枕元に置いてあった携帯電話が鳴る。

オレは、寝ぼけまなこで携帯電話を取ると、かかってきた番号を確認する。

「ん〜……? ……!!」

その番号を見て、オレは一気に目を覚ました。

そして、おそるおそる電話に出た。

「もしもし……」

『やぁ、レルネー君。 ひさしぶりだね。

 私だよ。 ハイラだよ。 覚えているかね?』

「……はい」

電話は、2週間程前に出会った、自称医者という蜥蜴人からのものだった。

『それはよかった。

 突然の電話で驚いたかもしれないが、実は君に相談があってね。

 ちょっと、私の病院まで来てくれないかね?」

「あの、相談って?」

『来れば分かる。 どうだね?』

「……分かりました」

一方的な物言いに、オレは釈然としないながらも了承した。

『では、今すぐに来てくれたまえ』

「……はい」

『待っているよ』

そう言うと、ドクターは電話を切ってしまった。

オレは切れてしまった携帯電話を見つめながら、小さく溜め息をつき、ドクターの元へと向かうべく、身支度を整えることにした。

 

 

「やぁ、待っていたよ。 さ、入りたまえ」

2週間前に来た、薄暗い路地裏の崩れそうな建物のドアを開けると、ドクターが妖しげな笑みを浮かべて迎えてくれた。

オレは言われるままに建物の中に入り、ドクターの後ろをついていった。

「あの、ドクター。 オレに相談って?」

ドクターの後ろを歩きながら、オレはドクターに問いかける。

「ふむ。 私も君に用があるのだが、実はその前に、君に会いたいという人物がいてね。

 とりあえずその人物に会うだけ会ってみてくれたまえ。

 私の用件はそのあとだ」

それだけ言うと、ドクターは突き当たりの部屋の前で立ち止まった。

「その人物は、もう中で待っている。 さ、入りたまえ」

そう言ってドクターが部屋のドアを開けた。

すると、薬品臭の漂う診察室のようなその部屋に、1人の竜人がこちらに背を向けて立っていた。

オレ達が部屋に入ると、こちらに気付いたその竜人が振り向く。

年は40代くらいで、ドクターと同年代と思われる。

「紹介しよう。 彼の名前はラド。

 奇妙な機械ばかりを作っている変わり者だ」

ドクターの紹介に、ラドという名前の竜人が鼻で笑う。

「君に変わり者呼ばわりをされたくはないね。

 君だってわけの分からない薬ばかり作ってるじゃないか」

ラドの指摘にドクターも鼻で笑った。

そして、椅子に腰かけると、オレに向かって説明を続けた。

「彼に君のことを話したら興味を持ったようでね。

 そういうことだから、少し彼の話を聞いてやってくれないか?」

「ええ」

オレが同意の意を示すと、それを合図にしたようにラドが口を開いた。

「はじめまして、レルネー君。

 君のことはハイラから聞いているよ

 なかなか絶倫だそうだね」

その言葉にオレは思わず顔を赤くした。

「さて、単刀直入に言おう。

 君、僕の作った機械の実験に付き合ってくれないか?」

「機械の、実験?」

思いもよらなかった突然の提案に、オレはキョトンとした調子で聞き返した。

「ああ。 ハイラが言ったが、僕は機械いじりが趣味でね。

 それでよく色々な機械を作るんだ。

 今回作った物は被験者が必要なタイプの機械なんで、君に協力してほしいんだよ。

 もちろん、協力してくれればそれなりの報酬は払うよ。

 実験自体は危険なものじゃないし、そう手間もとらせない。

 どうだろう、協力してくれないだろうか?」

ラドの言葉にオレは少し考えた。

報酬をもらえるのは正直ありがたい。

以前、ドクターの実験に付き合った時にもらった金が、すでに底をつきかけてしまっていたからだ。

危険もないし、時間もかからないということなので、二つ返事で了承しても構わないのだが。

「…………」

オレは椅子に座ったドクターにチラリと見た。

ドクターは薄笑いを浮かべてオレを見ている。

「……なんだね?」

オレの視線に気付いたドクターが尋ねてくる。

その声は実に楽しそうな響きを帯びていた。

ドクターのその態度に不安を感じながらも、オレはラドに向かってうなずき、答えた。

「……分かりました。

 でも、どうしてオレなんです?

 被験者が必要ならラドさんだって、ドクターだって構わないんじゃないですか?」

「私を変な実験に巻き込まないでくれたまえ」

オレの疑問に、間髪入れずドクターがつっこんだ。

ラドはドクターの言葉に気を悪くした様子も見せず、

「いや、今度作った機械は商品化して売ろうかと思っているんだが、ターゲットとなる年齢層が君ぐらいの年齢なんだよ。

 だから、実験というよりはモニターと言った方がいいかな?

 僕は開発者だから客観的な意見が出せないし、ハイラはターゲットの年齢層から離れているからね。

 それに、君は色々な意味で実験に適してるんだよ」

丁寧にオレに向かって説明した。

言っていることは分かるが、最後の一言が妙に引っかかる。

それにプラスして、いまだにドクターが浮かべている薄笑いの意味も気になる。

しかし、そんなオレの様子を気にも留めず、ラドが言葉を続けた。

「君さえよければ、すぐにでも実験を始めたいのだが、どうだろう?」

「……分かりました、始めましょう」

ためらいはあったものの、1度了解しておいて断るというのは気が引けたので、オレは首を縦に振って答えた。

「で、オレはどうすれば?」

「とりあえず服を脱いでくれないか?」

「は?」

ラドの一言に、オレは間抜けた声を上げた。

「な、なんでですか?」

「なに。 今回僕の作った機械は下半身に関係するものでね」

そう言うと、ラドは近くにあったバッグの中から何かを取り出した。

それはバスケットボールよりも一回り大きい、ゴムのようなものでできたピンク色の不透明なボールだった。

ボールには表面に3〜4p程度の大きさの穴と、1pくらいの大きさの穴が、それぞれ1つずつ開いており、表面にはいくつかのボタンのようなものが見える。

「これが僕の作った機械だ。

 といっても、シリコンで覆われていて機械には見えないだろうが、中身はちゃんと機械が仕込まれている」

ラドがボールを回転させながら言う。

「なんですか、それ?」

「オナニーマシーンだよ」

「オ、オナ……!?」

「言ったとおりだろう? 彼はこんな変な機械ばかり作っているのだよ」

それまで薄笑いを浮かべていたドクターがバカにしたように言った。

それに対し、ラドはまったくの無反応で対応し、僕にボールの説明をし始めた。

「この大きな穴の方がペニスを差し込む穴。

 この小さい穴の方は、ローションを流し込む穴だ。

 表面についているボタンは、ペニス穴の内部の動きを調整するためにある。

 動き方を変えたりとか、強弱を変えたりとかね」

ラドが表面の赤いボタンを押すと、内部からグイングインという機械音がした。

確かに内部に機械が仕込まれているようだ。

ラドはバッグからローションの入ったボトルを取り出すと、ボールに開いた小さな穴に流し込み始めた。

「ハイラから君が絶倫だって話を聞いたからね。

 この機械を試すにはうってつけなんだよ」

「絶倫といっても、私が作った催淫剤の影響を受けたせいだがね」

ドクターが言いながら、見覚えのある薬を棚から取り出してきた。

そしてラドに向かって尋ねる。

「使うかね?」

「いや、いい。 通常の状態での機械の精度を知りたいからね。

 催淫剤なんかで興奮した状態で実験をしても意味がない。

 とりあえず最初の1回は、通常の状態で実験させてもらうよ。

 ……さ、服を脱いで」

ラドはオレに服を脱ぐようにうながした。

「…………」

オレが押し黙ったまま、服を脱ぐ素振りを見せないでいると、ドクターが横から口を挟んできた。

「……早く脱ぎたまえ。

 2週間前はあれほど淫乱だったじゃないか

 今更、全裸になるくらい、大したことじゃないだろう?」

「あれは! ……あれはドクターの薬のせいで……」

オレは思わず声を荒げたが、言葉の最後の方は消え入ってしまった。

オレの脳裏に2週間前のことが思い出されてくる。

薬の効果で信じられないほど淫乱になってしまったオレは、日に2桁におよぶ射精を果たした。

何度も何度もドクターと交わることを要求し、ドクターが意地悪く要求を拒めば、ドクターの目の前でわき目も振らず自らを慰めた。

その姿は、まさに性欲に支配された肉奴隷そのものだっただろう。

「さぁ、早くしたまえ」

「あ……」

ドクターの一声に我に返ったオレは、意を決すると、身に着けている衣服を脱ぎ始めた。

脱いだ物を、周到にもドクターが用意した籠に入れると、程なくしてオレは全裸になった。

2週間前のドクターとの情事を思い出していたために、オレのペニスは半立ち状態だ。

「ふん……なんだかんだ言って、体は随分と淫乱じゃないか」

半立ち状態のオレのペニスを見て、ドクターがなじる。

「まぁまぁ、いいじゃないか。

 僕としては完全に勃起してもらってた方が嬉しいんだけどね。

 フニャフニャのままだと穴に入れづらいだろうからね」

言いながらラドがボールを差し出してきた。

オレはボールを受け取り、両手でしっかりと持つと、半立ち状態から徐々にそそり立ってきて完全勃起に近くなったペニスを、ボールの大きな方の穴に差し入れた。

「そう、そこにペニスを入れて……起動ボタンは、その赤いボタンだ」

オレが穴にペニスを差し入れたことを確認したラドが、起動ボタンを教える。

オレはその言葉に従い、赤い起動ボタンを押した。

グイングイングイン……

「う……あ…!」

機械音と共に、ボールの中でペニスが刺激され始めた。

思った以上の刺激に、快感の喘ぎがオレの口を突いて出る。

ペニス穴の最奥から溢れ出すローションが、ボール内部の機械の動きによってペニスに塗りつけられ、それがさらに快感を高めた。

「どうだい? 具合は?」

ラドが尋ねてくる。

「き、気持ちいいです……」

オレは目を閉じ、ボールが与える快感に身を震わせながら答えた。

言葉通り、ボールからの刺激は、自分でするよりもはるかに快感で、思わず腰を振りそうになるほどだった。

「それはよかった。 試しにほかのボタンも押してみてくれないか?」

ラドの言葉に従い、オレは表面にいくつかついているボタンのうちの1つを押してみた。

その途端、ペニス穴の内部の動きが変わった。

それまでは通常のオナニーのように、竿を根元から先端までスライドするような感じだった。

しかし、ボタンを押した瞬間、まるで手首をひねっているかのように、内部の機械が回転運動を始めた。

「あぅぅ…!!」

オレの口から喘ぎ声が漏れる。

ボール内部から響く、グイングインという機械音と、ボールとオレの結合部から聞こえる、グポッグポッという音が、さほど広くない診察室に響いた。

オレがボールに責められている様子を、ラドとドクターはじっと見つめていた。

ラドは無表情に観察するように、ドクターは薄笑いを浮かべて楽しそうに見ている。

「これはどうだい?」

近寄ってきたラドが、別のボタンを押す。

「あひっ!?」

再び変わった機械の動きに、オレは情けない声を出して体を震わせた。

今度はペニス穴の内部にペニス全体が吸い込まれるような動きだ。

その感覚は、さながらフェラチオをされているようだった。

「とりあえず、動きとしては、その3種類だけなんだ。

 ちなみに、横にあるこのボタンを押すと、動きの早さが変わる」

説明をしながらラドがボタンを押した。

「うぐぅぅぅ……!!」

連続して与えられる強烈な刺激に、オレは歯を食いしばって耐えた。

「そしてこれが締めつけ具合の調節ボタン」

三度、ラドがボタンを押す。

「ッ……ぁ!!」

凄まじい、まさに他人の口内でペニスを吸い込まれているかのような強烈な締めつけと吸引が、オレの爆発寸前のペニスを襲った。

オレは口を、そして目を大きく見開き、声にならない声を上げて全身を痙攣させる。

それからものの数秒ももたずに、

「うわ…ぁぁぁあああ!!!」

一際大きな叫びを上げて、オレはボールの中に精液を解き放った。

射精中も、ボールの動きは変わらず、容赦なくペニスを刺激し続ける。

その刺激に耐えかねたオレは、射精後の余韻に浸る間もなく、ペニスをボールから抜き放った。

ペニスが穴から抜けると同時に、オレが放った精液とローションが混ざり合った粘液が、穴から滴って床にこぼれる。

オレはボールを両手で持ったまま、ガクッと床に膝を着いた。

「……どうだった? 具合は?」

荒い息をするオレに、頭上からラドが質問してくる。

「ふぅ…ふぅ…………はい…すごいよかった…です……」

オレは息を切らしながら答え、いまだに動き続けているボールをラドに手渡した。

「そうか。 それはよかった。

 ……ふむ。 でも、商品化するには、もう少し改良をした方がいいかな?」

ラドはボールのスイッチを切ると、誰にともなく呟いた。

そして座り込んでいるオレの肩に手を置くと、

「悪いけど、もう少し付き合ってもらえるかな?」

と言って、笑みを浮かべた。

「……はい」

ようやく息が落ち着いてきたオレは、短く答えた。

それを聞いて気をよくしたのか、ラドは満面の笑みを浮かべる。

「ありがとう」

ラドは礼の一言を述べると、ドクターの方に向き直り、

「じゃあ、僕は少し後ろに引っ込んで、機械の調整を行うとしよう。

 あとはハイラ、君の自由にしていいよ」

と言って、ボールとバッグを持って診察室を出ていってしまった。

「自由にしていいとは、また随分な言い方だね。

 言われなくても好きにさせてもらうさ」

ドクターが、ドアの向こうに消えたラドに向かって呟く。

「……? あの、ドクター?」

ラドとドクターのやりとりの意味をとらえかね、オレはドクターに声をかけた。

「ん? ……ああ。

 ラドはしばらく戻ってこない。

 また機械いじりに没頭するだろうからね。

 彼が戻ってくるまでの間、君には私の新薬の実験に付き合ってもらおう」

「え?」

さも当然のことのように言うドクターに対し、驚きを隠せずに聞き返すオレ。

「何を驚いているんだね?

 ここに来た時に言っただろう?

 私も君に用がある、と。

 もう忘れてしまったのかね?」

ドクターの言葉に、オレは記憶の糸を辿る。

「……あ……そういえば……」

「思い出したかね?

 そういうわけで、君には実験に付き合ってもらおう。

 と言っても、この間の薬をちょっと改良した物だがね」

ドクターが、新薬が入っているらしき小瓶を手に、オレの方に詰め寄ってくる。

「どうだい? もちろんイヤとは言わんよね?」

そう言ったドクターの口調は、有無を言わさず、といった感じだ。

「いや、あの……」

答えよどむオレをよそに、ドクターは小瓶をオレの鼻先に突きつけた。

 

 

そして、それから3日間。

オレは、ラドの作り出したボールとドクターとに犯され続けた。