照り付ける日差しは、もはや拷問に等しかった。

吹き付ける風も、暑気を払ってはくれず、むしろ熱風であり、毛皮を焦がす。

炎天下と呼ぶのも生ぬるい炎熱地獄の中を、馬獣人の男は1人ふらふらと歩いていた。

見に付けているのは薄手のボロとマントだけ。

引き締まった精悍な体付きをしてはいるが、その表情には疲労と焦燥の色がありありと浮かんでいた。

ともすれば倒れそうになるほどよた付いた足取りをなんとか支え、彼はひたすらに歩く。

岩と砂が延々と地平の彼方まで続いている、この砂漠を。

行く当てはない。

なぜなら彼は追放されたのだから。

罪状は略取誘拐・監禁・強姦罪。

少年少女をさらい、監禁し、そのうえで犯すこと数十件。

彼の国の法では、性犯罪は大罪であり、彼が科されている追放刑は、性犯罪における最高刑となっていた。

ほとんど着の身着のままで、わずかな水と食料だけを与えられて、どことも知れぬ土地に放逐される。

彼のように、もっとも過酷な環境であろう砂漠地帯に放り出されることは、死刑にも等しい。

彼自身にもそれは分かっており、こうして彷徨い歩いているのは、もはや本能に近かった。

水も食料も尽き、涼をとれるような日陰もない。

地獄のようなこの状況で、彼は思う。

(自業自得か……せめて死ぬ前にもう1度……)

彼は罪を犯しているという意識はあったが、それを悪いとは思わなかった。

ゆえに、こうなったことの責が自分にあると分かっていても、それを反省をする気はさらさらなかった。

おそらく、目の前に少年少女が現れれば、最後の晩餐とでもいうように飛び付いただろう。

彼は空想の少年少女を目の前に思い浮かべ、それを見ながら自嘲気味に笑うと、よろよろと歩を進めた。

しかし、当然ながら現実の目前の光景には少年少女など存在するはずもなく、あるのはただ砂の海。

少し先に見える、たかだか10m程の砂丘でさえ、今の彼にとっては登り難い岩壁のように見えた。

さほど傾斜の急ではない砂丘を、彼は前のめりになりながら上る。

何度か倒れつつ、砂丘を上り切ると、彼は天を仰いだ。

空は抜けるような青で、雲1つない。

ジリジリと照り付ける日差しは、容赦なく彼の体を焼いた。

すでに汗すら流れることなく、流れ出た汗は塩の結晶となっており、それらは彼の体の水分が枯渇していることを示していた。

彼は大きく息をつき、顔を前に向ける。

すると、砂丘を下った先に、大きめの岩が1つあるのを見つけた。

(日陰……)

朦朧としつつ、彼は涼を求めて砂丘を下りた。

正確には、下りたのではなく、転がり落ちたというべきだろう。

上りとは比べ物にならないほどの速さで砂丘を転がり落ちると、彼は力なく立ち上がり、岩に向かって歩いた。

岩の近くまで進むと、歪み始めた視界に、岩の切れ目が映った。

逆光になっている為によくは分からないが、切れ目の先は暗く、まるで洞窟になっているかのように見えた。

岩によって日差しが遮られ、照り付ける日差しの痛みが消える。

そのまま倒れてしまいたいところだったが、彼は引き寄せられるようにして切れ目に進んだ。

切れ目の合間は暗く、涼しかった。

得られた涼にホッと一息をつくと、男はさらに切れ目を先に進む。

すると、突然、視界が白く輝いた。

「!?」

あまりの眩しさに、彼は目を閉ざす。

同時に声を上げようとしたが、それはひり付いた喉のせいでできなかった。

まぶたの先の白い光が消えると、彼はゆっくりと目を開く。

「っ!?」

目の前に広がった光景を見て、彼は目を見張った。

緑の植物が生い茂り、それに囲まれるようにして泉が広がっていた。

(夢か……?)

とも思ったが、焼け付いた喉の痛みは、それが現実であることを知らせてくれた。

後ろを振り向けば、確かにそこには岩がそびえるようにあり、通ってきた切れ目もそこに存在していた。

不可思議な現象に巡り合いはしたが、今の彼にはその現象を深く考察するほどの余裕はなかった。

「……っ!」

(水だ!)

思ったことを口にしようとしたが、それは言葉にはならず、しかし体は思いに反応して動いていた。

よた付いた足取りながらも、確実に泉に近付き、泉の目の前まで来ると、水際に倒れ込むようにして顔を突っ込んだ。

喉を鳴らして、澄んだ水を思う様に飲み込む。

焼けた喉が一気に冷え、胃に冷たい感覚が広がる。

無味であるはずの水は、甘やかな香りの美酒のようにも感じ、それは形容ではなく命の水のように思われた。

「ぶはぁ!!」

泉から顔を上げ、彼は息を吐く。

そして、

「ははははははっ!!」

彼は心の底から笑った。

助かったという、安堵の笑いだった。

再び水に顔を沈め、腹が膨れるほど水を飲み、息をついて笑う。

人心地がついたところで、彼は周囲を見回した。

泉は50m程の広さで、中央には大きな岩があった。

それを取り囲む植物はナツメヤシが目に付き、それらの根元には乾燥に強いのだろうと思われる草や、見たことのない花を付けた背の低い木が緑の茂みを形成していた。

それら植物の向こう側は、見える範囲ではすべて砂の海だった。

「オアシス……か」

ようやく満足に動くようになった喉でもって、彼は呟いた。

とりあえず助かるには助かったが、それで事態すべてが好転したわけではないようだった。

彼はしばらく周囲を見回していたが、照り付ける日差しに気付き、また、体が汗と熱気による不快感で覆われていたこともあって、彼は着ていた物をすべて脱ぎ捨てて泉に飛び込んだ。

(あとのことはあとで考えればいいか…………とりあえず今は……)

思考を放り投げ、彼は泉に身を浸した。

冷たい水が肌に気持ちよく、ベトついた肌をサラサラと流し、火照った肌を潤してくれた。

そうして水に浮き沈みを繰り返し、体も冷めたところで、彼は泉からあがる。

誰の目もないので、全裸のまま、オアシスの内周をグルリと回った。

その最中、腹の虫がグゥと鳴る。

水分は補給できたが、腹の方は不満そうだ。

ナツメヤシを見上げれば、その果実がたわわに実っている。

ささくれた幹は、手がかり足がかりになるので登るのは苦もないだろう。

比較的背の低いナツメヤシの木に登り、赤黒く熟したように見える実をいくつか取って下りる。

柔らかい実を口に含むと、トロっとした果肉が口の中で弾け、芳醇な甘味が広がった。

中の種を吐き出し、もう1つを口に含む。

そうして取った分がなくなると再び木に登り、今度は取った実を満足いくまで下の砂地に放り投げた。

砂地の上に実の絨毯ができると木から下り、腹が満足するまで実を食べ続けた。

おくびが出るまで食べると、満足してその場に横になる。

オアシスだけあって、砂だらけの場所よりもずっと涼しい。

ただ、日差しは相変わらずの強さなので、彼はのそのそと這いずるように木陰に逃げ込んだ。

そして、これから先どうしようか、などと考えているうちに睡魔に襲われ、いつしか彼は眠りに落ちていた。

 

 

目を覚ますと、陽はまだ高かった。

眠っていたのは1時間程度だろう。

彼は上体を起こし、大きく伸びをし、しばらく物思いにふける

少し前までは考えられなかった今の状況に、彼は安堵の息を吐くと共に、口元を緩めた。

助かったと手放しに喜ぶことはできないが、このオアシスでなら、水と食料に困ることはなく、死なずには済むだろう。

ただ、欲を言えば、人里に戻りたいというのが、彼の願いだった。

その理由は、今の彼の下半身がよく表していた。

(ヤりたいなぁ)

心の中で呟き、彼は自身の下半身の1点を見つめる。

そこには、肥大したペニスがそそり立ち、ピクピクと震えていた。

それを見た瞬間、脳裏にこれまで犯してきた少年少女達の幻影が浮かぶ。

ある者は恐怖にひきつり、ある者は泣きわめき、またある者は嬉々として彼に抱かれた。

そんな被害者達を思い浮かべながら、彼は自らのペニスに手を伸ばした。

緩く握り、優しく扱くと、快感が背骨を走って彼の体を震わせた。

少しの間、彼は脳裏で幻影の少年少女達と戯れる。

そして、程良く快感の波が全身を包んだところで彼は動きを止めた。

(時間はたっぷりあるんだから)

そう思い、彼は立ち上がると、粘液の溢れ始めたペニスを揺らしながら泉へと向かった。

水際でひざまずいて喉を湿らせ、少し汗ばんだ体を泉に浸す。

そのまま浮力に身をまかせ、泉に仰向けに浮かんで空を眺めていると、再び幻影の少年少女達が彼の脳裏を訪れた。

彼等の誘いに乗るがまま、彼は再びペニスに手を伸ばす。

その時。

「誰だい?」

彼は声を聞いた。

慌てて体を起こし、かろうじて届く泉の底に足を付けると、辺りを見回した。

ぐるりと1周オアシスを見回すと、声の主は、彼が最初に立った場所、岩の切れ目の所に立っていた。

歳の頃は12前後の人の少年。

肌の色は褐色で、短めの髪と眉の色は肌の褐色に良く似合う黒。

目付きは鋭く、ややもすると悪いと形容されかねないほどの鋭さだったが、その顔立ちは美少年と形容するのがふさわしいだろう。

この年頃の少年らしい無駄のない肉付きがされた肢体は均整が取れ、さながら芸術品のようにも見えた。

そんな少年が、無表情のまま、口を開く。

「お前は誰だって聞いてる」

艶やかな赤い唇から出てきた声は、まだ声変わりをしていない少年特有の声だったが、その言葉には棘があった。

どうみても歳上の彼をお前呼ばわりするとは、いかにも礼儀を知らない少年らしい。

しかし、普通ならイラつくところではあるが、彼は今それどころではなかった。

その原因は、少年の姿。

腰に手を当てて、やたらと見下したように彼を見る少年は、身に何も纏っていなかった。

よくよく目を凝らせば、少年の後ろ、岩場の切れ目のそばに、少年が身に付けていたと思しき布が落ちている。

だが、彼にとってはそんなことは瑣末なことで、問題は少年が今全裸で、まったくの無防備に彼の前に立っているという事実だった。

ほとんど本能的に少年の股間を注視すれば、陰毛の生えていないツルリとしたペニスはやや先端が覗き、その下には形の良い1対の球が、褐色の袋に包まれてぶら下がっている。

彼の嗜好にとても合った美しい顔立ちに体付きは、それだけでも彼の劣情を催させるのに充分だというのに、加えて全裸で、しかも陰部の形状までが彼の好みに合致したとなっては、彼の理性は正常ではいられなかった。

「答えろ」

ぼうっとして少年の体を凝視していると、若干イラついたように少年が語気を荒げた。

ハッとして少年と視線を交わす。

どこか超然とした少年の瞳は、こちらの心を見透かすように感じ、また、どこか威厳と気品を漂わせる少年の纏った雰囲気には、抗い難いものを感じた。

まるでこの世の物ではないような、そんな浮世離れした感覚を、彼はこの少年から感じ取っていた。

「え……っと、俺は、その……」

雰囲気に気押されるように、彼は口ごもり、視線をそらす。

少年はじっと彼を見つめ、次の句を告げようとはしない。

彼はチラチラと少年を見るが、少年は無表情のまま、静かに彼を見ていた。

「あ〜、俺の名前は――」

「名前なんてどうでもいいよ」

名を告げようとしていた彼に対し、少年の言葉は冷たかった。

彼が戸惑っていると、少年は泉の淵に投げ捨てられているボロを見つめた。

少し顔をしかめ、少年は続ける。

「だいたい分かったからもういい。

 それにしても困ったものだね。

 ここは僕のプライベートなオアシスだっていうのに。

 まったくもって迷惑なことだな」

「えっ? あ、ごめんよ」

それが自分に向けられた悪態だということに気付いた彼は、少年に謝る。

少年は彼を一瞥すると、泉に向かって歩き出した。

そして、そのまま泉に足を踏み入れ、ゆっくりと彼の方に向かって進んでくる。

徐々に近付いてくる少年を見つめ、彼は心拍数が上がってくるのを感じていた。

喉を鳴らして生唾を飲み込み、近付いてくる少年から目をそらす。

すると、そんな彼の様子を見て、少年が悪戯っぽく目を細め、笑みを浮かべた。

手を伸ばせば届く距離まで少年が近付くと、彼は再び少年に視線を向け、その顔が笑んでいることを知る。

目の前まで来た少年を見ていると、彼は押し倒し、犯してしまいたい衝動に駆られた。

それはこれまでに培われてきた彼の本能ともいうべき衝動で、今のこの状況からすれば、即座に実行に移してもおかしくないほど強い衝動だった。

しかし、目の前の少年には、どこかそれを阻害する雰囲気が漂っており、それが皮一枚のところで彼をそうさせずにいた。

そんな彼の心の内を見透かすかのように少年は目を細めた。

「そんなに僕に悪戯したいのかい?」

言葉とは裏腹に、むしろ自身の声音こそが悪戯っぽく、少年は彼に問い掛けた。

彼はドキリと心臓が跳び上がるのを感じつつ、予想もしていなかった少年の言葉に目を見張った。

「そういうわけじゃ……」

(あるけど)

言葉の続きを思い、彼は少年を正面から見据える。

少年は悪戯っぽい笑みを浮かべたまま、彼を見つめていた。

そして、ふと少年の視線が下を向いた。

「僕には嘘は通じないよ」

言って、少年はくすりと笑う。

彼が視線を落とせば、そこには透明度の高い水に包まれて揺らめく、勃起した彼のペニスがあった。

「あっ! いや、これは――」

思わず声を上げ、何か言い繕うとするが、それよりも早く、

「来なよ」

少年が言い、来た方へと引き返してしまった。

遠ざかっていく少年の後ろ姿を見つめ、我に返った彼はそのあとを追う。

少年が泉から上がると、その褐色の肌を水が滴り落ちた。

それは日差しを受けてキラキラと煌めき、少年の裸体をいっそう美しく彩る。

そんな少年の裸体に、彼の理性は限界にまで達していた。

すでに水から顔を出したペニスの先端からは、水ではなく粘液の滴が糸を引き、臨戦態勢であることを告げている。

痛いほどにヒクつくペニスも、もはや衝動に抗い難いところにまで達していた。

彼が泉から上がると、少し先の砂地まで歩いていた少年が顔だけで振り向く。

そして、彼の股間を見て、鼻で笑った。

そのすぐあと、少年が体を彼の方を向けた瞬間、彼の理性が吹き飛んだ。

彼は少年に向かって走り、両手を広げて少年を掴もうとした。

その刹那、少年がニヤリと笑ったのを、彼は両の目でとらえていた。

ふっと少年の姿がかき消える。

「!?」

突然のことに彼が動揺していると、足元に弱い衝撃、直後に体を浮遊感が襲った。

「っ!?」

悲鳴も上げられずに視界が回転する。

かと思うと、背中に衝撃が走った。

一瞬呼吸が止まるが、大きく息を吸い込むと、状況が判別できた。

彼は少年に足を掛けられ、転ばされたのだ。

勢い余って空中で1回転し、背中から地面に叩き付けられた。

視線を上げれば、少年が彼を見下ろしていた。

逆光でシルエットになっており、その表情は分からない。

「駄目駄目。

 お前に襲わせるほど、僕の体は安くないよ。

 でも、少しだけはお前の願望をかなえてあげるよ。

 お前の幸運に免じてね」

「……幸運?」

「そう、幸運。

 僕は滅多に人と接しないんだ」

「いったい、何を――」

そう尋ねようとすると、少年は彼の下半身の方へと回り込んだ。

彼が少年の意図を察せずにいるままに上体を起こそうとすると、少年は足を浮かせた。

そして、浮かせた足を彼の股間にゆっくりと乗せる。

「あっ!」

彼は小さく声を上げた。

それは痛みからではなく、快感から出たものだった。

少年を見上げれば、少年はせせら笑いを浮かべていた。

少年はそのまま足を動かした。

上下に、左右に、円を描くように。

「あっ! うぅ!」

少年の小さな足に股間を蹂躙され、彼は声を上げる。

溢れた粘液が少年の足を濡らし、ヌラヌラと光る粘液は潤滑油となって、さらに少年の足の動きを彼の股間に伝えた。

そのたびに彼のペニスは粘液を吐き出し、快楽の循環を作り出す。

いまや、彼のペニスは、泉に水によるものか、それとも彼自身の粘液によるものか分からないほどに濡れそぼっていた。

少年の足が強くペニスの根元を叩けば、その深部に快楽を感じ、少年の足の指先が亀頭の裏筋をなぞれば、鋭い快楽がペニスを走り抜ける。

少年の足の動きに翻弄されるように、彼は声を漏らし続け、そんな彼を少年は無言で笑みを浮かべたまま見下ろしていた。

彼は今、不思議な快楽に飲まれていた。

彼はこれまで、自身が主導権を握って少年少女を犯してきた。

それが彼にとって何よりの喜びであったし、その優越感から来る精神的快楽は、肉体的快楽に匹敵するほど強いものだった。

しかし、今は立場がまるで逆になっている。

彼は自分の半分も生きていないだろう少年によって蹂躙され、喘がされている。

かつての彼ならば、それは屈辱と考えていたことだろう。

だが、彼は今、肉体的快楽のみならず、精神的快楽をも同時に得ていた。

屈辱的な行為を受けているにも関わらず、それを屈辱と感じていない自分がいることに、彼は気付いた。

少年されるままに、彼は少年から与えられる快楽を享受していた。

ともすれば、涙すら溢れそうな快感を与えられ、彼は潤んだ目で少年を見上げた。

と、少年の笑みに魔が差す。

すぐさま少年は彼の股間から足をどけた。

「あ……」

物惜しげに彼は声を漏らした。

その様子を鼻で笑って、少年は腰を少し前に突き出す。

「さあ」

それだけを言い、少年は彼の行動を待った。

彼は、少年のその言葉だけで、すべてを察した。

のそりと起き上がり、少年の前にひざまずくと、垂れ下がった少年のペニスにそっと手を添わせる。

形の良いペニスは温かく、柔らかかった。

彼は愛おしげにペニスに頬を擦り付けると、竿を片手でつまみ、口の中に放り込んだ。

少年の香りが鼻から抜ける。

舌を使って少年の包皮を向くと、現れたつるりとした亀頭に舌を這わせた。

普通の少年なら、敏感な亀頭に刺激を与えられた瞬間に腰を引いたり、声を上げたりするものだが、この少年はそんな素振りは一切見せなかった。

それどころか、傲然と笑みを浮かべて彼を見下ろしている。

それは、その程度では気持ちよくはないと言っているようにも見え、彼はさらに少年のペニスを愛撫した。

毛の生えていないペニスは舌に心地良く、下の袋の手触りも滑らかだった。

その感触を舌で、指先で感じるだけで、彼自身のペニスは反応し、粘液を滴らせる。

少年はそれを目ざとく見つけ、足先で彼のペニスをつついた。

「んふぅっ……!」

思いもよらなかった刺激に、少年のペニスを口に含みつつ、彼は声を漏らした。

そうして、愛撫し、愛撫されを続けていると、少年のペニスが硬さを帯び始めた。

彼の口の中で大きくなっていく少年のペニスに、彼は夢中になってしゃぶりついた。

硬さと大きさを増したおかげで愛撫しやすくなったペニスの熱を感じながら、彼は子供がアイスキャンディを舐めるかのように少年のペニスをねぶる。

舌先でもって竿の根元から裏筋までを舐め上げ、剥け切った亀頭の回りを、そしてその先端を割り裂く。

竿を吐き出し、横笛を咥えるようにして上下の唇で竿を掴み、頭を左右に振ると、視線の先で包皮が亀頭の上を滑り、包皮が亀頭に剥けては被るを繰り返した。

時折、竿を掴んで上下に扱きながら、下で揺れる袋と睾丸にも舌を這わせる。

持ち上げるように、引っ張るように、転がすように。

じっくりと時間を掛けて、少年のペニスを味わい尽くすように愛撫すると、少年の亀頭の先端から粘液が一滴、溢れた。

それを舌ですくい取り、そのまま咥え込む。

「そろそろ出させてほしいね」

少年が上から言い、つま先で彼の亀頭を撫で回した。

亀頭の先で少年の体温を感じながら、彼は無言で少年の要求に従った。

竿を咥えたまま、口をすぼめ、頭を前後に振る。

息を吸い込むように頬を内側に引き付け、頬肉の内側で少年の竿を挟み、舌全体で竿を刺激すると、少年はさらに粘液を溢れさせた。

頭上から、小さな吐息が聞こえてくる。

彼は少年が快楽に耐えていることを察知し、よりいっそう頭の動きと頬の締め付けを激しく強くした。

そうしてしばらく。

彼の首と顎が疲れ始めた頃、少年が彼の頭頂部を掴んだ。

それは、彼自身が絶頂に達しそうになる寸前に、彼が犯した少年少女達に対してした行動だった。

少年の行動を自身の行動に重ね、彼は最後の勢いで少年を愛撫した。

数秒後。

「っ……!!」

少年が声を殺して呻き、一拍置いて、彼の口内で少年の精が弾けた。

口を、鼻を、少年の精の匂いが抜ける。

と同時に、少年が力強く彼の亀頭と裏筋をつま先で掻いた。

「おごぅ!!」

彼は少年の脈打つペニスを咥えたまま、絶頂に達した。

少年の脈打ちに合い打つように、彼のペニスも脈打ち、精を迸らせる。

少年の放った精は彼の口に飲み込まれ、彼の放った精は少年の足に降り掛かる。

やがて少年の精をすべて飲み下すと、彼は少年のペニスから口を離した。

「ふぅ〜」

少年は大きく息を吐いた。

しぼみ始めた少年のペニスは、少年自身の精と、彼の唾液とでヌラヌラと妖しく光っている。

彼のペニスもまた、自身の粘液と精とによって、ネットリと濡れていた。

肩で息をする彼に向かって、少年は言った。

「気持ちよかったかい?

 とりあえず、今のと、次のでお前の幸運はおしまい」

「……え?」

少年の言葉の意味が分からず、彼は少年を見上げて聞き返す。

しかし、少年は笑みを浮かべたまま、彼の疑問には答えず、言葉を継ぐ。

「ソドムという街を知ってるかい?

 背徳の街の悪名を持つ街なんだけど」

「いや、知らないけど……」

聞き覚えのない単語に、彼は首を傾げて答えた。

少年は大して気にした様子もなく続ける。

「そう、まぁいいけどね。

 そこにお前を送ってあげるよ。

 そこならお前も満足できるだろうし、何よりお前にふさわしいだろうからね」

言い終えると、少年の指先が光り、宙に何やら紋様を描き始めた。

「あ、ちょっと待って!

 ソドムっていったい――」

彼が聞きかけるが、少年はそれを遮る。

「そのままの格好で行っても問題ない所だよ。

 まぁ、行けば分かるけどね。

 お前のような追放者も受け入れてくれる、懐の深い街さ」

「なっ、何でそのことを……」

なぜ追放されたことが知れたのか、彼は狼狽したが、少年は相変わらず悪戯っぽい笑みを浮かべたままで、これには答えなかった。

「今度は追放されないようにね。

 じゃ、これでお前の僕に出会えた幸運はおしまい。

 せいぜい元気でね」

「ちょっと、ま――」

言い掛けて、彼の視界が白く輝いた。

砂漠の中、あの岩の切れ目を通った時と同じ、白い光。

あの時と同じように目を閉じ、白い光が消えると目を開けた。

すると、目の前には少年の姿はなく、オアシスの風景もなかった。

変わりに周囲には森が広がっており、彼はその木立ちの合間に生えた茂みの中にいた。

立ち上がって前方を見れば、森はすぐの所で途切れ、その少し脇に石畳が伸びているのが見えた。

さらにその先には、高い城壁が見える。

あの城壁の向こうが、少年の言ったソドムという街なのだろうか。

そう思った瞬間、ふと、彼の脳裏に少年の姿がよみがえった。

(……あの子はいったい、何だったんだろう?)

どこか威厳と気品を感じた、不思議な空気を纏った少年。

あの少年はいったい何者だったのか、彼は考えたが、いつまで考えても答えは導き出せなかった。

少年との行為はつい先程のことだというのに、彼にはその行為が、それどころか少年の存在自体が、まるで夢の中の出来事のように感じられていた。

しかし、彼は今、こうして砂漠でない場所に、裸で佇んでいる。

それは何よりも現実で、少年が幻でないことを告げていた。

「…………行こう」

彼は、半ば夢見心地のまま、何かに憑かれたかのように森を出、石畳を城壁に向かって歩き始めた。