「いゃあ、あれをしてもらってからさ・・・本当助かったよ」
「あれって?」
「あれって・・・ほら」
そう言って彼がさっと私に指し示したのはズボンのチャックがある辺りだった。それを見て私はまた微笑んでうなずく、こんな時も彼は私の心を刺激するふっとした、恥ずかしそうな微笑を見せて仕方なかった。そして一言、言う場所間違えたな、と呟く電車内なのだった。
あの日から1ヶ月がそろそろ経過しようとしていた、あの日以来彼はとても爽快な顔をしていた。それはそうだろう、何せ彼が常に懸念として、更に対処に苦慮していた厄介物がなくなったのだから。
生来の汗っかきである彼にとって、汗をかく事自体は別に慣れていて不快ではなかった。しかし汗がもたらす副産物には毎度悩まされていた、それは言うなら痒みであり、痒みをもたらす元凶となる蒸れ。つまり頭髪等と異なり、汗をかいても自然な蒸発等で過剰な水気の解消されにくい陰毛、そこで服の擦れ等もあいまって起きる痒みの苦痛に長年悩まされていたのだった。
そんな彼の悩みを知ったのは実はそう遠い話ではなく最近の事だった、最も彼自らそうであると告げて来たのはより新しい。具体的に書けばあの1ヶ月前の更に1月前だろう、そこで彼は私との付き合い、つまり主に夜のだがそれに関する悩みの中の1つとして混ぜる具合で述べてきたと言う次第である。
「まぁ・・・したいんだけど、服を脱いでも痒さがさ、しばらく収まらなくて集中できなくてごめん・・・」
確かに私がそれを察して知ったのは、出会って夜に遊ぼうと言う時に中々シャワーから出て来ない事だった。
つまり私が先に入り、続いて彼が入ったと言うのにただ簡単にシャワーを浴びている筈なのに異様に長い時間、戻ってこない事に気が付いたからだろう。そして更にようやく戻ってきた彼のその部分を間近で見た時、その理由はある程度は分かったものだった。
何故ならその部分の陰毛が明らかに薄くなっていた。中途半端に長さが揃っている部分があるのはまるで切取られたかの様でおかしく、そしてほんのりとした香りがそれ等からは漂っていたのだから。
とにかくそれは状況証拠だけではあろう。しかしそれでもなんだかおかしいと私は感じ、ふと知り合ったばかりの頃に聞いた話を思い出して、ある程度想像していたと言うのがその「察していた」の真実だった。
結果としてそれはあたっていたと言える。いわゆる女の勘なる物も混じっていたのかもしれないが、とにかくその悩みを聞いた私は次に会う時に何とかしよう、と話をして分かれるなりある所に連絡を取った。そして数日後に届いたのがあの瓶、と言う訳で私はちゃんと彼にとって必要な事を説明し、同意も得た上で塗ったのだった。
こう書くと一体何を塗ったのか、と改めて思われるかもしれない。しかし別にそう思うまでも無い物、と私には言える。
それは痒さを抑える、要はその原因たる物質の性質を変え断ち切ってしまう塗り薬。驚いた彼からするとそれはある意味では画期的な代物なのかもしれない。しかしその存在を昔から、地元では一般的に伝わる物であったから知っていた私としては、特に特別とは思えなかった。
「ふう、また遊びに来ちゃったね」
「良いわよ、大丈夫なんだから」
その電車の足で私と彼が一緒にやって来たのは、私の家だった。家と言ってもそんな立派な構えとかではない、普通のアパート。でも私と彼が遊ぶ時は大抵、ここで一晩を過ごすしもっと長く過ごした事もある、お互いに思いを寄せ合うそう言う場所と言う認識が成り立っていたからこそ、ますますここに足を運ぶようになって行ったのだろう。
家に入って少し身を軽くして抱き合うのも何時もの事だった、正直私は嬉しくて仕方ないから微笑んでそれを受け入れる。するとその時の表情が、彼曰く凄く愛らしいのだと言う刺激された彼のキスを受け入れて、時折、まだ来ている服に零れてしまうのもお構いなしにずっとしばらく舌を交わし続ける、そんなひと時。
それからは少し一息を吐いて、何時も通りに服を脱いだら交互にシャワーへ。あの日、つまり彼の陰部を剃って以来、彼は必ず私が先で良いと言ってくれる。だからすっかり私が先に浴びて、次に彼と言うのも以前の様にジャンケンで決めるとか、そう言う儀式もないスムーズなものになっていた。
「お待たせ・・・」
「大丈夫、大丈夫、まだ時間は早いんだから」
確かに時間は早かった、まだ夏だから日も上がっている。だからクーラーは室内の熱気を飛ばす為に稼動しているから気持ちいい。そんな中で私と彼はその身の温かさを感じてしばらくじっとする、いわゆる抱擁、そうしっかりと密着して抱き合い、静かに布団の上にいるのは幸せでならなかった。
「あ・・・そうだ、ねぇ剃ったところ見せてよ」
しばらく続いたその静寂を破ったのは今回は私だった。何時もは堪え切れなくなった、それがふとかわいくもある彼の方から申し訳無さそうに言ってくるもの。でも今回は私が切り出して求めた、一瞬彼は驚いた様な表情を浮かべたものの、すぐに微笑みなおしてうなずく。勿論良いよ、と。そして抱擁は解かれて、冷房の気配がシーツに接している部位以外を包み込むのだ。
ありがたかったよ、本当。そう彼は呟きつつベッドの上に立ち上がって、私の顔にちょうどあう位置に合わせて見せ付けてくる。それは間違いなくあの陰部、既に半分は勃起している陽物を軽く撫で出あげながら見るそこには確かに陰毛は全く残っていなかった。
「うう・・・気持ちいい・・・」
「ふふ、本当きれいに白くなったわね」
「う、そうなんだよ。自分でも何か驚いた、こんなに白かったかなって」
気持ち良さそうに息を漏らしながら答えられる様に、そしてそれを耳に出来る様に私はゆっくりとその辺りを撫で回す。太い陽物は今やすっかり大きくなって、その赤みを存分に発揮し、私の顔の前で気配と香りを漂わせていて仕方なかった。