同棲生活・上冬風 狐作
 寒い北国の都市、雪が深々と降り積もりノロノロと渋滞する車を尻目に、路面電車が快調に雪を跳ね飛ばして行く・・・そんな光景が随所で見られる都市の一角、旧市街地に存在する大学から程遠くない場所に個人経営の小さな男子学生寮があった。管理人は何処にでもいそうなしがない老婆で、今は寒いとあってか肝心な事以外は全て寮生の中より選ばれる寮長に任せっきりで引きこもり。だから学生寮にしてはかなり自由の効く所で、寮生となっていた学生達は守るべき規則と常識を弁えつつ、人生において貴重な4年間、人によっては大学院へ進むなどして8年余りをここで過ごし多くの人々が旅立って行ったのだった。
 そして今は冬休み、全国各地からここへと集まっている学生の殆どは帰省しており、その一部は来週半ばから講義再会と言う事もあって戻りつつあるがまだそれ程ではない。それに今年は激しい雪のお陰で移動するにも出来ないと言う事が生じている、だから多くが帰寮し30もの部屋全てに明かりが灯るのは直前になる事であろう。
 だが殆どの寮生が帰宅する中で何名かは残留していた。事情はそれぞれ様々であるが、ある者は卒業論文を仕上げる為に、ある者は帰省するだけの資金が無い等で今年は都合3人がそれに該当していた。その3人の名前は斉藤俊輔、三坂陽彦、川窪順二。皆同じ学部学年に所属しており同じ寮に住む事を知って以来、かなり親密な付き合いを続けている。
 だからこんな時には夕食等は各々の時間を合わせ、何れかの部屋に会して共にすると言う風にしていた。流石に他の寮生もいる時にはそこまではしないが、いない時には徹底して関係を持っていたのである。
 どうしてそこまで関係を強くもてるのか?その事を知る人々は事ある毎にそう感じていたが、それぞれの境遇に惹かれ合っているのだろうとしか考える事が出来なかった。確かにその事は3人を結び付けている大きな要因であろう、しかしあくまでも表面的な事に過ぎず、真の理由はもっと別な物であった。そしてそれは彼ら意外誰知る由が無いのだから。

 白菜中心の鍋での夕食を終えた彼らは、一旦それぞれの部屋へ引き上げて風呂に入る等して時間を潰すと門限時刻の午後23時を回った辺りで再び、今度は2階の一番奥の部屋である斉藤の部屋へと集結した。勿論、しっかりと寮の門に鍵がかかっているかを確かめ、部屋の鍵カーテンとも全て閉めた上である。
「しっかり閉めたな?」
「あぁ勿論、しっかりと閉めたぞ。」
「それよりも・・・早くしようぜ、楽しみなんだからさ。」
 確認しあう斉藤と川窪を三坂が急き立てる。それを見て苦笑した2人は軽く宥めると押入れの中から収納ボックスを取り出し、そして茶色の紙袋を3つ取り出した。茶袋にはそれぞれ名前が振られており、その通りに配分した斉藤が袋を開けようとしてふと顔を上げると、そこにはもう既に中身を取り出しつつある2人の姿があった。
 その表情は先程からもう待ち切れないと言った調子であった三坂はともかくとして、それを苦笑していた筈の川窪のそれは三坂以上の物であり目を輝かしたその様は、まるで大好きな玩具をプレゼントされて喜ぶ幼子そのもの。これまでに幾度と無く見慣れた姿だったが何時見ても嬉しく思えるものであった。そして斉藤も袋を解く、彼もまた勝るとも劣らない表情を見せて。

 袋の中から取り出されたのは光沢感のあるビニールの様な物。丸く畳まれたそれを手慣れた感じで伸ばした彼らは、恥じる事無く服を脱ぎ人の身長ほどもあるその中へと身を宿していく。そして全身は投じられた、そこには人ではなく直立した狐の姿が3つあった。
 狐人とでも言うべきであろう、そして不思議な事にその背中に空いている筈の入る為の穴は、何もしない間に閉じられてしまった。仮に慌ててその背中に目を凝らせども繋ぎ目などは全く見出せない。まるで元からそれを着ている・・・いや、本当にその姿をした存在であるかの様な錯覚すら、その余りにも各々の体にフィットし弛み等が一切無い様子からは感じられる。
「いやぁやっぱり気持ち良いねぇこれに包まれると・・・。」
 しばらくするとどこか浮付いた素直に喜びが表されている言葉が狐人の1人から発せられた。それは3人の中で最も小柄な背格好をした狐人の口から、若干くぐもってはいたが川窪の声であった。幾ら本物の様に見えてしまうとは言え、矢張り纏っているのはただのスーツの様で言葉に併せて狐のマズルが動く事はなかった、尻尾も力なく垂れ下がっているのみである。
「そうだな、こう言う寒い冬の夜は・・・良い匂いだ。」
「まぁ和んでないでそろそろ始めない?もう一週間この為に溜めてきたんだからさぁ。」
 斉藤が同意する影でまたも三坂が速い展開を求める、今度は斉藤と川窪もぼかしたりする事はしなかった。彼らもまた次なる展開を楽しみにしていたからだ、3人にとってこの中に身を宿す、つまりは狐型獣スーツの中に収まる事は楽しみであると共にただの通過点に過ぎない。だからこの様な態度を取ったのだ、そして事態は進み始める。

 幾ら自体が動き始めたとは言えそう急いでは楽しみも薄れてしまう、濃く楽しむにはそれだけ念入りな準備が必要となる。その1つと言うべきかは不明だが彼らはその表面の光沢感、ラバースーツの最大の売り物である光沢感をより強く鮮やかに出すべく艶出し剤を互いに塗りたくった。艶出し剤と言っても特殊な物で人体に有害ではなくローションの代用品としても充分に機能すると言う優れ物。手に入りにくいのが欠点ではあったが、何処かの筋に話をつけたのか斉藤がダンボール三箱分も仕入れてきたお陰に当分は不自由する事はないだろう。
 だから在庫を気にしていた時よりも多量かつ大胆に彼らは塗りたくった。塗りながら満足し掛けても互いを見て少しでも自分の方がくすんでいると感じればまた塗る始末、結果として数本の瓶が空になるその時まである意味では不毛なその争いは続く事となった。そして塗り終えると今度はしばらくそれを見せ合い自慢しあうと更なる段階へと進んでいく。
「それじゃ始めるか、何時も通りに・・・今日は川窪からだったな。」
 そう言って斉藤は何か小さな物を川窪へと手渡しする、その時ラバーの中より覗いている彼の瞳が妖しく輝いたような気配がした。そしてしっかりと受取った川窪は軽くそれを投げた、そして畳の上を転がったのはサイコロ。サイコロは幾回転かして止まった。
「4ですよ、川窪さん。じゃあ4分間頑張って下さい、よーいスタート!」
 数字を読み取り嬉々とした声で言う三坂、彼の手に握られたストップウオッチ、表示されたデジタル数字は忙しく形を変え始めた。それに対して軽く息を吐いた川窪はある所へと手を、そうスーツの一部である精巧なそのままに模された赤黒い獣のペニスに手を掛けていた。どうした事かそれは手をかける前よりしっかりと、尻尾の様に力無く垂れ下がっている事などなってはいなかった。
 人と違って胴体から突き出る様に生えているペニスは、人で言えば睾丸より竿の根元の付近までの白に色分けされている。そこから先の赤黒いとも言える色分けの赤剥けの竿の半ばにある瘤の辺りまではしっかりと力が入っていた。力が入っているとはつまりその中にペニス、それも当然勃起した彼のペニスがが芯となって入っていると言う事である。
 そして亀頭の頂点からラバーペニスの先端までは数センチ余りの余裕があり、その部分は中身が空洞であるので半ばの瘤より下と比べて幾分弛み気味で細いのは否めない。流石にその模された獣ペニス全てを支えるだけの長さのペニスを持つと言うのは一介の人間には無理な話。人為的に改造をしたり、或いは細胞分裂等の異常で生まれ付き長いとなると別であろうがそう易々と出来る話ではなく、特に後者は偶発的な出来事に期待する他は無い。
 なのにどうしてこんなにも長く作られているのか、模したにしてももう少し長さを調節した方が良かったのではないかと思えてくるが、長くしたのはその様な単純な答えではない事を示すべく川窪はその手を上下させる。ラバー越しにペニスを・・・4分間の公開自慰であった、サイコロの数字はこの時間を示していたのだ。中々早いペースで扱いていくその手の動きと彼を座り込んだ2人は興味津々と行った感じに見詰め、興奮している証拠に自らのペニスもまた同じ様に強く勃起させていた。ただ手は後ろに回しペニスには近づけないようにして。

"うぅ・・・今日も、良い感じ・・・。"
 2人の視線を全身に感じながら川窪は、そのひんやりとしたラバーの感触とそれに抗するかのように刻々と熱を帯びてくる己の体の対決にすっかり酔っていた。ラバースーツであるから通気性が無く熱は篭る、幾ら目と口の所だけは開いているとは言えその程度では発散される筈が無い。だからしばらくするとすっかり汗が皮膚と言う皮膚から流れ始めるのだが、その際の息苦しさと匂いは溜まらなく興奮させられた。
 常識的には嫌われるそれらの感覚や匂いに興奮すると言う事は、彼にはスカトロの気があるのかも知れない。だがそうであろうとなかろうと自分が快感と感じる事に対して川窪は、惜しみなく情熱を注ぎ込み追及し続ける事に何ら疑問を感じてはいなかった。
 むしろ当然とも言え疑問を呈する方こそおかしいとすら考えていたのだ、勿論彼にとってこれが全てではない。大学、バイト、その他の趣味等興味関心を発する機会は他にも無数に存在する、しかしそう言った他では到底得られない性感を感じれるのは唯これのみ。そう自らの好みの獣の中へ、ラバースーツとは言え身を投じての自慰の他には無かった。
 やがて彼の理性がすっかり快感に飲まれて呆けている頃、本能に忠実な体もまた正常な反応を強く見せ始めていた。勃起の度合いはますます勢いを得て強固になり長さも幾分伸びたようだ、その先端からは先走りが激しく漏れてラバーと皮の間に入り込み自然な潤滑剤として、ラバー表面に塗られた艶出し剤と共にそのグラインドの動きを滑らかかつ加速させていった。
 ラバーの中にて攪拌された先走りは泡立ち、一部はそのまま扱く度に生じるわずかな隙間を伝って根元を超えて大腿部を伝っていく。その感覚もたまらなかった、熱を帯びた体と冷たいラバーの中間の様な熱を持ったその存在が、動きによるわずかな弛みをついて伝い締め付けるラバーと皮膚の間に挟まれる度に思わず体が震えてしまう。
 マズルの奥の口元が緩み、そこからも思わず涎が漏れ出てしまう。呼気の音は荒く言葉ではないにしろその語尾は丸くなっていた、目は熱に熟れた様になっていた、体からも何処か力が抜けておりただペニスとそれを扱く手にのみ全神経と感覚、そして力が回っているような有様・・・。
 間も無くストップウォッチが4分を示そうとしたその時、ラバーの上からでも分かるほど睾丸が震えて大量の精液が放たれた。それらは獣ペニスの先端部に勢い良く次から次へと衝突しては行き場をなくして流れ落ち、扱きが止まって再び密着してしまったラバーと勃起しきった竿の間を通り抜けられる筈が無い。行き場をなくしたそれらは段々とその場に溜まりおよそ亀頭の半ば以上が精液の池の中に沈んだ。
 その中は濃厚な匂いに満ちていた、ラバーの内面もまた全てに残滓をつけて・・・そして川窪は今一度生暖かい精液に沈んだ亀頭からの何とも言えぬ感覚に酔い痴れ、背筋を大きく振るわせた。意識もぼんやのとした快感に包まれきって鈍い。

「はい時間・・・今日も上手く感じたようだね・・・。」
 三坂がストップウオッチと川窪を見比べて言う、しかし小刻みに体を震わせたままの彼からの反応は無い。すっかり余韻に浸り魅入られているらしく、マズルの奥からはそれを窺わせる呼気の音だけが響いていた。
「かなりイッてしまっているようだな・・・まぁ一週間も溜めていたんだからそうだろう。次は三坂か、数は何だった?」
「えーと、6です。」
「じゃあ6分か・・・準備は良いか?長丁場だが。」
「良いですよ、さぁ僕も・・・フフフ。」
「まぁやり過ぎるなよ、本当に呆けたら困るしな・・・さぁて行くぞ。はい。」
 再び時を刻み始めるストップウォッチ、待ち焦がれていた三坂の出番が回ってきた。川窪の時と同じ様に密着しているラバーが、扱きの手によって竿の皮と共に動く音が響くがペースはこちらの方が早い。そした数十秒とせずに第一波を放つも、そのまま余韻を楽しむ事無く射精までの間隔を求めて扱き続けるのだ。
 彼はとにかく快感を追及する男だった、川窪の様に汗の臭いなどには殆ど関心を寄せない。ただ射精までの上り詰めていく感覚と射精の瞬間の破裂したような快感、この2つにだけ大きな関心を払い一瞬のそれを堪能すると再び・・・この連続だった。結果として時間が尽きるまでに放たれた精液の量は莫大で、その回数は覚えてはいない。ただその証拠に時間の半ばも過ぎた頃にはもう亀頭は精液に沈み、その中に射精しているような調子だった。
 そして名実共に精液溜めとなったその余裕分は重力に引かれて先端が精液で満たされて丸くなり、まるで果実の様に亀頭の先から垂れている。だがそうなっても時間を過ぎても三坂の手は止まなかった、短時間に一気に出した為に幾ら一週間も溜め込んだとは言え残量もわずかになり殆ど出て来なくなっても尚扱きを止めなかった。斉藤はそれを何時もの事と割り切ってようやく回ってきた自分の出番のサイコロを回す。数字は5。


 下編へ続く
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