カチャン!

広い空間に乾いた音が響いた。

真っ暗と言っても差支えない、だだっ広い空間に。

その音はまぎれもなく鍵の掛かった音だった。

「……大丈夫そう?」

かたわらの闇色の塊が尋ねてくる。

「……多分、大丈夫。

 でもまだその辺にいるかもしれないから、もうちょっとこうしてようぜ」

聞き耳を立てながら、オレが答える。

「うん。 でも大丈夫かな〜」

「大丈夫だって!」

闇色の塊の不安げな言葉に、オレはいささか語気を強めて答えた。

オレ達は今、小学校の体育館の舞台の上、緞帳の裏にいた。

下校時刻をとっくに周り、周囲が真っ暗になりつつある時間帯に。

聞こえた鍵の音は、警備員が体育館の鍵を掛けた音だ。

鍵を掛けた以上、警備員が鍵が掛かっているかどうかを確かめに来ることはあれど、中を開けてまで調べることはないだろう。

だから、オレの予想では、明日の朝まで体育館のドアが開くことはない。

つまり、明日の朝までの間、ここにはオレとかたわらの闇色の塊しかいないことになる。

「そりゃ、ボクんちもキミんちも家族旅行で家族はいないよ?

 だから帰らなくても大丈夫だけどさ、誰かにここにいることが見つかったらマズいんじゃない?」

「見つかりゃ〜な。 でも、大丈夫だって。

 第一、こんな時間にここにいるのはオレとお前くらいなもんだ」

なおも不安がる闇色の塊に、オレは大丈夫だと言って聞かせる。

それからしばらくの間、オレも闇色の塊も静かに耳を澄ましていた。

やがてもう大丈夫だと判断し、オレは手にしていた小さなランプの電源を入れた。

小さなランプなため、明るさはあまりない。

せいぜい7〜8m先がぼやけて見える程度だ。

この程度の明るさなら、外からも見つからないはず。

「もう大丈夫だな」

オレが闇色の塊だったものに声を掛ける。

ランプの明かりに照らされて、それは黒い毛皮の真ん中に付いた黄色い瞳をパチパチさせていた。

「この明かり、外から見えないよね?」

「大丈夫だって、心配性だな。

って、さっきからオレ、大丈夫しか言ってないぞ」

「そういえばそうだね」

黄色い瞳のそれ、黒猫獣人のオレのクラスメートは、クスクスと忍び笑いをして答えた。

同じ猫獣人でも、虎縞のオレの毛皮とは異なり、黒一色の彼の毛皮は、ランプの明かりに照らされて妖しい光沢を放っていた。

そんな彼を見て、少し鼓動が早くなるのを自分でも感じた。

「でもすごいこと考えたよね。

 こんなところで……なんてさ」

毛皮に見とれていたオレに、彼が話し掛けてきた。

その様子から、どうやら不安な気分は消えたようだ。

『すごい』と言われ、気を良くしたオレは、自慢げに胸を張り、答える。

「だろ? 普通は考えつかないよな。

 夜の体育館でヤるなんてさ」

「だって普段は人がいっぱいな場所だもんね」

「まぁな。 いつもは人がいっぱいな所でヤる、なんて、ちょっと興奮するだろ?」

「う〜ん……まあ、ちょっとは」

同意を求められ、困ったような、恥ずかしがっているような表情を浮かべる彼。

その様子がたまらなくそそるものがある。

見方によっては誘っているようにしか見えないだろう。

そんな彼に、早くもオレの下半身は反応を始めた。

血液がひとところに集まり、膨張していく。

ズボンと下着に押さえ付けられたモノは、痛みすら覚えた。

オレはこの痛みと欲望から解放されたくて、彼の黄色い瞳を見つめる。

彼はオレの真剣な眼差しを受けて、少し驚いた様子だったが、やがて薄っすらと笑みを浮かべ、舞台の中央まで歩いていった。

昼間ならば、体育館のどの場所からも見えるであろうその場所で、彼はゆっくりと衣服を脱いでいった。

1枚脱いでは舞台の上に落とし、を繰り返し、ほどなく彼は全裸になった。

ランプの明かりが届くか届かないかの位置にいるが、彼の股間もピンと立ちあがっているのがぼんやりと確認できる。

オレは飢えた獣のように、ランプを片手にそばに近寄る。

ぼんやりと照らされていた彼の漆黒の体が、次第に輪郭をはっきりさせていく。

オレが彼の目の前まで行くと、彼は何も言わずしゃがみ込み、オレのズボンに手を掛けた。

ボタンを外し、チャックを下ろす。

ランプの薄明かりの下に現れた下着の上を、愛おしむかのように手を這わせる彼は、いつも以上に妖しく見えた。

「先、濡れてるね」

そう指摘し、彼はオレの下着の一点を指で撫で回す。

彼の言うとおり、オレのモノからはヌルヌルとした粘液が溢れ出し、下着にシミを作っていた。

彼はそれを見て妖艶な笑みを浮かべると、下着をズボンごと、膝の辺りまで下げた。

下着を下げられた反動で、モノが勢いよく飛び出し、彼の鼻先をかすめる。

先から溢れた粘液の量からすると、おそらく彼の鼻頭には粘液が付着しただろう。

しかし、彼は気を悪くした様子など微塵も見せず、オレのモノを手に取った。

「いっぱい出てるね」

手の中のモノを見つめながら彼が言う。

限界まで膨張しても半ばまで皮の被ったオレのモノは、先端から溢れ出た粘液でグチャグチャに濡れていた。

彼は少し力を込め、モノを押し込む。

すると、先端を覆っていた皮が反転し、熟れたプラムのような先端が外気に晒された。

しばしソレを見つめたあと、彼はなんの躊躇もなく口に含んだ。

「ん…く…!」

強い快感がモノを中心に全身に走る。

彼は頭を前後に動かしてモノ全体に刺激を与え、口内では舌を動かして先端や裏筋といったポイントをつつくように刺激した。

生温かく、ぬめりけのある彼の口内は、興奮しきっていたオレをあっという間に絶頂へと追い詰めた。

「あっ! もう出る……んんぅ!!」

オレは無意識に彼の頭を両手でつかみ、彼の口内深くにモノを突き刺していた。

モノに彼の頬と舌の温かみを感じながら、もはや自分でも止めようのない快楽に身を任せ、彼の喉に向かって精を解き放つ。

そのたびに、

「!……ん……ん!」

彼は恍惚と苦悶の入り混じった表情を浮かべ、オレの放った精を飲み下していった。

数度にわたる吐精と十数度にわたるモノの脈動が終わり、次第にオレのモノが萎え始めると、彼はゆっくりと口からモノを引き抜いた。

萎え縮み、再び皮で先端を覆ったモノと、彼の引き結んだ口との間に、精と唾液の混じり合った糸が引かれ、ランプの明かりを反射して煌めく。

オレは肩で息をしながら、吐精後の心地よい疲れと余韻を、彼の頭を撫でながら味わっていた。

一方、彼は彼で満足げに舌なめずりし、オレを見上げながら笑みを浮かべていた。

「今日はずいぶんと早かったね。

 ひょっとして溜まってたの?」

「ん、まぁな」

無邪気に聞いてくる彼に少々恥じらいを感じながら、それをごまかすために、オレはその場にしゃがみ込んだ。

そして、さらに身を低くし、彼の股間に向かって手を伸ばす。

股間に達した指先に、硬く、ヌルリとした感触。

「あっ!」

突然の刺激に驚いたのか、彼が声をあげて腰を引く。

「お前も濡れてるな」

口の端をゆがめて彼を見つめる。

彼は恥ずかしそうにうつむき、うなずく。

「よく、見せろよ」

恥ずかしげな彼をもう少し眺めていたいが、興奮が先だったオレは、先をうながす。

彼は恥ずかしげな表情はそのままに、オレにうながされたまま、両手を床につき、自らの腰をオレの方に突き出した。

そこには、オレと同じく、半ばまで皮を被ったモノが、先端から透明な粘液を滴らせ、淫靡な輝きを放っていた。

苦しげにピクンピクンと小刻みに震えるそのモノを、オレは優しく両手でつかむ。

「……!」

硬く、熱い感覚を両掌に感じ、オレは両手で彼のモノを扱き始めた。

両手を上下に動かすたびに、先端を半ばまで覆っていた皮が反転を繰り返し、クチュクチュとしめった音を立てる。

彼は皮が剥け切る瞬間、皮が先端のカサの部分に引っ掛かる瞬間がもっとも感じるのか、そのたびに腰を微動させていた。

しばらくの間、そうして彼の様子とモノの感触を楽しんだあと、オレは片手でモノをつかみ、もう片手の指をモノの先端に当てた。

そして、モノをつかんだ手を上に向かって動かし、彼の皮でもって、彼の先端とオレの指を包み込む。

「んぁ……!」

「好きだろ? コレ」

自分のモノの状態を見て声を上げる彼に、オレは意地悪く笑みを浮かべ、行動を起こした。

モノをつかんだ手でしっかりとモノを固定し、彼の皮の中に埋没した指を、皮の中で乱雑に動かす。

「ひぁぁああ!!」

皮の中の敏感な部分を容赦なく責め立てられ、彼は甲高い嬌声をあげる。

溢れ出た粘液が丁度いい潤滑剤の役割を果たし、指は皮の中を抵抗もなく刺激して回る。

グチャグチャと音を立てて指が皮の中をかき回すと、彼はのたうつように体をくねらせ、声を上げ続けた。

「あ〜! あ〜〜!!」

声は体育館全体に響き、木霊となって跳ね返る。

もし体育館のすぐ外に誰かがいたならば、おそらくその声が聞こえていただろう。

しかし、彼はそんなことはお構いなしに、快楽の波に身をゆだね、声をあげ続け、体をくねらせ続けていた。

時間と共に指の動きを速めていくと、あるところまできたとき、彼の皮の中が大きく膨らんだ。

次の瞬間、

「あ〜〜〜!!!」

ひときわ大きな嬌声と共に、彼は絶頂に達した。

皮の中に差し込んだ指に、温かい精を感じる。

白い精は皮の中に溜まり、やがて彼が次々に吐き出す精に押されて、モノを伝って滴り落ちた。

「はぁ…はぁ…はぁ……」

吐精を終え、ぐったりと床に身を横たえる彼。

オレは彼の皮の中から指を引き抜き、その指に付着した精を舐め取る。

決してうまいとは言えない、なんとも言えない味、それでいて、ひどく興奮をかき立てる味が口内に広がった。

床に横たわったまま、濡れそぼったモノを隠そうともせずに、大きく息をする彼を見て、再びオレの興奮が頂点に達する。

気がつけば、股間のモノはすっかり元の通りに膨張し、先端からは粘液が溢れ始めていた。

オレは、横たわる彼の両足に手を当てると、左右に開かせ、彼のもう1つの秘所に手を当てた。

「あっ! も、もう…?」

「……我慢できない」

驚きの声をあげる彼に、オレは自分でも驚くような低い声で答え、先程舐め取った指で、彼の秘所を広げていった。

時折、自分の粘液や彼のモノから滴る精を指ですくい、秘所に押し当て塗り拡げる。

何度かそんな行動を繰り返すうちに、彼の方もすっかり受け入れる態勢が整ったようで、オレに向かって数度、秘所をひくつかせて見せた。

それを見たオレは、もはやこれ以上ないほどまでに膨張した自らのモノを、彼の秘所に押し当てた。

「入れるぞ……」

「……きて」

彼の答えを合図に、オレはゆっくりと彼の中に進入していった。

まずは先端部分、次にカサの部分、そして竿の部分。

慣らされた彼の秘所は、招き入れるかのようにオレのモノの進入を許した。

「……平気か?」

気遣うオレの言葉に、彼は声もなくうなずき、両手をオレの首の後ろに回した。

それを腰を動かすことの了解と判断したオレは、まずはゆっくりと腰を振り始める。

秘所内部の圧力とぬめり、そして温かさに包まれ、オレはモノがとろけるような感覚を得ていた。

快楽にせかされ、徐々にスピードをあげて腰を振り始めると、彼はオレの首の後ろに回した両手を引きよせ、しがみ付いてきた。

スピードがあがるごとに、彼のしがみ付く力も強まり、また、秘所を締め付ける力も強まる。

「っ! …っ!!」

突かれるたび、彼は歯を食いしばり、快感に耐えていた。

その股間では、再びいきりたったモノが、オレの動きに合わせて、彼の腹の上を暴れ回っていた。

そして、あと少しでオレが絶頂に達するという時、オレの頭に、ふと考えが浮かんだ。

オレが動きを止める。

「…ふぅ…ふぅ…?」

荒い息をしながら、彼が不思議そうな眼差しを向ける。

と、次の瞬間、

「んやぁ!!」

彼が驚きと快楽の声をあげた。

それは、オレが結合したまま、それまで正常位で行っていた体位を、対面座位、そしてそのまま背面座位に変えたためだった。

さらにオレは、彼の体を抱えたまま、体の向きを体育館全体を見渡せる向きに変えた。

「よく見えるだろ?

 昼間はここに同級生や下級生がたくさんいたんだぜ?」

「…………」

「想像してみろよ。

 もし今が昼間だったら、オレ達のこの恥ずかしい姿、みんなに見られてたんだぜ?」

辱しめの言葉を投げ掛けつつ、オレは再び腰を動かし始める。

「こんなに、ココを、大きくして、つながって、大声で、喘いで、汁を、まき散らす、姿を、みんなに、見られて、たんだぜ?」

「……やっ! …ぁ…!」

「恥ず、かしい、よな〜。 普段は、下着、姿、だって、お互いに、見た、ことも、ないん、だもん、な〜」

「やっ…は…はずっ…か…しぃ……!」

言葉攻めは思いのほか効果があったようで、彼は羞恥心に身を震わせている。

そんな彼の姿にさらに興奮を覚えたオレは、腰の動きを速める。

「もし、見られ、たら、なんて、言われ、るんだろう、なっ!!」

「いっ、ひっ、あっ!」

「変態!? スケベ!? 汚い!? きもい!?

 なんて、言われて、なじられ、るん、だろう、なぁっ!!」

「やぁっ…! もう…いわ…ない…でぇ!!」

羞恥心が限界に達したのか、彼は首を横に振りながら、叫ぶように喘いだ。

一方で、オレも限界に達しつつあった。

言葉攻めのせいか、彼の秘所は今までにないほどの締め付けを見せ、オレのモノは爆発寸前だった。

そろそろお互いの限界が近いことを悟ったオレは、彼の暴れるモノをつかみ、上下動に合わせ、勢いよく扱き始める。

言葉攻めが終わったため、彼は再び歯を食いしばって、その快楽に耐えていた。

十数秒、沈黙と、肉と肉とがぶつかりあう音、粘液がこすれる摩擦音が、広い体育館に広がる。

そして、

「んあぁぁぁ! イっ! イくぅ!!」

まず、彼に絶頂が訪れた。

手の中のモノが一瞬膨れ上がる。

それに合わせ、

「イけ! みんなに、見られ、ながら、イっち、まえ!!」

「ああ! ああぁぁぁぁぁ!!!」

絶頂の喘ぎと共に、彼のモノから精が迸った。

精は放物線を描き、舞台から体育館の床に消えていく。

「あぁ、あぁぁ……」

彼の声の終息とともに、吐きだされる精も勢いを殺し、やがて滴る程度の精で打ち止めとなった。

そして彼の絶頂から遅れること数秒、

「うぅ! だ、出すぞ! うっあぁぅううう!!!」

全身の痙攣と同時に、オレは精を彼の内部に解き放った。

ともすれば、1度目よりも多い精が、オレと彼の結合部から滴り、床にこぼれる。

吐精を終え、体から力の抜け切ったオレと彼は、そのまま床の上に崩れ落ちた。

彼の中に進入していたオレのモノも、萎えると同時にズルリと抜け落ちる。

しばらく、2人で吐精後の余韻に浸り、落ちた体力の回復に努めた。

時間にして数分だろうか。

彼が起き上がり、口を開いた。

「キミってさ、結構Sっけあるよね」

「……今頃気付いた?

 でも、興奮しただろ?」

「……うん」

「じゃ、お前はMっけがあるんだな」

「…………かもね。

 それより、こんなにいっぱい出しちゃったけど、掃除どうしよう?」

「ご心配なく。 ティッシュ持ってきてるから、ボックスで」

「……結構、几帳面だね」

 

 

 

 

 

それからオレ達は、日が差し込む時間までの間、夜の体育館で、飽くことなくお互いの体を求め合った。