TSハザート 第十話 悪しき亡霊への鎮魂歌kyouske作

 第十話 悪しき亡霊への鎮魂歌

 ESAWT……それは対テロ法の改正により誕生した警察と自衛隊の垣根を越えた組織であり、完全に”諸軍様に支配された某半島国家の狂信者排除”を目的にしていることは確かだった。
「しかしネオ・ナチスってどうしてできるんですかね?」
「簡単よ、東西ドイツが統合されても当初は経済格差が大きかったし、西の政権だってそれなりに貧富の差は抑え切れなかったからできるのよ」
 エアウルフの操縦士である早瀬 ミサトはヘルメットを被ると、隣にいたパワードスーツを着た隊員が納得する。エアウルフはよく言えば”対テロリスト制圧多目的ヘリ”であるが、操縦士であるミサトはサイボーク化されておりヘリと一体化する事が出来る……まあ戦闘ヘリにもヘリボーンにも使えると言う事になるのだ。
 パワードスーツは日本が研究して来たロボテックの集大成であり、建前は災害救助用装備で導入されてあっという間に戦闘兵器へとなっている。日本にESWATは第二の特務警察と言う批判が韓国や中国から出てきたが当時の外相は”貴国の犯罪者が凶暴すぎるから導入した、内政干渉もたいがいにしろ”といった事もある。確かに韓国系と中国系マフィアが暗躍していてその温床が彼らの祖国にあると言う事は事実だった。
「それよりどうしてまた、こんな極東に?」
「東シナ海にある地点でUボートが発見された。それが敗戦濃厚になった年にキールから出て日本を目指したUボートだったわけさ……所がアメリカ軍に見つかってジ.エンド……」
 それだけでも話題性があるが記録を辿るとトンでもない宝が載っていた。隊長である高沢 大輔がエアウルフを運ぶ大型トレーラーの助手席から有線通信で話す。
「その時代のドイツ芸術協会って言うのは、ナチのプロバカンダに大いに貢献していて政権に尻尾を振った芸術センスが無い者が大勢いて、ゲルマン民族の優位性を誇示する作品を描いていた。その画家の一人でアルノー・バントっているのだが、彼の作品は旧ソ連が街と共に灰にして幻の一品になったが、ある画が持ち出されて潜水艦と共に消えたって言う伝説が連中の間で飛び交っていた」
「それが本当だったですね」
「画はどうやらある画商がさっさと取って修復し、連中が帰ろうとしたがそこにあの事件が発生し獣人部隊の実現出来そうになった」
 事態を重く見た米軍、自衛隊も異例の展開となっているができればESWATでケリを付けたいと言う事だった。大型トレーラーのカーゴ部分に搭載されたコンテナが二つに分解され、黒い機体に機首に装備された大型ガトリングガンに機体兵装ステーションとなった主翼に搭載されたミサイル…静寂性を誇りつつも、高速移動を実現した六枚のローターに機体後部にせり出した筒はティルローターの役目をしている。
 筒内部には空洞になっており、機体後部から出るノーターエンジンファンの空気の流れは一部下部にあるスリットから出され、メインローターから出る気流が一番端にあるダイレクトジェット装置が相互に働く事でティルローターと同じ働きができる。しかもこの方がティルローターよりも利点が多く静寂性も貢献できる……。機体は空気を切裂く音を残して夜の空へと舞い上がる。
「絵画だけなら監視だけで済んだのに、地下都市や周辺にいた子供をさらうなんて……」
「研究対象と活動資金確保の為だよ」
 ミサトは直ぐに判った……。

「船が出る前に制圧しろ、ティンカーベル……ブリッツに銃口を向けつつ隊員の降下させろ、それと地上班は子供の奪還を第一に考えろ……」
 隊長が言うと隊員らの返事が返って来る。

 港では静かだった……ただパナマ船籍の貨物船の周りにトラックが横付けされ、十人程の子供らが貨物船に乗せられようとしたいた。
『この画が導いてくれたようだな、同志諸君』
 指揮官らしき男が喋ると周囲の男らが相打ちを打つ様に頷く。
『指揮官殿、大丈夫でありましょうか?』
『退廃主義のアメ公とは違いノー天気な軍隊の国だ……かつては同盟を結んだ国とは思えんよ』
『しかし、科学力や工業力は侮れません』
『シャッハフェラー(小隊長の意)………その通りだ、だが今の政権はヤンキーに加担しているのに、どうしてアラブの連中は制裁をしない所は援助しているからだ……それだけが取り柄だ……』
 子供達を見て言う二人の男……船に乗り込むタラップに向かわせる銃を持つ兵士ら、何れも第三帝国を思わせる軍服を着ている。
『我々が進める獣人化研究も報われますな』
 エアウルフから照明弾が発射され、同時にメガクルーザーと新型ウニモグ数台が猛ダッシュで男らの元に接近し、車の外側に掴まっていたパワードスーツを着た隊員が銃を構える。
『こちらは日本国家治安機構所属ESWATだ!誘拐の現行犯で貴様らを逮捕する』
 ご丁寧にドイツ語で叫ぶミサトは銃口を貨物船の艦橋に向けた。ESWATが素早く動き子供らを捕まえると直ぐに装甲板に護られたウニモグの荷台に押し込む。
『貴様ら!この高貴な行いを邪魔をするとは!』
 船内から物騒な武器を持った兵士らが出てきた。高沢はため息を付いた……どうも、彼らのナショナリズムには異常に見えるが外国から見れば日本人の宗教観が異常に見えるそうだ。
「隊長、どうしますか?」
「専守防衛権を行使する、生け捕りにしろよ」
 高沢は銃を構える隊員に言う。
「いいんですかね?」
「外務省やドイツ大使館は穏便に済ませたいそうだがこの状況じゃ無理だろ、流儀を教えてやれ……指揮官だけは殺すなよ」
 相手は対戦車ライフルまで持ち出したがエアウルフが容赦なく応戦する。
「所轄に言っておけ、絶対にここにマスコミを入れないようにしろ………殺されるぞ」
 所轄の警察署は現場に通じる道を全力を持って封鎖しているのだ。船倉から何かが飛び出した……それはEU軍の制式ヘリだ……恐らくあれに指揮官が乗っている筈だ。ミサトは標準を合わせようとしたが下から何かがEU軍の制式ヘリに取り付きメインローターを叩き壊し、持っていた対戦車ライフルを正射しEU軍の制式ヘリは不時着した。
「何!」
 ミサトはサーチライトを付けた……それは少女の体に天使を思わせる羽と猛禽類の鳥の足と思しき姿だった。
『マリー、そいつは味方だ……落とすな』
 付けられていたインカムに英語で言うと少女はウィンクして貨物船に降りた。
『アメリカの獣人部隊と見受けられるが』
 高崎が言うと少女が頷き羽が背中に消え足も人間と同じになる。彼女が着ているのがレオタードに弾装や手榴弾が付いたベストに頭にはインカムが付けていた。
『この前の借りを返しだ、長崎によろしくって言っておいてくれ』
 銃撃戦が収まった頃合に大使館ナンバーの車が数台来て黒いスーツを着た男が高崎に言う。
『ご協力感謝する、特殊作戦支援用ヘリまで持ち出されると困るんでね』
 三人は連行される不埒な外国人を見ながら言う。

 翌日になり唯とレイナ、朱実は瞳と対面していた。
「しかし、ウサ耳とは……内緒話が出来ないわね」
 レオナが言うと瞳が言う。
「はい、どんな音でも聞こえるんですよ……しかも」
 瞳がおもっきりジャンプすると優に2メートルは跳んでしまい例の地下基地の一室の天井までついた。
「ノミのDNAでもコピーしたかしら?」
「どうしましょう?」
 三人は難しい顔になった。
「とりあえず、セルフディフェンスは覚えて頂かないといけないわね。銃を持ち歩く訳じゃないけどナイフとかみっちり教えてあげるから」
 梓は4人にそう言うとエイジは静かに合掌した。


 TSハザート 第十話 悪しき亡霊への鎮魂歌 終
TSハザード 第十一話 人魚
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