TSハザート

第三話 モンスターダンション

 長崎は唯と対面しまたもや土下座をした。政府としても態度をハッキリさせておかないといけないので彼なりの行動と言えよう。
「医師の話によると戻る事が出来ないそうです………しかし、貴方が不都合が無いように戸籍の性別は変更を済ませてあります」
 最近になって性同一障害者に対する見方も変わって来て性別変更のガイドライン策定も進んでいると聞いていたが唯の場合は医学的にも女性になっている。
「色々と問題があるって聞いてますが……」
「ええ……実は性転換させるウィルスと獣人化ウィルスがあの研究所にあったんです……」
 将一は呆れるSF映画ではあるまいと思っていたがあながち冗談とはいえない・・・。

 実験地下都市の地上入り口は自衛隊の部隊が展開し中にある物流搬入ステーションには何台の大型トラックが止まっていた。コンテナから重武装をした米軍兵士が降りていた。
[相手はモンスターだ!諸君は速やかに捕らえろ……]
[イエッサー]
 部下等は大声で返事する。地下都市は密閉された空間と言う事でテロや防災対策が重要になる……その為に応用されたのが潜水艦の通気システムや建物も防火扉を含めたセキュリティーシステムだ。商工地区と住宅地区はメイン通路と通気孔は繋がっているが緊急時には遮断できるようにしている。
 地区にも核施設にあるシェルターを多数用意している……幸いな事にここで使っている企業の多くが欧米型夏期休暇を実施しウィルスも爆発によって起きた高熱で死滅したがそれでも数十人が獣人化してしまった。住民の避難も思ったよりスムーズで完了した背景には個人の危機管理レベルの高さのお陰である。商工地区から他の地区へとアクセスラインは爆発事故で塞がれていたが物流ステーションと繋ぐ路面貨物鉄道ラインは生きていた。兵士らはそれに乗り込む……。

 病院にはその道の世界的権威の医者や学者らが集まり唯の体のデータを見ている。そしてあの時唯の性転換を目撃したばっかしに中谷医師は説明する事になった。医学界に身に置く彼にとっては雲の上のお方ばっかしで緊張していた。更に医療事故が起きた場合に備えて監視カメラを設置していたのでベストアングルで性転換していく映像を捉えていた。
[彼女については今後定期的に健康診断をします……]
[信じられない……是非、今後もデータを……]
 中谷医師には国際会議も使われる同時通訳システムを使って説明していた。

 薄暗い商工地区……そこに徘徊する狼男達……彼らは数日前までは人間だった。
「グルルぅゥゥ!」
 一人の女性が息を切らしていた。
「なんて数よ……空気に触れたら死滅するってガセだったの?」
 手にはハンドガンが握られていた。本来ならもっと殺傷力がある武器が欲しい……こうなると脱出するしかないが完全に閉じ込めらた状況では外に連絡を取る手段が欲しかった。彼女はバイオハザートを起こした研究所の職員でありアメリカからの帰国子女であった。護身為に銃のライセンスも取っている……とは言っても有効なのはアメリカ全土のみだが…。
「携帯電話のアンテナもダウン……このままだと…」
 強姦の末に喰われる………赤頭巾ちゃん見たく丸飲みするのではない……。その時目の前にあるスーパーを見てひらめいた……犬は刺激物を花の辺りにぶつけられると非常に嫌がる……彼女は警戒しながらも店内へと入る。
「非常事態だからね……保険でまかなってね」
 そう言いながらも彼女は胡椒が入ったビンを数本取る。そして板チョコも箱ごと持っていたリュクサックに押し込む。彼女はふと思い立った……インターネットの回線はどうなっているのか…望みを託して事務所に入る。そしてテーブルには個人のノートPCがあった……運がいい事に回線も繋がっている。彼女は自宅にあるPCと友人のPCにメールを送った……。
「ふう……ここを脱出したら…トラバーユしよ…」
 その時唸り声と同時に狼男らが来た……。ノートPCを取り、テーブルの上にあった商品サンプルである缶ビールと七味唐辛子が入ったビンを投げつけひるんだ隙に逃げ出した。

[コマンダー!生存者がいました。自宅のPCと友人宅のPCにメールが届いたそうです」
[連絡場所は?]
[商業地区のスーパーマーケットからです……]
[よし……チャーリー、レミリーは直ぐに急行してくれ……獣人化してないらしい…]
[[了解]]
 貨物用LRT(超低床路面電車)から降りた米軍兵士らは強化装甲服を来て背中にはフライトユニットが付けられていた。
[レイミー……行くぞ!]
[ええ……ゾンビでも出てきたら息子のゲームソフトの主人公ね]
 二人はスーパーマーケットへと急ぐ。狼男はパッと見ただけで十人……こうなると対戦車ライフルを持たせた司令部の判断も頷ける。すると女性がハンドガンを構えて狼男らに発砲していた……アレだ、チャーリーは急降下させて対戦車ライフルを乱射し、レイミーが女性を庇う。
「大丈夫ですか?」
「ええ、アメリカ軍?」
「そうです、生存者は?」
「歩き回っているけど……いなかったわ」
 レイミーが女性を抱えて飛ぶとチャーリーも後に続く……。
「タカクラ ツグミさんですね……私はアメリカ軍の者です……どうして感染していないのですか?」
「多分研究施設と事務所は換気システムは独立しているから………被害はどの程度に…」
「外に出た奴もいたが確保している………検査とかするか…」
 三人は無事に本隊と合流しつぐみは無事に地上に出ることできた。これが後に主流となる機動装甲部隊のデビューとなった……その後この部隊は蝙蝠男や蛇男らと死闘を繰り出し生け捕りにしたり射殺したりした。


 第三話 モンスターダンション終 第四話 耳と尻尾、”アレ”が生えちゃった少女達……へ続く
TSハザード〜第四話 耳と尻尾、”アレ”が生えちゃった少女達……〜
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