これは家康が表伊賀宗に火薬の扱いが上手い者を派遣していたのだ。水は濁流となり川へと戻り馬が走れるようになると秀吉の軍勢は城へと流れ込んだが敵将は白旗
を上げた…数匹の大蛇は敵の兵士数十人も丸呑みしていた。
秀吉は部下に落城した城の管理をまかせると後の後世に伝わる中国大帰しを敢行しその中には数匹の狼や忍犬が周囲を警戒して動いたとも言われている。