「ぷぅ……」
息を吐いて、ジムに備え付けられていたトレーニング器具から降りる。
毛皮の下を流れる汗が心地よい。
手近な器具に掛けておいたタオルを手に取り、濡れた黒い毛皮をぬぐいながら、辺りを見回す。
ジムにしてはさほど広くない室内に、人の姿はすでになく、動くのは部屋の壁一面に張られ鏡に映る、見慣れた黒い熊の姿だけ。
窓の外は真っ暗で、壁の時計を見れば、時間は22時を指していた。
普段のこの時間帯なら、たいがい俺の他に2・3人は利用者がいるのだが、20分程前から今日は俺1人だけだった。
ジムの閉まる時間は23時。
あと1時間はあるので、もう少しトレーニングにいそしんでもいいのだが、少々オーバーワーク気味だったので、ここらへんでやめておくことにした。
(シャワーでも浴びて帰るかな)
そう思いながら、毛皮をタオルで拭きつつシャワー室へと歩を向けた。
荷物を置いてある脱衣所兼ロッカールームに辿り着くと、ロッカーの鍵を開け、中から鞄を取り出し、さらに中からビニール袋を取り出す。
そして、俺はロッカールーム内をぐるりと見回した。
人の姿はない。
それを確認し、俺は汗ですっかり重くなったトレーニングウェアを脱いだ。
正直なところ、俺は他人に裸体を見られるのが苦手だ。
特にこれといったコンプレックスがあるわけではないのだが、どうにも恥ずかしさを感じる。
上半身だけならまだしも、下半身を晒すなどとんでもないことだった。
実際、ジムでシャワーを浴びる時も、できるだけ人のいない時を狙うし、それができなければ下半身をタオルで隠すなり、体を斜にするなりして、決して見られないようにする
だから、こうして誰もいないと非常に気が楽だ。
そんな気分で脱いだトレーニングウェアをビニール袋に入れ、袋の口を縛って鞄に入れるとロッカーに戻した。
タオルはそのまま首に掛け、ロッカーの鍵を掛けるとシャワー室へと向かった。
そして、なんの躊躇もなく、もちろん下半身を隠すこともなくシャワー室のドアを開ける。
と、その瞬間、
「!?」
俺はシャワー室の入口で立ち尽くした。
誰もいないと踏んでいたシャワー室に人がいたのだ。
いたのは、俺の20分程前にトレーニング室を出ていった中年くらいの馬獣人。
中年とは思えないくらいに筋骨発達したその馬獣人は、鼻歌交じりにシャワーを浴びていた。
(なんで!? 20分も前に出ていったのに!)
混乱する俺をよそに、馬獣人は鼻歌を続けている。
少しして俺の気配に気付いたのか、馬獣人がこちらを振り返る。
それとほとんど同時に、俺は慌てて前をタオルで隠した。
「?」
馬獣人は小首を傾げると、すぐに顔を前に戻し、体を洗うのを再開した。
(み、見られて……ないよな?)
心臓をドキドキさせながら、俺は中へと進む。
シャワー室も、ジムの室内同様、それほど広くはない。
シャワーが3器、壁に備え付けられているだけで、それ以外には何もない。
シャワーとシャワーの間に目隠しするようなものすらない、シンプル過ぎる造りだ。
馬獣人が真ん中のシャワーを使っていたので、俺はその右側を使うことにした。
こういった場合、マナーとしては端のシャワーから埋めていくものだと思うのだが、どうやらそういった気遣いは馬獣人にはなかったようだ。
やや体を斜にして、馬獣人に前が見えないようにしながら、シャワーのコックをひねった。
熱いお湯が頭から降り注ぎ、汗を流していく。
(早く出よう)
そう思い、俺は急いで体を洗い始めた。
といっても、シャンプーも何も持ってきていないので、毛皮を指でとかすだけなのだが。
隣の馬獣人の鼻歌を聞きながら、前を見られないようにして体を洗うことしばし。
ようやく落ち着いてきたところで、ふいに馬獣人から声が掛かった。
「よう、兄ちゃん」
「は、はい?」
突然掛けられた声に、声が上ずる。
少し顔を向ければ、馬獣人は人懐っこい笑みを浮かべてこちらを見ていた。
無意識に腰をひねって、前が見えないようにガードする俺。
「結構、いい体してんな!
いっつもここに通ってんのかい?」
「は、はあ……まぁ……」
馬獣人の質問に、俺は曖昧に答えを返した。
できるかぎり構って欲しくはない。
普通に服を着ている時ならまったく問題ないが、今この裸という状況では困る。
しかし、俺の意など知らぬ気に、馬獣人はベラベラとよくしゃべる。
やくたいもない話ばかりなのだが、話し掛けられている以上、無視するわけにもいかず、話の腰を折ってシャワー室を出ていくのも気が引けた。
そうしてしばらくの間、半ば一方的な会話が続いたあと、馬獣人がふと気付いたように、俺に質問を投げ掛けてきた。
「なあ、兄ちゃん。
あんた、何でさっきから体向こうに向けてんだい?」
「え!?」
馬獣人の質問に、俺は心臓が飛び出るのではないかと思うほど驚いた。
それは一番触れてほしくないことだった。
「あ……いや別に……」
なんとかごまかそうとしても、咄嗟にいい言葉が出てこない。
「ひょっとして、恥ずかしいとかか?」
「…………」
図星をついてくる馬獣人に、俺は沈黙してしまった。
そんな俺を見て、馬獣人が声を上げて笑う。
「何でぇ、図星か。
別に粗末なモノ持ってるわけじゃねぇだろ?
さっき見ちまったけど、結構立派だったじゃねぇか」
「え!? 見た……んですか!?」
「おう、しっかり拝んじまったぜ」
動揺する俺を見て、馬獣人はさらに笑った。
見られた事実を知らされ、俺は体が芯から熱くなるのを感じた。
毛皮の下は、おそらく真っ赤になっているだろう。
馬獣人は、羞恥に動揺する俺など構う素振りも見せずに続ける。
「な〜に恥ずかしがってんだ、男同士。
ほれ、見ろ俺のを!」
言って、馬獣人は自らの腰に手を当て、俺の方へと突き出した。
「――ッ!!」
否応なしに目に飛び込んでくる馬獣人の股間部。
俺のモノと同じくらいの長さと太さの竿は、同じく同じくらいの大きさの玉と共にダラリと垂れ下がっており、グロテスクとも感じられるほどに血管を浮き出たせていた。
皮の剥け切った亀頭部は大きくエラを張り、全体が黒ずんだそれは、間違いなく名刀と比喩されるモノだろう。
「どうだ、なかなか立派だろうが!」
「え……? あ……ぅ」
言って笑う馬獣人に、言葉に詰まる俺。
たしかにアダルトビデオに出演する男優の持ちモノのような立派さがあり、男の俺でさえ一瞬見とれてしまった。
と同時に、悔しさにも似た恥ずかしさも感じた。
同じ露茎で同じような大きさでありながら、俺のモノはピンクと赤の中間のような、世間で言う『未使用』のような色を呈しており――実際未使用だが――、一方で黒ずんだ馬獣人のモノは使い込まれた感があり、それが俺のモノとは決定的に違った。
ちょっとしたショックを受けている俺を見ながら、馬獣人はひとしきり笑ったあと、突然、俺の腕を掴んだ。
「なっ――」
驚きの声を上げるいとまも有らばこそ。
馬獣人はすごい力で俺の体を反転させてしまった。
完全に馬獣人の目の前に晒されてしまった俺の裸体。
「ッ!!!」
恥ずかしさのあまり、俺は声にならない悲鳴を上げた。
「ほら、あんたのだって立派なモンじゃねぇか!
しっかり剥けたこんな立派なちんぽで恥ずかしがってちゃ、これよりちっせぇ奴に失礼ってもんだぜ」
どんな理屈か分からないが、言うが早いか、馬獣人は俺の股間を鷲掴みにした。
「はぅ!?」
予想だにしなかった衝撃に、俺は反射的に腰を引いてしまった。
しかし、しっかりと掴まれた俺の竿と玉は、未だに馬獣人の掌の中。
「おう、いい握り心地だぜ!」
言いながら、馬獣人は掌の中で俺の竿と玉を弄り回し始めた。
その刺激に、逆に俺は冷静を取り戻し始める。
「や、や、やめてください!!」
俺は声を荒げて馬獣人を突き飛ばした。
「おっ! とっと……」
馬獣人はたたらを踏むものの踏みとどまり、驚いたように俺を見る。
少々不満そうな顔をあらわにした馬獣人は、面白くもなさそうに言った。
「何でぇ、減るもんじゃあるまいし。
ちょっとくれぇいいじゃねぇか」
「よくないです!
だいたい、男の人に触られて嬉しいはずないでしょう!!」
さらに声を荒げて言うと、馬獣人は鼻息を荒く吐き出し、肩をすくめる。
と、不意にその顔にいやらしい色が差した。
「そう言ってるわりにゃあ、な〜んかデカくなってねぇか?」
ニヤニヤと笑いながらの馬獣人の指摘に、俺は視線を下に落とした。
「!!!」
馬獣人の言葉通り、俺の竿は、わずかではあるが、しかし確実に上を向き始めていた。
「こ、これは……!」
慌てて取り繕おうとするが、うまく言葉が出ず、俺は咄嗟に後ろを向いてごまかそうとした。
しかし、いやらしく笑う馬獣人は、そんなことでは引いてはくれなかった。
「若ぇから元気があり余ってんじゃねぇか、兄ちゃん?」
言いながら背後に忍び寄ってくる馬獣人。
「そ、そういうわけじゃ……」
否定しようとするも、勃起しかけの竿は、もはや床と水平にまでなりつつあった。
「溜まっちまってんだろ?」
息が掛かるほどまで近付いてきた馬獣人が言う。
「ッ!!」
身の危険を感じた俺は、慌ててシャワー室から出ようと身をひるがえした。
が、
「おっと!」
馬獣人が手を広げ、逃走経路を塞ぐ。
それどころか、俺は馬獣人に背後から抱きつかれるように引き寄せられてしまった。
「ちょっ! は、離して……!」
叫びながら暴れるものの、馬獣人の力は凄まじく、身動き一つ取れない。
「暴れんなよ」
俺の顔を覗き込みながら囁き、馬獣人は再び俺の股間を、というより、玉を握り込んだ。
「あっ!」
やわやわと揉まれる玉の感触に、俺は抵抗を弱める。
「あんまり暴れると、うっかり潰しちまうかもしれねぇぜ?」
「…………」
脅しを含んだ囁きに、俺はついに抵抗をやめた。
「よ〜し、いい子だ。
それに、そろそろ慣れてきたみてぇじゃねぇか」
「……え?」
意味の分からない言葉に、俺は聞き返す。
馬獣人は玉を揉み続けながらニヤリと笑うと、
「見られることにだよ。
ここまでされちまえば、見られることなんて、そう恥ずかしくなくなっちまったんじゃねぇのか?」
と、答えた。
「…………」
言われてみれば、最初に見られた時には恥ずかしさに消え入りそうだったが、ドタバタとしているうちに、その羞恥心もいつの間にか失せていた。
「で、でも――」
『今はそれ以上のことをしているじゃないか』と言おうとした俺の言葉を遮り、馬獣人が言う。
「男がちんぽおっ勃ててる時は、興奮してる証拠だ。
興奮してるとよ、周りのことが見えなくなっちまうんだよ。
たとえば羞恥心、とかな」
「そんなこと……」
『ない』とは言いきれなかった。
たしかに、この非日常的な展開に俺は少なからず興奮を覚えていた。
勃起と羞恥心の欠如は、馬獣人の言うことの証左なのかもしれない。
などと考えているうちにも、俺の勃起は治まることなく続き、ついには完全に上を向いて完了してしまっていた。
「勃つとやっぱりでけぇな。
握り応えがありそうだぜ」
「え!?」
言い終えるが早いか、馬獣人は玉を揉む手とは反対側の手で、完全に勃起した俺の竿を握り込んでしまった。
「あっ!」
俺が声を上げると同時に、馬獣人が竿を扱きだす。
「おう、扱き応えがあるなぁ」
嬉々とした様子で言う馬獣人。
「うぅ……!」
馬獣人に与えられる刺激に、俺は次第に快感と興奮を高めていった。
馬獣人は力強く竿を扱き上げ、玉は逆に優しくほぐすように揉みしだく。
時折扱く手を弱めて亀頭部に被せると、グルグルと掌を使って擦り上げた。
シャワーによって多少すべりがよくなった竿に、さらに摩擦を減らすべく、俺の鈴口から粘液が溢れ始める。
「うっ!」
それまでとは打って変わったヌルリとした刺激に、俺は体を緊張させた。
「我慢汁が出始めたな?」
ニヤニヤと笑いながら馬獣人が言い、刺激の方法を亀頭を中心に責める方法へと変えた。
次々と溢れ出す我慢汁で手を汚しながら、馬獣人は嬉々とした様子で、
「我慢汁は多い方みてぇだな。
手がグッチョグチョだぜ」
と、淫猥な笑みと共に囁き、手の動きを加速させる。
実際、粘液の量の多い俺は、返す言葉もなく、ただただ刺激に喘ぐだけだった。
馬獣人の手は的確に感じるポイントを刺激してくる。
裏筋、雁首、鈴口、玉、そして会陰。
中でも俺は特に裏筋が弱く、そこを責められるたびに声を上ずらせてしまった。
馬獣人もそれを察してからは、裏筋を重点的に責め始めた。
室内は、シャワーの無機的な音、粘液の摩擦音と俺の喘ぎ声の有機的な音の協和音によって異様な雰囲気を醸し出し、俺の興奮をさらに高めていった。
もはや羞恥心や相手が男であることは気にならなくなっていた。
というより、どうでもよくなっていた。
ただ長くこの快感を味わい、射精したい。
ただ自慰のようなこの感覚を味わい尽くしてしまいたい。
本能のまま、それだけだった。
そうして馬獣人から与えられる快感に酔い始めていると、ふと尻尾の辺りに硬い感触があった。
快感によってふわふわとした意識の中でも、それがいったい何なのかはすぐに分かった。
俺はごく自然に背後に手を伸ばし、それを手に取る。
「おっ! と……」
馬獣人が驚きに手を止めた。
自分の竿を握っている時とは違った感触が掌にある。
少し先端の方に手を滑らせればヌルリとした感触があり、馬獣人も興奮していることが、文字通り手に取るように分かった。
「何でぇ、ずいぶんと大胆なことしてくれるじゃねぇか」
驚きと喜びが混ざったような口調で馬獣人が言う。
「……もう、どうでもよくなりました」
俺は正直に心中を告白した。
それを聞いた馬獣人はニヤッと笑い、俺の体を反転させ、自らと向かい合わせた。
反転した勢いで、俺と馬獣人の竿がぶつかる。
その衝撃で、俺と馬獣人の鈴口から溢れていた粘液が飛び散った。
「へへ、2人共グチョグチョだな」
ニヤつきながらの馬獣人の言葉に、ほんの少しだけ羞恥心が揺り戻ってくるが、俺はそれよりも早く手を伸ばして馬獣人のモノを掴んだ。
俺がされたのと同じように、玉を揉み、亀頭を掌で擦る。
「むぅ……」
馬獣人が小さく唸った。
黒ずんだ亀頭を丹念に撫で回し、雁首をぐるりと擦り上げ、鈴口にそっと指を這わせる。
玉を揉みし抱きながら、それとなく会陰をほぐすように押すことも忘れない。
一連の動作の仕上げに指の腹で裏筋を擦り上げ、ほんの少し爪を立てると、馬獣人はピクリと小さく体を震わせた。
どうやら俺と同じく裏筋が一番感じるポイントらしい。
そうと分かるや、俺は馬獣人がしたように、裏筋を中心に責め始めた。
「おぉ……いいぞ……」
呻くように言うと、馬獣人は俺のモノに手を伸ばしてきた。
そして、先程と同じように、今俺がしているのと同じように、俺のモノを刺激し始める。
快感を与え、与えられ、俺達は息荒く快楽を貪った。
どれほどそうやって行為を続けていただろうか。
もうあと少しで射精を果たせそうというところで、不意に馬獣人が俺のモノから手を離した。
「ぇ……?」
快感が止んで拍子抜けした俺は、手を止めて馬獣人を見る。
馬獣人はいやらしい笑みを浮かべると、
「ちょっと待ってな」
という言葉を残し、シャワー室から出ていってしまった。
「…………」
突然の事態に困惑しながらも、俺は馬獣人の言葉通り待った。
そうしてしばらくすると、馬獣人が戻ってきた。
手には透明な筒が握られている。
馬獣人はそれを俺の前に差し出すと、
「使ったことあるか? オナホ」
と、ニヤニヤと笑い出した。
「ええ……まあ……」
曖昧に答える俺。
実際に使ったことはあるが、後始末が面倒なので指折り数える程度しかない。
馬獣人は俺の返答に構わず続ける。
「見ろ、こいつを」
掌に乗せてオナホールを見せる馬獣人。
透明のオナホール内には突起が多数あり、何やらローションらしき液体が見える。
形状としては、筒の両方には穴が開いている、いわゆる貫通式と呼ばれるタイプだ。
「いや、ホントは兄ちゃんの中に入れてぇんだけどよ……」
「え?」
いやらしい笑みを苦笑いに変えて言う馬獣人の言葉に、少しの間、俺はその意味が理解できなかった。
が、ハッと意味を理解し、慌てて首を横に振る。
「無理無理! 無理ですよ!!」
必死で否定する俺を見て、馬獣人は笑い声を上げた。
「だからよ、こいつをな……」
言いながら、馬獣人はオナホールの一方の穴に俺の竿を入れた。
ローションのヌルッとした冷たい感触が火照った竿を冷やすと共に、中の突起が竿全体に押し付けられ、手とは違った刺激に包まれる。
そんな風に俺がオナホールの感触を味わっていると、馬獣人は体を近付けざま、
「こうして、そんでもって……」
呟くように言って、もう一方の穴に自らの竿を入れ込んだ。
「これでよし!
これならどっちも痛ぇ思いせずに気持ちよくなれんだろ?」
淫靡な笑みを浮かべながら、満足気に言う馬獣人。
俺と馬獣人の亀頭の先端が、オナホールの中程で軽く触れ合う。
「じゃ、扱くぜ」
言うが早いか、馬獣人がオナホールを握り込み、前後に大きくスライドさせ始めた。
「うあ……!」
オナホールの独特の感触に、俺は声を上げて体を震わせた。
突起がまさに竿全体のツボとでも言うべき個所を間断なく刺激し、ローションの効果と相まって強烈な快感を発生させ、突起の一部は雁首や裏筋をつつき、さらに快感を高める。
馬獣人の握り具合もちょうどよく、強すぎず弱すぎずの刺激はとろけるような快感を長時間持続させてくれた。
慣れているのかどうかは知らないが、2人の竿からオナホールが抜け切らないように適度なストライドのストロークで、なおさら快感は持続した。
「おおぅ……!」
馬獣人が歓喜の声を上げた。
オナホール内はすでに温かく、ローションと我慢汁でこれ以上なくぬる付いており、声を上げてしまうのも無理からぬことだ。
やがて馬獣人が手の動きを止めた。
「?」
不思議に思っていると、馬獣人は自らの竿をさらにオナホールに押し込み始めた。
ギチギチと音を立てるように広がるオナホール。
中では亀頭と亀頭が擦れ合い、オナホールの内壁が絞め付けてくる。
亀頭が過ぎると今度は竿が擦れ合う。
狭いオナホールの中は2本の竿で隙間なく埋まり、強烈な締め付け感を竿全体で感じた。
「兄ちゃんはそのまま腰動かすなよ……」
そう言うと、馬獣人は勢いよく腰を振り始めた。
「んお!?」
オナホール内で、馬獣人の竿が俺の竿を強く擦り付ける。
それまでのどの刺激とも違う感覚に、俺は声を上げて腰を引きそうになったが、踏みとどまった。
しかし、どうしても馬獣人の腰の勢いに押されてしまう。
そこで、俺はゆっくりと後ろに下がり、壁に背中を付けた。
後ろに押されることがなくなり負担が減ると、今されていることによる刺激がとても強いものだと分かった。
オナホール内の竿同士の摩擦もさることながら、亀頭部と玉にくる刺激も捨てがたいほどの快感を与えてくれた。
オナホール内では、馬獣人の竿が俺の竿の下に位置している為、馬獣人が腰を打ち付けるたびに、馬獣人の亀頭が玉を突き、逆に俺の亀頭が馬獣人の竿の付け根を突く状態になる。
玉への刺激はさほど強くないが心地良く、亀頭への刺激は馬獣人の柔らかい体毛に触れてこそばゆく心地良い。
性器全体を刺激され、俺は壁に寄りかかりながら馬獣人の動きと快楽に身をゆだねていた。
そして、だいぶ長い間焦らされ、溜まりに溜まった射精感に限界が訪れた。
「あ゛ーーーッ!!!」
大声を上げ、俺は腰を突き出した。
まるで馬獣人の下腹部を抉るように強い突き出しが最後の一押しとなり、俺はこの上ない快感と共に絶頂に達した。
2度、3度と鈴口から精液を迸らせ、それでもなお動き続ける馬獣人の動きに合わせるように、何度も何度も体を痙攣させて射精を続ける。
まるで全身が性器になってしまったような激烈な快感を伴う射精は、生まれてこの方初めてではないだろうか。
目の前が白く染まり、立っていられなくなった俺を見て、馬獣人は俺の体が崩れ落ちないようにオナホールを手にしていない方の手で支えた。
そして、俺の竿が射精によって萎える前に、馬獣人もラストスパートに入る。
「おおお!! イクぜ! イクぜ!!!」
叫ぶように言い放ち、馬獣人の竿がオナホール内で膨れ上がった。
ドピュッという擬音が聞こえてきそうなほどの勢いで始まる馬獣人の射精。
勢いよく放たれた精液が俺の玉に直撃する。
もちろん痛みはないが、まるで水鉄砲でも受けているような感覚がある。
俺に負けず劣らずの精液量を吐き出す馬獣人。
ずいぶんと長い射精が終わると、馬獣人は後ろにさがってオナホールから竿を抜き放った。
同時に俺の竿もオナホールから抜ける。
貫通式であり、射精もほとんどオナホールの外で行われたので、オナホールそのものに精液はほとんど入ってはいなかったが、それでもローションか我慢汁か、透明な粘液が滴っていた。
『ふぅ〜……』
2人同時に大きく息を吐く。
射精後の虚無感と倦怠感に襲われるも、今はその感覚すら心地良い。
俺達2人は、しばらくその余韻を味わっていた。
「じゃあ、またな、兄ちゃん!」
ジムの入り口でそう言い、馬獣人は薄暗い道を歩いて去っていく。
あのあと、シャワーを浴びている最中も、着替えている最中も、2人共に終始無言だったが、ロッカールームを出際、馬獣人が『またやろうや、兄ちゃん』と誘ってきた。
もちろん、それは今すぐにというわけではなく、また今度会った時にはという意味だったが、俺は自分でも意外に思うほど、あっさりとこれを了承してしまった。
つい数十分前までは、人に裸を見られることすら恥ずかしかったというのに、それ以上のことを求められて即座に了承とは、自分のことながらまったくもって意外なことと言わざるを得ない。
羞恥を超えた快楽に、俺も一皮剥けたということだろうか。
ふと上を見上げれば、上階にあるジムの灯りはまだ点いていた。
いつ会うかなどの約束はしていないが、ここに通うかぎり、馬獣人とは必ず会えるだろう。
(その時は、また…………)
街灯の明かりに照らされる、すっかり姿の小さくなった馬獣人の後ろ姿を見つめながら、俺は再び股間がたぎるのを感じていた。