「はっ、ふっ、ほっ、はっ」

真夏の午後の日差しが強く照りつける。

山の頂上へと向かって伸びる舗装された坂道を、オレは息を切らしながら自転車で上っていた。

坂の傾斜はわりと急で、立ち漕ぎしなければとても登れるような角度ではない。

それでもオレは、Tシャツに汗を染み込ませながら懸命にペダルを漕いでいた。

地元の人間しか知らないような道で、人が通ることはまずない。

しかし、坂道を下る時の爽快感がなんともいえず心地よいものだったので、オレはよくここを上っていた。

汗に濡れた体毛がTシャツに貼りついて気持ち悪い。

狼獣人であるオレの場合は毛が多く、長いのでなおさらだ。

「ふぅ……」

あと少しで山頂という所まできて、自転車を止めて一休み。

額にかいた汗を腕で拭い、ふと山頂の方を見る。

山頂までは直線距離であと100m、坂道は曲がりくねっているので実際には150〜160mといったところだろうか。

道は山の反対側まで伸びており、山頂まで達してしまえば、あとは下るだけだ。

オレは自転車を押しながら、ゆっくりと坂道を登っていく。

と、その時、

「ん?」

山頂辺りに、ちらりと人影のようなものが見えた。

なにぶん、曲がりくねった道なので、途中に生えた木々が邪魔をしてよくは見えない。

オレは山頂の方を見ながら、自転車を押しながら坂を上っていく。

ちょうど山頂が見える場所まで移動して自転車を止めると、木々の合間から目を凝らして見る。

確かにそれは人影だった。

オレと同じように自転車を漕いで、坂道を登っている。

(この道に人が通るなんて珍しいな……)

ふとそんなことを思いつつ、オレはじっとその人影を見ていた。

すると、山頂に達した辺りで、その人物が自転車を降りた。

キョロキョロと辺りを見回す人物。

ちらりと見えた顔から察するに、どうやら熊の獣人のようだ。

熊獣人はしばらく周りを見回したあと、道の脇へと歩いていった。

何度も通っているから分かるのだが、そこには道などない。

ただうっそうと茂った森があるだけだ。

熊獣人がなんのために森へと分け入っていったのかに興味を持ち、好奇心に駆られたオレは、急いで自転車に乗り、熊獣人が分け入っていった場所へと向かった。

程なくしてその場所に着くと、自転車をそこからは見えない所に止め、熊獣人の入っていった森へと分け入った。

森の中はセミの鳴き声が反響してうるさいくらいであり、少しぐらいの足音ならかき消されてしまいそうだったが、一応、気付かれないように足音を殺しながら歩いていく。

といっても、熊獣人がここに入ってからオレが入るまでに、すでに1分以上経っているので、熊獣人の姿は見当たらなかったのだが。

ともあれ、オレは熊獣人のあとを追って、森の中を進んでいった。

周りを見回せば、とても人の手が入ったような形跡はなく、ただ獣道のような細い道が真っ直ぐに伸びているのみだった。

こんな所に一体なぜ熊獣人は入っていったのか。

何か他人の秘密を覗き見るような、そんな背徳感のある好奇心を胸に、オレはひたすら森の中を歩いた。

1分近く歩いた頃、それまで一本道だった獣道が左右に分かれた。

左の獣道は山の下へ、右の獣道はさらに山を登るような道筋で伸びている。

両方とも傾斜は緩やかだが、下へ向かうように伸びている左の獣道の方が、上に向かう右の獣道よりも若干しっかりとした道のようになっていた。

どちらに進もうか迷ったが、オレは道がしっかりとしている左の獣道を選択した。

ゆっくりと慎重に獣道を歩きながら、周囲を見回して熊獣人の姿を捜す。

すると、

バサッ!

どこかそう遠くない場所から、セミの声とは違った音が聞こえた。

それは何かが地面に落ちるような音で、オレは音の出所を探ろうと耳を動かす。

カチャカチャッ

今度は何か金属が擦れ合うような音が聞こえる。

どうやら音は斜め前方の方から聞こえてくるようだ。

オレは今まで以上にゆっくりと、足音を殺しながら先に進んだ。

そして、ほんの数m進んだ場所で、ふと右上を仰ぎ見て、

「っ!?」

オレは思わず声を上げそうになった。

オレの視線の先、数mの所に全裸の男が1人立っていたからだ。

慌てて近くの木の陰に隠れるオレ。

木の陰から再び男の方を覗き見ると、男は熊の獣人だった。

おそらく先程の熊獣人と同一人物だと思われ、年齢は15〜16といったところで、男と表現するよりは少年といった方が正確だろう。

ただそんなことはどうでもよく、問題は少年の格好と行為だった。

少年は靴まで脱いだ状態で完全に全裸。

先程の物が落ちる音は、どうやら少年が衣服を脱ぎ捨てた音だったらしい。

金属音もベルトを外すか何かした時の音だろう。

そして、少年が行っている行為は、オレもよく知る行為、自慰行為だった。

セミがやかましくらいに鳴く真夏の午後の森の中で、熊の少年が自慰行為にふけっている。

オレはその非日常的とでも言うべき光景を食い入るように見つめていた。

少年は目を閉じ、両足を開いて、左手は獣毛に隠れた胸の突起を弄ぶように動いている。

右手は猛り立った肉棒をしっかりと握り、長いストロークで前後に動いていた。

少年は仮性包茎らしく、右手が動くたびに、包皮がめくれて亀頭が現れたり、覆い隠したりしていた。

先走りが出ているのか、木漏れ日を受けて肉棒の先端がかすかに光っているようにも見える。

と、突然、

「うあっ、イ、イくぅぅぅ!!」

少年が声を上げて絶頂に達した。

膝をガクガクと震わせ、握った肉棒の先端から精液が滴る。

精液は亀頭が包皮に包まれているせいか、勢いよく飛び出すわけではなく、包皮から溢れるようにドロリと地面に零れ落ちた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

少年は息を弾ませ、射精の余韻に浸っているようだった。

しかし、その余韻もそこそこに、少年は再び手を動かし始めた。

若さゆえだろうか、あまりにも早い2回目の行為に、オレは驚いた。

精液にまみれた肉棒は、少し萎えていたものの、再びの刺激によって次第に硬度を増していく。

見ているうちにも、少年の肉棒は再び硬度を取り戻した。

そして、その時、初めて気付いた。

オレ自身の肉棒も激しくいきり立っていることを。

少年の、男の自慰行為を見て勃起するなんてどうかしている、などと思いつつも、オレの手はすでに自分の股間をまさぐっており、硬くなった自身の肉棒を握っていた。

オレは少年の行為を凝視しつつ、ズボンの前を開け、下着から肉棒を取り出した。

気付かぬうちに濡れていたそれを握り、少年の手の動きに合わせるようにして動かした。

少年が手を速めればオレも速め、少年が手を緩めればオレも緩める。

少年が露出した亀頭に指を這わせればオレもそれにならい、再び扱き始めればオレもそれにならう。

そんな風にして、オレは少年とまったく同じ刺激を自身の肉棒に与えた。

そして、少年の膝が再びガクガクと震え出す。

期せずして、オレの膝も震え出した。

少年もオレも絶頂が近い証拠だ。

少年がラストスパートをかけるように手の動きを激しくした。

剥き出した亀頭を掌で包むようにして、激しく回転させている。

オレも同じように、先走りでグチャグチャに濡れた亀頭を掌でこね回した。

そのスパートから数秒後。

「あっああぁぁぁぁ!!!」

先程よりも大きな声を上げて、少年が射精を果たした。

今度は亀頭が露出しているためか、精液が勢いよく鈴口から迸る。

何度も肉棒を痙攣させ、睾丸の中身を全部吐き出すように射精を続ける少年。

その様子を凝視しながら、

「うぅっ……!」

気付かれぬように声を殺して、オレも絶頂に達した。

少年に負けず劣らずの勢いで、鈴口から精液が飛び出す。

それはオレの手を汚しながら、下生えの上に降り注いだ。

屋外で、しかも他人の自慰行為を覗き見ながらという特異な状況が、なんとも言えない快感をオレにもたらした。

それは背徳感や罪悪感にも似ていた。

オレは目を閉じ、特異な射精の余韻に浸る。

上がった息を整え、再び少年の方を見やると、少年が再び手を動かし始めていた。

(3回目!?)

内心、半ば呆れが入り混じった驚きを感じつつ、オレはその様子を見つめる。

少年の肉棒は、三度硬度を増しつつある。

オレの方はというと、1回だけで満足したのか、すっかり萎えていた。

処理をするティッシュがないので、仕方なく萎えた肉棒を下着に押し込む。

そして、手についた精液をそばの木に擦りつけて落とすと、ズボンのチャックを閉め、3回目の自慰行為を始めた少年をあとにして、オレは再び足音を殺してもときた道を戻り始めた。

途中、ふと後ろを振り返ると、少年はオレに見られていたことになどまったく気付いていない様子で、一心不乱に自らを慰めていた。