甘露の味〜仲間―順子編・下〜冬風 狐作
チュ・・・チュパ・・・チュピ・・・
 椅子に座った男と唇を付け、そして舌を絡ます順子。感じる唾液の味は特に甘くも不味くも無い普通の物で微かに潮の気配を感じる・・・どうやら血が出ている様だ、男の口内の粘膜の何処かから。それは中々の美味であった、恐らく順子のざらついた舌によって傷つき漏れ出したのであろう。
"ちょっと固くしすぎてしまったわね・・・柔らかくしないと、相手は人間なんだし今は・・・。"
 意識して下の固さを緩める順子、気のせいであろうか今日は何だか何時もよりも体をより深く思い通りに調整出来る様な気がしてならない。
"まぁ好都合なんだけどさ・・・そろそろ良いかな。"
 そうして彼女は舌をより深く絡ませスパートをかける、これだけでもかなり楽しく心地よいのだがこれだけでは彼の思いを叶える事は出来ない。表面に近い所へ深層から引きずり出す事は出来ても、表面より上にはどうしても達し得ないのだ。下を離すと彼女は男の口元を舐めて、先程よりも更に回復したペニスを口に含み愛撫する。

 つんと感じる精液の匂い、先程出した物がわずかに残っていたのだろう。鼻腔を伝って匂いが脳に行き、舌でもわずかにしばし外気に触れていた精液の味を感じる。かつてこの様な体になる前、普通の極普通の男であった時にふと気になって妻との絡みの後、自らのペニスにわずかに残っていた精液の匂いを嗅ぎ舐めた事がある。その時は匂いはともかくとても舐める物じゃないと思い、これを口の中に注がれて飲み込む女の味覚を以来疑ってきた。
 そして今、この様な立場になって思うのは男には無い感じられなかった繊細な女特有の感覚によってのみしか分からない事実の裏に潜む深い様々な事実。それは以前から愛読していた本にしろ、何にしろ全てから感じる事が出来た。それまでの人生観が完全に打破されたと言っても言い過ぎではないだろう、そして精液、絡んだ後のペニスに残った残滓にもそれはあった。恐らく女の中でもこれを嫌う物はいるとは思う、女として感じた自分の感覚と妻の感覚が異なるのと同じ様に。
 だが順三と表裏一体である順子は甘味であると感じた、生の出たての精液よりも尊い味・・・至福の味。それ以外には何も思えはしなかった。
 順子はここでも男に空撃ちを先ほどと同じように何度もさせる、今は男として性で報われたいという思いを叶えて上げる為であるのでその様な事をしないで良いのだがあくまでも楽しみ。実は彼女は先程のあの精液の大放出を再び我が目で見たい、更には自らの胎内でそれを受けたいと熱望していた。同時にこれこそ感覚的に一気に出して報いた事への達成感に満たされている男を、間を置かずに今度は女として開発させた方が手早く効率的であるとも感じていた事もある。

「じゃ・・・楽しんでね。心行くまで私の中を・・・。」
 フェラを数回の空撃ちを経て終えるといよいよ本番、彼女は熟れた自らの蜜壷をそっと静かにいきり立ち膨れ上がった男のペニスの上へ下ろす。男の小さな呻き声・・・熱に反応したのだろうか、何れにしても至福そうな顔を浮かべている。そしてそれは順子が腰を動かしだすとますます拡大し、緩み切って収拾が付かなくなった。流石に百戦錬磨の彼も人外の者の蜜壷、人と猫の長所の混じりあった物に対しては耐えられなかった様だ、入れただけでまだ出してはおらずその上まだ数分も立っていないのに1人イってしまった。
 だがそれに気が付いても順子は腰を止めない、これは男が自ら攻め立てて果てないと叶わない願いなのだから後子がその気になってそう行動するまで休めないのだ。
"もう・・・案外軟弱ね、その内になれるだろうけど何時までもこれじゃ堪らないからちょっと助けてあげるか・・・。"
 そうして順子はわずかに自らの気を男に注ぐ、すると快楽の余韻で止まっていた男に意識が急に戻り、ようやく腰を上げて順子の腰へと手をやった。順子もそれに合わせて体を前へと倒し、四つん這いになって尻を高く上げる。すると男は調子を上げて腰を強く叩きつける、この強さではちょっと弱い人間の女だったらこれだけで参ってしまうだろうが、日頃から竜人の強い突きに慣れている順子には特に感じない。むしろ不満である。
 だが時間と共に男は更に突きを強め、雑ではあるが竜人よりも数ランク下のレベルにまでようやく達した。もう男に正気や理性は欠片すらも無いだろう、あるのは徹底的な肉の喜びのみ。交わる事に全てが特化した肉人形、如何にすればもっと気持ち良いかとしか考えない・・・男が男としていられる狭間はもう目の前に接近していた。
「あっ・・・あっあぁぁぁっ!」
 そして響く男の盛大な喘ぎ声、心の底からの歓喜の声。彼の腰は精液が吐き出される度に大きく揺れ動き、その流れていく音が耳に聞こえて来る様だ。溜めていただけあって、先程の物よりも若干量的に劣るが熱い物が胎内へと盛大に流れ込む。心成しか腹がわずかに膨れている感じもしたが、その気持ち良さに順子は無意識の内に膣へ力を入れ、ペニスから出せるだけの精子を吐き出させる様に仕向ける。

 更なる快感を与えられた男の体は更に応えようと、出す傍から精液を生産し送り出せす。しかし出せば出すほど彼の体は変わって行った。全身の引き締まった筋肉は衰えて丸い感じとなり、顎の無精髭も消えて行き皮膚の色が薄くなる。骨格も雰囲気が何処か男らしい固さから女らしい柔軟な物へと代わり、そして肝心のペニスが次第に短くなって口と管が太くなって、今やただの短いホースの切れ端の様ににも見えてただ精液を垂れ流しているのみであった。
 逆に睾丸は双方とも肥大化して次第に体の中へとのめり込んで行く、引き摺られる様にペニスの竿も後退して最後の一滴が床に垂れ落ちた時そこにその雄姿は無かった。体は完全に離れておりまだ順子の胎内に残っている等と言う事はありえない、無論普段静かにしている時のサイズに戻ったと言う事もなく、かつてそれを中心に抱いていた陰毛の中央は平坦で一筋の割目が走っていた。そしてその上の端にある小さな突起、クリトリス。
 そうそれは女性器、つまり男は女になってしまったのだ。だが男はその事にまだ気が付いてはいない、未だ余韻の中にいるその者に悟られぬ様順子は最新の注意を払って幻覚をかける。そして新たに出来たワギナへと舌を・・・男からはペニスを口に食んだ様に見えている・・・当てて舐めた。
"うん初々しい・・・。"
 新鮮な青林檎の様に爽やかな気配と味とを感じるとますます舌を進め、激しく舐めて愛撫する。女性器の感覚は男性器の数倍、恐らく不思議に思っているだろう、どうしてこんなに普段よりも気持ちと刺激が良いのかと。だが深く考えられずに無邪気になって喜ぶだけなので、それについてあれこれ考える必要は無い。とにかく今は出来るだけ早く女として目覚めさせる事。女として達した瞬間、何の疑問も感じずに女としての自分を受け入れる様になっているので、それでこのかつて男であった者の願望は成就しそこからは自分の好きな様に扱える様になるからだった。

 竜人仕込みの順子の舌技は数分も欠けずにそれを達成した、その時かつて男であった者は正気を取り戻し幻覚からも解放されるが、そこに現れた女と化した体に疑問をまったく感じない。当然の様に眺めて受け入れる、笑みをたたえ、本来なら生涯一度として目覚める事無く朽ちる筈であった願望が具現化したことに感動して。そんな彼女を舌で舐めながら見る順子は舌を止めないばかりか、ワギナの中へと突き刺し処女膜を舐めて一旦外し、アナルとワギナに指を二本ずつ突き刺して同時に挿し込む。
 急激に感じる痛烈なる痛み、破瓜の痛み、女だけが生涯一度のみ感じるその痛みに彼女は思わず涙した。前と後、二箇所から感じるその痛みに。勘の良い方は思っただろう、どうして一箇所ではなく二箇所から感じたかと。理由は簡単、何故なら彼女には2つの子宮があるのだから、当然の事ながら卵巣も4つ、膣も2つありその一つは人と同じく前へと出ているが後一つはアナルへと出ているのだ。総排泄口と化したアナルと前のワギナから処女の血が漏れる中、彼女の体に変化が現れる。
 全身を一斉に純白の羽毛が怒涛の如く湧き出して覆われたかと思えば、腕がピンと張って手首から胴体との付け根までの間に羽が形成される。こちらも同じく純白、膝から下は薄桃に染まって鳥特有の鱗に覆われた鳥足に、首が消えて如何と顔が自然な線で繋がり髪も白く顔を覆う羽毛に同化していく。そして口が内側から大きく盛り上げられると嘴が現れ、口元は足と同じく薄桃色の嘴と化した。瞳も丸い円らで黒く、わずか数十秒の間にあの女へと変わった者は鳥へと、鳥人へと変貌した。

「クー・・・クククッ・・・。」
 鳴き声は鳩、そこには全身純白の白鳩の鳥人の姿があった。その時になってようやく順子は口を離して全身を見る。
「うん、上出来、大成功ね・・・私の事は分かる?」
「はっはい・・・順子様でよろしいでしようか・・・。」
 どうやらしっかりと意図した様に伝わっていたらしい。順子は思念として彼女の処女を奪った瞬間、痛みに乗せて必要な事柄を真っ白な脳へと送り込んでいたのだ。上手く行くかどうか半信半疑だったが、成功した様でその態度には自分に対しての敬意と恐れの感じが強く感じられる。
「そんなに固くならなくて大丈夫よ、そういえばあなた名前が無かったわね。何が良い?希望はある?」
「希望ですか・・・言ってもよろしいでしょうか・・・?」
「良いよ、良いよ。私の可愛い奴隷だもの、それ位の我侭は許してあげるわ・・・で、何なの?そのあたなが希望する名前は・・・。」
「本当によろしいのですか?私めが自らの名前を言うなど・・・。」
 どうやらあの男、いや彼女の本性はかなりの生真面目なものらしい。元があの奔放な男であったとはとても思えない。
「良いのよ、私はご主人様ほど厳格じゃないから・・・さぁ言って。」
「では・・・。」
 そう言うとしばし恥じらい気味に下を見詰めて口をもごもごさせる。静かにそれを見守っていると決心が付いたのか、彼女は顔を見上げてそれを口にした。
「カイ・・・カイでお願いします・・・よろしいでしょうか・・・。」
「カイねぇ、まぁ良いんじゃない。じゃあカイ・・・早速楽しもうか、ご主人様はご主人様で当分止めそうにないし、それに結界の中だから・・・しようか?」
「順子様からお誘い下さるとは・・・滅相もございません!よろこんで受けさせていただきます・・・では・・・。」
 そう言ってカイは自ら体制を整える。本能的な、感覚的な物なのだろうかとても自然にやっている、そして順子もそこに飛び込んだ。新たに思いがけずに出来た下僕との絡み合いに・・・結界の中、その家の2階と1階では何時までも嬌声と淫靡な空気が漂い、こだまするのであった。


 完
甘露の味〜目的編第1話〜
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