良薬はほろ甘く・第二章冬風 狐作 挿絵・協力でぃあす作
「電気一旦つけるね、あとトイレに行って来るから。」
 そう言って香織が電気を切り替える。一旦暗闇に落ちたかと思ったら明るい光に・・・日頃から慣れている筈の蛍光灯の光は、ずっと小さな赤電球に目が慣れていたせいか、やや眩しく感じられた。 香織はその足でトイレに行ってしまったので、1人瑞穂は手渡されたスウツに再び視線を向ける。そのスウツは黄褐色にこげ茶色で構成されており、しっかりと嘴に翼、そしてライオンのあの筆の様な尻尾まで付いていた。それは正しく、グリフィンの姿その物であり、ただ中身が空洞で、だらっとしラバーの光沢感がある以外は、仮に現実に存在するのならばこの様な姿なのではないかと、思わず思わせられてしまう。
「本当にグリフィンだ・・・着てみよ・・・。」
 だがそうは思っては見たもののいざ着ようとしてもどうして着れば良いのかどうも一目では分からなかった。確かに見渡せばそのスウツの背中には切れ込みとも取れる裂け目が走っておりその大きさから何とか体は収まりそうだった。しかし無理をして入れてしまうと壊れてしまうかもしれない・・・そこに体を入れれば良いのだと言う事はその時に理解は出来たにしても、するべきかしないべきかそしてどうすれば良いのかと頭を悩まし踏ん切りの中々付かない彼女がそこにはいた。
 その瑞穂の気配に気が付いたのかこちらから切り出さずとも香織はそこへと、つまりその背中に当たる部分に開いた裂け目の中に繋ぎの服を着る時の要領で切れば大丈夫と教えてきた。それを一旦聞き返して承知すると瑞穂は背中に開いている着込む為の裂け目の中へと慎重に体を沈めていく。どうしてこの様な物を香織は豊富に持っているのか・・・と廊下に置かれていたキャスター付きの箱の中に無数に折り畳まれてしまわれているのを見つめつつスウツの中へ入り、そのグリフィンに自らの体を以って命を与えたのであった。わずかに弛んでいた肉が締まり何とも言えない、火照っていた体には丁度良い冷たさに包み困りそれこそ飲み込まれていくような錯覚を受けつつ。
 そうして何とか纏ったそれは全く上手く出来た造りであった。香織と瑞穂の体型がほぼ同じである事は偶然の一致であるとしてもグリフィンの目に当たる小さな穴から見える体を収めたスウツは、全くの違和感無しに体にあっているではないか。ただ、丸められていたせいか、全体として歪んでおり、何より特有の柔らかさと言った物が不可思議な印象を感じさせる。グニュッとしたゴムの様な、それでいてそうではない無機質でひんやりとした感触がだろう。
 そして、苦労して背中の裂け目を閉じれば、すっぽり体の収められたグリフィンスウツには力が漲っていた。勿論、それは中に瑞穂が入っているからなのであるが、心躍らせた彼女は辺りを見回して、部屋の片隅に置かれていた鏡台の前へと行き、鏡の上にかけられていた布を取り払って、1人で己の姿を写し見ては悦に入り、様々なポーズをとってみる。それは真に素晴らしく楽しい事だった。絡みとは別の意味で夢中になり過ぎた余り、その一部始終を途中で戻ってきた香織にずっと見られていた事にすら気が付かない程だった。

「大分気に入ってくれたみたいね、瑞穂・・・そこまでなってくれると嬉しいな。」
「もう、見ているなら言ってよ・・・恥ずかしい。」
「恥ずかしがるなんて事は無いわ、だってもう私と瑞穂の仲でしょう? 恥ずかしいなんて、もうずっと前に捨て去ったじゃない。」
「うんまぁそれはそうだけどさ・・・。」
 その様に言われると、すっかり瑞穂はたじたじになってとても言い返せない。確かに、昨晩からつい先程までの出来事と比べれば、今のこの姿をしている事など些細な事過ぎるだろう。
 何はともあれ、今は全裸で絡み合っているのではなく、非日常的なスウツとは言え、身に纏っており服を着る以上に全く肌を露出させてはいない。見方を考えれば、今の状態は相当健全であると言えるのだ。そう考えると、どうして自分が恥ずかしいと言う感情を抱いたのかが不思議で仕方が無かった。そうして思わず笑いを漏らした瑞穂を、香織は逆に何かを漂わせた視線で見つめていた。
「それにさ・・・今の格好で恥ずかしいと言うのなら私の事だよ・・・。」
「えっ、どうして? その狐の着ぐるみ、いや、スウツ、良く似合っているよ。全然おかしくないじゃない。」
 急に声の調子を変えた香織に逆に瑞穂は励ましとも取れる言葉をかけた。そして内心ではいぶかしんでいた、どうして自分よりもスウツに慣れている筈の香織が、こんな恥ずかしさを秘めた声を出すのかと言う事に。そして興味深く観察する視線で狐スウツに身を宿した香織を眺め見たが、特におかしな点は見つけられなかった。だからこそ、再びフォローしようかと口を開きかけたその時、急に香織が指をある場所に向けると、そっと口を開いた。
「瑞穂・・・ここを良く見て・・・いい?」
「そこって・・・香織の股間を?うん・・・。」
「ここに何か見えない?」
「・・・香織、何かあるけれどそれってまさか・・・。」
 途端に一瞬の空白が2人を包んだ、まるで時が止まってしまったかのように長く感じられた一瞬の空白を解いたのは香織だった。
「ねっ、思う通りよ・・・この形から分かる通りの物、まぁ男の人の・・・。」
「駄目、言わないで香織。ちょっと気持ちが・・・。」
「もう、何混乱してるのよ瑞穂、あなたにだってちゃんとあるわよ。ほら何かおへその下の辺りに硬いものを感じないかしら?」
「えっ・・・て・・・あっ、あれ? 何時の間に?」
 言われてみると、香織曰く、へその下の辺りに確かに硬い刺激があるのに気が付いた瑞穂は、唾を飲み込みながら視線をずらした。そして見つめると、確かに己の股間の上には縦にこんもりとした影と膨らみが確かに存在している。そして指で触れると、途端に股間の辺りから強い刺激が神経を襲い、頭が痺れる。それはクリトリスを1人で弄ったのと同程度か、それをわずかに上回る未知の刺激だった。そして思わず腰が砕けて、その勇ましいグリフィンの外見に必ずしも似合わずに、膝を突いてしまう。
「あら、感じちゃって・・・そうこれは女には本来存在しない物よ。男の人だけに存在するおちんちん、まぁ、ペニスとでも言った方が呼び方にしまりがあるけれど。」
「そっ、それはわかるけど・・・何でここに?」
「言ってしまうと、このスウツに元々装備されている物なのよね、まぁ、このスウツがちょっと特殊だからなんだけれど・・・乾燥ワカメって言えば分かるかな? お味噌汁の中に入れると膨張する、あのカスカスのワカメ。」
「あっあれね・・・それは当然分かるけど。で、それがどうしたの。」
「このペニスそれと同じ原理よ。ほら、聞いた事が無い? ペニスにある海綿体の事、男の人はそれが伸縮する事で勃起したりするんだけれど・・・このペニスも同じなのよね。着用前、それも未使用の時は物凄く小さい形で静かにしているのだけれど、その位置がちょうどクリトリスのある場所で、ほんのちょっとでも愛液とかの液体に触れると、途端に膨張して形作ってしまうのよ。だから着るときには気が付かなくて当然と言う訳。」
「そうなんだ・・・じゃあこれから着る度に出来ちゃうの?」
「出来ちゃうと言うよりも、そのままかな。まぁ、一応未使用か使用済みかの区別を付ける意味合いもあるね。あと、そのグリフィンスウツ、瑞穂のだから大事に使ってね。飽きたら言ってくれれば別のを上げるから。」
「そっ、そうなの・・・わかった、ありがとう。私、グリフィンが好きだから・・・嬉しい。」
 色々な事実を告げられて、これまでの戸惑いとは別の次元で、彼女は混乱気味だった。
 それでも、このスウツが既に自分の物と言うのは意外に思えた以上に、彼女に喜びと安心の気持ちを与え、不意に強い愛着の念を抱いた。そして同時に、己自身がグリフィンに化身、正確にはグリフィン獣人に生まれ変ったかのような思いすら、心のどこかで芽生えていたのだ。
 当然、それは錯覚と言うほかの何者でもなかったが、昨晩からの常識を揺さぶられた余波で、それを真実と受け取ってしまっても不思議ではない余地が、瑞穂の心の中にあったのも事実だった。そして再び恍惚としだしたのを見届けた香織は、次なる衝撃を繰り出すのである。
「でもね、このペニス、それだけの意味であると思う?」
「じゃないんでしょ・・・そんな気がするんだけれど。」
「ご名答、勘が冴えているわね・・・スウツのお陰かしら。まぁその通りよ。」
 そう言うと、香織は黙って己の股間の膨らみを揉み始める。すると急にその膨らみが、スウツ越しに浮かび上がっているペニスの形をした膨らみに力がこもり、大きくなり始めたではないか。そしてそれは次第に膨らんでいく、目に見えるかなりの勢いで膨らんで行き、ラバーをはちきらんばかりに下から押し上げている。余りのその様に、一体どうなってしまうのか、始めてみる光景で、しかも他人事でありながらおもわず強く惹き付けられずにはいられなかった。そして注目の度合いを強めていったその瞬間、彼女は目を丸くした。何とスウツが大きく弾けたのだ。
 それとともに内側から何か棒の様な物が斜めに突き出し、その根元には2つの大きな膨らみが表れていた、そして目を奥へとやると、すっかりスウツからは膨らみは痕跡すら残さずに消え去っていた。破れている等とんでもない、のっぺりとした白いスウツがそこにはあるだけで、異常が起きた形跡は全く見当たらない。そして視線は再びその前にて、縦斜めに突き出している棒状の物へと移った、それはスウツの中でも、ことのほか異色な部位で、色は赤黒く、形もどこかサッパリとはしていたが、お世辞にも美しいと言える物ではなかった。だがそこからは、どこか惹かれる魅力の様な気配を感じ取っていたのを、瑞穂は否定出来なかった。

「そしてこれはこうなるの・・・本物のペニスにね、凄いでしょ?」
 それに対して瑞穂は返すべき言葉を見出せなかった、夢でも見ているのではないかと思わず頬を抓りたくなったが、わずかに動いた際に股間から再び、軽くではあるが、あの痺れに近い快感が感じられた事で夢ではない事を悟った。そう決着させた途端に今度は無性にその勃起したペニスに興味を掻き立てられてならない、フェロモンと言うものなのだろうか、匂いで無い匂いが鼻腔から感覚を刺激して動悸が、激しくなってきた。血の巡りが良くなり、体が熱くなってくる呼吸も荒くなってきた。それはただ興奮しているのとはどうやら訳が違う様に思える・・・上手く言い当てる言葉、発情とでも言うしかないのだろう。
 膝を立てて立ち上がる事もままならぬまま、気が付いた時には体を小刻みに振りつつ、瑞穂は目の前に突き出されたペニスを眺めていた。今の瑞穂には、そのペニスが何とも魅力的に見えてならなかった。それは堪らなく香味を漂わせて、人を惹き付ける料理にも似た感覚で先程から強い感情と生唾が溢れて手に負えなかった。
 その結果嘴の端からどうしても涎が漏れてしまう・・・その事から香織には、全く瑞穂の心情は手に取るように把握されていた。これは幾らスウツの中にて瑞穂が体面を取り繕うとしても避けられ得ない事であったし、何よりもわずかな動きでじょじょに愛液と汗を吸っては肥大化しつつあった乾燥ワカメこと、スウツ内の擬似ペニスがクリトリスを絶え間なく刺激し続けていたのである。
 それも、ただ呼吸の為の極々微細な動きでさえ反応するのだから、文字通り絶え間ない刺激の中にいるのだ、スウツに出来た嘴以外の外部と通じている箇所・・・秘部からは先程の一幕を髣髴とさせる様な多量の愛液が漏れでて畳を汚していた。瑞穂は・・・いや、もうここまで来たらもうそう呼ぶべきではないのかも知れない、1匹の、いや、1人としても人ではなく雌のグリフィン獣人として見るべきなのだろう。すっかり発情し切ったグリフィン人は、もう我慢の限界にまで達していた、今にもそのペニスをその嘴を以ってしゃぶり付きたくてたまらなかったのだから。
 そしてそれを承知で香織は、雌の狐人は己の怒張したペニスをその眼前に突きつけていた。最も全てにおいて優位で余裕かの様に見える狐人も、そのペニスの先端に垂れる輝きから分かる様に、己の行為とペニス、そして純粋に雌として発情しているグリフィン人の様子に、強い興奮を感じていたのである。ただ、その大小がある以外は両者とも変わらぬ状態にあったのであり、何時どちらが動き出すかが暗黙の内に焦点となっていたのだった。己の淫欲と時間に負けぬ様に努めていたのだ。だが、幾ら何でも我慢にも限度があり、それ以上はわずかばかりは行けたとしても、最早耐えられない。
 つまるところ、淫欲に被せられていた自制と言う仮面は、淫欲によって突き破られ跳ね飛ばされてしまうのだから、そうなるともう限度は無い。淫欲は求めるがままに、快楽を求めるがままに突き進んでしまう・・・最初に吹っ切れたのはグリフィン人、そう、瑞穂はさっと前触れ無く動き出すと、鳥足を模したラバーに包まれた手にてそのペニスの根元を掴んで運び、その先端を口に含もうとするが、嘴で上手く出来ない。だがその苦労は既に見通していたかの様に、狐人はその手を持ってグリフィンの鷲の頭を掴むと、嘴の中へと上手い具合に導きいれ、そしてそのまま奥へと突き刺した。
 突き刺されたペニスは、その長さから容易に嘴の範囲を通過して喉元へと行く。スウツを着ているのだから、仮の口である嘴の奥に本物の口がある。だがこのスウツは真に上手く出来ていて、顎の動きに連動して嘴をも動く様になっているのだ。瑞穂は股間から与えられる快感に悶えつつも顎を動かして愛撫しようとし・・・舌を伸ばして亀頭へと上手く巻き付けて吸う様にする。するとその舌先に感じるしょっぱさ、それはもう咥える前から溢れていた先走りの味で、ようやくこの姿となってから感じ得た香織そのものだった。
 すると途端に舌捌きが巧妙となり、見る見る間にペニスに限界を超えて、後からがこもって行く、瑞穂の舌の動きは妙技の域に達していると言って差し支えは全くなかった。ただ、亀頭と雁の部分を舐め回しただけで、そこまでふたなりと化した香織をいかせるのである。それは瑞穂がグリフィン獣人として成り切ったのに加え、香織が狐獣人に成り切り・・・いや、今のこれは夢なのかもしれないが、成り切りを超えて、なって互いに発情している事と恐らく無関係ではない。何故なら瑞穂は、人としてそう言った経験が極めて少ないからだ。確かに、処女は大学生の時に当時愛し合っていた相手との絡みで失っており、純潔ではない。だが、本格的に付き合ったのは、大学卒業をしてからしばらくして分かれたその相手の他になく、それ故に自慰をして紛らわす以外には性的な衝動を解消する事はなかった。
 だからこそこうまで妙技を披露しているのは何とも不思議な話で、成り切った形で発情しているから、としか一応の合理的かつ明快な説明が出来なかった。そしてとうとう、ペニスは我慢の限界を超えると盛大に・・・本来は女である筈の香織が出す筈のない濃い白濁液、精液を同じく存在する筈のないペニスより噴出し嘴の奥の瑞穂の咥内へ、喉を伝って流れ込んでいったのだった。そして同時に瑞穂がイったのは言うまでもない。彼女もまた最初に強い電撃に近い刺激を、次いで複数の何かが1つにつながり力が行き来したのを感覚的に感じ取っていた。
 そうして最後に、新たに1つと成って形成されたものから生まれて以来初めての熱く濃い物が放たれたのも・・・再び腰が砕けて膝を瑞穂は畳へとつかせ、香織は体を斜めに瑞穂を支えとする様に寄りかかっていた。共に達し放った2人は、しばらく息を荒くし肩を上下させつつ余韻に浸っていた、それはある意味で他に比べ様のない至福の一時だった。


 続
良薬はほろ甘く・第三章
作品一覧へ
ご感想・ご感想・投票は各種掲示板・投票一覧よりお願いします。
Copyright (C) fuyukaze kitune 2005-2013 All Rights Leserved.