Revive~胸の鼓動、再び高鳴らん
----- ----- ----- -----
旅の始まり
----- ----- ----- -----
洞窟の前までやって来た犬獣人のシアンと山羊獣人のラシェル。
シアン「ここが秘宝の眠る、先住民の洞窟……」
ラシェル「これで少しは目標金額まで近づけたら良いのだけど……」
シアン(ぼくはぼくのお兄ちゃんが死んだとき、何もできなかった……。
(けど、今なら……。
(いや……!絶対ラシェルの兄を助けて見せる!)
彼らが何故、この洞窟にやってきたのか。
その発端は数時間前に遡ります。
ラシェル「良かった! ここは羽毛や毛並みで覆われる獣人の街みたいだ!
「ここなら、鱗で覆われる獣人でもない限り、いきなり襲って喰われたりしないね!」
そうほっとしたように言うラシェル。
しかし、シアンの返事がありません。
当然のこと。シアンを心配したラシェルはシアンの方を向きます。
すると、そこには目を輝かせ、わくわくと胸を高鳴らせるシアンの姿が。
無理もありません。
彼はあの街から出たことがなかったのですから。
意気投合するシアンとラシェル。
しかし、彼らが出会ったのはごく最近のことなのです。
ひとつ言えるのは、ラシェルはシアンの命の恩人だということ。
回想に回想を重ねることになりますが、スラム街出身のシアンは、死体を漁って喰うような毎日で、出会ったあの日もゴミ溜まりの中にいたのです。
その日、シアンは、いつも彼の獲物を横取りするオオワシ獣人との戦いに打ちのめされ、意識すらもなくなる寸前だったのです。
シン(今度こそ死体の山の一部になるんじゃないか……?)
そう思っていた時のことです。
シアンの目の前に狩りたての肉が転がって来たのです。
見上げると山羊の青年が立っていました。
そう、それこそが今シアンの隣にいるラシェルなのです。
新鮮な肉なんて何年ぶりだろうかと、シアンは我を忘れて喰らいつきます。
しばらくして、肉をたらふく喰い終えると、ハッとします。
お礼を言いそびれてしまったことを悔いたのです。
でも、シアンは諦めません。
どうしてももう一度ラシェルに会いたいシアンは、街の住人に聞き込んで探すことにします。
しかし、スラム街の街の獣人は野蛮なものばかり。
野蛮なモブ「私とあなたは動く肉。
「ただの肉になるのはどちらでしょう?」
弱いながらもなんとか一戦一戦を乗り越えようやく一筋の情報を手にします。
草食獣の狩人の噂。
その情報を信じ行方不明者がよく出るらしい場所で潜伏するシアン。
なんとも粘り強い執念で一週間も張り込みを続けるシアン。
ついに功を奏したのか、ついに通りかかったものが倒れる瞬間を目撃します。
そして颯爽とやってきたのは、まぎれもなくあの時の山羊、ラシェルだったのです!
シアン「ま、まって!」
ラシェル「っ!? 誰だ!」
つい大声で呼び止めてしまい、鋭く睨みつけられてしまうシアン。
シアン「あ、えっと、邪魔をするつもりはないんだ」
しどろもどろ弁明する犬獣人の顔を見てラシェルの顔が綻びます。
ラシェル「もしかして、あの時倒れていた犬? 無事だったんだね!」
シアン「うん! あの時はありがとう。ただそれを言いたくて探してたんだ。驚かせてごめんなさい」
ラシェル「ううん、僕も驚かせちゃったね」
シアン「あの、僕はシアンって言うんだ。君は?」
ラシェル「……ラシェル」
シアン「ラシェル! 君は草食なのに、こんなところでたくましく生きているんだね 。
「ボク、君みたいに強くなりたい!」
そういうシアンに対し、ラシェルは、一瞬驚いたような表情をしますが、そのまま無言で立ち去らんとします。
ですが、シアンが無言で着いて行っても特に追い払う様子もありませんでした。
彼はコウモリ獣人の元で、獣人を狩って売ることで生活していました。
肉食獣人のシアンは、特に何も思うでもなくお礼の意味を込めて手伝います。
そんなある日のこと。
ラシェル「シアン……。
「ねぇ、僕を、殺してくれないか」
シアン「……!? 何言ってるんだラシェル」
ラシェル「僕は同族殺しだ。
「こんなことをしてるのに、僕は今、良い思いをしてる。
「ここで友達のような存在ができると思ってなかった。
「だから、本当に嬉しくて。
「でも、僕はそんなにいい山羊じゃないよ」
シアン「……でも、狩りも理由があってやってるんだよね?」
ラシェル「シアンにも詳しく話してなかったね。
「故郷に患った兄がいるんだ。
「助ける方法を探したけれど、それなりのお金が必要でね。
「けれど病は少しずつ身体を蝕んでいるようで、コツコツと貯める時間もない。
「早くしなきゃ兄さんは助からない。
「色々と模索したけど、この仕事が一番いい稼ぎだったんだ。
「1人を助けるために、僕はいくつの命を奪ったんだろうって、最初はそんなことも考えた。
「でも、だんだん罪悪感を失っていって……そんな自分が怖くて、憎い」
そう、これこそがコウモリの元を飛び出して今、シアンとラシェルが二人で旅をしている理由なのです。
続けて「それに、こうやって僕の事情に他人を巻き込んでしまった」というラシェルに、シアンはこう答えます。
シアン「肉食の狩りは自分が生き延びるため。
「つまり、人を生きながらえさせるための狩りなんだ。
「ラシェルがしてることと、そんなに変わらないと思う。
「それに、ボクは好きでラシェルと一緒にいるんだ。
「巻き込まれてなんかいないよ!」
シアンがこう言ってもまだ辛そうな顔をしているラシェル。きっとシアンの想像するより沢山の想いを抱えていることでしょう。同族を殺すことは、自分を殺すようなことなのかもしれない。そう考えたシアンは、命の恩人に尽くしたくて、どうにか笑顔になってほしくて、ある提案を持ち掛けます。
シアン「……そうだ。この街を出て、他の方法でお金を貯めようよ!
「逃げた罪人を捕まえたりとか、いろんな仕事があるって聞いたことがある。
「僕もラシェルのおかげで戦えるようになった。
「旅をしながら資金集めができるよ!」
ラシェル「シアンはそれでいいの?
「僕のために危険な旅をするなんて……」
シアン「僕もこんな荒れた街から出たい!
「スラム街では日銭暮らしだったせいで、ボク一人じゃ旅なんてできっこなかったんだ。
「それに、また一人にも戻りたくないよ」
ラシェル「今までは草食獣ってだけで門前払いされた仕事が沢山ある。
「シアンと一緒なら、そんな仕事もできるかな」
シアン「そうだよ!
「今も立派な仕事をしてると思うけど、ラシェルが辛いなら無理して続けることはないよ」
ラシェル「っ、こんな僕のために、ありがとう。
「シアン」
シアン「そ、そんな泣くことないよー!
「ほらほら、どうせ目も覚めちゃったし、旅支度しちゃおうよ!
「そして新しい街で、新しい生活を始めるんだ!」
コウモリの元を離れ、ラシェルにとって罪悪感の無い方法で、稼ぎをする。
そして、兄を助ける。
それこそがシアンとラシェルの目的なのです。
シアン「にしても、ここはいろんなとこから おいしそうな匂いがするよ!」
ラシェル「ふふっ、でもはしゃぐ前に、まずはお仕事探さなきゃね」
シアン「あっ、そうだよね、ごめん。とりあえずあの掲示板を見たらいいんだっけ」
ラシェル「罪人を捕まえたりとか、材料収集か……」
シアン「ねぇねぇ、これは?」
ラシェル「こっちも収集? えっ、でも報酬が桁違いだ……」
シアン「依頼主のところに行ってみようよ!」
依頼主の元へやってくるシアン。
宝石商「犬と山羊か……お前らも、報酬に釣られた口か?」
シアン「そりゃ……、釣られますよ!!」
宝石商「言っておくが、秘宝があるのは入り組んだ洞窟の中だ。
「しかも暗いところを好むやつらが占領している。
「盗賊なり、追いやられた鱗で覆わるる先住民なりが、ノコノコやってきた獲物をディナーにしようとなぁ」
シアン「だ、大丈夫です! こう見えても戦闘の腕はあります! えっと、こっちのラシェルが……」
ラシェル「えっ、ぼくが?」
宝石商「別に勝手に行ってもらって構わないが、何があっても私は保証しないからな。
「他にも同じ依頼を受けたやつが洞窟へ向かっている。そいつらより早く届けてくれれば、報酬はあんたたちのもんさ」
シアン「よし、頑張るぞ!」
さて、これが今、ラシェルとシアンが洞窟の前にやって来た理由の全てです。
ラシェル「回復や脱出に必要なアイテムは必須だ。持ち物を確認してから進んでいこう」
----- ----- ----- -----
疑惑の敵
----- ----- ----- -----
洞窟を進むシアンとラシェル。
っとそこへ、ドーベルマンと長毛猫の獣人が立ちはだかります。
ドーベルマン「ん……? なんだお前ら」
シアン「えっと、ボクたちは依頼を受けて来ただけだ。この先を通してくれる?」
長毛猫「はっはっはっ! まさか俺と同じ目的で来てるとはなぁ!」
ドーベルマン「俺も秘宝とやらを探しに来たが、迷っちまって。その間に他のやつに奪われちまっても嫌だからなぁ。ここで来るやつを待ち伏せしてたんだよ」
長毛猫「いやぁ運がいい! 丁度腹が減ってたんだ。そこのうまそうなヤギが今日の晩飯だ!」
シアン「そ、そうはさせない!」
ラシェル「生憎、僕らも黙って喰われるほど弱くはなくてね。返り討ちにしてやる!」
流石はラシェル。目にも止まらぬクロスボウで死なない程度に次々にドーベルマンと長毛猫の武器を破壊していきます。
ドーベルマン「くっ、くっそ! なんで俺が、こんなやつらに……」
この事態に退散するドーベルマンと長毛猫。
ラシェル「それにしても、奴ら同業者とかいってたけど……、本当なのかな?
「なんか、爬虫類っぽい技使ってくるし、なんか原住民っぽい気がするんだけど。
「でも他の獣人に化けられるなんて聞いたことがないし……」
ラシェルには、1つ疑問がありました。
ドーベルマンが爬虫類特有の技、ヴェノムスファングを使ってきたことです。
原住民なら頷けるのですが、他の獣人に化けられる力など、この時のシアンとラシェルは知る由もありませんでした。
----- ----- ----- -----
梟の学者
----- ----- ----- -----
そうして、しばらくして「やった! ボクたちが最初に見つけたぞ!」依頼にあった場所で秘宝を見つけるシアン、っとそこへ。
クルーフォ「ほぉっ!!! こっ! これがっ! あの秘宝!!!」
シアン「うわっ! 泥棒!!!」
ラシェル「お前も依頼されてやって来たのか!」
突如フクロウの獣人が現れ、身構えます。
クルーフォ「依頼? はて、ワシは自分の意思でここに来ただけじゃが……。
「失敬、申し遅れてるしもうたな。ワタシはクルーフォ。鉱石について研究している者じゃよ。いやなに、お主らが最初にそれを手にしたところは見ておる。奪う気は全くないんじゃ」
ラシェル「じゃ、じゃあ返してくれません?」
クルーフォ「おぉ、すまんすまん。ほれ。
「いやぁ、いい原石を見つけるとつい我を忘れてしまうもんでな! 以前ここに立ち入った時には洞窟の住民たちに酷い目に遭わされたが、何故か今回はあまり出会わなかったのう」
そういった矢先。
蛇の原住民「おい! 小童ども! さっきはよくもやってくれたな!」
クルーフォ「ひぃっ! や、やっぱり 居ったのか!」
長毛猫「へっ! 俺としたことが犬と山羊にこてんぱんにされちまうなんてよぉ!」
ドーベルマン「今度はお前らがおいしくいただかれる番だぜ!」
トカゲと蛇の獣人が現れ、戦う嵌めになります。
ドーベルマン「くっそぉ! もう好きにしやがれ!!!」
クルーフォの魔法とラシェルのクロスボウでコテンパンにされた原住民は、逃げていきます。
シアン「犬と山羊にこてんぱんにされたって言ってたけど、人違いでもされたのかな?」
ラシェル「……どうやら、ここの原住民は他の獣人に化ける力でも持っているのかもしれないね」
シアン「……えっ?」
ラシェル「ごめん。
「なんでもないよ」
その話をしている矢先クルーフォは何かを考えているようです。
クルーフォ(他の種族に化ける力……か。それじゃあまるで、レヴィが研究していたことそのまんまじゃああるまいか。そういえば、ワシがこの鉱石の研究を始めたのも、あいつがきっかけじゃったな。
(……いや、それにしても不自然だ。昔からそんな力があったのなら、追いやられることもなかっただろうに。なんなら、ワシの前に現れた時、そんな力があったのなら、ワシはもっと追い詰められていたはずじゃ)
そんな時のこと。
シアン「うわぁ!」
声を上げるシアン!
ラシェル「シアン!?」
どうしたのかと振り向くラシェルとクルーフォ。
そこに佇んでいたのは、本物の盗賊団。
盗賊兄弟プラム兄貴「へへっ、宝は頂いた!」
盗賊兄弟プラム子分「あっ! ちょっと兄貴! 出口は反対ですぜ! そこは洞窟の奥〜!」
盗賊兄弟プラム兄貴「ああ……本物の泥棒だ……」
クルーフォ「ど、泥棒とは許せん! ワシも力を貸そう!」
シアン「えっ、いいんですか?」
クルーフォ「こう見えて一通りの魔法なら扱えるからのう。少なくとも邪魔にはならんはずじゃ」
シアン「ならお願い! 力を貸して!!」
クルーフォ「おお! ワシに任せておけ!」
----- ----- ----- -----
盗賊との邂逅
----- ----- ----- -----
そうして、暫く洞窟を進むとそこは最深部。
当然そこには、先ほどの盗賊団がいました。
シアン「見つけた! それはボクらが最初に取ったんだぞ!」
盗賊兄弟プラム兄貴「いいや、最後に手にした者の物さ」
盗賊兄弟プラム子分「兄貴ぃ、逃げようにも、出口はあいつらに塞がれていますぜ?」
盗賊兄弟プラム兄貴「くっ、追い詰められたってわけか。中々やるな」
ラシェル「君らが勝手に洞窟の奥へ行ったんじゃないか」
盗賊兄弟プラム兄貴「だがこいつは渡さない。力尽くで奪ってみな!」
そうい意気揚々、宣戦布告する盗賊ですが。
盗賊兄弟プラム兄貴「くそっ……こいつはお前らにやる……」
盗賊兄弟プラム子分「あ、兄貴ぃ! しっかりしてくだせぇ!」
盗賊兄弟プラム兄貴「大丈夫だ、まだ動ける」
盗賊兄弟プラム子分「とんずらしますぜ!兄貴!」
ラシェルのクロスボウとクルーフォの魔法の前に全く歯が立ちません。
ラシェル「ふぅ……僕たちも街へ戻ろうか」
シアン「クルーフォさんもありがとう!」
クルーフォ「ふぉっふぉ! 久し振りに心踊る冒険ができてワシも楽しかったわい! 街まではお主らに着いて行ってもよいか?」
シアン「もちろんです!」
クルーフォ「それではありがたく! では、ゆくかの!」
そんなこんなで街についた3人。しかし。
クルーフォ「着いたのう! それにしても、その秘宝はどうするつもりなんじゃ?」
シアン「依頼主さんのところに持っていくよ」
クルーフォ「となると、あの宝石屋かのう……。
「その秘宝のことも最後まで見守ってよいか?」
シアン「もちろん!」
「では、もうしばらく居させてもらうかの」
クルーフォは、もうしばらく、ラシェルとシアンの元を離れたくない様子。
宝石商「おお? 犬と山羊。まさかあの秘宝を持ってきたって言うのか?」
シアン「はい!」
そう得意げにいうシアン。
しかし「……なんだこの石っころは」 依頼人の反応は予想に反していました。
ラシェル「えっ、確かに依頼書の通りの場所にあった、秘宝なはずなんだけど……」
宝石商「苦し紛れの言い訳をするな。これじゃあ報酬は渡せんな」
シアン「そ、そんな!」
そんなピンチを救ったのがクルーフォでした。
クルーフォ「ふむ? それは確かに秘宝だと思うが」
宝石商「あんたまで何を言う!」
クルーフォ「ほれ、貸してみなさい」
シアンがクルーフォへ秘宝を渡すと、それを磨きあげ、魔法を唱えた。
クルーフォ「これでどうじゃ?」
宝石商「おお! こいつはまさしく俺の求めていた秘宝! 一体何をしたっていうんだ?」
クルーフォ「これは原石じゃな。しかし、磨くだけでは真価を引き出せん。ちょちょいと色々しておるんじゃ」
宝石商「って、あんた! 宝石鑑定で有名な、あのフクロウか!
「いや、疑ってすまなかった。しっかりと報酬は渡そう」
シアン「やったぁ! ありがとう、クルーフォさん!」
ラシェル「ありがとうございます!」
クルーフォ「ふむ! 礼には及ばんよ!」
その後、クルーフォは、シアンやラシェルと別れると、先の依頼主に呼び止められておりました。
宝石商「なぁ、お前を見込んで頼みがある。
「この包みを、レヴァンという獅子獣人のところに届けてもらいたい」
クルーフォ「本当にすまん。
「ちょっと、やりたいことができたのでな」
宝石商「なんだ?
「まさかあの二人のことが気に入ったのかぁ?」
クルーフォ「ぬう……わかるかのう?」
宝石商「なんかそういう目をしてたもんな?
「ばっちり瞳孔が開いてたぜ?
「多分だが、あいつらも行き先は同じだ。
「険しい山で狭まれた半島という地形上、ここから行ける街は二つしかない。
「あの二人はどう見ても旅をはじめたばかりって雰囲気だし、二人の服を見れば大体どこに住んでいたか想像つくだろう?
「わざわざ、引き返して岬の方に行くとは考えにくい。
「そして、岬と反対側へ向かうなら、ルートは三つあるが、必ず次の街を経由することになるだろう?」
クルーフォ「……どうやら、ただの宝石商というわけではなさそうじゃ」
宝石商「ははは!なんだよそれ?今の俺はただの宝石商さ?
「それとだな?
「この包みには、さっきの宝石が入っている」
クルーフォ「……さっきの宝石。
「レヴァンとやらは確か獅子獣人だったな?
「まさかとはレヴィと何か関係があるのか?」
宝石商「おお!確かレヴァンもまさにそんな名前話してたなぁ。
「こりゃ行くっきゃないだろう?
「なんなら、クリスタルフォンで、彼奴に繋いでやろうか?」
クルーフォ「いや構わん。
「会って直接話せばわかるだろう」
宝石商「それって?」
クルーフォ「良かろう!」
こうして、クルーフォはシアン、ラシェルたちの元へと向かいます。
ラシェル「この街での稼ぎはこれくらいにして、次の街に行こうか。森を通っていく間も危険だから、買い出しをしてから出発しよう」
シアン「分かった。明日の朝には出発しようか!
「あれ、そこにいるのって……」
クルーフォ「おお、また会ったのう。おぬしらも旅をしているのか?」
シアン「うん! これからターゴイスへ向かうんだ」
クルーフォ「ふむ、そうであったか。少し頼みたいことがあってだな……」
ラシェル「どうしたんです?」
クルーフォ「ワシも旅に連れて行ってくれないか! いやその、こう見えて老体での、ちと一人旅は心細くてのう」
ラシェル「うーん……僕たちは報酬金を集めるために、街を転々として依頼をこなすつもりです。だから決して安全な旅ではないと思います」
クルーフォ「その辺は大丈夫じゃよ。昔はワシもそうやって転々として暮らしていたからのう。ワシの目的は各地の鉱石を見るだけじゃが、お主らの目的にも協力しよう」
シアン「ラシェル、いい提案じゃない?」
ラシェル「うん、なんとなくクルーフォさんのことは信用できる気がする」
シアン「クルーフォさん! ぜひ着いてきて!」
クルーフォ「良いのか! いやぁ、ありがたい!」
シアン「ボクはシアンで、こっちはラシェル!」
ラシェル「よろしくお願いします!」
クルーフォ「シアンとラシェルか! 良い名じゃな。話す時もそう身構えんでいいぞ。同年代くらいの友達だと思ってよい」
シアン「それじゃあ……よろしく!」
クルーフォ「ふぉっふぉっ! では、ゆこうか。旅の始まりじゃ!」
しかし、それを覗く者はいました。
先の盗賊です。
盗賊兄弟プラム子分「兄貴ィ?聞きやした?」
盗賊兄弟プラム兄貴「あぁ、ばっちりとな?」
盗賊兄弟プラム子分「これは、バルとゾットに知らせないとっすねぇ」
盗賊兄弟プラム兄貴「クリスタルフォン!!起動!!」
バル「おお!プラムじゃねぇか!
「久しぶりだなぁ!」
盗賊兄弟プラム子分「バルさん、聞いてください!
「この前ちょいと面白いものを見てしまいまして」
盗賊兄弟プラム子分「犬と山羊、それからフクロウのパーティなんですがね。
「そいつは酷い目に遭わされやして」
ゾット「そいつは、災難っしたねぇ?」
盗賊兄弟プラム子分「でね?そいつらなんすが、これからそっちに向かうみたいなんスよ」
----- ----- ----- -----
無法地帯
----- ----- ----- -----
しばらくして、道の分かれ道に来ると、ラシェルは何者かの気配に気づきます。
ラシェル「シアン、気を付けて!!「誰かいる!」
モルッグ「お前らターゴイスへ行くんだってな?」
シアン「へ、ヘビ獣人!?」
ラシェル「さっきの原住民!?「にしては、服がちょっと違うっぽいけど、でもこの街で蛇獣人ってことは……」
クルーフォ「何故行き先を知っているのじゃ?」
そう クルーフォは訝しみます。
クルーフォ(あいつと同じように推理しただけと思いたいが、この自信……、どこかで情報が漏れていたのか……?)
それに対してヘビ獣人。
モルッグ「別に、そんなこといいじゃねぇか?
「それより知ってんのか?
「ターゴイスへ行く道は大きく分けて三つある。
「山道、無法地帯、海岸沿い……。
「だが、嵐で山道と海岸沿いはもうすぐ通れなくなっちまうぜ?
「もしかしたら、土砂崩れに巻き込まれちまうかもなぁ?」
ラシェル「この人、なんか怪しくないかい?」
そういうラシェルに対し
シアン「……(熟考)
「う~ん、怪しいことしか言ってないんだけど、何故だろう……?
「なんか信用できそうな気がする……」
ラシェル「えぇ……?」
ラシェルは思わず困惑します。
モルッグ「この先の無法地帯ならこの俺様に任せておけ!
「案内してやるよ!」
ラシェル「なんか、ついていくみたいな流れになってるけど」
シアン「案内してくれるみたいだし、ここは様子をみてみない?
「例え罠だったとしても、ラシェルもクルーフォもいるんだし、なんとかなるって」
ラシェル「シアンがそういうなら」
クルーフォ「まぁ、非常食が一匹増えると考えれば……」
ラシェル「案内お願いするけど、もし裏切ったらシアンとクルーフォのご飯にしてやるからね」
モルッグ「裏切んねぇよ!(俺はな)」
シアン「ぼくはシアン!
「キミは?」
ヘビ獣人は答えます。
モルッグ「俺はモルッグ」
ラシェル「ここから、無法地帯だ!
「気を引き締めて行こう!」とラシェル。
そんな矢先、背後から来た虎獣人に奇襲を仕掛けられるも、クルーフォの魔法、ラシェルのクロスボウ、そして新しく加わったモルッグの毒牙で乗り越えていきます。
そして、暫く無法地帯を進んでいくと、突如悲鳴が聞こえます。
パルナ「きゃーっ助けてー!!」
声の主は兔の獣人。
モルッグ(本当の裏切りモノのお出ましというわけか)
そうモルッグは声に出さずに内心つぶやきます。
ドロップ「げひゃひゃ!
「弱っちい兎が!!
「この天空の支配者に勝てるとでも!」
はたから見れば、兎人を一匹のオジロワシ鳥人が襲おうとしているように見えることでしょう。
そんな様子を見て、ラシェルが弓を構えようとしたとき、既にシアンは前に飛び出しておりました。
シアン「やめろ!!!!」
ラシェル(シ、シアン?どうしたの?いつもと雰囲気が違うけど)驚くラシェル。
クルーフォ「いじめとは許せん!!」
ドロップ(ふふふ、やっぱりねぇ?かつて、彼奴にいじめられていたお前なら、この状況は見過ごせるわけないよねぇ。にしても、パルナ?梟と蛇が一緒なんて聞いてないのだけど)
パルナ(……なんで?この前見た時は二人だったじゃない?何で増えてるの???)
オジロワシ鳥人とグルである兎獣人は、この前見たときより人が増えていることに驚きを隠せません。
ラシェル「どうやら、相棒はお怒りみたいだ!
「とりあえず、今日は鷹狩りといこうか!!」
ドロップ(さて、ラシェル。まず、お手並み拝見と行こうじゃないか?ここであっけなくやられるなんて、つまらない死に方はするんじゃないよ?お前への復讐、そして彼奴に捧げるレクイエムには、もっと素晴らしいステージを用意しているのだから)
そういいオジロワシ獣人との戦いになるシアンたち。
モルッグの毒牙で、消耗戦に持ち込むと、オジロワシ鳥人は捨て台詞を残し逃げるように去っていきました。
ドロップ「きぃ!!アンタたちやるわね!
「覚えておいてよ」
パルナ(今の目配せ、後は頼んだのサインね……)
クルーフォ(さっきのオジロワシ、確かに鳥系のスキルじゃ。じゃが……。オジロワシのスキルではないのう)
ラシェル(……この羽、ハチドリの羽だ。まさかさっきの原住民みたいに……)
クルーフォp(レヴィ……お前は何を企んでいるのだ?)
っと、それぞれがそれぞれ考えていると、シアンが不意に兎獣人に声をかけます。
シアン「大丈夫?
「怪我無い?」
パルナ(草食の狩人と肉食のパーティ……。私の憎む狩人と肉食の。いつもと何も変わらない。今回だってきっと巧く行く!!私は、私の家族を殺した狩人という存在と肉食という存在全てを許さない!!)
「?」
何かを決心する兎獣人を見て疑問に思うも特に警戒することもないシアン。
それを横目にモルッグもまた過去を思い出していきます。
モルッグ(いじめ……ねぇ……)
ラシェル「この人、なんか怪しくないかい?」
シアン「う~ん、怪しいことしか言ってないんだけど」
シアン「例え罠だったとしても、なんとかなるって」
クルーフォ「まぁ、非常食が一匹増えると考えれば……」
シアンやラシェル、クルーフォから投げかけられた言葉を思い出すモルッグ。
モルッグ(……昔と何も変わってないじゃないか)
かつての誰かA「なぁ、なんで知ってたんだよ!
「俺の親父が死ぬってなんで知ってたんだよ!!」
モルッグ「それは……」
かつての誰かB「お前が殺ったんだろう?」
モルッグ「違う!!」
1つ。
かつての誰か「なぁ、お前予知能力が使えるんだってなぁ。
「ちょっと力を貸してくれよ」
2つ。
かつての誰か「予知能力が使えるなら。
「なんであの時助けてくれなかったの?」
3つと、過去のいくつものトラウマを思い出していくモルッグ。
モルッグ「……」
シアン「モルッグ、大丈夫?」
顔色が悪そうなモルッグにシアンは声をかけます。
モルッグ「あ、あぁ、大丈夫だ」
そして、その夜。
シアンたちはその無法地帯で野営することになりました。
テントの外、ラシェルは夜の散歩に出かけていました。
かつての獲物「何故だ!俺たち同じ草食だろ?」
かつての獲物「この同族殺し!!」
獲物を狩った時、投げかけらてた言葉を思い出すラシェル。
ラシェル(そうだよ?ぼくは、同族殺しさ!)
シアン「肉食の狩りは自分が生き延びるため。
「つまり、人を生きながらえさせるための狩りなんだ。ラシェルがしてることと、そんなに変わらないと思う」
シアン「ボク、君みたいに強くなりたい!」
シアン「だ、大丈夫です! こう見えても戦闘の腕はあります!
「えっと、こっちのラシェルが……」
シアン「例え罠だったとしても、ラシェルもいるんだし、なんとかなるって」
シアンの言葉を思い出すラシェル。
ラシェル(違う……。ぼくは……ぼくは強くなんてないよ)
長毛猫「いやぁ運がいい! 丁度腹が減ってたんだ。そこのうまそうなヤギが今日の晩飯だ!」
クルーフォ「まぁ、非常食が一匹増えると考えれば……」
ドーベルマンと長毛猫、いやトカゲと蛇の原住民から投げかけられた言葉を思い出すラシェル。
さらに、クルーフォのモルッグへの言葉までが追い打ちをかけます。
ラシェル「ぼくは結局草食で!キミたちは肉食なんだ!!!」
ラシェルは思わず大声を上げてしまい。
慌てて、辺りをきょろきょろします。
ラシェル「良かった……誰もいない」
パルナ「大丈夫?」
ラシェル「わぁっ!!」
声をかけたのは意外にも、兎の獣人でした。
パルナ「あまりキャンプから離れると危ないよ?」
ラシェル「……御免、ちょっと一人にしてほしくて」
パルナ「ここは、無法地帯……わかってるの?」
ラシェル「……。
「ぼくは、裁かれるべきなのかもしれない」
パルナ「……。
「私パルナっていうんだ!
「私も、肉食や狩人を憎んでいるの!
「あなたとは気が合いそうね」
ラシェル「……待って」
パルナ「ラシェル……、裁かれたいと願うなら。
「きっとその時は来るでしょうね」
レヴァン「ガオー」
シアン「な、なんだろう?」
クルーフォ(こ、これは、獅子獣人がもがくときの吠え方)
何かに気づいたクルーフォは、先行してしまいます。
シアン「あっ、クルーフォ……」
ラシェル「仕方ない、ついて行こう!」
パルナは(チッ、また肉食かよ)と内心嫌気が指すのでした、
レヴァン「助けてくれ……。
「ちょっと、狐獣人の罠に嵌まってな」
獅子獣人は言います。
シアン「だ、大丈夫?」
ラシェル「ぼくたちを襲わないと約束してくれるなら、助けてあげるよ」
クルーフォ「なぁ、そこの獅子獣人。
「レヴァン又はレヴィという名前の獅子獣人を知らないか?」
レヴァン「なぬ?
「レヴァンは私だ!
「しかもお前、レヴィを知っているのだな?」
クルーフォ「ある人物から蛍石の配達を頼まれてな?」
レヴァン「なんだと?
「海岸沿いと山道のルートは、土砂崩れでエクスプレスはみんな全滅だと聞いたぞ?
「お前たち、鳥獣人でもないのに一体どうやって?」
シアン「……モルッグがいなかったら、今頃全滅だったね」
モルッグ「あぁ、ぺちゃんこだったさ」
ラシェル「……」
レヴァン「おお!なんと!
「これも筋肉の神の御導きか?」
クルーフォ
「さて、話を戻そう。
「何故、レヴィを知っているか……じゃったな?」
レヴァン「そ、そうだ!
「聞かせてくれ」
クルーフォは語ります。
クルーフォ「宝石の鑑定、蛍石の研究、これはわしにとってかけがえのないものじゃ。
「これをはじめたきっかけは、レヴィという獅子獣人じゃった。
「初めてであった時、あやつは、魔法の研究に使う太陽光集約レンズ、顕微鏡、半導体に最適な鉱石を探していた。
「彼との研究は楽しかったし、彼も楽しんでいるようにみえた。
「でも突然姿を消した。
「『お前と出会えて楽しかった』『でも、俺はお前を騙してた』『これ以上は騙せない』『さようなら』と残してな。
「おまけに、『他の種族に化ける力』彼の度々口にしていた台詞を二度も目の当たりにしてしまった。
「これ以上はじっとしておれんよ」
シアン「クルーフォ……」
レヴァン「そうか、だからあの石を集めていたのだな?
「私が宝石の配達を頼んだのは他でもない」
そう前置きした上で獅子獣人は伝えます。
レヴァン「レヴィがあちこちの鉱山で鉱石を集めていたからだ。
「何か良からぬことを企んでいるのではないかと……な?
「……レヴィは魔法に魅入られ、教会を破門された。
「でも、かけがえのない私の兄なのだ。
「もしもしの時は私が止めてやりたい」
ラシェル「兄……」
シアン「……」
その時、クルーフォの羽が矢のように放たれ、レヴァンを絡めとっていたツタを断ち切ります。
レヴァン「ありがとう」
クルーフォ「それより、狐獣人に嵌められたとかいったな?」
レヴァン「あぁ、大変なんだ!
「この街は今、盗賊ギルドに狙われている」
シアン「この街が狙われているって、どういうこと?」
シアンは尋ねます。
レヴァン「この街の街頭について知っているか?」
ラシェル「確か、珍しいフローライト電光というのが使われているらしいね」
ラシェルが細くします。
レヴァン「そうなんだ。
「その、フローライト電光全てが盗まれてしまってな……。
「売っても大してお金にならないだろうに」
そのレヴァンの言葉にどこか沈黙した様子のクルーフォ。
レヴァン「どうしたんだ?」
レヴァンは疑問符を浮かべます。
クルーフォ「フローライト電光にもな使われておるんじゃ……」
シアン「な、何が?」
クルーフォ「蛍石が……」
レヴァン「なんだって?」驚きを隠せず「だが、街灯の中身を売ってもお金にならないと聞いたのだが」と続けます。
クルーフォ「加工しているからのう……」
ラシェル「それじゃあ、レヴィの件に関係しているかもしれないってこと?」
そこへ村人がやって来ます。
村人A「あぁ、ここにいらっしゃいましたか、レヴァン殿。
「緊急事態です。
「盗賊ギルドが、その『シアン』と『ラシェル』それから『クルーフォ』とやらになら、アジトの場所を教えてやっても良いと言っています」と村人。
シアン「えっ、ぼく?」
ラシェル「ボクたちを名指し?」
クルーフォ「これは、関わらないわけにはいかなくなってしまったのう」
驚くシアン、ラシェル、それから困った様子のクルーフォに対し、レヴァンは訝しみます。
レヴァン「……どうなっている?
「いくらなんでもタイミングが重なり過ぎている。「お前たち、まさか繋がっているのではあるまいな?」
その言葉に、シアンは慌てて、答えます。
シアン「ほ、本当に何も知らないよ」
ラシェル「まさか、モルッグ?」
ラシェルもモルッグを疑っているようです。
モルッグ「なんでそうなるんだよ」
人からあまり裏切られることの多かったモルッグ。
その言葉に信じてもらえていないことに内心傷ついているとうようです。
クルーフォ「ぬぅ。
「まだ情報が足りん。
「今の段階で決めつけるのは早計過ぎる」
パルナ(なんだか、ややこしいことになっちゃった。早く蹴りを付けないと)
モルッグ(やっぱり、俺の事なんて誰も信用しないんだな)
ラシェル(ボク、やっぱり怖いよ。昔はあんなにも肉食の獣人と一緒に過ごせたらと願ったのに)
パルナ、モルッグ、ラシェルは、それぞれ思いを巡らせます。
そんな中シアンはラシェルに伝えます。
シアン「とりあえず、酒場に行って依頼を受けてみようよ」
ラシェル「でも……?」
シアン「ラシェルならきっと大丈夫だよ!」
ラシェル「っ!?」
シアン「ラシェル?」
ラシェル「そう……だよね。「目標金額まで貯めないとね!!」
シアン「よし!!盗賊ギルドのリーダーを倒して、レヴィと名指しの謎を聞き出して、ラシェルの兄の薬をゲットするぞ!!」
レヴァン、モルッグ、パルナ、ラシェル、クルーフォ「……」
シアン(あれ皆、どうしたんだろう?)
訝しむレヴァン、信用されないことに傷つくモルッグ、面倒くさそうなパルナ、恐怖に耐えかねているラシェル、熟考するクルーフォ。
そんな中、シアン、ただ、一人だけ元気そうに、やる気を見せるのでした。
----- ----- ----- -----
盗賊アジト
----- ----- ----- -----
盗賊兄弟プラム兄貴「バルさんやゾットさんの元にはそうやすやすと辿り着かせはしないぞ!!」
盗賊兄弟プラム子分「そうですぜ!!」
シアン「な、なんで、ここにいるの?」
シアンは驚きを隠せません。
ラシェル「どうやら、これが原因だったみたいだね?」
「む、なんのだ?」どういう意味かを尋ねるレヴァンに「名指しの!!」そう答えるラシェル。
モルッグ「な?言ったろ?俺のせいじゃないって」
モルッグもまたそう告げます。
シアン「でも、どうやってここに辿り着いたの?」
そうシアンに対し、盗賊兄弟プラム兄貴は答えます。
盗賊兄弟プラム兄貴「よくぞ聞いてくれた!!
「なんかすごいテレポート装置を見つけたんだ!!」
盗賊兄弟プラム子分は慌てて「兄貴! それ俺たちだけの秘密だったんじゃ?」と静します。
レヴァン「疑ってすまなかった」
謝るレヴァン。
クルーフォ「別に構わん。あの状況じゃ、無理もない」
ラシェル「それより……」
ラシェルの他、モルッグとパルナもまたプラムたちを睨みつけます。
盗賊兄弟プラム子分「なんか、山羊と蛇と兎が物すっごくこっち睨んでるんだが?」
盗賊兄弟プラム兄貴「俺たちもモテ期到来か?」とプラム。
クルーフォ「はて?一体どうしたんじゃ?」
三匹の様子にどこか不信感を抱くクルーフォ。
レヴァン「……これは筋肉の神の信託を授ける必要がありそうだ」
シアン「なんかわかんないけど、お前らが、ラシェルとモルッグとパルナを傷つけたんだな!?
「絶対に許さない!!!」
勝負はいとも簡単につきました。
ラシェルのクロスボウ、レヴァンのモーニングスター。
スノードロップと名付けられたパルナのレイピア、モルッグの浮遊鏡。
それらの圧倒的な力に盗賊を捕縛することができたのです。
盗賊兄弟プラム子分「ひぃっ!?
「許してくれ!!!」
恐怖する盗賊……っとそこへ。
ラシェル「さて、どうやって殺そうか?」
意外な言葉を放つラシェル。
シアンはそんなラシェルに困惑します。
シアン「待って!
「ラシェル、何も殺すこと」
ラシェル「シアンは、草食の肉じゃなきゃ不満?」
ラシェルは圧をかけるようにいいます。
「えっ、そういうわけじゃ(なくて)」と言いかけるシアンに、「散々草食獣人の肉食べといて、肉食獣人が殺されるのは嫌なんだ……?」とラシェル。
シアン「そういうわけじゃなくて……。
「言ってたじゃん。
「同族殺しはもうしたくないって……」
そうラシェルに戸惑うシアンの言葉。
ラシェルはゆっくりと口を開きます。
ラシェル「同族じゃないよ……」
「えっ……?」と驚くシアン。
ラシェル「肉食は同族なんかじゃ……ない」
そうラシェルはそこを飛び出して行きました。
「ラシェル待って……」そう追いかけようとするシアンに「あ、あたし追いかけてくる。
「シアンは、一旦ここで待ってて?」とパルナ。
モルッグ「なぁ、シアン?
「もし、オレがこう言ったら信じるか?
「『パルナはラシェルを殺そうとしている。
「『そして、ラシェルはそれを受け入れようとしている』と」
モルッグの言葉に、シアンはラシェルの言葉を思い出します。
ラシェル「シアン……」
「ねぇ、僕を、殺してくれないか」
そうして、シアンは強く答えます。
シアン「そんなの……っ!!!
「……信じられないよ」
モルッグ「っ……。そうか。
「ならばこのままお前は何もできずに、『また』失うだろう」
シアンは自分の兄とラシェルを重ね合わせると。
それに反発するように、振り切るように、気づけば、モルッグに爪を振りかざしそうになっていました。
モルッグ「おお怖ぇ……、今のラシェルが見たら……怖がるだろうな?」
シアン「……」その言葉にシアンは思わず沈黙します。
モルッグ「それじゃあ俺も、ラシェルを追って来るとするぜ」
シアン「レヴァン……、この二人殺した方が良いのかな?」
盗賊をよそ眼に、そう尋ねるシアン。
「ひぃっ!?」怯える盗賊兄弟プラム子分。
盗賊兄弟プラム兄貴「俺はどうなってもいい。
「だが、隣のコイツは助けてやってくれ」
レヴァン「シアン……、食料は間に合っているのだろう?
「だから、ラシェルをとめたんだろう?
「何も殺すことない。「それは間違ってないんじゃないか?」
シアン「でも、ラシェルにとっては、肉食の獣人が生きてるってことは、沢山同族が殺されるってことで」
シアンは考えを巡らせます。
レヴァン「なら、私を殺すのか?
「クルーフォは?
「モルッグは?」
レヴァンその一言に「殺したくない……」とシアン。
レヴァン「なら、こいつらはどうしたい?」
シアン「殺したくないかも……」
そうして、シアンは縄を解くのでした。
盗賊兄弟プラム兄貴「……なんだか、大変なようだな?
「助けてくれてありがとう!
「この借りは必ず返す!」
盗賊兄弟プラム子分「なんだか、シアンのこと見直したっす。
「それじゃあ」
クルーフォ「ふむ、筋肉の神と聞いて少し心配したが、お前もちゃんとした神官なんじゃな」
レヴァン「クルーフォといったな?
「最近、筋トレしとるのか?」
クルーフォ「ぬぅ、それは……筋肉が落ちやすい種族とそうでない種族があってじゃな?」
クルーフォは体質上仕方ない物だと弁明しますが。
レヴァン「ギルティ!!!」
クルーフォ「な?なんじゃ?」
突然のレヴァンの一言に、驚くクルーフォ。
レヴァン「脇腹の皮下脂肪が溜まっているぞ?
「なんと退廃的なのだ?」
クルーフォ「これ、むにむにするでない」
レヴァン「今すぐ筋トレするのだ!
「さすれば汝の罪許されよう」
クルーフォ「えぇい!!
「やっぱり、筋肉の神などまともな神じゃなかったようじゃな。
「羽の付け根をくすぐりはじめるなぁ!!!」
シアン「ふふっ。ぼく、ラシェルに謝ってくる」
一方のラシェルですが、兄ライエルのことを思い出していました。
ライエル「ラシェル!何をやっているんだ!
ラシェル「にい、ちゃ…ぼくもう、つかれた……」
ライエル「もし俺が肉食獣なら、お前は既に食われているぞ!」
ラシェル「ううっ、目の前にいるのは、どう見ても、にいちゃんだもん」
ライエル「……もうこれ以上粘っても意味がないか。まぁ、今日はこのくらいにしよう。
「ほら、ラシェル、休憩にするから、起き上がれ」
ラシェル「……にいちゃん」
ライエル「? どうした? ラシェ……」
ライエルにがばっと抱きつくラシェル。
ラシェル「にいちゃん! やっぱり、いつもの優しいにいちゃんがいいや」
ライエル「ったく、この鍛錬だってラシェルのためにやっているんだからな? こっちに走って向かう元気があるなら、まだ戦えるだろうに……」
などと、小言のように言いながらも、ライエルはラシェルの頭をガシガシ撫でてくれます。
この雑なようで優しいなでなでが、ラシェルは好きでした。
二人はアンネイの地と言うところを探しておりました。
ライエルが言うには、肉食獣はとにかく凶暴で嫌なやつ。
そんな肉食獣のいない平和な場所に住むために旅をしている。
そのはずでした。
ラシェル「ねぇにいちゃん、アンネイってどこにあるの?」
ライエル「アンネイ…? ああ、安寧か。どこにあるって、難しいことを聞くなぁ」
ラシェル「北にあるとか、南にあるとか、分からないのに探してるの?」
ライエル「まぁ、どんなに平和な場所だって、少しは争い事があるものだしな」
ラシェル「……?」
ライエル「……。
「ラシェルには難しいな。百聞は一見にしかずとも言うし、早く安寧の地を見つけような」
っとその時です。
ライエル「……! 何者かの気配。ラシェル、そばに寄れ!」
茂みの中から出てきたのはメスのライオン。
ライエルはさっきの鍛錬の時よりも、鋭くそのライオンを睨みつけます。
ライエル「俺たちはお前の血肉になるつもりはないぞ」
メスのライオン「うふふっ、女だからって、舐められたものだねぇ。
「いいえ、貴方たちはこれから食われる運命にある。
「悪いけど、私の子どもたちも腹を空かせてるの。
「だから、手加減はしないわよ?」
激しい爪攻撃。
しかしライエルはラシェルを庇いながら攻撃を次々にかわします。
風の魔法でしょうか?
メスのライオン「……っ、小賢しい! 私も魔法くらいっ!」
そう言って大きな火の玉を構えるが、その時に後ろを取られる剣で雌獅子は串刺しになりました。
メスのライオン「…っ! うっ、ああっ……」
ライエル「ラシェル! 行くぞ!」
素早くライエルに抱え込まれたラシェル。
ラシェル(襲う前に『子どもも腹を空かせている』とか言ってたっけ。)
お母さんであっただろうライオン。
地面に倒れ苦しみにのたうち回るその姿を、ラシェルは何故かじっと見てしまいます。
こうして、抱き抱えられている間も、その姿が見えなくなるまでずっと見ておりました。
ラシェルは正直、肉食獣と戦うにいちゃんは好きではありません。
あのライオンだって、生きるために向かって来たものですから。
かと言って、ラシェル自身も食われたいなどとは思ってもいないのですが……ラシェルはいつからか、殺される肉食獣に同情するようになってしまいました。
いや、きっかけは、あの本を読んでからでした。
旅の途中、とある宿屋で世界の国々について書かれている本を手にしました。
あるウサギの国では、にんじんやキャベツとか、シャキシャキな野菜を飾り立てる祭りがあったり、また別のオオカミの国では今まで食べた中で一番大きな草食獣の骨を飾って自慢をする風習があったり……そんな珍しい文化が並ぶなか、僕はあの国に憧れました。
草食獣と肉食獣が共存する国。
ライエルにそのことを言ったら、そんな国なんて実在しないなんて言われてしまったのですが。
けれども、ラシェルは絶対にあると。そう確信しています。
肉食の中にも心優しい獣がいるはずだと。
旅をする中で、肉食の兄弟を見たことがありました。
彼らも自分たちと同じように生きているように見えました。
ただ、食べるものが違うだけ。そんな彼らを、怪物を見るような目で見る必要があるのでしょうか。
----- ----- ----- -----
三匹の共犯
----- ----- ----- -----
そうして現在。
ラシェル(いつからボクは肉食に対して、そんな目でみるようになったんだろう)
そうラシェルは自分を見つめ直していました。
パルナ「大丈夫?
「なんで、あんな奴と一緒にいるの?」
ラシェル「あんな奴なんていうな!!
「シアンは凄く優しいんだ!
「こんなボクのために、一緒にいたいって言ってくれたんだ!」
パルナの言葉に、そうラシェルは強く反発しました。
パルナ「ラシェル?
「あなたはなんで肉食と一緒にいるの?
「あなたはなんで狩人をしてたの?」
パルナはさらに尋ねました。
ラシェルは答えます。
ラシェル「ぼくには兄がいるんだ。
「病気のね。
「薬は凄く高価で、こうするしか」
パルナ「でも、それで沢山の獣人を犠牲にしたんでしょ?」
ラシェル「パルナは何か犠牲にしたことはないの?」
パルナの問いに答えるラシェル。
数秒の沈黙の末、パルナは言葉を紡ぎます。
パルナ「……御免、ラシェルの言う通り。
「あたし、結構今まで沢山犠牲にして来た。
「しかも、犠牲から得たものなんて何もなかった。「あたしはラシェルより酷いかも」
ラシェル「ぼくたち最低だね」
パルナ「うん!
「あたしたちって本当最低ね」
ラシェル「ふふふ。
「なんで、シアンと一緒にいたいかだったね?
「ボクやっぱり、シアンのことが好きなんだ。
「今まで色んな肉食獣に弱いと決めてかかられて、自分でも弱いと思っていたぼくに、はじめて強いって言ってくれたのがシアンなんだ。
「ぼくを信じてくれた。
「ぼくはシアンにとっての憧れなんだ。
「ぼくは強くないといけない」
その言葉に、パルナは自分自身の境遇と重ね合わせます。
パルナ「そっか。あたしと似てる。
「今まで私、肉食や狩人への復讐のためだけに生きて来た。
「そんなあたしをはじめて、認めてくれた存在がいたんだ。
「あたしも、その人も今復讐に夢中になってる。
「今、あたしが復讐をやめたらその人を傷つけることになっちゃうんだ」
ラシェル「そっか。その人って、もしかしてボクに?」
パルナ「うん……」
ラシェル「そっか」
モルッグ「そこの蛇?
「立ち聞きしてないで出てきなさい!」
姿を現したのは蛇、モルッグでした。
モルッグ「別に……今聞いてたわけじゃないさ。
「何せ、ずっと前に見たんだからな」
ラシェル「予知能力でもあるのかい?」
尋ねるラシェル。
モルッグ「あったとしたらどうだ?」
聞き返すモルッグ。
ラシェル「ボクは死ぬの?」
モルッグ「獣人はいずれ死ぬ」
ラシェル「シアンを悲しませることになる?」
モルッグ「既に悲しませてるだろう?」
ラシェル「ふふっ、そうだね。ぼく、せめてシアンと仲直りしたい!このまま死ぬなんて嫌だから」
モルッグ「良いんじゃねぇの?」
シアンの元へ向かうラシェル。
パルナ「モルッグ?あたし、ラシェルを殺すことになるのかな?」
尋ねるパルナ。
モルッグ「お前はどうしたいんだ?」
再び聞き返すモルッグ。
パルナ「やっぱり、予知能力なんてないんでしょ?」
モルッグ「そうだったら良かったといつも思うよ」
パルナ「……あなたも辛いのね?」
モルッグ「オレが何を言おうが相手に届かなければ、結局変わらない。
「届く相手に限って、いつも俺を利用してくる。
「俺は結局何も変えられない」
パルナ「変えたじゃない?
「今頃ぺしゃんこだったんでしょ?
「なんなら、あたしがラシェルと出会えたのも」
モルッグ「でも、それで悲しむことになる」
パルナ「あなたもあたしたちと同じね。
「責任転嫁して逃げてる。
「本当に変えたいのなら、諦めずにあがかないといけないのに」
モルッグ「俺はもうあがくことに疲れてしまったんだよ」
パルナ(このままじゃきっと後悔する。
(でも、あと一歩踏み出す勇気が持てなくて、カウントダウンが迫ってる。いやだめよ。
(あたしは復讐のために生きて来た。
(あたしを認めてくれたあのハチドリを、私は裏切ることはできない)
そうパルナは、自分の思いを振り切ってしまいます。
モルッグ(シアン……お前は俺にも優しくしてくれた。でも、結局お前も俺のこと信じてくれないんだろう?
(いや、一歩踏み出せたなら信じてくれるのかもしれない。
(でも、今まで踏み出してなんど裏切られたことだろう。
(一歩踏み出したその先だけ、いつも肝心なところだけ。
(俺はみえない)
モルッグもまた一歩先へ進むことを恐れてしまうのでした。
----- ----- ----- -----
ドロップとパルナの出会い
----- ----- ----- -----
ドロップ(あたしはあなたのことが嫌いだった。嫌うなはずだった。オオワシの獣人。彼はいつも弱者をいじめてばかりいたから)
「また、あの犬獣人をいじめてきたの?やめなさい!あなたの強さはそんなもののためにあるんじゃない!!」
そういうハチドリの鳥人、それに対してオオワシの鳥人は答えます。
オオワシの鳥人「……いじめっていっても、獲物をぶんどって来ただけだろう?「獲物を狩るのと大して変わんねぇじゃん!」
ドロップ「盗みなんて卑怯よ!」
そういうハチドリ鳥人に対して、オオワシの鳥人は答えます。
オオワシの鳥人「不当に得たものは不当に奪われる。
「命は相手の了承無く得る物だ。
「餌食だって生きたくて捕食者だって生きたい。
「相手だって、自分が弱くて手に入らなかったって努力や実力が足りなかったって思うより、相手はなんて悪い奴だったんだって責任転嫁したいだろう?」
ドロップ「でも、獲物を狩る苦労の分ショックでしょ?」
オオワシの鳥人「それは……。
「お前に会える時間を少しでも増やしたくてだな////」
ドロップ「都合の良いことばかり言っちゃって」
(いつもの何気ない会話。でも、これが最期だった。次に見たあなたは、山羊獣人の持つ白い袋の中にいたのだから。不当に得たものは不当に奪われる。一つ真理。あたしは『好き』と気付く前に最愛の相手を奪われた。
(最愛の相手がいつもそうしていたように。私と同じ草食獣人の手で)
そんなときのこと、一匹の兎獣人が泣いているのを見かけます。
ドロップ「……どうしたの?」
ハチドリの鳥人は尋ねます。
パルナ「あたし……このままで良いのかな?
「あたし、両親を肉食獣人に殺されてから、ずっと肉食獣人を罠に嵌めて、売りさばいて来た。「肉食獣人がやったように、優しい言葉で近づいて、殺すの……。
「でも、あたしのしてきたことに意味なんてなかったんじゃ……」
そういう兎獣人。
ドロップ「そんなことない!
「少なくともあたしは勇気もらえたよ?」
ハチドリ鳥人のその一言に「えっ?」と兎獣人は驚きを隠せません。
ドロップ「あたしもね。好きなひとを奪われたんだ。
「不当に得たものは不当に奪われる、この世の真理さ。
「命ってのは不当に得る物だから、いつも不当に奪われるのさ」
パルナ「不当に得たものは不当に奪われる……か。
「確かにそうね……」
ドロップ「あたしはもう奪われる側のままじゃいやなんだ。
「だからせめて、何か奪ってみたい!」
パルナ「ふふっ!
「なんだか、少し嫌なこと考えなくて済みそう」
ドロップ「ねぇ?あたしドロップ。
「良かったら力を貸してくれないかい?」
パルナ「あたしパルナ!
「うん、あなたにならいいよ」
かくして、パルナとドロップはラシェルへの復讐を企てたのでした。
----- ----- ----- -----
埋まらない溝
----- ----- ----- -----
シアン「ラシェル……、ごめん!!
「ぼく肉食獣人に生まれちゃって、ラシェルのいう同族を今までいっぱい殺して来ちゃって」とシアン。
ラシェル「大丈夫。
「草食獣人だって、いっぱいいろんなものを犠牲にしてるんだ。
「美味しい植物を食べるために、雑草をむしったり除草剤巻いたりするし、食べたらすぐ死んじゃう植物だってある。
「美味しい植物を育てるために農薬をまいて虫を絶滅させたりなんて日常茶飯事さ。
「ぼくの方こそごめんね」
そう言葉ではいうラシェルでしたが、(ごめん、本当はそう簡単には割り切れない。
(でも、シアンの前では強くなきゃいけない。例え、自分を偽ったとしても)裏腹ではそう考えているのでした。
レヴァン「仲直りできたようで良かった。
「筋肉の神はいつだって裏切らない!」
クルーフォ「これで、なんとかバルとゾットに挑めそうじゃな?」
モルッグ(……、まだ変わらない。
(ラシェルの死が、シアンの絶望が)
モルッグは不安視します。
シアン「モルッグ……?」
モルッグ(……、もう一度だけ、シアンに話しかけてみようかな?)
モルッグは勇気を振り絞ります。
シアン「? モルッグどうしたの?」
モルッグ「なぁ? シアン、まだ何も解決していないといったら、信じられるか?」
シアン(ぼくにとってラシェルはかげがえのない存在なんだ。
(きっとラシェルだって)
そう思い、シアンは口にしてしまいます。
ラシェル「……ぼくは、ラシェルを信じるよ」
その言葉にモルッグは、「……ッ!!」(そうだよな……。お前はラシェルにとって特別な存在でいたいよな……。他の肉食獣人と一緒にされたくないよな!!!)そう諦めてしまうのでした。
パルナ「モルッグ……ちょっと来て?」
そうパルナに促され、モルッグはパルナと話をします。
モルッグ「……どうしたんだ?」
パルナ「あたし、なんだかシアンのこと許せなくなってきちゃった。
「ラシェルはまだ苦しんでる。
「奪うだけじゃない。
「あたしはラシェルを苦しみから救うんだ」
モルッグ「どうして俺にいうんだ?」
パルナ「やっぱり、モルッグのせいじゃない!
「悪いのはシアンよ!
「もう、あなたが苦しむ必要なんてない」
そんな会話をした後。
ラシェル「戻ってきたみたいだね?」
そういうラシェルに、パルナは宣言します。
パルナ「あたし!
「ラシェルの事絶対助けるから!」
ラシェル「ありがとう……。
「本当にごめんね……。
「後、モルッグも」
そういうラシェルの目はどこか哀しそうな目をしていました。
それに気づかないレヴァンは「なんだか、パーティの絆が深まってきたみたいだな!」などと、ガッツを燃やすのでした。
モルッグ(シアン、このパーティに入った時はお前が一番優しく接してくれたよな?本当にうれしかった。このパーティの中で一番好きだった。でも、今は……)
一番やさしくしてくれたシアンにさえ、勇気を踏み出していった発言を突っぱねられたモルッグは、再び心を閉ざしてしまうのでした。
----- ----- ----- -----
バルとゾット
----- ----- ----- -----
溝が埋まらないままパーティは、盗賊のボス、バルとゾットの元へ辿り着きます。
バル「ようやくきたみてぇだな」
盗賊団の親玉バルは言います。
ゾット「ところで、あの二人はどうしたですかい?」
そう盗賊団が参謀のゾット。
ラシェル「そういえば、どうなったの?」
シアン「逃がしておいたよ。食料は充分足りてるのに無益な殺生はしたくないし」
パルナ(……無益な殺生)
ラシェル(パルナ……)
モルッグ(本当なんなんだよ)
パルナ、ラシェル、モルッグの地雷を踏んでしまったシアン。
その表情に何かを察したクルーフォは考えを巡らせます。
クルーフォ(なんだこの、胸騒ぎは……。そうだあの三人、何か様子がおかしい。シアンと離れ、仲直りするまでの間に何があった?何を話した?)
ゾット「ふふっ」
その時、狐獣人、盗賊団がゾットの不敵な笑み。
モルッグ「っ!!」
(そうだった!予知してたはずなのに、すっかり忘れてた)
突如床が抜け、パルナ、ラシェル、モルッグは落とし穴に落ちてしまいます。
シアン「ラシェルッーーーーー!!!」
ゾット「狐といえば罠、そう相場が決まってますよね?
「といっても、単なる機械式落とし穴なんですけどね。
「落下してもとくに針山とかにはなっていないのでご安心を。
「まぁ、ちょっと墨汁クッションは配置してますが」
シアン「よくも!ラシェルに墨汁クッションを!!!
「お前だけは絶対に許さない!!!」
レヴァン「筋肉の神的に、お前のその姑息な行ない!
「ギルティと判断する!」
クルーフォ(ゆ、油断した……。いつもなら、こんな罠簡単に見破れたというのに。それにしても、モルッグが落ちるとはのう?)
っとその時。
シアン「く、クルーフォ危ない!!」
シアンの警告もむなしく。
クルーフォ「ぬう?
「ぐわああああああああ」
クルーフォは緑色のねばねばした液体に捉えられます。
それを投げた張本人、盗賊団が参謀ゾットはこう答えます。
ゾット「これは、お手製のスライムネットっしてね。
「中々取れないんすよー。
「ちょっと羽毛ある存在の御方には、ちょっと辛いっすよね。
「飛び回るどころか、動きを封じられた気分はどうっすか?」
レヴァン「お前っなんと卑怯な!!!」
レヴァンは怒りをあらわにします。
ゾット「おっとそれはどうっすかねぇ?
「6人でたったの人に襲い掛かるなんてそれこそ卑怯じゃないっすか?
「それこそ、いじめっすよねぇ?」
シアン「い、いじめ……?」
その言葉にシアンが哀しそうな表情を見せます。
ゾット「おや、何かトラウマがおありのご様子。
「私は単にフェアな状況を作っただけすよ。
「さぁさ、私は紳士。
「誓って申しやすが、これ以上は罠など仕掛けやせん。
「正々堂々私たちと勝負しようじゃあありませんか~?」
ゾットの巧みな言いくるめ。
シアンは「ぼく、卑怯だったのかな?」と悩みます。
レヴァン「騙されるでない!!
「こんなの筋肉を何一つ使ってないではないか!
「脳に筋肉が足らん!」
ゾット「おや、それじゃあ、脳を筋肉で満たして差し上げやしょうか?」
レヴァン「いっ、いやすまん。
「まさか、本気じゃないだろうな?」
ゾット「おや、たいそう怖がっているご様子で!
「さて、バルの兄貴!
「やっちゃいましょう!!」とゾット
バル「おうよ!
「そこのライオン!
「筋肉筋肉言うが、この俺の筋肉に負けたりしねぇだろうなぁ?
「マッスルバトルと行こうじゃねぇか」とバル
しかし、そうやすやすと、やられるシアン、レヴァンではありません。
ラシェルの戦いぶりを見ていた彼は、剣の腕を発揮します。
レヴァンもまたモーニングスターで応戦し、バルとゾットを見事倒すことに成功しました。
バル「やはり、あの二人を倒しただけのことはあるな!よし、お前の筋肉の力認めようではないか」
ゾット「というわけで、退散いたしやしょう。
「痛テッ」
バル「痛タタタ、なんだこれ?」
バルは疑問を浮かべます。
ゾット「逃走防止用に仕掛けてた虎ばさみっすよ。
「負けることなんて想定してなかったもんで」
気不味そうに答えるゾット。
それに対しレヴァンは「ふん、策士策に溺れしというやつだな?」と得意げに言い放ちます。
ゾット「いやまだっス。
「負けることは想定してなかったッスが、人質を取ることは想定してたっす。
「シアン、よく聞いてください。
「この部屋には爆弾を仕掛けておいたっス。
「もし、これから言う交渉を断ったら、ここいら一体を爆発させやすよ?」
シアン「なんだって!?」
ゾット「といっても、あんたたちにとって悪い条件じゃないはずっす。
「俺たちをパーティメンバーに入れてくれないっすか?」
シアン「そっ、それはどういうこと?」
レヴァン「レヴィに会ったのか?」
ゾット「えぇ、それはもう。
「たっぷりと聞かせてあげますから、どうかパーティに入れてください」
----- ----- ----- -----
失意のラシェル
----- ----- ----- -----
ラシェル「……なんで、パーティに入れちゃったの?」
ラシェルは哀しそうに言います。
シアン「だって、爆弾っていうし」とシアン。
クルーフォ「爆弾というのは、結局ブラフだったようじゃがな?」
ゾット「ですが、約束は約束っすよねぇ?
「それを破るのは筋肉の神的にどうなんすか?」
レヴァン「ぬう……それは……」
そういうゾットに言い返せないレヴァンでしたが、クルーフォの方はというと「公序良俗に反する約束は無効となっている……じゃが。
「この街は、昔から盗賊による被害で苦しめられてきたこともあり、盗みは即死刑のようだ。
「ちと厳しすぎるのう」と、ゾットの言いくるめを看破しつつも憐れみを浮かべて、判断に迷っているようでした。
それに対して、「草食の村にとっては、肉食行為はそもそも死刑よ」とパルナ、それから「蛍石を手に入れた村じゃ、俺のような鱗で覆わるるものが入ること自体即死刑だからな」とモルッグ。
それに対してラシェルは、「ぼくら、いつの間に何度も罪を重ねて……。
「どこで間違えちゃったんだろう?」そう涙ぐみます。
シアン「間違えてなんかないよ。
「それが生きるってことだよ」そういうシアンに。
ラシェル「そっか……」
(やっぱり、ぼく、背負えないよ)
そうラシェルは考えを巡らせます。
パルナ「あっ、そうだ!
「さっき、ちょっとレヴィが近くに来てるって、情報得たんだった。
「シアンとラシェルだけ、ちょっとついて来てくれる?」
モルッグ「……来てしまった。この時が」
パルナの言葉にモルッグはとうとうその時が来たのだと察します。
----- ----- ----- -----
本当の惨劇
----- ----- ----- -----
シアン「ここって、通過した無法地帯……だよね?」
そうシアンは尋ねます。
パルナ「そうだよ?」
そう答えるパルナの後方にオジロワシの様な獣人が。
シアン「あっ、お前!!!」
オジロワシの様な獣人は変身を解き、そこにはハチドリの獣人が姿を現します。
シアン「えっ?」
パルナ「この子はドロップ。
「意味もなく肉食獣人に復讐ばかりしてきた私をはじめて肯定してくれた人。「それと、このオオワシ知ってる?」
写真を見せるパルナ。
シアン「あぁっ!!!」
驚くシアンに「知らないわけないよねぇ?
「何せシアンをイジメてたオオワシだもん。
「でもね。
「このハチドリにとってそのオオワシは、最愛の人だったんだよ?「そして。このオオワシはある山羊獣人によって殺された」 とパルナ。
「それって?」とシアン。パルナは続けます。
パルナ「それはキミの大事な大事なラシェル君だよ?
「なんで、このハチドリはオジロワシの姿をしてたと思う?
「頼んだんだよ!レヴィに。
「彼奴と同じ肉食の、猛禽類の姿にしてくださいってね。
「でも、オオワシそのものになるのは嫌だったんだって。
「オオワシという存在を汚したくなかったから、だからオジロワシになったんだよ」
シアン「でもそのオオワシは……」
パルナ「ねぇ、何でキミから獲物をぶんどってたと思う?
「それはこのハチドリと長く一緒にいたいからなんだって」
そんなシアンとパルナの会話の中ラシェルが割り込みます。「もうやめてくれ!!!
「ボクへの復讐のはずだろ!!!「なんで、シアンにそんなこというんだ!!」
ラシェル「ラシェル……どういうこと?」
シアンは問いただそうとします。
パルナ「愛しのラシェル君は、罪の重さに耐えかねて、もう疲れちゃったんだって。「強く振舞うことに、もう疲れちゃったんだって」パルナが代わりに答えますが、それで納得できないシアンは「ボクはラシェルに聞いてるんだ」そう言い放ちます。
ラシェルに向き直りシアンは尋ねます。
シアン「ねぇ。ラシェル……、兄に薬を届けるんでしょう?」
ラシェル「シアン、ぼく……ここまでみたい。
「こんなぼくといっしょにいたいって言ってくれてありがとう。
「弱いぼくで……ごめんね」
それがラシェルの最期の言葉でした。
シアン「ラ、ラシェル!!!」
ハチドリの獣人が鎌を振りかざそうとします。
それに気づいたシアンは、慌てて止めようとするも、パルナに腕を掴まれて進めません。
そうこうしている間に、全てが終わっておりました。
シアンは何時間泣いたでしょうか。
既に、ハチドリとパルナはどこかに去っています。
シアンの目の前には、ラシェルの亡骸だけが残されておりました。
雨が降る中、モルッグは傘を指し述べます。
モルッグ「お前は、何もできなかった。
「お前の信じた強さはただの虚勢だったんだ」
シアン「モルッグ……全部知ってたの?」
二人の会話がはじまります。
モルッグ「知ってたから言ったんだ。
「結末を変えて欲しくてな」
シアン「嘘だ!
「本当に変えたかったんなら、キミならできたはずだろう」
モルッグ「俺にだってトラウマの一つや二つあるんだよ!!!
「何も知らないくせに!「弱さを知らないから、正義を振りかざすんだ!」
シアン「正義なんてもの、考えたこともなかったよ。
「ぼくが弱さを知らない?
「酷い目に遭わされてばかりのこのボクが?」
モルッギ「……そうか、じゃあ紛い物の何かに、俺たちは傷つけられたんだな!!
「聞こえるぜ? お前の鼓動が止まるのを!」
モルッグの一言に「何言ってるんだ。「ぼくは、まだ生きてるじゃないか?」とシアン。
モルッグ「あぁ、生命活動はしてるだろうよ。
「でも、お前もう鼓動してないじゃないか?」
シアン「心臓は動いてるよ」
モルッグ「話にならねぇ。バルとゾットはもらってくぜ?あばよ」
去っていくモルッグ。
シアン「(鼓動って)なんだよ!!!!」
シアンはそう困惑します。
それから数時間後のこと。クルーフォとレヴァンが駆けつけます。
レヴァン「シアン!!!」
レヴァンはそう心配そうに声を掛けます
弱弱しい声で「助けなきゃ!!
「ラシェルの兄の元へいかなくちゃ……」とシアン、「でも、まだ目標金額まで達していないのだろう?」とクルーフォ。
それに対し、レヴァンは驚くべきことを伝えます。
レヴァン「それなら……。
「ラシェルから彼の兄の病名は聞いている。
「実はな……、教会に丁度薬があってだな……。
「今、持ってきている」
クルーフォ「それは筋肉の神的にアリなのか?」
レヴァン「ナシだ。
「だが……」
クルーフォ「良し。
「それじゃあ、向かうぞ。
「ラシェルの最後の願いを叶えに」
----- ----- ----- -----
パルナとドロップ
----- ----- ----- -----
ラシェルへの復讐を果たし、目的を設定したドロップでしたが、どこか浮かない顔です。
それもそのはず。
復讐を手伝ってくれた友達のパルナが涙を流しているからです。
その涙には見覚えがありました。
かつて自分が流した愛する人を失ったときの涙。
ドロップ「パルナ……、ごめんね」
ドロップはパルナに話しかけます。
パルナ「えっ?」
ドロップ「だって、あなた……泣いているじゃない」
パルナ「何言って……泣いてなんか……あれ?(どうして、頬が濡れているの?あっ、きっと雨だったからね。そうに違いないわ)」
ドロップ「パルナ……あなたラシェルのこと好きだったのね?」
パルナ「っ!!!!違う!!
「そんなはずない!!」
ドロップ「私と同じね」
パルナ「えっ?」
ドロップ「失うまで気付かなかった。
「私はまた間違えてしまったわ。
「ようやくあなたという友達ができたのに。
「あなたに同じ哀しみを背負わせてしまった。
「わたしは、過去への向き合い方を間違えたのよ」
パルナ「なんで……そんなこというの?」
ドロップ「あなたの気持ちにあなたより先に気づいて、私は復讐なんかやめるべきだった……。
「何よりあなたと出会ったとき、あなたは肉食獣への復讐なんかもうやめようとしていたのに、私があなたの力を借りようとしたから」
パルナ「やめて!!
「そんなこといわないで!!!」
ドロップ「本当はね!
「今すっごくあなたに私を殺してって言いたい。
「でも、草食は殺さないと決めてたあなたに草食殺しに加担させてしまった。
「それもあなたの愛する人を。
「今あなたに私を殺すよう頼んだら、あなたはどうなるの?」
パルナ「どうなるのって?」
ドロップ「だからね。
「バイバイ……。
「あなたが一緒にいるべきは……私じゃなくて……」
パルナ「えっ……?」
ドロップ「……」
パルナ「ドロップ……?
「息が無い……。
「心臓の音も止まってる。
「なんで?
「なんで死んでるの?
「まさか……レヴィの変身能力のせい?」
(……ラシェル。あたしは、あなたを救うどころか最後の最後にあなたを裏切ってしまった。あたしが本当にするべきは、シアンとの愛を応援することだったのに)
----- ----- ----- -----
モルッグのペルソナ
----- ----- ----- -----
そこには1つの鏡、映るは琥珀の眼光と緑の鱗。
モルッグは一人鏡を見ておりました。
モルッグを眺める心の中のもう一人のモルッグ、いわゆるペルソナがモルッグに話しかけます。
モルッグのペルソナ「いつも、そうだ。
「そうやって、お前はいつも踏み出せない」
モルッグ「踏み出したところで、前みたいな結果になるだけだ!!!」
モルッグはペルソナを振り切ろうとします。
モルッグのペルソナ「踏み出したときの結果が見えないというのに?」
モルッグ「見えなくたってそうに決まってる」
モルッグのペルソナ「お前は裏切ったんだ!」
モルッグ「俺は裏切ってなんてない!!」
モルッグのペルソナ「お前は嘘を吐いたんだ」
モルッグ「俺は嘘なんて付いてない」
モルッグのペルソナ「じゃあお前は何故シアンたちを助けた?」
モルッグ「それは……」
モルッグのペルソナ「一歩踏みだせそうな気がしたんだろう?好きだって!助けたいって思えたんだろう」
モルッグ「でも、結局」
モルッグのペルソナ「お前は自分自身の感情を、欲望を裏切ったんだ」
モルッグ「……」
モルッグのペルソナ「鼓動ってなんだ?」
モルッグ「自分でもわかんねぇ」
モルッグのペルソナ「いや、わかってて言っただろう?お前はシアンと話すとき、胸の高鳴りがいつもより高くなるんだ」
モルッグ「でも、もうそんなことはない。だから鼓動が止まってると言ったんだ」
モルッグのペルソナ「お前は嘘つきだ。胸の高鳴りは変わらなかった。お前は、シアンが好きだ。でも、それを否定したかっただけなんだよ」
----- ----- ----- -----
シアンの回想
----- ----- ----- -----
ラシェル「……そうでもないよ。ただ、昔から肉食と対峙した時は弱みを見せるなって言われてたから、その名残かな」
シアンは、ラシェルの言葉を思い出していました。
シアン「あれ、ぼくに対する台詞でもあったんだ。
「違う。
「そうさせたのはぼくなんだ」
コウモリの元を立ったあの時の誓いを思い出します。
ラシェル「ねぇ、僕を、殺してくれないか」
シアン「ラシェルはぼくに弱みを見せてくれた。
「特別な存在になれた気がした」
シアンは、ラシェルに放った言葉の数々を思い出します。
シアン「ボク、君みたいに強くなりたい!」
シアン「だ、大丈夫です! こう見えても戦闘の腕はあります! (えっと、こっちのラシェルが……)」
シアン「例え罠だったとしても、ラシェルもクルーフォもいるんだし、なんとかなるって」
「ラシェルならきっと大丈夫だよ!」
シアン「間違えてなんかないよ。
「それが生きるってことだよ」
そのたびに、ラシェルの哀しそうな表情がよぎります。
ラシェル「そう……だよね。
「目標金額まで貯めないとね!!」
ラシェル「ぼくら、いつの間に何度も罪を重ねて……。
「どこで間違えちゃったんだろう?」
ラシェル「シアン、ぼく……ここまでみたい。
「こんなぼくといっしょにいたいって言ってくれてありがとう。
「弱いぼくで……ごめんね」
モルッグの助言とパルナの言葉を思い出します。
モルッグ「なぁ? シアン、まだ何も解決していないといったら、信じられるか?
パルナ「愛しのラシェル君は、罪の重さに耐えかねて、もう疲れちゃったんだって。「強く振舞うことに、もう疲れちゃったんだって」
モルッグ「お前の信じた強さはただの虚勢だったんだ」
シアンは、気づきます。
シアン「ラシェルを追い詰めたのはぼくだ。
「ぼくが弱さに気づいてあげるべきだったのに、彼に強さばかり求めてしまった」
----- ----- ----- -----
クルーフォの回想
----- ----- ----- -----
クルーフォ「ど、泥棒とは許せん! ワシも力を貸そう!」
クルーフォ「この街は、昔から盗賊による被害で苦しめられてきたこともあり、盗みは即死刑のようだ。
「ちと厳しすぎるのう」
クルーフォ「いじめとは許せん!!」
クルーフォ「まぁ、非常食が一匹増えると考えれば……」
クルーフォもまた、自分の放ったパーティを追い詰めてしまった言葉の数々を思い出していました。
クルーフォ「ワシは知らず知らず追い詰めていたのじゃな。
「ラシェルを……モルッグを……パルナを……そしてシアンを。
「ワシはレヴィのことばかり気にして、仲間を気に掛けることを、観察することを怠ったのじゃ。
「モルッグは信じて欲しかったはずなのに。
「パルナは止めてもらいたかったはずなのに。
「ラシェルは弱さに気づいて欲しかったはずなのに」
----- ----- ----- -----
レヴァンの回想
----- ----- ----- -----
レヴァン「騙されるでない!!
「こんなの筋肉を何一つ使ってないではないか!
レヴァン「脳に筋肉が足らん!」
「いっ、いやすまん。
「まさか、本気じゃないだろうな?」
レヴァン「それなら……。
「ラシェルから彼の兄の病名は聞いている。
レヴァン「実はな……、教会に丁度薬があってだな……。
「今、持ってきている」
レヴァン「ナシだ。
「だが……」
レヴァン「仲直りできたようで良かった。
「筋肉の神はいつだって裏切らない!」
レヴァンもまた自分の放った言動を思い出していました。
レヴァン「私は筋肉の神を裏切るばかりか、仲間のことを何一つ見えてなかった」
----- ----- ----- -----
ラシェルの兄の元へ
----- ----- ----- -----
村人B「ここを通すわけにはいかない!」
村人が止めに入ります。
そんな中「この薬をライエルに!ラシェルのお兄ちゃんに届けなくちゃいけないんだ」とシアン。
村人C「そんな話信じられるか!!!」
村人には中々信じてもらえないようです。
そこへやや年を取った兎獣人がやって来ました。
長老「まぁ、待て!「ワシに良い考えがある」
「長老!!!」村人たちは敬礼します。
長老は言いました。「この村にいる間は、お前たちを拘束させてもらうし、もしもの時は村を守るのに協力してもらう。
「それと、近くの洞窟にカツェルという牛獣人のおなごが入り込んでしまってな。
「死者と話せるといわれる洞窟に住まう不思議な猫、ガートから薬草を分けてもらいにいったらしいんじゃが、戻って来なくてな?
「今すぐ様子を見に行ってもらえるか?」
「薬ならワシがライエルに届けよう!」
シアン「わかりました!「今行きます!!!」
そう意気込むシアン。
クルーフォ「なぁ、レヴァン、この近くの洞窟も……」
レヴァン「何ゥ?まさか蛍石が……?」
クルーフォ「あぁ。用心した方がいい」
シアン「カツェルとガートを連れ戻してライエルに!ラシェルのお兄ちゃんに謝らなきゃ!」
レヴァン「そうだ!そのいきだ!」
クルーフォ(……空元気じゃの)
----- ----- ----- -----
コウモリとの再会
----- ----- ----- -----
洞窟を進むシアン、クルーフォ、レヴァン……とそこへ。
名もなきコウモリ「お前は!!!」
シアン「あの時のコウモリ!!!」
クルーフォ「なんじゃ?
「知り合いか?」
シアン「うん!
「この人がラシェルに狩を教えたんだ!
「はじめは身売りをしようとしたラシェルに」
名もなきコウモリ「……」
レヴァン「そんな過去があったのか……」
名もなきコウモリ「そのラシェルはどうしたんだよ?」
シアン「死んだよ……」
シアンは答えます。
名もなきコウモリ「……お前が殺したのか?」
コウモリは不快感をあらわにしつつも、冷静にシアンに尋ねます。
シアン「……実質的にはそうかも」
名もなきコウモリ「ならばお前だけは許さん」
シアンに切りかかるコウモリ。クルーフォがそれを庇い、そして尋ねます。
クルーフォ「何故避けようとせんのじゃ?」
シアン「……コウモリさんと一緒にいた時、ラシェルは罪悪感で苦しそうだった。
「ぼくが救ってあげようと思った。
「でも、結局ぼくもラシェルを罪悪感で苦しめた。
「このコウモリもラシェルを思って、切りかかって来てる。
「ぼくとこのコウモリの何が違うんだろうって思って……。
「いや、違うよね。
「ぼくはその場にいたのに止められなかったんだから」
レヴァンの沈黙。
シアン「もしかしたら、このままぼくはこのコウモリに狩られるべきなのかもしれない」
レヴァン「歯を食いしばれ!!!!」
ぶん殴るレヴァン。
突然の行動に驚くシアン。
シアン「……。
「レヴァン?」
レヴァン「俺たちにあの時と同じ思いをまたさせるつもりか?
「お前まで死を選ぶのか?
「お前まで俺たちを置いていくのか?
「こんなことなら、餌食と捕食者として出会うのだったな!
「仲間として出会ったことを憎む他ない……」
クルーフォ「本当にそうじゃな……。
「はじめから敵として出会っていたのならば、こんなに辛い思いをせんでも良かったのに」
シアンは沈黙します。
クルーフォ「なぁ、シアンよ。
「わしらを信じてくれんか?
「お前が再び生きたいと強く思えるまでわしらが守ってやる!!
「だから、自ら死を選ぶのだけは……やめてくれんか!」
シアン「でも、ライエルはきっと許してくれない!!!」
そんな言葉をシアンが言った矢先のこと。
ライエル「ああ俺は許さねぇよ!!
「お前もそのコウモリも!そして俺自身もな!!!」
突如として山羊が現れます。
シアン「ラ、ライエル????」
驚くシアン。
名もなきコウモリ「ラシェルの言ってた兄か」
ライエル「なぁ、そこのいぬっころ?
「オレが責任取れって言ったら死ぬのか?
「死して償えって言ったら、死ぬのか?」
ライエルは問いただします。
シアン「えっと……ぼくは……」
戸惑うシアンにライエルは続けます。
ライエル「お前は責任の取り方も他人に委ねるのか?
「……この世界は敵だらけだぞ?
「他人に責任の取り方を任せてたら、命がいくらあっても足りんと思うが?」
そんなライエルを「……えっと、安静にしてなくていいの?
「病気だったんじゃ?」と心配するシアン、「あの薬速攻性が凄いんだよな」とレヴァン。
ライエル「……話そらしやがって!!
「まぁいい!!それはそれとして俺も連れていけ!!
「ラシェルと共に過ごしたのがどんな奴らか見届けさせてもらう!
「寝首を掻かれないように、精々震えるんだな!!!」とライエル・
名もなきコウモリ「……白けちまった。
「あばよ」
そうコウモリは去ろうとします。
その時、コウモリにどこか哀し気な面影を感じ取ったシアンはある提案をします。
シアン「待って!!!
「ラシェルに教えてもらった技!!
「キミに見せても良い?」
名もなきコウモリ「……見逃してやろうと思ったのだがな?
「良いだろう!その代わりお前ひとりで来い!
「お前が負けた時は、俺の獲物になってもらう」
ライエル「何勝手なこと言ってんだ!」
レヴァン「シアン、わかっているな!」
シアン「うん!負けるつもりはないよ!!」
ライエル「ちっ、勝手にしろ!!」
結論から言って、シアンはコウモリに勝ちました。
ラシェルから教えてもらった剣の扱い方を見事に体現し、コウモリを圧倒します。
名もなきコウモリ「ふふっ、お前は本当に強くなったな!「ラシェルの面影を感じるよ」
シアン「ありがとう!」
名もなきコウモリ「さて、そこの肉食共と山羊に狩られない内に、か弱い草食獣は退散するとしますかねぇ」
ライエル「か弱い草食獣?」
名もなきコウモリ「こうみえても私は草食さ。じゃあな?」
そういうとコウモリは去っていくのでした。
ライエル「なぁ、シアンとか言ったな?
「罪悪感で死を選んだまではわかった。
「俺のために無理したのもわかった。
「ラシェルに何があったのか?
「詳しく聞かせてくれないか?」
シアン「うん……」
----- ----- ----- -----
コウモリの回想
----- ----- ----- -----
名もなきコウモリ「山羊が肉小屋に何か用か?」
ラシェル「僕の片腕と角、いくらになりますか」
名もなきコウモリ「身売りか? それはごめんだ。生憎、ここでは丸ごと一体を売り出している」
「それとも、丸ごと喰われる覚悟があってきたのか?」
びくりと震え、引き返そうとする山羊獣人。コウモリは瞬時に滑空し、がっしりと翼で捕まえ、ラシェルの耳元で囁きます。
名もなきコウモリ「待て、別に私はお前を喰う気はない。そもそも肉を食う身体ではないからな」
「いい話がある、小屋に入れ」
観念し、恐る恐る部屋に入るラシェル。
名もなきコウモリ「金が欲しいんだろう? なら、狩人にならないか」
ラシェル「かりうど……?」
名もなきコウモリ「狩りのやり方は私が教える。見たところ、身体は丈夫そうだ。元々鍛えていたんだろう?」
ラシェル「なんで僕なんかを狩人に……」
名もなきコウモリ「なんで肉食じゃなく、草食にやらせるかって、そりゃあ……。「獲物は、草食獣の匂いにはあまり警戒しないからね」
ラシェル「分かりました。僕に狩りを教えてください」
ラシェルは手際がよく、弓の扱い方をすぐに覚えました。
名もなきコウモリ「……そうだ。いい調子だな。弓の扱い方はもういいだろう。あとはなるべく一発で仕留めること。一つの傷で済めば、見た目も味も良く、商品としても高く売れる。それに、獲物も長く苦しまずに済むからな。」
ラシェル「コウモリさん、あなたは、肉食ではないの?」
名もなきコウモリ「大体の蝙蝠は草食さ。血を吸い肉を喰らう蝙蝠のイメージは、あの大怪盗のせいで染み付いたイメージだ。
「草食の私がなんで肉を売り捌いてるかって言うと、最初は金になるとともに、私を馬鹿にした草食らへの仕返しのつもりだった。
「だけど皮肉なことに、その日は罪悪感で眠れなかった。「私は悪党にもなりきれないまま、この道を選んだ。
「ま、金は裏切らないから、この道を選んでよかったよ」
そうしてしばらくして、ラシェルは、シアンと出会います。
名もなきコウモリ「……今日の獲物はやけに傷が多いな。お前がやったのか?」
シアン「あっ、多分、僕のせいです……」
名もなきコウモリ「はぁ、これぐらいも一発で仕留められないのか。これだから素人は、傷が増えると腐敗も早くなるっていうのに……。
「まぁいい。大体の客は肉の見栄えなんて気にしないからな。たまに例外もあるが」
そういうと、コウモリはじゃらりとお金の入った袋をその場に置きます。
名もなきコウモリ「今日の報酬だ。
「ラシェル、仔犬を巻き込むのはどうでもいいが、あまり品質は落とすなよ」
ラシェル「はい」
さらにしばらくして、シアンとラシェルがコウモリの元を立つことを決めた日。
名もなきコウモリ「獲物はなし、手には荷物。出て行くつもりか。
「簡単に足を洗える仕事だと思っているのか?
「ラシェル、お前は優れたハンターだ。だが、その技術を教えたのは私。勝手に辞められては困る。どうしても出て行くと言うのなら……。
「力尽くで従わせねばならない」
名もなきコウモリ「ラシェル……。
「お前を狩るのは私と決めていたのだがな。
「自ら死を選ぶとは……、私は育て方を間違えたようだ」
----- ----- ----- -----
ライエルのためいき
----- ----- ----- -----
ライエル「なるほど、そのパルナとかいう兎獣人だけは生かしてはおけんなぁ……」
沈黙するシアン。
ライエル「お前にとっては憎み切れねぇって顔だな?」
シアン「ぼく、まだパルナとモルッグの本当の気持ち聞いてないんだ。だから、今はなんともいえない」
ライエル「元から裏切るために近づいたってのにか?」
シアン「……」
ライエル「はぁ……」
----- ----- ----- -----
モルッグとの再会
----- ----- ----- -----
シアン「っ!?
「モルッグ!?
「それからバルとゾットも……」
そうシアンは驚きます。
バル「よう!!」
シアン「どうしてここに?」
シアンは尋ねます。
モルッグ「ここでレヴィに会える未来が見えたんでな?」
シアン「ッ!!!
「レヴィが??」
そう驚くシアンにさらにモルッグは驚くべき情報を伝えます。
モルッグ「ついでにパルナもいるぜ?
「お前たちの探してるカツェルとガートと一緒にな?」
シアン「どうしてパルナまで……」
疑問を浮かべるシアン。
モルッグ「死者と会話できるという不思議な猫にでも会いに来たからじゃねぇの?」
シアン「やっぱり、パルナ……ラシェルを殺したこと後悔してるんだ!!!」
シアンは確信します。
ライエル「……てめぇ!!!
「予知能力があるなら、なんでラシェルのこと皆に伝えなかったんだ!!!」
そう眉間にしわを寄せるライエル。
モルッグ「……本当にそうだな。俺は大馬鹿モノだよ」
シアン「ねぇ?トラウマがあるって言ってたよね?聞かせてよ?
「ぼくたちと出会う前、昔何かあったんでしょ?
「パルナとラシェルについて、何か知ってるんでしょ?」
モルッグ「……そうだな。
「観念するしかねぇみてぇだ。
「……だが、そのなんだ。
「その前に俺と戦ってくれねぇか?」
シアン「……わかった!「良いよ!!」
モルッグとシアンはこぶしで語りあいます。
そうして、二人は絆を深めるのでした。
シアン「ぼくやっぱり何にも気付いてあげられてなかった。
「ラシェルのこともキミやパルナのことも……」
モルッグ「でも、気付いてて勇気が出せない俺よりはマシだろ?」
シアン「ぼくだってオオワシにいつも獲物をぶんどられていたときのことはトラウマになってるよ……」
モルッグ「ははっ違いねぇ」
----- ----- ----- -----
パルナとの再会
----- ----- ----- -----
シアjン「パ、パルナ!!!」
獅子獣人に首を掴まれ、高く掲げられているパルナ。
カツェル「この兎私を庇って……」
レヴァン「兄上!!!」
クルーフォ「レヴィ!!何をしている!!」
レヴィ「おや久しぶりだね!
「弟よ!それからクルーフォ君!」
レヴィはパルナを放り投げると、話をつづけます。
レヴィ「何って、気付いているんだろう?
「蛍石についても!
「化ける力についても」
シアン「パルナ!!大丈夫?
「あれ?「あのハチドリは?」
シアンは尋ねます。
パルナ「死んじゃった!
「本当かはわからないけど、化ける力が原因だってドロップが言ってた」
実際にはそういったわけではありません。
けれども、ドロップは最後の力を振り絞り、レヴィから授かったある力を使ってパルナに伝えたのです。
レヴィ「ふむ……やはりそうか。
「本当にすまない。
「まさかどうやら私の授けた力に一種のコードミスがあったようだ」
そんなレヴィにパルナは伝えます。
パルナ「ドロップは最後まであたしの味方だった。
「死ぬとき後悔してたわよ。
「あたしに手伝わせたこと。
「私も後悔してる!
「ドロップの言う通りあたしラシェルが好きだった!!
「ドロップの言う通り肉食獣への逆恨みに疲れたの!
「自分勝手だってわかってる!
「でも、これからは誰かの愛を応援するって決めたの!
「ドロップの果たせなかった最後の願い!
「あたしが叶えたい!」
ライエル「……」
パルナは続けます。
レヴィ「ねぇ。
「きっとまだ引き返せる!
「何か辛いことがあったんでしょ?
「クルーフォもレヴァンもあなたのこと心配してる!」
シアン「そうだよ!
「キミは何をするつもりなの?」
そうパルナに続けて言うシアンに対し、「……なぁ?
「そこの犬?調べる限りシアンという名らしいな?
「ちょっとこちらへ来てくれぬか?」そう提案するレヴィ。
ゾット「やめた方が良いと思いやすよ!!」
バル「そうだぜ!!
「絶対何か企んでるに違いねぇ!」
ゾットとバルの反対を押し切り「わかった」とシアン。
レヴァン「シアン!!」
驚くレヴァン。
クルーフォ「モルッグ?
「この後どうなるんじゃ?」
クルーフォはモルッグに尋ねます。
けれどもモルッグから帰って来たのは「それが全く見えないんだ……。
「今までこんなことなかったってのに」という言葉でした。
レヴィ「右手を出して」
シアン「こう?」
レヴィ「……今からちょっと魔力を流すが気にしないでくれ」
シアmン「……ねぇ。
「何する気なの?」
そういうシアンに赤い紋章が刻まれます。
シアンは思わず「何これ?」そう口にします。
レヴィ「何って呪いだよ?
「俺を殺せば呪いを解けるが。
「何もしなければ数ヶ月後に死ぬだろうね」とレヴィ。
シアン「……何でこんなことを?」
レヴィ「そこの獅子と梟が私のことをまだあきらめていないようだったからねぇ。
「あぁ、ここにいる全員が私に関する記憶を消されることを同意してくれるっていうんなら、シアンの呪いは解いてあげよう!」
シアン「ダメだよ!!!
「だって、クルーフォはキミと出会えて、キミと研究して楽しかったんだよ!
「レヴァンだって、キミはかけがえのない兄で」
レヴィ「邪魔なんだよ!!!
「愛とか絆とか!!!」
レヴァン「シアン!安心しろ!コイツはこの手で葬ってやる!
「弟として!!神官として止めぬわけにはいかない」
クルーフォ「同意見じゃ!
「レヴィはこの手で殺す!
「かつての共同研究者として、これ以上の愚行を許すわけにはいかない!!」
レヴァンとクルーフォの意見に対し、「待ってよ!!!
「そんなの!かなしすぎるよ!!」とシアンは反対するも。
クルーフォ「シアンよ!
「この世には犠牲はつきものじゃ。
「お前は今まで生きる上で何人の獣人を食べて来た?」
そうクルーフォは続けます。
レヴァン「そうだ!
「これは私たちの問題だ!
「俺たちはラシェルの苦しみに気づいてやれなかった。
「だからせめて、ラシェルの愛したお前は守ってやりたいんだ!」
そうレヴァンもまた続けます。
シアン「……ぼくだってラシェルはもう帰って来ないんだ!
「だから、大切な仲間が好きなものを自ら失う選択をしようとしているのを見過ごすわけには行かない!」
そうシアンは、クルーフォとレヴァンを説得しようとします。
レヴィ「ふふっ?
「ここに来て仲間割れかい?
「それじゃ、私はここで失礼するよ」
隙を見てその場から退散するレヴィ。
レヴァン「待て!!」
そうレヴィを止めようとするレヴァンに「待てはお前だ!
「俺たちには今圧倒的に情報が足りてない」とモルッグ。
パルナもまた「あんたたちはレヴィの目を見てなかったの?
「かなしそうな目してなかった?」そう反対します。
クルーフォ「このままではきっと被害が増えるのじゃぞ?」
そう静かに言うクルーフォ。
ですが、シアンは答えます。
シアン「そんなのぼくたちだって一緒だよ……。
「ぼくたちが生きるってことは何かしら犠牲を生む。
「全ての獣人には必ず死が待ってる。
「でもぼくは、大切な人の弱さに気づけなかったせいで、大切な人を希望を失わせたまま死なせてしまった。
「そして、レヴィも……何かしら弱さを抱えているはず」
レヴァンは問います。「でも、私欲のために見過ごすなど……ギルティでは?」
それに対するシアンの答えは問題提起でした。
シアン「正義なんて本当にあるのかな?」
レヴァン「ぬ?」
シアン「ルールを作るのって欲望が絡んでくるよね?
「草食獣人の街だったら、肉食に喰われたくないから肉食の立ち入りを禁じようとか。
「でも、それって肉食を犠牲にするってことだし、ルールを作るってことは誰かの自由を犠牲にしているわけだよね。
「つまり、ルールを守っている人も結局は捕食者と何も変わらないわけだよね」
レヴァン「そ、それは……」
モルッグ「鱗で覆われる者、羽毛で覆われる者、毛並みで覆われるもの、肉食、草食、盗賊、肉食殺し、これだけ色々な陣営が混じってるパーティなんざ、どのみちもうどの陣営にも戻れねぇよ」とモルッグがシアンの意見に賛同します。
シアン「ここからはもう自分たちで切り開いていくしかないんだ。
「例え世界を敵に回そうと、ぼくたちは犠牲を払ってでも自分を貫いて生きる!
「それがぼくにできるラシェルへの償いな気がするんだ」シアンはそう決意します。
それに対し、「そのためには、レヴィが背負っているものを調べないとね」パルナもまた賛同。
クルーフォ「レヴァンよ、どうやらもう後戻りはできんようじゃぞ?」
クルーフォはパーティメンバーの成長を実感するようにいうクルーフォ。
レヴァン「どうやら、新しい筋肉の神を定義しなくてはな……」
ライエル「お前らの末路、見届けてやるよ」
カツェル「面白いところを見せて頂きましたわ!!
「是非あたくしもパーティに入れて頂けないかしら?
「旅に出たくても中々街の皆がOKしてくれないんですの……。
「いっそ私をさらう体で」
ガート「私も良かったらご一緒しましょうか?」
シアン「そういえば、ガート、死者と話せるって本当?」
パルナ「それなんだけどね……」
パルナは知っていました。ラシェルともう一度話したかったものですから、レヴィに襲撃される前、事前にガートから聞いていたのです。
ガート「実は私は閉ざされた記憶の断片をかき集めて、思い出させることしかできないんですよね……」
シアン「そっか」
----- ----- ----- -----
レヴィとの対峙
----- ----- ----- -----
レヴィ「はっ?(おかしい、この場所は誰にも伝えてないはずだ。まさか?)」
レヴィは考えを巡らせます。
レヴィ「……やはりお前らか。
「クルーフォ、それにレヴァン……それから……。
「愉快な仲間たちとでもいうべきか?」
クルーフォ「……レヴィ。
「お前何があった?
「そうまでして消したい記憶、後悔は一体なんじゃ?」
----- ----- ----- -----
モルッグの能力
----- ----- ----- -----
モルッグ「なぁ?シアン……」
モルッグはシアンに語り掛けます。
シアン「モルッグ……」
モルッグ「お前に話しておかなければならないことがある。
「俺の未来予知だか、多分この先もう使えない」
シアン「えっ?」
モルッグ「俺の未来予知は多分、受け入れられない後悔を過去へ映像として送ることで成り立ってたんだ。
「いつもいつも一歩踏み出せず後悔ばかり。
「だから、一歩踏み出した先が見えなかったんだ」
シアン「それって」
モルッグ「俺はもう後悔を拒絶したりしない。
「後悔は自分の未来を紡ぐために使うことに決めた。
「それから、レヴィを追ってたから、合流したというのは口実だ。
「お前にラシェルやパルナのこと、それから自分の気持ち。
「色々伝えるまでは、まだ未来が見えていたからな。
「俺は、お前に気持ちを伝えたかったんだ」
シアン「モルッグ……ありがとう!」
モルッグ「さぁ、行こうぜ!」
モルッグとシアンの会話を眺めるレヴァン。ふと思いついたように、クルーフォに問うのでした。
レヴァン「……なぁ?
「あのコウモリのことどう思う?」
クルーフォ「……何故あそこにいたのか……じゃろ?
「もしかしたら、その理由に気付いているやつがいるかもしれんな」
----- ----- ----- -----
プラムたちの調査
----- ----- ----- -----
盗賊兄弟プラム子分「というわけっす」
そうプラムの子分が伝えます。
プラムも得意げな表情です。
盗賊兄弟プラム兄貴「ここまで調べて来たんだぜ。
「どうだすげぇだろう?」
レヴァン「つまり、レヴィはそこで記憶を消す研究をしていると?」
レヴァンはプラムたちの集めて来た情報をまとめます。
バル「顕微鏡?レーザー?なんだそれ?」
バルが疑問に思うのも無理はありません。
この世界ではあまり知られていないことですから。
----- ----- ----- -----
レヴィの回想
----- ----- ----- -----
私はレヴィ……。 レヴァンと同じ家庭に生まれ、10才までレヴァンと同じ道を志していた。
だがある時、あれは崖から落ちた時だろうか、突如思い出したのだ。
前世の記憶を。
どうやら、私はこの世界にやって来る前、人間と呼ばれる種族だったようだ。
それからだ。
私の苦しみがはじまったのは。
人間の世界は、法律にルールにマナーに、とにかく責任を転嫁できた。
何かを犠牲にして生きている自覚など、殆どなかったのだから。
この世界とあの世界を比べてはじめて気づいてしまったのだ。
自分が生きる上で、いかに様々なものを犠牲にしているのかを。
それからだ。
私が記憶を消す研究をはじめたのは。
神官として育ててくれた家族を裏切り、私は研究をはじめた。
まずは研究に必要な顕微鏡やレーザーを作るための鉱石の調査・収集からだった。
フクロウを共同研究者にすえ、機材の生成方法の確率は完了した。
----- ----- ----- -----
クルーフォの推理
----- ----- ----- -----
パルナ「レヴィもきっと消したい記憶があるのね……」
シアン(消したい……記憶……!?そういえば、ラシェルに狩を教えてくれたあの草食コウモリさん。肉食のコウモリが起こした大きな事件の影響で、いじめられたのが原因であの仕事をしてるって言ってた。あそこにいたのってもしかして?)
シアンは思い当たることがあるようです。
レヴァン「でもなんで化ける力を与えたりしてるんだ?
「記憶を消すだけならそんな力いらないだろう?」
クルーフォは推理します。
クルーフォ「おそらく、自分の記憶だけではなく、ある事柄全ての記憶を全ての獣人から消し去ろうとしているのだろう。
「化ける力は恐らく副産物じゃ」
----- ----- ----- -----
レヴィの回想2
----- ----- ----- -----
そんなある時。
一人の青年がやってきた。
話を聞くと、彼も記憶の消去を願っていた。
罪の重さに耐えきれず、自分の記憶を消して欲しいのだという。
私は彼の記憶を消す実験をはじめた。
結論から言えば失敗だった。
彼の記憶自体を消すことはできた。
だが、それでは不十分だった。
周りが記憶を覚えていたのだから。
一人一人記憶を消すのでは手間がかかる。
そこで、一つの事柄について、それを観測したものの記憶、全てを消し去る研究『イベント・イレーズメント・トライアル』を始めた。
その副産物が化ける力だ。
他者から受ける認識を捻じ曲げ、別の種族化の様に見せる力。 それが化ける力の正体だ。
----- ----- ----- -----
クルーフォの推理2
----- ----- ----- -----
クルーフォ「他者からの認識を捻じ曲げる点で共通点があったのだろう」
シアン「じゃあ、なんでドロップは?」
クルーフォは推理します。
クルーフォ「もしかしたら、化ける力は自分の自分に対する認識も捻じ曲げてしまうのかもしれん」
レヴァン「どういうことだ?」
レヴァンはたとえ話を求めます。
----- ----- ----- -----
レヴィの回想3
----- ----- ----- -----
私はイベント・イレーズメント・トライアルを成し遂げるため、少し関係のある化ける力について情報を集めた。 しかし、どうやら問題があったようだ。 自分の自分に対する認識も捻じ曲げ、痛みや怪我に気づかず、気が付けば手遅れになっているケースが後を絶たなかったのだ。
----- ----- ----- -----
パルナの推理
----- ----- ----- -----
クルーフォ「普通、熱せられたものに触っても熱くて手を引っ込めるじゃろう?
「痛かったら痛い部位を庇うじゃろう?
「じゃが……」
ハッと気づいたように「自分の状態に気づけずに、気が付いた時には……というわけか」とレヴァン。
クルーフォ「じゃが、わからん。
「記憶を消す力の研究をしているのなら、何故有無を言わさずわしらの記憶を消さなかったのか?」
クルーフォは、そこだけレヴァンの考えがわかりませんでした。
カツェル「そういえば、記憶を消すことに同意を求めてましたよね?」
レヴァン「もしや記憶を消す力に同意が必要なのではないか?」
クルーフォ「それなら一人一人記憶を消した方が早い。
「三人を殺そうとしたことへの説明がつかなくなる」
カツェル「そういえば、あたしたちを殺そうとしましたわよね?
「何故記憶を消すのではなく、殺そうと?」
ゾット「きっと代償が必要なんすよ。
「って、それじゃあ今度は記憶を消すことに同意するか聞かれたことに説明がつかないっすよね?」
クルーフォ「いや、あるかもしれん。
「代償が必要で、人だけでは実験台として乏しかった。
「じゃから、口封じは殺すだけで良かった。
「ところが、あらたな実験台がやってきて、実験を実行する価値が出た。
「そう考えると色々納得がいく。
「じゃが、何故わざわざシアンを人質にとってまで、記憶を消すことに同意を求めたのか?」
そんなクルーフォに対し「きっとレヴァンとクルーフォのことが好きだったからだよ」とシアン、「……それだけじゃないと思うわ。きっと……自分で選択するのが怖かったのよ」とパルナ。
----- ----- ----- -----
レヴィの回想4
----- ----- ----- -----
そんな中、私を嗅ぎまわる奴らの存在に気づいた。
調べていくうちに、レヴァンとかつての共同研究者、クルーフォがその中にいることを突き止めた。
丁度良い。 その内奴らの記憶を、私に関する記憶を消してしまおう。
口封じと実験台で一石二鳥だ。
そう思っていた。
だが、思ったよりも彼らとの再会、そして出会いは速かった。
研究資材を調達するために、鉱石を集めに行くと、偶然にも少女たちに姿を見られてしまった。
人程度じゃ実験材料にもならない。 私がいつものように殺して口封じにしようとしていると、彼らが現れた。
実験台にしようと思っていた奴ら。
口封じをしようとしていた奴ら。
有無を言わさずやってしまえば良い。
そのはずだった。
だが、自分でもそう簡単に割り切れないということに気づいた。
どうやら私はクルーフォと、レヴァンに忘れられたくなかったらしい。
それならいっそ、彼らに委ねてしまおう。
私は選択できずに、彼らにまた……責任転嫁した。
----- ----- ----- -----
レヴィの対峙2
----- ----- ----- -----
レヴィ
「後悔……?違うな!
「これは使命感からだよ?
「私には前世の記憶というやつがあってな。
「その世界はルールやマナー、法律、戒律、教義、それらがすべてだった。「ただ、誰かが定義した理(ことわり)に従っていれば、犠牲のことなんて考えなくて済んだ。
「自分とは異なるもの、既存のルールの目に余るものを見下して、のうのうと暮らせて行けた。
「だが、この世界は違う。
「犠牲を払う度、敵が生まれた。「誰かに嫌われ、憎まれ、後悔し、もうそんな苦しみを誰かが味わうのなんて嫌なんだよ!!!
「……記憶を消す力、これは人々を苦しみから救う力なんだ!!!」
そう強くいうレヴィに。
シアン「ッ!!!!」
シアンの鋭い眼光!
レヴィ「な、なんだよ!!その眼は!!!」
そう問うレヴィ。
シアン「それじゃあ、キミは失った何かの記憶はどうでもう良いっていうの?」
レヴィ「失ったものなんてどうだっていいだろ?
「残された勝者だけが幸せに暮らせる世界を作ればいいんだ!!!」
シアン「それじゃあ、レヴァンやクルーフォが死んだら、キミは2人との出会いの記憶まで消してしまうの?」
レヴィ「そうさ!!
「この世界に苦しみなんていらない!!
「元のいた世界じゃ、人々は幸福を求めてルールを作ったんだ」とレヴィ。
それに対してパルナが気づきます。「じゃあなんで……ためらったりしたの?」
「なんでさっきから泣いているの?」
レヴィ「はっ?
「この私が泣くわけないだろ?
「……あれ?(私……なんで?)」
パルナ「ねぇ?本当は……すっごく後悔してるんでしょ?
「元居た世界でのこと……」
レヴィ「違う……違う……そんなはずないんだ……」
パルナ「本当にどうでもよかったんなら、この世界でも、嫌われようが、憎まれようが、敵になろうが、後悔なんてしなかったはずよ。
「違う?」
レヴィ「……。
「それじゃあ私は、なんのために、今まで犠牲を払って来たんだ?
「結局私のした研究に……いや私そのものに……意味なかったんじゃないか」
クルーフォ「そうか、お前にとってそうでも。
「わしは決してそうは思っとらんよ。
「お前との研究は楽しかった。
「かけがえのない時間だった。
「あの時得た知見のおかげでワシは今まで生きて来れた。
「お前との研究がなかったら、こいつらと旅にはでなかっただろう」
レヴィ「……ありがとうクルーフォ。
「お前は優しい奴だな。
「それならいっそ私を食べてくれないか?
「私はもう罪の重さに耐えられそうにない。
「私が犠牲になることでお前らが他の誰かを犠牲にしなくて済むというのなら、それだけで、もう充分だ」
パルナ「待ってよ!あたしがしたこと知ってるでしょ?
「自分で自分の大切なものを失った」
シアン「……キミはぼくの大好きな人と、ぼくに大切な時間をくれた人と同じことを言うんだね。
「そりゃ、犠牲を払わないに越したことはないよね……。
「犠牲を払うのは辛いよね。
「けど、ぼくらは犠牲を払わないと前に勧めない弱い存在なんだ。
「キミは苦しみなんていらいなって言ったけど、ぼくにとってはこの苦しみはとてもかけがえのないものなんだ」
モルッグ「まぁ待てよ?
「犠牲を払ってでも生きるという覚悟がない奴に、なぁなぁで生きられても、犠牲をないがしろにするだけだぜ?
「これは本人が決めることだ。
「一歩踏み出すかどうかは、レヴィが決めることだ。「だがまぁ、俺はこいつらがいなかったら一歩踏み出せなかったからな」
レヴァン「感情がなかったら、苦しみもなく善悪も、そしてルールも生まれなかっただろう。
「だが、感情がないと、筋肉を崇めることもできまい」
クルーフォ「なぁ、レヴィよ……自分勝手なお願いなのはわかっている。
「じゃが頼む。どうか、わしらと一緒に来てくれぬか?
「お前の罪!わしらに背負わせてくれ!」
レヴィ「だが、いいのか?兎はともかく、そこにいる牛と猫を殺そうとしたのじゃぞ?」
カツェルはレヴィに突進します。
レヴィ「ぐはっ」
カツェル「これでちゃらですわ」
ガート「あ、私は気にしてないですし、大丈夫ですよ」
名もなきコウモリ「そうか、そういうことなら、これはもらっていくぞ?」
その言葉を発したのはコウモリでした。
シアン「そうかやっぱり。
「キミは消すつもりなんだね?
「吸血コウモリと肉食コウモリの3人組が起こしたあの事件の記憶を」
沈黙するコウモリ。
シアン「ラシェルから聞いたよ……、キミは草食なんだよね?
「でも本当に消しちゃうの?
「キミのことだし、きっと狩の記憶は消すつもりないんでしょ?
「キミの今までしてきたことの意味、誰からも理解されなくなるどころか、自分でも理解できなくなるんだよ?
「もしかしたら、キミと同じようなことをした人もいるかもしれない。
「その人たちもキミと同じ思いをすることになるんだよ?」
名もなきコウモリ「因果応報さ。
「覚悟はできているさ!」
シアン「覚悟はできているみたいだね!
「それなら仕方ない。
「ぼくは、キミが今までして来たことにキミが何を込めていたか、それを忘れたくないんだ!
「キミの願い!犠牲にしてでもぼくは、キミを思い忘れない!」
それに対し「まぁ待て!
「ここは俺にやらせてくれ!」とライエル。
シアン「でも」
ライエル「草食同士で決着をつけるのがフェアだろう?」
沈黙するコウモリ。
ライエル「やい!そこのコウモリ。
「お前は誰かと一緒に罪を背負うタチじゃないよな?
「この罪は一人で背負ってやるって感じだ!
「仲間に誘っても来ねぇだろうよ?
「なぁ、ラシェルが死を選んだ大元の原因を作ったもの同士、ここで決着を付けようぜ?
「ここで引導を渡してやるよ!」
「いいだろう!!」
永い戦いを経て。
ライエルとコウモリの戦いに終止符が打たれます。
コウモリの胸に矢が深々と刺さっています。
名もなきコウモリ「なんだか、不思議な感じだ……。
「死ぬってわかってても、今全然悔しくねぇなんて」とコウモリ。
ライエル「なぁ、ラシェルのこと好きになってくれてありがとうな」
名もなきコウモリ「ふふっ、まさかキミにそんなこといわれるなんてね。
「ぼくのこと草食獣人として扱ってくれてありがとう。
「コウモリが肉食ばかりじゃない、そればかりか草食の方が多いってこと、これからも忘れないでくれ」
ライエル「あぁ、忘れないさ」
コウモリとライエルの会話が終わり、レヴィがふと思い出したように言います。
レヴィ「……すまないシアン、大事なことを忘れていた。
「お前の呪いを解く方法だが、私を殺すしかないんだ」
それに対し、「でも……、呪いが発動するまで時間あるよね?」とシアン。
レヴィ「……何を考えているんだ?」
シアン「……それまでに、絶対キミに生きたいって希望教えてあげるから!!
「といってもぼくも毛頭死ぬ気はないけどね」
レヴィ「それって?」
シアン「呪いの発動が来るその日の数日前くらいまで、キミと相まみえるその日まで、目いっぱいの日々を楽しもう!!」
レヴィ「でも、私は……」
シアン「大丈夫!きっと見つかるさ!
「犠牲を払ってでも生きたいっていう強い希望が」
----- ----- ----- -----
エピローグ
----- ----- ----- -----
ヘビの先住民「くっ、何故だ!何故、お前はそんなに強いんだ!!!」
そう蛇の原住民は問います。
レヴィは答えます。
レヴィ「とある犬獣人に教えてもらったんだ。
「最期まで生きることを諦めなかった、犠牲を払ってでも生きたいという強い意思を貫いた犬獣人に。
「今まで見て来たもの全てを生きたいという希望に変える術を」