御狐様の結婚式kyouske作

 第二夜

 代狐になった亮と歩は本殿の奥にある客間に宮司らに運ばれてお風呂に入れられて用意された布団の上に包まって寝ていた。朝日が上がっても祭に参加した人は大抵寝ている……動ける者は精通前の男児か生理が来て無い女児達ぐらいで高校生の中で年長者が音頭を取って依狐を世話する事になる……高校生や中学生も参加しているが彼らは朝一発して来ている……だから就職と同時に結婚も珍しくない……。
「お〜〜しちゃんとかき混ぜろ〜〜〜」
 大鍋の水飴作りは児童会の役目であり、古来砂糖がまだ貴重で薬として使われた頃は人工的な甘味として水飴が用いられた。これは依狐になった亮と歩の携帯食の一つでよく酒とか入れる瓢箪徳利に詰められる……。無論子供達も良く舐めるのだ……。
 二匹の依狐が背伸びすると巫女衣装を着た少女らがお膳を運ぶ。主食は飯であるが川魚や昆虫とか木の実とかも出される……二人は今は狐になっているので人間と狐も食べられる物を出す訳だ。お膳も脚が短い独自の物を使うわけだ……。瓢箪徳利には先程の水飴が詰められて、依狐になった亮と歩首の所にぶらさげる。
 そして依狐になった子供の家紋が画かれた絵が付いた小さな提灯が用意される。二人が向かうのが御狐様のお里と呼ばれる所で人間は絶対に行けない場所にある……本殿の神棚の下に洞窟がある……神主さんの呪文で神棚が動き代狐になった亮と歩は提灯の灯りを頼りに歩いていく………。
 洞窟は光苔が灯り幻想的な世界を演出する……何処かのRPGとは違い単純な通路である……。二匹の依狐はトコトコと歩く。途中で広大な空間にでるが滝と池があるだけでありここで水を飲み体を休める。

「こ〜ん(きつくない?)」
「コン!(大丈夫……)」
 二匹は鼻を軽く突付くと先へと進む……別に道案内がある訳も無いが二人には方角がわかるのだ…。そして陽の差し込む方へと行くと御狐様のお里が見えた……二人を出迎えたのが御狐様のお使い様と呼ばれている妖弧である。少々大きい以外は普通の狐である。御狐様は普通の狐に比べるとかなり大きく特に代狐になった人間はそのままの大きさで狐化している。
「お迎えに上がりました……ささっ……長老がお待ちです」
 すると依狐になった亮と歩の姿が代わる。所謂半狐状態に戻る訳だ……亮達が住む世界とここの里の力場は違う関係上そうなる訳だ。大きな神殿は村にある神殿と似ていて本殿に長老が座っている……二mがある大男でありまるで狼の様な風貌であって白い髭がぼうぼうになっている。長老は500年ごとに交代し現在四代目でありこの間就任したのが彼である。二人は本殿に上がり正座し四代目長老の前でふかふかと頭を下げる…。
「面を上げよ……二人ともお役目ご苦労様」
 二人は恐る恐る頭を上げると四代目長老はニコっとする。
「酒をもてぃ!」
 四代目が大声で叫ぶと瓢箪徳利が見た目で三十本程が半狐少女らがお盆に載せて持ってきた。
「あの……お酒は呑めないですよ」
「忘れたか?二人とも今は人間じゃないのだから問題は無い……」
 濁酒っていう酒に似ているが口当たりが良い………亮と歩は大きな杯に満たされた酒を一気に飲み干すと息を吐く……。
「おっ、いいね!最近の子供はちびちびと飲むのが多くってね……二人のお父さんもお母さんもそんな飲みっぷりだったし」
 そして料理も出される……。あっという間に大宴会の始まりである……。


 第二夜終 第三夜へ続く
御狐様の結婚式 第三夜
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