例大祭〜後編〜冬風 狐作
 さて、その頃神殿の中ではウマメは静かに腰を下ろし、敷物の上へ鎮座されている真珠の様に光り輝く卵をいとおしそうに見詰めていた。卵は神殿内に溢れる光を反射する以外、特には動きを見せていなかったがウマメにとってはその目覚めが楽しみでならなかったのだ。とその時
"ちょっと!あなたは一体何者なのよ?私の体を返してよ!"
 ウマメの心中にさやかの声が響いた。ウマメはふぅっと軽く息を吐いてそれに応じる。
"おやまあ元気な娘さんだこと・・・でも口の聞き方には気をつけた方が良いわよ。私の名前はウマメ、あなたの名前は何なの?"
"わ、私の名前ですって?私の名前は苑田さやか、皆からはさやかと呼ばれているわ。"
"そうなの・・・では、さやかさん。しばらく体の方を借りさせていただくわね・・・不本意かもしれないけど、もう遅いのよ。この世界に呼び出された時点で・・・。"
"この世界・・・やっぱりここは異世界なのね・・・どういう事なんですか?呼び出されたって・・・覚えが無いのに・・・。"
"あら、知らないの・・・それでここまで来たのね。あなたってエライわ・・・中々の大物と言えるわ。"
"大物ですか・・・それよりも、ここはどういう世界なんですか?そして、私は如何なっていて、これからどうなるのですか?"
"良いわ、教えてあげましょう・・・中々面白そうな子ですからね。じゃあ始めるわよ、いいわね?"
"はい、どうもすみません・・・。"
"詫び言は良いの、じゃあ行くわよ。まず、今のあなたについて・・・今のあなたの姿は私の姿、つまり人の姿ではないとは言えるわね。"
"人の姿じゃない!?どういう事なんですか?"
"正確に言えば、今のあなたの姿は半人半馬・・・そうねぇあなたの世界の言葉で言うと、ケンタウルスと言う生き物になるのかしら?想像上の生き物らしいけど・・・。"
"ケンタウルスって・・・あの!?そんな・・・何で、どうして・・・あぁ・・・。"
 自分の今の姿はケンタウルスである、そう聞いた途端さやかが酷く動揺し落ち込んでいくのをウマメは強く感じ、彼女もまたそれを悲しんだ。だが、仮に神であるウマメをしても、それを根本から修正しようとする試みは困難な事であり、そもそもしてはならない禁忌なのである。よって今のウマメにはそれを励まし、説明する事しか出来なかった。
"大丈夫よ。例大祭が終わったら元に戻れるからね・・・それまで、申し訳ないけれど我慢してくれないかしら?お願い。"
 ウマメは精一杯の元気さを出してそう呼びかけた。しばしの沈黙の後、小さな返答があった。
"はい・・・。"
ウマメはそっと肩を撫で下ろした。

 あの一件以来、マウメはヒマさえあればさやかと話をしていた。さやかも最初の頃は自分の姿がすっかり変わってしまった事に、相当なショックを見せていたがその内に次第に打ち解けて、元に戻れる事を幾度と無く聞かせる内に当初の中々の見込みある状態へと戻っていた。ウマメ自身、ここ最近の例大祭でこの様な出来事は覚えていなかったので、かなり楽しんでおり同性同士と言う事も会って話は弾み、双方の事を良く知り分かりあう中へとなっていた。
 そして、彼女らが盛り上がっている最中で鎮座されている卵の中でも変化が起きていた。

 博は夢を見ていた。内容はと言えば、延々と続く淫靡な物。果てる事のなく繰り広げられる未知の性の饗宴に合わせて、夢の中の彼の体は著しく変容していた。より多くの快楽をどう多く受けるか・・・その為に彼の体は自然と形を変えて、一種異様な姿となり、異形の女達と交わり尽くしていた。
"凄い・・・お礼・・・だよ・・・な・・・凄すぎ・・・る・・・。"
 これは何者からの彼に対するお礼であると博は何時の間にか承知していた。何のお礼であるのか、誰がそれを自分に施しているのか?その様な事は今の博にとっては雑念でしかない、とにかく夢の中のその宴を以下に楽しむか、それが当面の彼の最大の追求すべき課題であった。
 その頃、現実世界の卵の中にある彼の体でもまた変容がはじまっていた。これは博とは別の意思による物であり、じわりじわりと進められていく。
"ふん・・・どうやら、楽しんでいるようだな・・・結構な事だ。まぁ代償としては丁度良かろうよ・・・。さてと、こちらもそろそろ始めるとするか・・・日がもう無いからな。"
 博の見ている夢は単なる夢ではなかった、彼の魂は一時的に本来なら行くはずの無い異次元へと意図的に、その体を借りられている期間に限って飛ばされているのであり、ある意味では博にとってそれは現実となっていた。そして、普段はその世界におり現在、博の体に居座っている者はその光景をしかと見ると窓を閉じて今いるこちら側の事へと集中し始めた。
"では・・・始めようか。"
その様に居座る者は思った。するとそれまでケンタウルスの精液に満たされた卵の中で丸くなっていた博の体は、静かにその態勢を解いて座禅した様な格好に組み直されて、何もかもが露わになる。そして程無くして、その健康的な小麦色に日焼けした肌に変化が現れた。最初の変化は皮膚の変色、いや違う、微細な無数の毛がその表面に生え覆い尽くし、尻尾が現れ、蹄が現れ、骨格と筋肉が強化増大し、顔が変わり、角が生える・・・全てが終わるとその体を包み込んでいた真珠色をしたケンタウルスの精液は、すっかり輝きを失って灰白色の濁った液体へと成り下がっていた。

 中身の変化は外にも伝わっていた。それまで忠実に光を満遍なく反射させ、光が無くても静かに落ち着いた輝きを放っていた卵が今では光を浴びて、ようやく以前の光の無い時程度の輝きを放つのがやっととなり、光が無ければただ白いだけで沈んでいるのである。
「いよいよね・・・。」
"そうですね・・・。"
 ウマメと事情を知り理解しているさやかは互いに静かに呟き、確認しあっていた。

 村中に賑やかな雰囲気が広がり、そしてそれをさらに高揚させる様に容器で軽快な曲が流れる。例大祭・・・年に一度繰り広げられるこの祭りは、日頃の安寧を感謝し、これからもそれが保たれる事を神に祈る儀式である。ここで言う神とは即ち、ウマメの事だ。だが、例大祭はただそれだけの祭りではない。もう1つ重要な行事がその後に控えているのである。
 この日ばかりはと村人達は晴れ着に身を宿して、神殿前の広場へと集まり姿を現したウマメと長老の姿に喝采を上げて話に聞き入り、そして華やかな宴を日長一日繰り広げる。そして夕暮れ時、普段ならまだ活動する時間帯であるが村人達は早々に自宅へと引き上げると、極一部の者を残してそのまま眠りに就いた。眠りに就かない極一部の者、それはまだあどけなさの残る青年男女達である。彼らは白一色の薄い服に着替えると、先程まで宴の催されていた広場を横切って次々に神殿の中へと予め指定された時刻までに入っていく。
 指名された全員が入った事を確認すると神殿の戸は硬く閉じられ、翌日の昼まで何があろうとも決して開かれはしない。だが、その中で一体何が行われているのかはその村の大人であれば誰もが知る輿である。
「今年はこれで全員ですか?」
「はい、その通りでございます。」
「そうですか・・・中々健康そうな面々ですね、これは期待出来そうですわ・・・では始めて下さい。」
 神殿の中で整列して座っている若者達を隠し窓から見たウマメは、長老のその言葉に安堵と確信とを強く抱いた。その内に若者達には長老直々に小さなお猪口程度の杯を、1人につき1つずつ配られ始めた。そこに注がれているのは白い不透明の液体であり、若者達には"聖酒"として説明されており、神から直々に賜った物であるからと彼らは零す等の粗相の無い様、慎重に手に持つと長老の合図を見て一斉に飲み干した。
 誰もが飲み干した事を確認されると、その杯は全て回収されてしばらくそのまま待たされるのだった。
 それとほぼ時を同じくして壁一枚隔てた所にいるウマメは、その心中のさやかと共にある物を見詰めていた。それはあの卵である、博を包んだ繭がウマメの精液によって卵と化し、つい先日輝きを失ったその卵の表面には微細な振動が見られていた。
「さぁ見ていて御覧なさい・・・こんな事、まず見られはしないのだから。」
"分かってますよ、ウマメさん・・・私だってそんな間抜けじゃありませんから・・・。"
「それなら良いわ、文句なしね・・・ほら、始まったわよ。」
一連の問答が終わった時、いよいよ卵は動きをはっきりと明確にしていた。

ピキッ・・・ピキピキッ・・・
 沈黙の支配する部屋に響き渡るひび割れ音、輝きを失ったとは言え尚もその滑らかさには変わりの無かった卵の表面には無数のひびが走り始め、拡大していた。細かく分かれていたひびが、音共に1つになった所で一時動きが一瞬だけ止まると、今度は盛大な音を立てて卵が縦に切った様に真っ二つに割れたのだった。割れた卵の中からは、濁り澱んだ白い液体が漏れでて床一面に広がり、そして続けて逞しい筋肉とペニスに角、胸には豊満な乳房を持つ漆黒の獣毛で全身を覆ったふたなりの牛獣人が、あちらこちらに白い残滓を身に纏って仁王立ちに立ち上がっていた。
「久し振りね、ウシメ。元気にしていたかしら?」
とウマメが気軽に楽しげな声をウシメと呼んだその牛獣人にかけると
「お陰様で、この通りぴんぴんよ・・・それに元になった体も中々鍛えられた、私好みの物だし気分は最高よ・・・そう言うあなたも、体の持ち主と仲良くやっているそうじゃない?」
「あら、ばれてたのね・・・まぁそうよ。さやかと言う名前の異世界から召喚されてきた子よ、中々面白い子でね・・・まぁ事が終わったらあなたにも紹介してあげるわ。」
「そう?わかったわ、じゃあ早速始めましょうか・・・長老さ〜ん、お始めになって!」
「ホホホ、ウシメ様も殊の外元気であられて何よりですな・・・わかりました、それではしばし待たれよ・・・。」
 やり取りを静かに見ていた長老は、威勢の良いウシメの声に笑って部屋から出て行った。そして間も無く、彼女らのいる空間に入って来たのは4人の若者達であった。何処か興味深げに、不安げな顔つきをしているのが見て取れる。
「ようこそ、若人の皆さん・・・成人の儀を始めますよ、服を脱ぎなさい・・・。」
 ウマメは冷静に彼らを再び吟味しつつその様に述べた。ウシメは何も言わないで同様に深く吟味している間に、若者達は始めて見るウシメの姿に驚きつつ服を手早く脱ぎ畳んで部屋の隅へ置くと、ウマメとウシメの前に整列した。ウシメは呟く。
「それでは皆さん・・・これからは全て私達の言う事に従う様に・・・意見不同意は許しませんので、そのつもりで・・・万一した場合には死を以って償って頂きますからね・・・では、始めましょう。まずはそこのあなた、こちらへ・・・。」
 日頃からの神に対する知識からは考えられない、それらの言葉に対して戸惑いを隠せない若者達を、2人は次から次へと間段無く指示を出して動かし始めたのだった・・・。

グチュッ・・・グチャッ、ヌチャッ・・・
バコッ、バコッボコッ・・・バコッ・・・
「アッアッアッ・・・イャア・・・アッアァッ・・・ヒャハッ・・・。」
「日フッ・・・ひっお母さ・・・ん・・・ハヒイィィィ、ヒャヒィッ、ハヒャッ、ハフアゥアァ・・・。」
「こらこら、もっと腰を振りなさい・・・そう、その調子よ。」
「もっといいわね・・・入れるわよ・・・。」
 十数分後、その室内には淫声と水音が響き合い、その中をウマメとウシメの声が飛び交っていた。今の彼女らの姿を見るとそれは凄い物で、2人の少年がそれぞれ彼女らのワギナへとペニスを突き入れて懸命に腰を振り、ウマメの腹の下ではケンタウルスの太い赤ん坊の腕ほどの大きさと長さを持ち合わせたペニスを、少女がその小さな口を目一杯に開けて受け入れ、そのワギナには別の少女が舌を這わせて、斜めにされた体の上に位置するワギナにはウシメのペニスが挿し込まれている。そして、それはある程度の間続けられると組み替えられるので、結果として同性同士での絡みや少年が彼女らのペニスをアナルへ受け入れる事もある等、何でもござれの様相を呈していた。
 それでも、若者達は懸命にウマメとウシメ、つまり彼らの信ずる神の言葉に従って賢明に努力していた。そもそもこの交わりは"成人の儀"と称され、ここで初めて性的な快感を知り、それに耐え切る事で子供から大人のへの成長が認められると言う一種の進級試験であり、過去には、今でこそ無いがこれらをこなせず数年越しで認められたと言う例も残っている。また、初めて性の快感を知ると共に交わり方を習い習得すると言う事も含んでおり、真剣にやって然るべきの行事なのであった。それ故に彼らは幾ら気持ち悪くて、体が嫌がろうともそれを受け入れ、その気持ちを喘ぎ声や悲鳴で発散させる他に術は無い。
 この様な事はウマメ達も承知しており、時には術を掛けて負担を軽減させるなどと言う事もした。最初の始まりの際に全員に、卵から漏れ出た精液の残滓を強壮剤として"聖酒"として飲ませるのは、厳密には術のそれではないがそれに近い古くからの慣例である。最終的にはそれに慣れ親しんだ若者達は自ら求める様になり、それぞれの回の終わりとなると双方が折角良くなって来たその関係が、これで最後である事を嘆くのだった。
 そして、今回は計4回16人の若者全員がそれを通過し、晴れて成人して大人の世界へと入っていった。全てが終了した時には、すっかり日は高く登り翌日の昼過ぎとなっていた。流石の絶倫のウマメとウシメも疲れを感じて、別室にて仮眠を取っている間に"成人の儀"の執り行われた部屋は、ウマメの召喚した使い魔によって清められた後に、来年の"成人の儀"を待つまでしばしの眠りに就く。そして、ウマメとウシメ、さやかと博にもそれぞれの終わりの時が近付いていてた。


 例大祭〜後編〜 例大祭〜終編〜へ続く
例大祭〜終編〜
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