山道の出会い・出来始め冬風 狐作 挿絵・ナニガシ作
 そこから気が付くまでにどれ程の時間が経ったかは分からない、だが気が付いた時には彼は舌を割目とその周辺へ走らせ鼻腔と肺にはその豊潤かつ甘美な香りで満たされていた。割目、クリトリス・・・それらを刺激し舐め走らせる度に彼女は小刻みに吐息を吐き、後頭部に載せている手に力を強めて顔を接近させるので堪らない気持ち良さをそこに見出していたのだった。だからこそ一層下に力が入り、当初はぎこちなく彼女から指示を受けて動かしていた舌も、自己流ながら満足させられる程度にまで上達していた。
 何時まで舐め続けるのか、そう思う事すらなく舐める事に情熱を注いでいた彼が、彼女の手によって顔を引き剥がされた時どれだけ納得行かなかったか分からない。だが少々不満気な顔と口元に輝く愛液と唾液の混じり物の輝きの線は彼女の心を軽く満たすには十分足る物だった。
「ふふ、良い顔・・・でも舌ばかりにやらせていたら君のあそこが可哀想でしょ。だから今度は・・・ね。」
 そして潤み赤くなった己の秘所を指一本で指し示す、痛いほど勃起していたペニスを更に怒張させて彼は頷くと彼女の腰へ手をやり抱き抱えて、抱えたままの体勢にて入口に亀頭を付けて動きを止めた。目で了解を受けると彼は力を抜いて一気に引力の力を借りて挿し込み貫いた、彼女は処女だった。一瞬苦痛で顔を歪ませた感を受けたがすぐに元に戻り、ペニスが膣肉を掻き分けていく感触を楽しんでいるようであった。一方で処女の生暖かい血が彼の大腿部を愛液と共に汚していく・・・。
「初めてなのですか・・・?」
 そう尋ねる彼に彼女は首を振って否定した。
「違うよ、でも私はある期間絡まないと膜が再生されてしまうんだ・・・今回はその数百年ぶりだから、はっきりと覚えていないほど昔に絡んで以来の事だから・・・ごめん。」
「良いですよ・・・あなたとこう出来るのが嬉しいのですから、お気になさらないで・・・下さい。」
 彼はそれをなだめた、確かに純粋な処女ではないのはわずかに悔しくも感じられた。しかしそんな事は如何だって良かった、処女なんて彼にとっては関係は無い、それよりも今の彼には先ほどは芽生えたばかりだった彼女の物と言う意識が今では大きく強まり、彼女にこうやって自分を捧げられる事に大きな喜びを見出していのだから。
 そして腰を振り出す、ゆっくりとそして激しく・・・膝下を湯の中に沈ませながら、体位にて激しく犯していく。先ほどもわずかに感じていたこの大浴場の音響効果は抜群で、湯気による全身の湿り気と相まってこれほど良い雰囲気となれる場所は無いのではないかとすら思える。その中で互いに向かい合い時折視線を交わしながら絡むのは大変な快感を生み出していたが、如何せん脚への負担が大きすぎる。一度放ったまま休まずに続けているうちに自然と体が傾き、上手い具合に正常位へと移行した。潤滑剤となって泡立った精液と愛液の混合物は漏れると共に、すぐ下に迫っていた湯船に浮び白く染めていた。
 ただこの頃になって彼は彼女の背中の感触が変わって来た事を軽く感じていた、人肌特有の物からどこかざらざらとして固い感触になりつつあるのを思ったが、殆ど気に止めずに続行したのだった。

「ふぅ・・・激しかったけど気持ちよかったよ。」
 と言いながら肩で息をしている彼女が呟いた。それを半ば彼は湯船に浸かりながら眺めて聞いている、とても言葉を紡げそうに無いほど連続3回彼女の中へ出しただけで一晩中絡み合った時の様に憔悴しきっていた。視線も虚ろで焦点がぼやけてしまっている。
「・・・お陰でこれも出てきちゃったし、まぁもう隠す事も無いだろうけどね。僕の物なんだからさ、見る?これだよ。」
 そう言ってわざわざ立ち上がってこちらに寄って来た彼女が示したのは、何か太く先端から円錐状になって長さのある物だった。肩に載せられたそれはずっしりとしていて重そうに感じるがそうでもない。ただ表面の滑らかでありながら硬くざらついている感触が、先ほど絡みながら感じた背中の感触と似通っている事に朦朧としつつも記憶として結び付いていた。ただそれが何なのかは見当が付かない、その白、湯気よりも濃くそれでいて鮮やかな白銀色をしたその正体が分からない。
「これ何なのか分かる?」
 載せたまま彼女は尋ねて来た、だが彼は臆する事も戸惑う事も無く素直に分からないと答える。
「これはねぇ・・・尻尾、僕の尻尾だよ。ほら覚えてる?僕は人じゃないって言った事をさ・・・。」
「しっ・・・尻尾・・・?あぁそれは・・・。」
 尻尾と言う事には反応しつつも、後者については承知していると答えかけたその時、彼は再び唇を奪われていた。今度の口付けはその柔らかさを僕に限っては楽しむ事は出来なかった、そのまま彼女の唇は固くなりそして尖っていく。同時に赤くなっていたその顔からは赤みが消えると共に目が遠ざかり、顔の形が変わっていく。人の物とは縁遠い顔に成り変っていくのである。
 彼は驚きの言葉を吐き出そうとしたが唇は奪われたまま、そして頭はこちらも硬さと大きさを増していく両手に捕らわれて変化を凝視する以外にどうする事も出来なかった。その間にも彼女の顔はどこか少年の様な気配を漂わせていた顔から、如何にも力と意志の強そうな竜の顔へと変貌した。それは銀色に輝き腰ほどまでに長くなった髪の毛に包まれたこめかみの間、そこから一対の角が突き出す事によって終わりを得た。
 そうして彼女は白銀色の竜人へと変貌したのである。

「驚いたでしょ・・・だから言ったじゃない、僕って一応神様だって。」
 と照れ臭そうに笑いながら彼女は話した、そのすっかり逞しくそけでいて女性的な要素が人の姿であった時よりも明確になった体から漏れる声は彼女の声のままだった。上顎から垂れる2本の長い髭が何ともユーモラスで、その鱗に覆われて厳つさと女性的な可愛さの入り混じった顔に花を添えている。
「凄い・・・何てきれいなんだ・・・。」
 もっと気の効いた言葉を出すべきなのだろうが、彼はそれしかその時には言葉を見つけられなかった。のぼせていたし興奮していたし何より軽く動転していたからだろう、とにかくその時には精一杯であったその言葉を彼女はそのまま額面通り受け取り続けた。
「ありがとう、嬉しいけど・・・。」
「けど・・・?」
「君の姿も見てみたいな、僕の姿を見たんだから。」
「君の姿って・・・僕はこれが・・・。」
 戸惑ったが空白を作らぬ様、彼はそう言った。だが彼女は分かってない、と言った感じに目を瞑って軽く首を振るとこう言った。
「君も今からなるんだよ、楽しみだなぁ。」
 平然と言い放ったその中に澱みは無かった。彼は体の芯が熱くなるのを感じた。

「変わるって・・・あなたみたいに?」
「うん・・・あぁ僕の事はサクヤと呼んで良いよ。僕の官名の一部だけど。」
「じゃあサクヤ様・・・。」
「敬称も要らないから、呼び捨てで呼んでくれないかい?」
「・・・サクヤみたいな体に?」
「あぁそうだよ、君は僕みたいな体になるのさ・・・ほらもう始まっているよ、見て御覧。」
 そう言われて彼は立ち上がると己のペニスを眺めた、そこにあったのはあれほどまでコンプレックスであり数々の出会いに対して消極的させて機会を奪ってきた象徴とも言える包茎ペニスの姿は無かった。かと言ってただ皮が捲れただけのペニスでもないペニス、先端が尖り皮が完全に無くなった赤剥けて滑らかだった竿の当たりに雁とまでは行かないが、幾つかの深い出っ張りを持った見た事の無い姿へと変わっていた。
「これが・・・僕の・・・?」
「そう君の陽物だね、人のじゃなくて竜のだけれど。僕の中に入っていた時に変化したんだ。僕の体液を浴びると人の体は変化してしまうからね・・・今、君の中では変化が進行しているところさ。そろそろ表に出て来ても良いと思うけどなぁ・・・。」
 さらっとその事を言い流すサクヤ、その今なお勃起し太さと長さを兼ね備えた立派なペニスは、正直言って本人から見ても自分の体には不釣合いである様に思えた。同時にこれが相応しく似合うのはサクヤの様な体であろうと、言われるまでも無く彼はそう直感していたのだった。
「グッ・・・アグッ・・・!?」
 そして次の瞬間、猛烈な痒みと共に激しい痛みが彼の体を苛み始めた。思わず顔をしかませ濁り喘ぐ、痛みはすぐに治まったが痒みは続いており激しい痛みの代わりに鈍痛が新たに体の筋と言う筋に現れてきた。尾てい骨の辺りから下にかけてが何だか重く体の中から突き上げられる様な感覚、それが尻尾の出来る感覚と気が付くと思わずバランスを崩して湯船の中へと尻餅を付いてしまう。
 だがその感触は直接骨盤に響く物ではなく、響いてもワンクッション置いた鈍く柔らかい物だった。途端に座高が上がり共に何かが人に剥けて勢い良く伸びていく、骨が伸び新たな筋肉神経が形成され既存のそれらと接続し伝わってくる感覚はそれこそ未知の物で、背筋を伝わってそうではないのに脳底を何者かに揉まれている様な心持すらした。それは気持ち良くもあったが、実際の所は腰や股間から拡大しつつあった痒みに多くの気を割かねばならず心から感じる事は出来なかった。
 しばらくして痒さの余り指先で掻こうと走らせたその時、指先の柔らかい皮膚は柔らかく弾力がありながら硬い物を感じ取った。それは今し方軽くサクヤの腹に触れた時に感じた物と同じ、鱗の感触だった。両手を支えとして腹を湯船の上に持ち上げて見ると彼の腹もまた白く、微細な鱗に次第に覆い尽くされていく姿が見られた。
その時の段階で竿の付け根から同心円状に広がりつつあった鱗は、膝のわずかに上と鳩尾の付近までを覆いつくしており、脇腹や大腿部の表側については白ではなく透き通る様に美しく濃い青い鱗に染まっていた。尻尾についてはどうやらもうあの引っ張られる様な感覚は無いから出来上がってしまったらしい。そのお陰で足と両手の三点倒立もすっかり楽になって、腰の辺りに新たに出来た支えに早速助けられてその有難さを感じたものだった。
 鱗はじわじわと広がっていく、皮膚を飲み込む・・・いや皮膚が鱗へと静かに変化して体を覆い、彼の肉体自体も人のひ弱な体から逞しく適度な筋肉を持った骨格へと変わっていく。昨夜は変化の時に特に見せなかったが彼はどこか感じていた、わずかに新たな筋肉が形成され鱗に覆われそして骨格が太く長くなる度に熱い息を吐く。

 既に首から下と脛の半ば上は尻尾と鱗、そしてペニスに象徴される様に人を捨てていた。顎がようやく動き出し鼻と口とが一体化し始めた時には脛の変貌は終わり、足の前指五指が四指へと置き換わりつつあり、代わりにかかとに新たな指が作られつつあった。指からは黒くしなやかで鋭利な爪が生えて足の裏は何者も通さない様に柔軟さを保ったまま硬質化、残すは顔の変化のみとなった。
 髪が長くなるのはどちらの性でも同じな様で僕はもまた長くなり、肩越し前へとかかった一部から軽く茶色に染めていた髪が薄墨色とも言える色に変わった事を知った。と共に尻尾のときの柔らかな変化とは逆な急激な伸びが顎を引っ張り顔を前へと引き攣らせる。そのまま固定化した後は筋肉と骨格が動き視野が広がって耳が形を変えていく感覚を感じ取った、何だか以前よりも良く音を、そして音以外のまだ良く何なのか掴みきれない物も拾って脳裏に響いてくる。
 最後は矢張り、サクヤと同じくこめかみの角。これは少々痛かった、顔全体が口の時とは一点であったのが二点に引かれる様な強さで思わず目を細めなくては済まなかった。その甲斐あってか角はしっかりと伸び脳裏に響く痛みが消失すると共に彼は全てが一新された事を、サクヤに言われるまでも誰に言われる訳でもなく静かに実感したのであった。
 そして三点を、いや五点支えの姿勢から立ち治った彼はサクヤの前に曝した。サクヤは軽く手を叩いてそのまま彼の右肩から首に手を掛けて、再び近付いてきたのだった・・・。

 あれから半年余り、彼はその場に留まり続けていた。いや離れられる筈が無いだろう、彼は彼女・・・竜神サクヤの物となっていたのだから。一応普段は彼の時の様にいきなりの人間の訪問者があるかもしれないので、サクヤは宮司、彼は青袴を穿いた男の巫女の姿をして体裁を取り繕っている。しかし夜になると彼らは本来の姿へと戻る、そして楽しむ。長い退屈の刻をサクヤは晴らすかの様に、彼はそれを受けつつも屈折し己に劣等感を抱いていた時期を晴らそうかと思えんばかりに・・・互いに欠けていたもはや埋め合わせの出来ない時間を埋めんばかりの勢いでしていたのだった。
 だがそれはただそれを目的とした物ではないのもまた事実、互いに時期、そして生きてきた時間の差こそあれどそれとは異なる感情が2人の間に芽生えていたのだった。


 出来始め終 お使い第一章へと続く
雪深き出会い・お使い第一章
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