「ここだよ。さあ、入って。」
そう言ってピットは扉を開けてジュリアを先に入れた。外見は洞窟を改造して造ったような感じだった。自分の住んでいる城と比べるのは普通に考えればおかしいが、見た感じ狭そうだった。しかし中に入ってジュリアは驚いた。
「この卵・・・。」
ジュリアは案内された部屋にある卵の存在とその量に驚いた。しかも卵はニワトリが産むような茶色や白の卵ではなく、カラフルに彩られたいわゆるイースターエッグだったのだ。大きさも普通の卵に比べてダチョウの卵の大きさくらいだろうか、かなり大きかった。
「人間の世界では復活祭とか何とか言ってるんでしょ?何かの神様が復活したのを祝うお祭りみたいだけど、こっちでは生命を育む目的でこの卵を産んでるんだ。産んだ卵は森の神様が現れると言われているところに持って行って、神様に捧げるんだ。この神様が森のあらゆる生き物を創り出すんだけど、この卵が神様にとって生き物を創り出す時のエネルギーになるんだ。つまり僕たちは神様のお手伝いをしているってわけ。」
「産んでる?」
ジュリアはその言葉に疑問を覚えた。
「そう、僕達はこの卵を産む仕事をこの時期にしてるんだよ。君にはその卵を産む手伝いをしてもらうよ。」
ニコニコしながらピットは言った。卵なんて人間は産めないし、ありえるはずがない。ジュリアは動揺した。手伝いはそこまで大したことではないものだろうとタカをくくってたジュリアにはまた大きな衝撃だった。それにジュリアはまだ処女だったため、これからされること、城の教育係に最近教わったことだが、であろうことを想像すると顔を赤らめながら反論した。
「む、無理にきまってるでしょ、人間がどうやって生まれるか知ってるの!?」
「大丈夫だよ、それはこっちでできるようにするから。心配しないで。それにこの森から出たいんでしょ?はじめに約束したじゃん。」
今更もう遅い、とでもいうような感じでニコニコと含み笑いを浮かべながらピットは言った。その時ジュリアは背筋が凍るような感覚を覚えた。
将来はかっこいい王子様と結婚するまで純潔ですごして、そして処女を捧げるつもりだったのに、このままだとラビ族に処女を奪われてしまう。まさに貞操の危機だった。しかし条件を安易に飲んでしまった自分にも悪いところはあった。とにかくこれから起こることが早く終わって自分の住居となっている城へ帰りたかった。ピットから服を脱いで体を洗うように言われたので、ジュリアはピットの誘導に従ってシャワー室に入った。
「じゃあ、僕もシャワー浴びるから終わったらそこにあるバスローブを着て待っててね。自分の服はそこの籠に入れてね。」
ウキウキした調子でピットは言い、さっさと服を脱いで別のシャワー室へと入っていった。それを見たジュリアはさすがに服を脱ぐ気分にはなれなかった。しかし帰るためにはこれから指示されることにはすべて従わなくてはいけないのだろうとジュリアは思った。
そして意を決して服に手をかけ、一気にブラウスやショーツといった服を脱ぎ服を籠へ入れると、さっとシャワー室へと入っていった。シャワー室には丁寧にシャンプーとリンスと石鹸といった体を洗うためのものがあらかじめ用意されていたが、それらが置いてある棚の横に淡いピンク色の妖しげな液体がガラスのコップに入っていた。その横には紙が置いてあり、『シャワーを浴びる前にのんで。』と書かれていた。
これから自分はどうなるのだろう。そう考えると不安の二文字しか出てこないが、震える手でコップを掴むと目をつむってその液体を一気飲みした。口当たりはなぜか爽やかで花のような甘い香りが鼻を突きぬけた。その香りを嗅ぐとなぜか気分が落ち着いてきてとろけるような感覚に襲われた。
その気分のまま髪の毛や体を洗い始める。洗うたびに体が火照りだし全身がやさしく撫でまわされているような気がして、それだけで気持ちいい気分になっていった。シャワー室を出て髪の毛を乾かしバスローブを羽織ると、すでに体を洗え終えたピットが待っていた。
「どう、気持ちよかった?」
嬉しそうな表情でジュリアを見た。その時のジュリアは火照りのせいかぼおっとしていて目が虚ろだった。その表情を読み取ったピットはジュリアの手を引いてまた別な部屋へと案内した。