「あ〜……腹減った……」
ベッドで横になっていたオレは、腹をさすりながら誰にともなく呟いた。
そしてベッドを下りると、床の軋むリビングを横切り、冷蔵庫のドアを開けた。
ひんやりとした冷気が漏れ出すそこに入っているのは、ペットボトルに入ったお茶とマヨネーズなどの調味料だけ。
「はぁ……」
覗いたことに後悔しつつ、オレは大きく溜め息をついた。
とりあえず空腹をまぎらわすために、冷蔵庫に入っていたお茶を取り出す。
とはいえ、飲み物で空腹が紛れるはずもなく。
腹の虫は、もっとちゃんとした物をよこせ、と合唱を始めた。
オレは飲みかけのお茶を冷蔵庫に戻すと、リビングのテーブルの上に置いてあった新聞を拾い、再びベッドの上に横たわって、新聞を広げた。
「……高速道路で玉突き事故。 死者は5名。 飲酒運転が原因か。
飲むなら乗るな、乗るなら飲むな……
……アパートで母娘死亡。 死因は餓死。
なんてタイムリーな話題だ。 オレもあと2日もすれば餓死だよ。
餓死しないためにも、なんか割のいいバイトを探さないとなぁ……」
オレは新聞をめくりながら、求人欄に目を向ける。
「……即金でわりのいいバイトは、と……
そんな都合のいいバイトがあるはずないか……ん?」
半ば諦めかけながらも、一通り求人欄に目を通していたオレは、その中の1つに目を奪われた。
「新薬の臨床実験。 被験者求む。
期間は3日ほど。 報酬は即金で30万。
これだ!!」
声に出して求人欄に載っていたことを読み上げると、オレは急いでそこに載っている連絡先に問い合わせた。
「……ここ、か?」
目的地に着いたオレは、思わず語尾に疑問符をつけた。
あのあと求人欄に載っていた連絡先に電話をかけたオレは、実験が行われる場所を聞き、その場所へと向かった。
そして辿り着いたこの場所でオレが見たものは、薄暗い路地裏が入り口になっている、今にも崩れそうな建物だった。
「なんかヤバいんじゃない?」
嫌な予感を感じつつも、金のためならば、と腹をくくり、オレは錆びついたスチール製のドアを開けた。
ドアを開けた瞬間、薬品の臭いが鼻を突く。
「こんちは〜……先程連絡した者ですが〜……」
ドアを開けると、オレは中に向かって声をかけた。
だが薄暗い室内からは、なんの返事もない。
ゴンゴンと、開け放ったドアをノックしながら、
「誰かいませんか〜?」
と、再度声をかけるものの、やはり返事は返ってこない。
このままこうして待っていても埒が明かないので、オレはおそるおそる室内に足を踏み入れてみた。
バタン、とスチールドア特有の大きな音を立て、後ろでドアが閉まる。
と、その時、部屋の奥にあった扉が急に開いた。
突然の人影の出現にビクリと身を震わせ、オレは扉を開けた人物を凝視する。
白衣を着た蜥蜴人らしいその人物は、眼鏡の奥から、まるで値踏みをするようにオレを見つめている。
しばらくそうしてオレを上から下に舐めるように見回したあと、蜥蜴人は口を開いた。
「ふむ……いいだろう。 中に入りたまえ」
蜥蜴人は横柄な口調でそう言うと、オレの返答も待たずに扉の奥に消えていった。
オレは急いでそのあとを追う。
奥の扉を抜けると、そこは細い通路になっており、天井のわずかな蛍光灯の明かりが、先を行く蜥蜴人とオレとを照らしていた。
さほど長くない通路の突き当たりにあったドアの前まで来た時、不意に蜥蜴人が振り返った。
「私の名前はハイラ。
こうみえても一応医者だ。 ドクターと呼んでくれたまえ。
これから君には3日間、新薬の臨床実験に付き合ってもらうことになる。
その間、この建物からは出ないように。
見たところ手ぶらで来たようだが、とりあえず衣食住はこちらで用意するので心配しなくていい。
報酬の30万は実験が終わったあとで渡す。
何か質問は?」
一気にそこまで言い切ったドクターは、眼鏡を通して鋭い眼光を投げかける。
オレはその眼光に気圧されて、何も言えぬまま、コクコクと頷いた。
「では中へ」
そう言うと、ドクターは目の前のドアを開けた。
ドアの奥はそれなりの広さを持った部屋で、幾分通路よりも明るい感じがした。
部屋の中は、ドクターが作業するのであろう机と椅子、カーテンの張られたつい立に、硬そうなパイプベッドが置かれていた。
壁際にはいくつもの棚が並び、その中には薬品と思しきカラスの瓶が、所狭しと並べられている。
窓らしき物は見当たらず、風通しがほとんどないと思われる部屋は、薬品の臭いが交じり合って奇妙な臭いで充満していた。
「ではそこにかけてくれたまえ」
オレが部屋を見回している間に椅子に腰掛けていたドクターが、向かいの椅子に座るよううながす。
言われるがままにオレが椅子に座ると、ドクターがカルテを見ながら問いかけてきた。
「名前はレルネー。 年齢24。 虎人。
間違いないね?」
「はい」
「では服を脱いでこれに着替えてくれたまえ」
「へっ?」
いきなりの思わぬ注文に、オレは間の抜けた声を漏らした。
そんなオレに構わず、ドクターが白いシャツとズボンを手渡す。
オレはそれを受け取ると、こちらをじっと見ているドクターに問いかけた。
「薬の実験……ですよね?」
「ああ」
「なんで着替える必要があるんですか?」
「汚れるからだよ」
「汚れる?」
「ああ。 まぁとにかく着替えたまえ」
あまり答えになっていない説明に少し不信感を抱きつつも、金のためだ、と自分に言い聞かせ、オレは渋々着替え始めた。
その様子をドクターはずっと見ている。
「あの……外で着替えちゃダメですか?」
「好きにしたまえ」
「じゃあ……」
オレはシャツとズボンを持って通路に出ると、そこで着替え始めた。
そして、程なくして着替え終わると、再び部屋の中に入る。
「脱いだ物はそこの籠に入れておきたまえ。
早速実験を始めよう。 まずは椅子にかけたまえ」
オレはドクターの言葉に従い、脱いだ衣服を籠に入れると椅子に座った。
「よし。 では目を閉じて」
「?」
不思議に思いながらも、オレは目を閉じる。
と、その瞬間。
「うわっ!?」
シュッと何か霧状の物が鼻先に吹きかけられ、オレは驚いて声を上げた。
反射的に鼻についた何かを拭こうとするオレ。
それをドクターが咎めた。
「触らないでくれたまえ。
今吹きつけた薬は粘膜から吸収するタイプの物だ。
拭き取られたら実験にならん」
それを聞いたオレは、仕方なく拭くのをやめる。
「今吹きつけた薬はなんの薬ですか?」
目を開けながらドクターに尋ねる。
ドクターはオレの様子をうかがいながら、カルテに何かを書き込んでいた。
その手を止めると、ドクターが口を開いた。
「じきに分かる。 とりあえず人体に悪影響を及ぼすものではないから安心したまえ」
「…………」
またも答えになっていない説明に、オレは文句の1つも言いたかったが、金のためだから、とじっと我慢した。
やがて、1分、2分、3分と、時間だけが過ぎていった。
その間も、ドクターはオレを観察しつつカルテに書き込んでいく。
そして薬を吹きつけられてから5〜6分も過ぎた頃だろうか。
オレは体のある一点に異常を感じ始めた。
「……ドクター。 トイレってどこですか?」
「トイレ? 部屋を出てすぐ右だが……どうしたのかね?」
オレの問いかけに、ドクターは眉をひそめながら答え、問いかけてくる。
その質問に、オレはモジモジしながら答えた。
「いや……ちょっと……」
「尿意を催したのかね? それとも便意かね?」
「いや……そういうわけじゃ……」
「はっきりしたまえ。 しっかり答えてくれなければ実験にならん」
モジモジとしているオレに、ドクターが厳しい言葉を投げかける。
だがオレは目を泳がせるだけで、ドクターの言葉に従わず、異変が起きている部分をおもむろに手で隠した。
「……ん?」
それに気付いたドクターは目を細め、オレの目とオレが手で隠している場所を交互に見てくる。
「手をどけたまえ」
「え……? でも……」
「いいからどけたまえ。 どけないようなら金は払わんぞ」
金を払わない、と聞いて、やむなくオレは隠していた場所をドクターの前にあらわにした。
「ほう……」
ドクターが感嘆の声を漏らす。
ドクターの目線の先にはオレの股間があった。
そこはズボンを突き破らんばかりに天を突き、痛いほどに充血していた。
カルテを手に取ったドクターが、無言で何かを書き加えていく。
「あの……さっきの薬はなんだったんですか?」
予期していなかった体の異変にオレは不安になり、ドクターに質問を投げかけた。
ドクターはカルテとペンを置くと、ちらりとこちらに視線を送り、先程オレに吹きかけた薬を手にとって弄びながら言う。
「催淫剤だよ」
「さ……催淫剤?」
「そう。 かなり強力な、ね」
驚いて聞き返すオレに、ニヤリと口をゆがめてドクターが答えた。
催淫剤と聞いたからかどうかは分からないが、段々と体の芯の方が熱くなってきたような気がする。
そして、自分でも分かるほど心臓の鼓動が早くなり、指先がジンジンと痺れ、肌が火照ってきた時、それらの現象は間違いなく催淫剤によるものだと確信した。
酒に酔っているような感覚に包まれている中、ドクターの冷静な声が耳に響いた。
「今、どんな気分かね?
体の状態などをできるだけ詳しく教えてくれたまえ」
「……体が熱いです……なんだかのぼせたみたいに……
心臓も早く脈打ってます……
酒に酔ったような、そんな感じです……」
「ふむ……」
再びカルテに書き込み始めるドクター。
段々と頭がクラクラしてきたオレは、再びドクターに問いかける。
「あの……ドクター。
どのくらいで薬の効果は切れるんですか?」
「さあね、被験者は君が初めてだからなんとも言えん。
だが、とりあえず今日のところは薬の効果時間についてのデータは必要ない。
それは後日調べるとしよう。
今私が欲しいのは、薬の効果に関するデータだ」
カルテを書き終え、こちらに顔を向けたドクターの眼鏡がキラリと光った。
口元にはうっすら笑みが浮かんでいる。
「さて、では下を脱いでくれたまえ」
「え?」
さも当然のことのように言い放ったドクターの一言に、オレは目を丸くした。
「言っただろう? 私は薬の効果のデータが欲しいのだ、と。
使った薬が催淫剤である以上、君がどれだけ淫乱になったかを検証しなければならんのだよ。
淫乱になっていなければ催淫剤としては失敗作なのだから」
「で、でも……」
「早くしたまえ。 私はそんなに気が長い方ではないぞ」
冷たい声で言ったドクターのその言葉は、脱がなければ金は払わない、ということを暗に示していた。
オレは人前でペニスを露出することに多少の抵抗を感じたが、ドクターの脅しと薬の効果に負け、恥ずかしさを感じつつも、ズボンを下ろした。
下ろす途中、勃起状態のペニスがズボンに引っかかる。
そのため、ズボンを下ろすと同時に、いきり立ったペニスが先走りを撒き散らしながら飛び出し、腹を打った。
先走りの透明な粘液が、白いシャツにシミを作る。
「ふむ、効果はなかなかのようだな。
君はいつもそんなに大量の先走りが出るのかね?」
飛び散った先走りが作り出したシャツのシミを見ながら、ドクターが尋ねてくる。
「……いえ、いつもはこんなには……」
「ふむ」
カルテに何かを書き込みつつ、ドクターは質問を続ける。
「勃起の状態は?
例えば、何か感覚的にいつもの勃起とは違うとか」
「いえ、いつもどおりだと思います。
あ、でも少し痛いかも……」
「痛い? どこがかね」
「あ……その、竿の部分が……」
「ふむ……膨張率、つまり大きさは?」
「いつもどおりだと……」
恥じらいを感じながら答えるオレとは対照的に、ドクターは淡々と質問を投げかけてきた。
それからしばらく問答が続き、質問が一段落したところで、ドクターが机に向かいペンをカルテに走らせる。
その間することのないオレは、ふと自分の下半身に目を向けてみる
するとそこには、竿から袋まで、全体を大量の先走りで濡らしたペニスがそそり立っていた。
ペニスの先からは止めどなく先走りが溢れ続け、触ってもいないのにグショグショに濡れており、部屋の明かりに反射して艶かしく光っている。
オレはなぜかソレを弄りたい衝動に駆られ、人前にもかかわらず、溢れた先走りを指ですくい、それを竿に塗りつけてみた。
ヌルッとした感触がなんとも心地良い。
続けて袋の方に流れた先走りをすくうと、指の腹で撫でるように袋全体に塗り広げた。
指が双球に当たるたびに、竿がビクンビクンと、まるで生きているかのように大きく動く。
その様子を見たオレは、自分の中に何か抑え切れない衝動が沸き起こったのを感じた。
双球を弄んでいた手を止めると、その手を竿にもっていき、掌全体で竿を握り締める。
そしてオレは、その手をいつもしているように、上下に動かし始めた。
しかし次の瞬間、今自分の置かれている状況に気付き、ハッとしてペニスから手を離し、ドクターの方を見た。
ドクターは口の端を上げ、オレを見ていた。
(見られた……)
大きなショックと羞恥心を感じ、オレはとっさに目を伏せた。
そんなオレに、ドクターは嘲りまじりに質問する。
「君は人前でペニスを弄るのが好きなのかね?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
「だが現に今、私が目の前にいるというのに弄っていたではないか」
「それは……その……」
口ごもるオレに追い討ちをかけるようにドクターが言葉を継ぐ。
「なんと淫乱な虎だろうね、君は。
そんなに私にペニスを弄るところを見て欲しかったのかね?」
「違います! オレはそんな……
ただ、なんかこう……ムラムラしてきたというか……」
「そんなことを言って、本当はいつも人前でそんな変質者のようなことをしているのではないのかね?」
「してません!」
「本当かね?」
「本当です!」
力一杯否定するオレを見て、ドクターはしばし瞑目する。
「ふむ……では君の今の行為は、不本意、つまり薬の影響によるものと考えても構わんのだね?」
「はい」
「……なるほど。
ということは、この薬にはノーマルな性質を持つ者をアブノーマルな性質に変えてしまうほど高い効果があるということか。
我ながらいい仕事をする。 ふふふ……」
ドクターは薬の入った小瓶を手に取り弄びながら、カルテに書き込みを始める。
ドクターが書き終わるまでの間、オレはおあずけをくった犬のように、じっと椅子に座り、ドクターの次の言動・行動を待っていた。
少しして、ドクターがペンと小瓶を置き、こちらに向き直る。
「さて、では最後の質問だ。
最後に射精をしたのはいつかね?」
「……4日前です」
「ふむ。 では今は溜まっている状態だね」
「ええ、まぁ……」
「ちょっとここで射精してみてくれたまえ」
「……はっ?」
あっさりととんでもないことを言い放つドクターに、オレは目を点にして聞き返した。
「射精してみてくれ、と言ったんだよ。
射精に至るまでの時間、精液の量、精液の成分を調べたい」
「でもそんな人前で……」
「さっきは私の前で弄っていたではないか。
あれだけ弄れるのなら、射精の1度や2度、簡単なものだろう?
もしできないというのであれば……分かっているね?」
ドクターが脅し文句をつけ加えてニッと笑い、おもむろにオレの股間に手を伸ばすと、濡れそぼったペニスを爪弾いた。
「うっ!」
その刺激に、オレはビクッと身を震わせ、腰を引いた。
「さぁ、早くしてくれたまえ」
袋から亀頭へ指を這わせ、射精をうながすドクター。
くすぐったいようなその刺激に、治まりかけていた衝動が再び頭を持ち上げる。
そして、ドクターがペニスから指を離すと同時に、オレは自分のペニスをしっかりと握り締めた。
熱くヌルついた感触が掌に広がる。
オレはその感触を感じながら、握った手を上下に動かした。
すでに十分すぎるほど濡れていたペニスは、手の上下動に合わせてクチュクチュと湿った音を立てる。
空いた手は下にぶら下がっている袋を揉み、内部の双球を転がす。
「……ふぅ……ふ…ぅ……」
息を殺しながら押し寄せる快楽を噛み締める。
その様子をドクターはジッと見つめていた。
眼鏡の奥のその瞳から淫靡な色が見てとれる。
うっすらと開いた口の端は笑みにゆがんでいる。
「実にいい眺めだね。 そそるものがあるよ」
唇を舐めながらドクターが言う。
ふと視線を下に落とすと、オレはドクターの股間が盛り上がっているのに気付いた。
それは単にズボンのしわによる膨らみではなく、明らかに勃起による膨らみだと分かるほど大きく膨らんでいた。
それを見たオレは、通常では考えられないほど興奮し、手の動きを早めた。
強烈な興奮と快感が全身を駆け巡り、同時にオレの心から理性が消えていく。
理性の失われたオレは、1匹の獣のように、ただただ一心不乱にペニスを扱き上げた。
そして、
「ううう……イ…くぅぅぅ!!!」
絶頂を知らせる声を上げ、ペニスの先端から白濁液を大量に撒き散らした。
飛び出した白濁液は、信じられないほどの量で、オレの全身のみならず、椅子を、机を、床を、そしてドクターの体を汚していく。
何度となくペニスが脈打ち、玉が空になるかと思うほどの量の白濁液が放出された。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
オレは肩で大きく息をし、射精後の脱力感に身を委ねる。
そんなオレに、ドクターが声をかけた。
「いやはや、凄まじい量だな。
君はいつもこんな大量の精液を撒き散らすのかい?」
「はぁ…はぁ…いえ、いつもこんなには……ふぅ……」
「4日分にしては量が多い。
ということは、あの薬は精液の生産にも少なからず影響があるようだな。
では、射精に至るまでの時間は?」
「いつもはもっと遅いです……」
「なるほど」
オレの精液がかかってしまったカルテに書き込みながら、ドクターがうなずく。
そしてどこからか取り出したシャーレに、オレの吐き出した精液をすくい取ると、それに蓋をして、机の引き出しにしまった。
「これは後日調べることにしよう。
さて、これで一通りの実験は終わったわけだが……」
「……?」
「私のコレもなんとかしてもらおうか」
そう言ってドクターは自分の股間を撫でさする。
それを見たオレは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「欲しいだろう? コレが」
ドクターが立ち上がり、オレの目の前に仁王立ちになる。
オレの眼前にはドクターの膨らんだ股間が。
「……でも……オレは男だし……」
突きつけられた股間から目をそらし、ドクターの勃起したペニスを想像して興奮してしまっている自分を諭すように呟いた。
そんなオレの顔をドクターが両手でつかみ、グイッと引っ張って股間の方へ向ける。
再びドクターの股間がオレの目の前に来る。
「では、私の股間を物欲しそうに見ていたのはどういうわけかね?」
「…………」
その指摘に、オレは何も言い返せなかった。
ドクターの膨らんだ股間に、異常な興奮を覚えているのは事実だからだ。
目の前の膨らんだソレがとてもいとおしく見える。
手に取って口に咥え込んでしまいたいほどに。
「さぁ、やってくれたまえ」
ドクターの声が、ボンヤリとしてきた頭に響く。
その声を引き金に、オレはドクターの股間に手を添えた。
熱く、硬くなったペニスがズボン越しに感じられる。
ズボンを脱がすと、形が分かるほどに突っ張ったブリーフが目に飛び込んできた。
ブリーフにくっきりと浮き出たその形は、オレのソレとは微妙に形が違った。
オレは自分とは違うペニスの輪郭を確認するように、ブリーフに浮き出た先細りのペニスの輪郭を指でなぞる。
指先がペニスの先端に近付くほど、ブリーフは潤いを帯びていた。
潤いを帯びた部分の生地が透けて、ピンク色のペニスが見える。
扇動的なその眺めに突き動かされ、オレはブリーフに手をかけると、ゆっくりと下ろした。
下ろすブリーフとペニスとの間に、細長い透明な糸が引かれる。
ブリーフを下ろしきると、生殖孔と呼ばれる穴から勃起しきったペニスが飛び出し、天を突いて震えていた。
下着越しに見た通り、ドクターのペニスの形状はオレのペニスとはやや異なっていた。
竿は先端に行くほど徐々に細くなり、先端にはぷっくりとやや控えめに膨れた亀頭がある。
亀頭の先端は、丸みを帯びたオレ達獣人のソレとは異なり、先がややとがっていた。
亀頭全体を見ればハートの形を逆向きにした形と言った方が分かりやすいだろうか。
竿の付け根には睾丸を納めた袋があるが、それもオレ達の袋とは異なり、しわやたるみはほとんどなく、袋は睾丸の形を誇示するようにピンと張り詰めてツルツルとしていた。
「こういった形状のペニスを見るのは初めてかね?」
見とれていたオレの頭上から、ドクターの質問が降ってきた。
オレはドクターのペニスを見たまま、小さくうなずく。
「私のような蜥蜴人に限らず、ペニスを体内に収納することができる竜人や鳥人のペニスはこういった形をしているのだよ。
1つ勉強になったじゃないか」
そう言って、ドクターはソレを突き出した。
オレはソレを片手で握ると、口を開き、一口で飲み込んだ。
ヌルッとした感覚が口内に広がり、ペニスの先端が喉の奥を突く。
喉を刺激された刺激でえづきそうになり、うっすらと目に涙が浮かんだが、なんとか我慢してこらえた。
牙でペニスを傷付けないように気をつけ、咥えたまま前後に頭を動かして刺激を繰り返す。
他人のペニスを口で愛撫するなど、オレにとっては初めての行為だったが、それでもドクターは感じているようで、
「……う…ぅぅ……」
と、キュッと結ばれた口から呻き声を漏らしていた。
口の奥の方、喉に近い部分を、ドクターの漏らす先走りが潤す。
その先走りの量が、ドクターの感じ具合を物語っていた。
ネットリとした少し塩味を帯びている粘液で口の中が満たされる。
その口内を、熱を帯びた硬いペニスが何度も何度も抜き差しされ、蹂躙していく。
ドクター自身の放った粘液とオレの唾液とが混じり合い、潤滑油となってドクターにさらなる快感を与え、そして、
「…くぅ……口を離したまえ……ぅぅ……顔に…かけてやろう……」
恍惚の表情でドクターが指示を出した。
オレは指示通り、口からドクターのペニスを引き抜く。
妖しく光る糸が、オレの口とドクターのペニスとをつないでいる。
オレがそれを確認した次の瞬間、ドクターのペニスがビクンッと震え、まるで音でも聞こえてきそうな勢いでドクターが射精した。
先細りの亀頭の先端から白い塊が大量に撃ち出され、オレの黄色と黒の斑の毛皮を白く染めていく。
反射的に目を閉じたので目には入らなかったが、ベトついた精液は顔の毛に絡みつき、滴った。
「ふぅ…ふぅ……
ふふふ、なかなかいい顔になったじゃないか。
淫乱な獣そのものだよ」
息を整えながら、ドクターが言う。
オレが目を開けると、すぐ目の前に白いタオルが迫っていた。
ゴシゴシと乱暴に顔がタオルで拭かれる。
「さぁ、これできれいになった。
毛に精液が絡みついて乾くと大変だからね」
そう言って、ドクターは精液の付着したタオルを投げ捨てた。
オレは初めて体験した顔射に放心し、しばらくドクターの顔を見つめていたが、やがて、
「私の方は満足したが、君の方はまだ足りないようだね」
と、ドクターがオレの下半身を見ながら言ったのを聞いて我に返り、視線を下に落としてみる。
そこには再び勃起したオレのペニスが、愛撫を待ちわびているかのように聳えていた。
「どれ、今度は私の穴を貸してやろう。
思う存分、私を貫くといい。
さ、そこのベッドに横になりたまえ」
笑みを浮かべたドクターは、パイプベッドに横になるよう、オレをうながした。
オレは言われるまま、ベッドの上に横になる。
ドクターはオレのあとを追うようにしてベッドの横に立つと、いまだに粘液に濡れ、テラテラと光るオレのペニスを撫で回した。
そして、ヘソにつかんばかりに反り返ったソレを天井の方に傾け、その切っ先を生殖孔の下、尻尾の付け根の辺りにある肛門にあてがった。
「十分に濡れているから、このままでも十分だろう」
そう言うと、ドクターはゆっくりとオレの上に腰を下ろしていく。
ペニスの切っ先がドクターの肛門にめり込む。
「う…あ……」
ネットリとした感触に思わずオレは声を漏らす。
その間も、どんどんドクターの肛門はオレのペニスを飲み込んでいった。
股間の周囲に重みを感じ、下半身の方に目を向けると、ドクターの肛門はオレの竿全体を包み込んでいた。
「ふふふ、どうだい? 私の中は」
ドクターがオレを見下ろしながら含み笑う。
「…あつ…い…です……ぅぅ…」
「それはそうだろう。
体内に入っているのだからね。
私が聞きたいのは、気持ちがいいか、ということだよ」
言いながらドクターは上下に体を揺らす。
「うぁ! ……はいぃ……気持ち、いいです……あっ! ……うぅ……」
「ふふふ、そうかね、気持ちいいかね」
ドクターが体を上下に動かすたびに、結合部からは粘着質な音が鳴り、粘液が飛び散る。
「あっ、あぅ、ド、クタ、ァァ、もう、オレ……あ!!」
短い悲鳴と共に、オレの全身が仰け反った。
ドクターの中に入り込んだペニスも同時に震え、今日2度目の白濁液を流し込む。
オレの射精を察知したドクターが動きを止める。
「ふぅ…ふぅ……む、もうイったのかね?
随分と早いな、君は。
まぁいい。 薬の効果はまだ切れんだろうから、このまま続けるとしよう。
君自身はまだ満足していないようだしね」
ニヤリと笑うドクター。
確かに射精したにもかかわらず、オレのペニスは勃起し続けたままだった。
ドクターの腸壁に刺激され続けているというのに、射精後特有のあのくすぐったさもない。
それを知ってか知らずか、ドクターは上下に動き続ける。
オレの目の前では、萎えたドクターのペニスが、上下動に合わせて精液の混じった先走りを撒き散らしながら跳ね回っている。
さらにその下では、結合部から白濁液が溢れ出し、より一層大きな音を出していた。
「うっ…く……ふふふ。 私の中に君を感じるよ、レルネー君……んぅ……」
「はぁ…はぁ…っうぅ……!」
ドクターの言葉は、すでにオレの耳には届いていない。
オレは貪欲に快楽を貪る獣のように、口から息を漏らし、喘ぎ声を上げることしかできなかった。
「んあぁぁ!!」
今日3度目の射精の時が訪れた。
ドクターの腸内でオレの分身が暴れ回り、白濁液を流し込みながら蹂躙する。
「……っく! 元気がいいな……
薬の効果なのか、元から元気がいいのかは知らんが、これは久しぶりの上玉だな」
ドクターが何事か呟いたが、3度目の射精を迎えた今のオレは、なんと言っているのか分からないほど興奮していた。
射精後の気だるさが微塵も感じられないオレは、受けから一転して攻めに転じた。
激しく息をしながら上下に動き続けるドクターの腰を両手でつかむと、一気に腰を上に突き上げる。
「うぐ!?」
ドクターの口から呻き声が漏れる。
構わず突き上げ続けるオレ。
「ぐ、う、ぅぅ、は、激しい、な……うぅ!」
呻きながら、それでもどこか嬉しそうに言うドクター。
オレは荒々しく腰を動かし、ドクターを責め続ける。
下を見ると、萎えていたドクターのペニスが再び鎌首を持ち上げ、先端から先走りを撒き散らしていた。
ドクターの腰に添えていた手を片方離し、揺れるペニスを握る。
そして腰の上下に合わせて、ペニスを扱いた。
「あぁ、いい、すごく、いいぞ! ぐぅ、あぅう!」
ドクターが感じていることをアピールする。
結合部とドクターのペニスの2ヶ所から、グチュグチュといやらしい音が発せられる。
「ぐっ……ううう……もう、限界だ…! だ、出すぞ!!
ぐおおぉぉぉぉ!!!」
扱いていたドクターのペニスから大量の精液が吐き出される。
それはオレの頭を飛び越えるほどの勢いで吐き出され、下にいるオレの上半身を白く染めていった。
と、同時に、射精による括約筋の収縮によって締めつけられたオレのペニスも限界を向かえる。
「ぐああぁぁぁぁ!!!」
部屋に響き渡る大声を上げ、オレは双球に残っていたすべての精液をドクターの中にぶちまけた。
結合部からは、入りきらなかった精液が溢れ出し、オレの股間の周囲を白く染めていた。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ…」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
オレとドクターは、結合したまま肩で息をする。
やがてドクターが息を整えると、結合を解き、オレの上から降りた。
結合が解かれた時、ドクターの肛門からは大量の精液が滴り落ちた。
「……久しぶりに最高の一時を味わえたよ、感謝する。
とりあえず今日はここまでにしよう。
実験の結果もまとめたいしね」
白衣を羽織りながらドクターが言う。
オレはベッドの上で胸を上下させながら、その言葉を聞いていた。
「君は思っていた以上の素材だよ、レルネー君。
君がこの先、私の指示に素直に従い、かつ私を楽しませてくれるようなら、報酬のアップも考えようじゃないか。
どうだね、嬉しいかね?」
「……はい」
「では、私は隣の部屋で結果をまとめてくる」
そう言うと、ドクターは机の上のカルテを手に取り、ドアを開け、出ていった。
ドクターに言われたとおり、報酬アップのことは素直に嬉しかったが、それよりもオレは、実験に付き合うこれからの3日間の方が魅力的に感じた。
今さっき起きたことを、これから3日間繰り返すのだと思うと、それだけでオレの股間は熱くたぎってくる。
実験はまだ始まったばかりだった。