雪深き出会い・深まり冬風 狐作
「こんなにデカイ風呂に入る事になるとはなぁ・・・。」
 風呂に浸かりながら思う彼、案内された扉の渡り廊下の先にあったのは岩盤をくり貫いた中にある風呂だった。ただそれも五右衛門風呂とか普通の家にある様なサイズではない、もう旅館にある様な大浴場級の物でそれも天然自噴。それは余程の噴出量なのだろう浴槽から絶え間なくお湯が溢れて濃密な湯気で満たされており視界は悪いが、その分風呂に入っていると言う事を強く実感でき強く癒される。これぞ至福の時・・・そんな事を思いながら程好い温度のお湯の中へと顔の半ばまでを埋めるなどして楽しんでいた。
 そんなかんだで途中のぼせて浴槽を出て、落ち着いてから入るなど繰り返している内に相当な時間が経過していた。そろそろ出ようか・・・と思ったまさにその時、浴場への扉の開く音が湯気の彼方から聞こえた。そして足音・・・宮司が風呂に入りにやってきたのだ。
「おっまだ入っているんだね、好きなだけ入りなよ。」
 笑いながら宮司は体を洗い、広い風呂の彼とは正反対の位置に体を沈めた。音で動きは分かるが目で見るとなると湯気が邪魔となって見難く影の様にしか薄っすらとしか見えなかった。
"こう言った大浴場に入るのも久々だけど、それを抜きにしても誰かと同じ浴槽に浸かるのも本当久し振りだよなぁ・・・大学以来か。"
 と彼は思いを走らせる。そして
"ちょっと近付いてみるか・・・。"
 ちょっと羽目を外してみよう・・・そうふと思いついた彼は気が付かれぬ様静かに湯を掻き分けて動き、何も知らずに和んでいるであろう宮司へと接近して行った。

 巨大な長方形をした大浴槽の中には所々岩が水面から突き出しており、またその底も平面ではなく奥に行くにつれて浅くなり壁は磨かれてはいるが天然の岩盤である。だから色々な入り方を楽しむ事が出来るのだが、今彼はそれを利用して接近を試みていたのだった。そして宮司までもう目前と言うところにある一際大きな岩陰に隠れて様子を窺う、当然気が付いてはいない様で気持ち良さそうに鼻歌を歌って和んでいる姿があった。
"いきなり水中から現れたら驚くかも・・・。"
 正直言ってどうしてこんな悪戯心を起こしたのか良く分からない、ただその時の気分がのっていただけなのかもしれないが彼は深く考える事無く、そっと岩陰で息を吸い込むと比較的深い水中を静かに移動しようと沈みながらその場を離れた。そして本格的に動こうと視線をも沈めようとしたその時、不意に宮司の影が動いた。いきなり立ち上がったのである。
 立ち上がったその姿はどちらかと言えば筋肉質的な感じもしたが中性的に近くそして細身、無駄は特に見受けられなかった。他人の裸を見るのも久しくなかった事なので同性であるのに思わず目を走らせてしまう、とその時彼は思わず目を見張らせて大きく息を吐く原因となる物を目撃してしまう事になる。
  "むっ胸!?男だろ?"
 思わず息を驚きの余り大きく吐き出してしまう彼、平然としているならその失態に慌てふためく事だろうが今はそれ以上の驚きに捕らわれていて気にする所の話ではなかった。宮司の体、その胸の辺りには男である筈の宮司にあってはならない物があった、乳房があったのである。彼は目を瞬いて再度見詰めなおしたが矢張りそれは乳房・・・決して大きくは無いが、男にしては余りにも不釣合いな2つの膨らみがはっきりと見えた。
 それは決して湯気による悪戯とかその様な物ではない、そもそもここまで近付いているのだから多少の湯気など物の数ではなく問題にすらならないのだ。だからこそ驚きは大きく失態もしでかしてしまうのであり、今になって宮司が男であるとの先入観を勝手に抱いていたに過ぎない事を自覚したのだった。

「・・・ん?君かい、どうしたんだ?」
 水中で大きく息を吐いた音に気が付いた宮司は、こちらを見詰めて不思議そうな口調で尋ねながら体を向けてきた。そしてそのまま近付いてくる、その時の彼の姿勢は驚いた時のままだったので非常に滑稽な姿と取られた事だろう。
「あっいやその・・・えーと・・・。」
 気が付かれたことで再び動転した彼は何の考えも無しにその場で立ち上がって、そのまましどろもどろとなって何も言えない。余りに勢い良く立ち上がってしまったものだから腰に巻いていたタオルが半ずれとなり、物自体は露わにはならなかったが陰毛の上が露出された事に気付く由も無い。当然、勃起してタオルを持ち上げている事にも・・・裸、女体であった事への驚きは素直に変換されて行動として表に出ていたのであった。
「その驚きようと言う事は・・・覗き見でもしてたのかい?僕の。」
 図星だった、宮司の言葉からは怒りとかそう言った物は感じられずむしろ飄々としていたのだが、彼は逆にそれを心の中で怒り狂っている事を隠していると言う様に曲解して解釈していた。だからしばしの沈黙を破って彼の口から漏れたのは謝りの言葉だった。
「・・・すみません。」
「何故、謝られなくちゃならないのか分からないけど・・・うーん見られる事を別に僕は嫌っていないしね。はははっ。」
 その快活な笑いが彼にはとても痛かった、穴があったら入りたい・・・そんな気持ちにも傾いていた。
「そう沈まないでくれよ、君。それよりも僕を女だと分かった方が凄いね、一言も言っていないし示唆もしていないと言うのにいや嬉しい限りだよ。女であると気付かれたのは本当、数百年ぶりの事だから。」
"数百年・・・えっ?"
 その一つの言葉に僕は表情を歪ませた、すると変化に気が付いた宮司は嬉しそうに微笑みながら続ける。その時の顔はこれまでに見せた事の無い、女の微笑だった。
「流石にこれには気が付いてなかったか・・・今気付いただろうけど、僕は人じゃないよ。まぁ一言で言えば・・・神様ってのかな?」
「かっ神様・・・!?」
 瞬間、彼はとうとう言葉を漏らした。純粋な驚きによって、決して疑いの色にその一片すらも染まっていないそれの言葉を。すると宮司、いや神様は満足気に首を縦に振った。
「そう神様、あっそう呼ばなくて良いよ、別にそう意識しているわけじゃないしさ。隠していたとかそう言う事は無くてね、ただ言う機会がなかっただけと言うかなんと言うか・・・ふふふ。」
 言葉に困ったのか神様・・・とにかくここは彼女と書こう、彼女は笑って誤魔化した。それは彼の混乱した気持ちを立て直すのにどれ程役に立った事か、気が付いた時には彼も合わせて笑っていた。湯気と岩盤に反射したそれはどこか表現し難いが、とにかく暖かい場の雰囲気を生み出していたのだろう。それは温水の温かさとも相まって体はおろか気持ちをも高揚させた。

 笑いによって弛緩した気持ち、警戒心が緩みきった彼の隙を付く様に彼女はある言葉を彼にぶつけてきた。
「でさ、君は男として僕の事をどう思う?」
「どう思うって・・・それはきれいだと思いますよ、はい・・・。」
 この不意打ちには少し参った所もあったが率直に感じた事を返した、それを受けた彼女はわずかに雰囲気を変えてにじり寄って来た。
「ふぅん・・・じゃあ他には?あっ百聞は一見にしかずと言う事かな。」
「えっていやその何を・・・!?」
 余りにも大胆な行動だった、すれすれにまで近付いてきた彼女の薄い乳が彼の胸板へと当たる。そしてその手は彼の勃起していたペニスをタオル越しに掴んだのだから。当然、心拍数は一気に上がり彼は顔を赤らめる。
「何を言っているの、もうこんなに勃せちゃって・・・こんなになってくれてありがとう。どんなきれいな言葉で褒められるよりもよっぽど嬉しく思うね。オスの匂いが漂っていて・・・。」
 その言葉に偽りなし、彼女の顔を見て彼の脳裏にはその言葉が大きく浮かび上がった。そして同時に興奮の度合いも増し、彼女の手に握られている己の既に勃起しつくしたと思えていたペニスに更なる固さと熱が加えられた。敏感に感じ取った彼女が手に力を加えてくる、ここまで握られるのが気持ちよいとは正直意外に感じられた。そしてそこからは行動が全てを支配した。

 重ね合わせられる2人の唇、僕と彼女はそのまま抱き合い密着する。舌も絡め合わせられて密接している筈の唇の間から唾液が漏れ出るほど長く続けるとそのまま外す。そして見詰め合う間も無く彼女は膝を折りつつ僕の腰タオルを取り払い湯船の奥に投げ捨てると、痛々しいまでに勃起しきった僕のペニス・・・包茎ペニスを興味深げに眺めて軽くその爪、鋭利に尖ったその爪で皮を持ち上げて溜まっていたカスを掘り出し鼻の前へと持って来て匂いを嗅いでいる。
 その時の僕にはまだ理性があった、だからこそそれをされるのは恥ずかしくてならず何よりもこれまで幾多の出会いがありながら、自ら断り別れてきた原因でもある包茎ペニスを弄られる事に戸惑いと羞恥心を感じていたのだ。
「や・・・止めて、恥ずかしい・・・。」
 震える声で頼む、いや懇願した僕に対して彼女が返してきたのはにべもないものだった。
「どうして恥ずかしがるのさ、こうなるのも何も自然な事じゃない・・・それに君のこれ結構良いね、初めて見たけれどさ良い匂いだし。」
 そう言ってますます嗅ぐ、この頃にはもう爪の先で掘り出したカスの匂いだけでは堪らなくなっていたのかペニスその物の匂いを嗅ぎながら呟いていた。僕は今にも飛びそうな理性を抑えるので精一杯だった。
「それよりもこれ・・・何て言うの?こんなに皮被ってる物は初めて見てね。」
「そっそれは・・・。」
 言おうとするが言葉が喉につっかえて出ない、可能ならばとても言いたくは無い。だが状況はそれを許さなかった、彼女が再び皮を捲りその拍子に亀頭の雁との境目付近に爪の一部が触れたからだ。いきなり来た刺激で僕の喉で言葉を抑えていた羞恥心は弾け飛び、まるで告白するかのように僕は放った。
「包茎・・・です・・・。」
「ふーん、じゃあこの白いのは?精液とは違うみたいだけど。」
「・・・カス・・・と言うものですよ、それは!うぅ恥ずかし・・・。」
 恥ずかしさが高じて僕は思わず語尾を強めてしまった、彼女は驚いた様子だったが語尾で妖しげに笑うと竿を掴む片手に力を強めた。わずかに痛みを覚えるほどに。
「恥ずかしいんだ・・・ふふふ、じゃあさこの恥ずかしい包茎とやらを僕が無くして上げるとしたらどうする?早く答えないと潰しちゃうよ・・・。」
 その言葉を強める様に刻々と加えられる力は強まっていた、潰してしまうというのはあながち嘘ではないだろう。わずか数秒でここまで来たのだから数分後にはどうなっているか全くわからない、それに包茎をなくすと言う言葉に僕は強く惹かれた。僕の長年のコンプレックスの元がなくなる・・・何にも増して魅了される言葉に反応し切った僕は流されるがままに呟いた。
「・・・なんでもします・・・。」
「んっ?何々?」
「なっ何でもしますっ!だからその力を緩めて・・・下さ・・・い。」
「あっ言ったね?今、何でもするって・・・わかったよじゃあ緩めてあげるから。」
 そして力を緩められた、それにどれほど安堵したか僕はわからない。だがそんな僕に彼女は休ませる時間をくれようとはしなかった、間髪置かずに次の言葉が飛んでくる。
「じゃあさ、治してあげる見返りに君は僕の物になってね?わかったね?」
「僕だけの物って・・・。」
「それはそのままだよ、君は僕の物になる。君の全てが僕の物って事さ・・・。」
 彼女は口にしながらその手を睾丸の裏にやり指先で何箇所か刺激してきた、物凄い気持ちよさ・・・蕩けた僕は思わず首を盛んに縦に振った。こんな気持ち良さが味わえるならどうなっても良い、包茎が治るなら・・・と思って。すると満足した様に彼女は亀頭の頭に口付けをした、敏感な亀頭からその柔らかい彼女の唇の感触がかくもここまで・・・と思うほどそのまま伝わってくるのが何とも言えない。
  「あぁ・・・はい・・・。」
 途端に僕の口から喘ぎとも同意とも取れる声が漏れた、それが僕が人から彼女の物に堕ちた瞬間だった。

「僕の物になったからには名前を書かないとね、僕の物だってすぐに分かる物を君に・・・そうだな、ここにしよう。」
 彼女はそう言うと彼の大腿部を見据えるとそれぞれ符合する方の手の平に爪で傷をつけ、五指の指先から血を垂らしたまま両手を押し付けられたその途端、彼は絶叫した。骨の髄に染み渡るほどの猛烈な熱が激しい痛みと共に襲ったのだ、思わず目尻からは一筋の線が走っている。だが一方でそのペニスは依然として勢いが衰えず、むしろ盛んになっていると言う対照的な構図が繰り広げられていた。それをみて再び彼女は亀頭の先を弄り刺激を加えてくる。
「痛くしてごめんね、でも大丈夫・・・これでもう完全に僕の物だから痛い事は無いよ、気持ちよくしてあげるからねぇ。」
 呟きつつ弄り続ける彼女、彼は小刻みに喘ぎながら耐えているとペニス全体が生暖かい感触に包まれた。見下ろすとそこでは彼のペニスを彼女は口に含み、舌先で皮を外して雁を露出させるとそこに溜まっていたカスを舐め取り含んでいく。
 その気持ちよさに思わず腰が砕けそうになったが震えている内に、今度は深く咥え込んで舌で愛撫し唇で絞りを加えて前後し始めた。久々の快感だった、彼は間も無く達してしまい予告する間も無く彼女の咥内へ注ぎ込む。それは吸われるのと同様に久し振りすぎて、余りの上手さと喜びで僕は初体験の時の様に純粋な気持ち良さを感じていたのだった。
「ありがと、美味しかったよ君の物・・・溜め込んでいたみたいで匂いがきつくて・・・数百年ぶりに飲む物としては上出来だね。」
 全てを吸い取った彼女は呟いて軽く舌なめずりをした、だがその様子はとても余裕で疲れとかは一切感じられない。一方の彼はと言えばそれで全てが終わってしまったかのように放心しているので精一杯であった。
「まーだまだ終わりじゃないよ・・・ほら、それにまだ治まり切ってないし君のも。健気だねぇ・・・。」
 前座に過ぎない、そう言う様子で呟いた彼女は指先でペニスを愛撫する。それだけで先走りが垂れてしまう、湯船にポツポツと垂れるそれを眺めていた彼女はいきなり立ち上がると壁となっている岩盤を背に腰掛けてこちらを見詰めた。気持ち良さに酔っていた彼もわずかに醒めて見詰めている前で、彼女は閉じていた脚を大きく開脚させて自らの秘所を露わとした。
「今度は僕を満足させてもらおうかな・・・。」
 そう言って秘所の割目から話した指先には幾筋もの液体が筋となって続き、そして切れて湯船の中に溶けていった。


 深まり終 出来始めへ続く
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