「フリムしぇんぱ〜い」

焼酎の入ったコップを片手に、ろれつの回らない舌で僕を呼び、白い狼の獣人が擦り寄って、獅子獣人である僕のタテガミをまさぐってくる。

僕はその感触に、一瞬ドキリとする。

「うわっ! ちょっと暑いよ、離れなよ、エルド」

エルドと呼ばれたそいつは、僕の言葉に気を悪くした様子もなく、それどころかよりいっそう僕に体を密着させてきた。

また僕はドキリとして、顔を赤らめる。

「いいじゃないれすか、オレとしぇんぱいの仲なんらし〜。

 別にられも見てるわけじゃないんらし〜」

そう言うと、エルドは手に持っていた焼酎を一気に飲み干す。

「ちょっと飲みすぎだよ、エルド。

 明日も学校なんだから、二日酔いになったら辛いよ?」

「ああ、ああ。 いいっすよ別に〜。

 二日酔いになっらら明日は休んじゃいますからね〜、ケケケ!

 ……それよりも〜。 さっきからしぇんぱい、なんにも飲んれないじゃないれすか〜」

エルドは僕の持っている、焼酎の半分程入ったコップに視線を落とすと、不満そうに呟いた。

「い、いや、僕だってちゃんと飲んでるよ。

 ただ君の飲むペースが早いんだよ」

酒のせいでやたらとすわった目で睨みつけてくるエルドに、僕は慌てて言い訳をする。

実際、僕はそれなりに飲んでおり、エルドの飲むペースは異常に早かった。

床に散らばっているビールだのカクテルだののほとんどはエルドが短時間で空けてしまった。

僕はというと、焼酎をコップで2杯半程飲んでいる。

僕は結構アルコールには強い体質のようで、この程度の量の酒ではまず酔わない。

一方、エルドはあまりアルコールに強くないらしく、コップ1杯の焼酎を飲ませようものなら、すぐに酔ってしまう。

でも僕の狙いはそこにあった。

(……あとちょっとかな?)

そう思い、僕はさりげなく空になったエルドのコップに、半分程焼酎を注ぎ込む。

「おお〜っとっと」

別にこぼれるような量でもないのに、エルドは大袈裟に声を出す。

そして、またそれを一気に飲み干した。

「プハ〜ッ!」

エルドは大きく息をつくと、期待に満ちた視線を送る僕の目を見すえた。

「しぇんぱい……? ひょっとしてオレのこと、酔い潰れさせようとしてません?」

「えっ!?」

その言葉に僕は激しく動揺する。

体がビクンと跳ね、心臓が早鐘を打つ。

「そ、そ、そんなことないよ!」

心中の同様が声にも表れ、声が完全に裏返る。

僕は前からエルドのことが好きだった。

それは「友情」としての「好き」ではなく、「愛情」としての「好き」だった。

男が男を好きになるなんておかしい、と思いつつも、僕はいつもエルドのことを想像して自分を慰めていた。

今日僕は、エルドを酔い潰れさせてから、エルドの体をアレコレとイタズラしようと計画していた。

それをまさかこんな状態のエルドに見破られるなんて思ってもみなかった。

僕は疑うエルドの目を真っ直ぐに見ることができず、視線をそらす。

「……嘘ら〜! ぜっらいにオレを酔い潰れさせようとしてる〜!

 一体、オレを酔い潰れらせて何をしようとらくらんれるんれすか〜?」

そう言ってエルドが顔を近付ける。

僕は視線を元に戻す。

するとそこには、あと20pも顔を近付ければ、キスができるほどの距離までせまったエルドの顔があった。

僕の心臓はいつもの3倍の速さで脈打っていた。

「ほ、本当だって! 酔い潰れらせようなんて思ってないし、何も企んでないよ!」

僕は力一杯否定し、不本意ながらエルドから体を離そうとする。

しかし、エルドは僕の肩をつかむと、それを阻んだ。

エルドが両手でつかんだために、彼の持っていたコップが床の上に落ちる。

「しぇんぱい、オレのこと、好きれしょ?」

「ぅえ!?」

あまりにストレートなエルドの言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げる僕。

「オレのはらか、みらいれすか?」

そう言ってエルドがさらに顔を近付ける。

僕はもうパニック寸前だ。

「いいっすよ。 オレのはらか、しぇんぱいに見せてあげますよ」

エルドはおもむろに立ち上がると、僕の目の前でストリップを始めた。

上着を脱ぐと、程よく筋肉のついた上半身があらわになる。

ゴクリッ

生唾を飲み込む音がはっきりと分かる。

「一気にいきますよ」

そう言うとエルドはベルトを外し、ズボンに手をかけ、それを一気に下ろした。

同時に下着も下ろしたらしく、僕の目の前にだらりと下を向いたエルドのペニスが現れた。

それは完全に剥けきっており、かなりの大きさだった。

「どーっすか? 結構れかいれしょ?」

エルドの言葉にほとんど無意識に僕はうなずく。

そして同じくほとんど無意識にソレに手を伸ばした。

とその時、僕の手をエルドがつかんだ。

「!?」

僕は驚き、ビクンと体を振るわせる。

「らめっすよ、しぇんぱい。

 オレらけはらかなんて不公平れしょ?

 しぇんぱいもはらかになってくらさいよ」

エルドはニヤリと笑うと、僕の手を離し、僕の目の前にしゃがみ込んだ。

そして、僕のベルトに手をかける。

「ちょっと待って、エルド!」

僕は慌てて止めようとするが、時すでに遅く、エルドは僕のベルトを外してズボンと下着に手をかけてしまっていた。

「じゃあ、いきますよ〜。 せ〜のっ!」

掛け声と共にエルドが僕のズボンと下着を引き下げる。

瞬間、あらわになる僕のモノ。

ソレは完全に勃起しており、先端は先走りでぐしょぐしょに濡れていた。

ソレを見て、エルドが面白そうに呟く。

「うわ〜! フリムしぇんぱいって、包茎らっらんれすね〜」

「……!」

僕は恥ずかしさのあまり消え入りそうだった。

エルドの言葉通り、僕のモノは包茎だった。

完全に勃起しているにもかかわらず、亀頭が半分程しか見えていない。

「いやらしいっすね〜、包茎チンポって。

 ちょっと弄ってもいいっすか〜?」

そう言うなり、エルドは僕のペニスを弄り始めた。

先走りで濡れた亀頭の先端を指の腹で擦り、被った皮に塗り広げていく。

「あぁ……」

僕はその刺激だけで体を震わせ、鈴口から先走りを溢れさせてしまう。

「うはっ! しぇんぱい、感度良好っすね〜。

 じゃあ、こうしららろうっすか?」

エルドはそう言うと、僕のペニスを握り、一気に下に引き下ろした。

同時に引き下ろされる僕の皮。

完全に亀頭があらわになり、外気がそこに触れた瞬間、

「あっ!!」

僕は激しく射精していた。

エルドに握られたまま、その手の中で何度も脈打つ僕のペニス。

脈打つたびに先端からは大量の精液が噴き出し、辺りを汚していく。

その様子を見たエルドは一言、

「しぇんぱ〜い……もうイっちゃっらんれすか〜?

 なさけないな〜」

と言って、いまだに萎えない僕のペニスをゆっくりと扱いた。

「うぅ……!」

通常、射精後は刺激されると辛いのだが、今の僕はあまりに興奮しているためか、一向に萎える様子もなく、刺激されてもまったく辛くはない。

それどころか、僕のペニスは再び硬さを増し、さらに刺激を求めているように脈動している。

「うわ〜、元気っすね〜、しぇんぱい。

 イったの今さっきれすよ?」

エルドは驚いたように僕のペニスを見つめ、上下に扱き立てる。

エルドが手を動かすたびに、亀頭と皮とが擦れ、先走りと精液で濡れていることも相まって、いやらしい粘着質の音を立てる。

「……う…ん…ん……!」

僕は歯を食いしばり、押し寄せる快感に耐えていた。

しばらくそうやって僕のペニスを扱いていたエルドだったが、

「あ、そ〜ら」

何かを思いついたのか、手の動きを止めると、体を僕の方に移動させてきた。

エルドは自分の足を、僕の足の下に潜り込ませる。

そしてさらに僕の方に近寄り、僕の体とエルドの体が密着した。

当然、僕のペニスはエルドのペニスに当たる。

よく見るとエルドのペニスはいつの間にか勃起しており、その大きさは僕のモノよりも一回り大きかった。

「な、何をするんだ……?」

これからエルドが何をしようとしているのか、僕には見当がついていたが、一応聞いてみる。

するとエルドは楽しげに、

「こうやって〜、オレのチンポとしぇんぱいのチンポをくっつけて〜……」

と呟き、僕のペニスと自身のペニスを合わせる。

「それで〜、こうやって……扱く!」

エルドはそう言うと、密着した2本のペニスを握り、勢いよく上下に扱き始めた。

「ひあぁぁぁ!?」

「うぉぉぉぉ!!」

僕はその快感に情けない声を上げ、エルドは気持ちよさそうに吠えた。

僕の先走りと精液がエルドのペニスに伝わり、2本のペニスは粘液にまみれる。

グチャ グチャ グチュ……

粘着質な音を立て、2本のペニスは刺激され続ける。

「うぅぅ…ダメだ……僕…もう……!」

「オレもっ…オレも……もう……!」

僕は刺激に耐えられずに喘ぐ。

エルドも同じように、絶頂が近いことを知らせる。

そして、

「ああぁぁあぁぁ!!!」

「んんんんっ!!!」

僕とエルドは同時に果てた。

エルドの手の中で、2本のペニスが激しく脈打ち、先端からおびただしい量の精液を噴き出す。

2人分の精液は、僕達の頭上を越え、僕達の顔といわず胸と言わず、全身を汚していった。

「はぁはぁはぁ……」

「ふぅ…ふぅ……」

降り注ぐ精液の中で、僕達は荒く息をする。

そして僕はそのままペニスにエルドの熱を感じながら、気を失ってしまった。

 

 

翌日、僕が目を覚ますと、そこにエルドの姿はなかった。

僕は慌てて飛び上がり、そこで初めて気付いた。

精液まみれになったはずの僕の体は、服こそ着ていなかったが、きれいに拭かれており、散乱していたビールなどの空き缶は、すべてゴミ箱に片付けられていた。

僕は部屋を見回すと、テーブルの上に紙が置かれているのに気付いた。

僕はそれを手に取り、眺める。

そこにはエルドの字でこう書かれていた。

 

 先輩へ。

 昨日はどうもすいません。

 なんだか酔った勢いでとんでもないことをしちゃったみたいですね。

 あんまり記憶がないんですが、大体のことは憶えてます。

 一応、先輩の体を拭いて、部屋を片付けておきました。

 オレは今日、学校を休みます。

 なので、明日また学校で会いましょう。

 本当にすいませんでした。

 

僕はエルドからの手紙を読み終えると、一息つく。

そして、テーブルの上に置かれていた携帯電話に手を伸ばし、履歴に入っていた番号に電話をかけた。

数回発信音が聞こえ、やがて番号の持ち主が電話に出た。

『……もしもし、エルドですけど……』

すまなそうに答えたその声を聞くと、僕は口元をほころばせ、こう言った。

「今からそっちに行っていい?」