秘伝忍術張 信長配下の妖忍2 kyouske作
 さて、中国攻めを任されている羽柴 秀吉の軍勢にも信長暗殺未遂の報が入る事になるがそれを知らせたのが秀吉の部下で恐らく織田家に仕える武将でも一番の堅物で愛妻家の山内 一豊の配下”黒犬の雫”と呼ばれるくのいちだった。
 正確に言えば彼の妻であるお千代の叔父の部下だったらしく彼女もまた裏伊賀宗と呼ばれたくのいちである……しかし一豊はそれまでは彼女は只の少女としか見てなく彼の目の前に出現した時にはまるで地獄から来た狼の様な感じがしたらしいが彼の目の前で人間へと戻って行きようやくわかったのだ。
「雫!どうかしたのか!」
「羽柴様に至急お目通りを!」
 一豊は頷くと彼女は風呂敷から忍び衣装を着て一豊の案内で秀吉の下へと行く。
「なぁああいぃいいい!」
 真夜中であったが秀吉は目が覚め慌てて始める。
「明智殿は表伊賀宗が倒したと言う事か……」
「はっ……羽柴殿…この城を落城した後に直ちに兵を引き上げてください…この雫、未熟者でありますが…」
「そうか、よし……現在水攻めにしているが…」
 雫は考え込むと妙案を思いつき忍犬を一頭借りると文を書き上げ首輪にある書状入れ入れると獣目になり見つめるとその忍犬は駆け出す。
「水使いの者に応援を呼びました……三日後にはこの戦は終わってます」
「そうか、ゆっくりと休め」
 秀吉は雫に言うと彼女と一豊は下がる。

 それから翌日……数人の忍びが秀吉の前に出現する。何れも成年でありオートドックスな格好をしているが眼つきは異様に不気味だ。
「水忍衆です……この度は雫殿の要請が御館様に認められ御頭の命を受け参上いたしました」
「ふむ…所で噂によると人外と言う事だが…」
「その通りです…雫殿は古来棲んでいた大狼を祖先に持ち我らは大蛇を祖先に持ってます……大抵は恐ろしがり忌み嫌う者が多く我らはめったに表の世界に根を張る事はありませんが、御館様は我らを迎え入れてくれました」
 秀吉は信長の心意気と男気に関心していた。

 その夜……満月の光を浴びると雫は裸体になり獣毛は正しく収穫期の稲穂を様相になり耳が尖り顔付きも狼の物へとなる。
「私の母は陰ながらもお千代様をお守りしてましたが、母親も深手を負い死にそうになった時に貴方様の部下らが手厚く介護し貴方の母親が住んでいる庵へと預けてくれました……ですから、私は一豊様をお守りし山内家再興の為に働きます」
 大狼になった雫はそう言うと一豊は槍を持ち馬に跨る。槍は彼女の父親が使っていた槍であり不思議な力を持っていた。
「行くぞ…」
 一匹の大狼と一豊の軍勢は静かに動き出した。

 一方数人の忍者も変身し顔が尖り手足が胴体へと飲み込まれ尻からは尾っぽが出ると水中を泳ぎ敵城へと這い上がると同時に塞いでいた堤防を爆破する。これは家康が表伊賀宗に火薬の扱いが上手い者を派遣していたのだ。水は濁流となり川へと戻り馬が走れるようになると秀吉の軍勢は城へと流れ込んだが敵将は白旗 を上げた…数匹の大蛇は敵の兵士数十人も丸呑みしていた。
 秀吉は部下に落城した城の管理をまかせると後の後世に伝わる中国大帰しを敢行しその中には数匹の狼や忍犬が周囲を警戒して動いたとも言われている。


 続
忍術秘伝張 信長配下の妖忍 3
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