『名はブールだ』

僕の少し前を歩く、黒毛を持つ雄牛の男の名を知ったのは、出会ってから3ヶ月も経ってからだった。

僕の名がビットであると教えたのも、その時だ。

実に奇妙なことだと思う。

3ヶ月もの間、共に旅を続けていながら、互いの名を呼ばずによく連れ添ってこられたものだ。

これは、彼、ブールが非常に寡黙であるのが、最も大きな要因だろう。

ブールは必要以外では、まず口を開かない。

僕の質問等には答えてくれるし、僕が知らないことを、僕の質問に先んじて教えてもくれるが、そういった必要がない時は、雑談めいたことなどは一切しなかった。

彼がそういう性情であることは、僕も旅をするうちに理解していったので、僕の方からもあまり必要以外では声を掛けることはなかった。

そのことも、互いの名を知るのが遅れた要因の1つに違いない。

しかし、だからといって、僕達は不仲ではない。

むしろ関係は非常に良好だ。

なぜならば――

 

 

夜。

小川のほとりで上がるブールの嬌声が、兎人である僕の長い耳を刺激する。

平時の彼からは想像もできないほど、今の彼は乱れていた。

いかめしい顔付きは、だらしなく崩れ、野太い声には艶が混ざり、筋骨たくましい体は、わなわなと震えている。

彼をそうさせているのは、ほかならぬ僕だった。

肉と肉のぶつかり合い。

未成熟な僕の男根を、彼の肛門に突き刺す。

僕が前後に腰を振るたびに、振動に声を震わせながら、彼は喘いだ。

仰向けになった彼の股間には、僕の物に倍する巨大きな男根が備わり、体の振動に合わせて大きく揺れている。

臍まで届く程の長大な男根の先端からは、透明な先走りの汁が溢れ、それは腹の黒い毛皮を濡らして妖しく光っていた。

絶えず先走りを溢れさせる彼の男根の先端を、僕は飛び出た2本の前歯で甘く噛んだ。

前歯が鈴口に刺さると、彼は一層強く嬌声を発した。

鈴口に刺した前歯はそのままに、舌を裏筋や雁首に這わせてやると、より一層彼は喜びの声を上げた。

体勢的に少し辛いが、腰の動きを緩めることなく、僕は口で彼の男根を刺激し続ける。

両手はまだ空いているので、そのまま男根を扱いてやろう。

そう思って、両手を男根に近付けた時だった。

「グオオオオオオッ!!!」

辺りに響き渡るほどの大音声と共に、ブールは果てた。

鈴口から迸った精液は、甘噛みをしていた僕の顔面を直撃する。

あまりにも唐突な射精に、僕は驚いて仰け反り、そのまま後ろに尻餅を着いてしまった。

当然、彼の肛門から僕の男根は抜ける。

慌てて顔にかかった精液を拭い、前を見れば、彼は体を仰け反らせながら、まだ精液を噴出させていた。

僕自身は、行為の途中で不完全燃焼だと言うのに。

自分一人で絶頂に達してしまった彼を見て、僕の中に小さく不満の火が灯る。

僕は立ち上がり、射精を終え、ぐったりと仰向けになって満足気にしている彼に近寄ると、片足を上げて、萎え始めた彼の男根の上に落とした。

「ウグッ!?」

痛みとも驚きともつかない呻きを漏らすブール。

「僕、まだ気持ちよくなってないんだけど」

言いながら、僕は彼の男根の上で足を動かし回す。

彼は、すまなそうな、しかしそれでいて快感を享受するような表情で、

「すまん……だが……あまりに刺激が強くて…………グアっ!」

言い訳をする彼の言葉が、苦鳴に途切れた。

僕のかかとが、彼の睾丸を踏みにじったからだ。

「言い訳しないで」

「す、すまん……! た、玉はやめてくれ……!」

理不尽ともいえる僕の言葉と攻撃に、彼は懇願を始めた。

普段の彼からは想像もできない程、無様な姿がそこにはあった。

年ならば僕の倍以上、背丈も倍近く、横幅ならば倍どころではない程の差がある僕と彼だが、今現在の主従関係は、完全に見た目どおりではない状態だった。

しかし、だからといって、僕達の仲に亀裂は入らない。

なぜならば、僕は彼に対してこうすることを望み、彼もまた、僕に対してこうされることを望んでいたからだ。

日常において、知力・体力共に彼に劣る僕が、唯一、この夜の営みの時だけは、彼の上に立つことができる。

肉体的な快楽と、精神的な優越感が入り混じるこの営みは、僕の中に至福の感情を脇起こさせてくれる、かけがえのないものとなっていた。

何より、普段たくましく、頼りがいのあるブールが、この時にだけ見せる弱さ、脆さ、そして淫猥さ。

それらは僕にとって、何よりも愛おしかった。

 

 

――そんなわけで、僕達の仲は、非常に良好だった。

 

 

「今日はここで休もう」

翌日、ブールが荷物を下ろしながら言ったのは、日暮れ前だった。

少し離れた所には泉が湧き出していて、水の補給もでき、その反対側には小さな森があって、焚き付けの為に必要な焚き木の確保も容易な場所だ。

僕が荷物番を兼ねて、荷物の整理や夕飯の下ごしらえをしている間、彼は森へと分け入って、焚き木や食べられる動植物を確保してくる。

いつも通りの役割分担だ。

慣れたもので、僕の方は陽が落ち切る前にはすべての準備を終えていた。

荷物は取り出しやすく、また持ち出しやすく整理しておかなければならない。

きちんと整理をしておかないと、何かを出し入れする際に大変になるし、持ち運びにも一苦労するからだ。

特に今は、数日前に盗賊に襲われたことがあって、それを撃退した時に接収した物が多々あるので、いつもよりも荷物が多い。

近いうちに町か村にでもよって、ある程度荷物を処分する必要があるだろう。

そして、荷物を整理し終えた後は、前日までに確保しておいた枝を乾燥させた焚き木で火をおこす。

その上に簡易な道具を使って鍋を吊るし、そこで干し肉と根菜を入れたスープを作った。

もしもブールが獲物を見つけられなかった時の為に、少し多めに作っておく。

これもいつものことだ。

といっても、たいていは何かしらの獲物をしとめてくるので、少し腹が膨れすぎてしまうのだが。

そうして、すべきことをすべて終えた僕は、火の番をしながらブールの帰りを待った。

周囲は薄暗いが、焚き火が目印となって、彼も戻ってきやすいだろう。

火が絶えないよう、燃えすぎないよう、焚き木を適度に火に放り込みつつ彼の帰りを待っていたが、森の奥まで進んでいったのか、はたまた獲物が見つからないのか、なかなか彼は帰ってこない。

そうこうしているうちに、陽はすっかり暮れてしまい、周囲は暗闇に包まれてしまった。

夏も終わり、秋に差し掛かったこの時期は、日が暮れてもまだ暑く感じられる。

近くで爆ぜる焚き火の熱が、そこに拍車をかける。

じっとり汗ばんだ肌に衣服が張り付き、不快感を覚えて、僕は泉のそばへと向かった。

汗で張り付いた衣服を丁寧に脱ぎ、泉に浸す。

水はすでに充分に確保してあるので、多少水が汚れても構わない。

下着も脱いで泉の中で揉み洗いをし、それらを軽く水気を切って、焚き火のそばに広げる。

この時期なら、火のそばで一晩干しておくだけで、翌朝にはすっかり乾くだろう。

それから、整理した荷物の中から麻の布を取り出し、泉へと戻り、今度は自分の体の汗を流すことにした。

泉に足を差し入れると、ひんやりと冷たい。

膝付近まで水に浸かる場所まで進み、麻の布を泉に浸して体を拭う。

全身を水に浸したいところだが、さすがにそれでは体が冷えてしまうと思い、それはしなかった。

麻の布で体を隅々まで拭っていると、森の方に人影が現れた。

ブールだ。

「おかえりなさい」

泉の中から声を掛けると、彼がこちらに視線を向ける。

そして、首を小さく横に振った。

その動作で、獲物が見つからなかったのだと理解した。

代わりに、両手で抱える程の焚き木を拾ってきたようだ。

それらを地面に広げると、彼は焚き火のそばに座り込んだ。

僕も程なく体を拭い終え、泉から引き上げ、焚き火に近寄る。

まだ全身の毛皮が湿り気を帯びているので、一糸まとわぬ姿のまま、焚き火で乾かすことにした。

「スープ、大目に作っておいてよかったよ」

言って、僕はあらかじめ出しておいた皿にスープを盛り、彼に手渡す。

「すまんな」

その言葉は、おそらく獲物が取れなかったことに対するものだろう。

「気にしないで」

僕は苦笑いしながら、自分の分のスープを皿に盛った。

携帯用の乾燥食は、まだ数日分は余裕があるので、特段気にするようなことでもないのは事実だ。

目的のある旅をしているわけではないので、いざとなれば丸一日を食糧確保に費やしても構わない。

そんなことを思いながらスープを口に運んでいると、ふと、彼が手を止めて森の方を振り返った。

「……どうしたの?」

尋ねると、彼はこちらに向き直り、

「いや…………森の中でも感じたんだが、誰かに見られているような気がしてな」

と、呟くように言った。

「え?」

釣られるようにひそめた声をあげて、森の方を見る。

すっかり日も沈み、森は真っ暗闇だ。

光源となる火が間近にあるせいもあって、なおさら暗く感じる。

少なくとも、目で見える範囲に、何者かがいる様子はない。

音も、森の下生えから響く虫の音と、緩い風が吹くと、木々の葉が擦れる音がするばかりで、それ以外には何も音はしないし、気配もない。

「気のせい……じゃないの?」

声を潜めたまま尋ねると、彼は小さく唸り、

「かもしれん。

 元々、俺は気配を探るだのが苦手だからな」

と、声低く答えた。

「そう……」

とだけ答え、僕は食事を再開した。

しかし、どうしても森の方が気になってしまい、食事はあまり喉を通らなかった。

 

 

食事の片づけを終えると、ブールは先程の僕同様に、汗を流しに泉へと向かった。

食事の間で僕の毛皮はすっかり乾き、裸でいる理由もないので、荷物から新たな衣服を取出し、身に付けた。

火の番をしながら泉の方へ目を向ければ、彼が下着まで脱いで、泉で衣服を洗っているところだった。

特にすることもないので、僕は彼の行動を観察することにした。

彼は衣服を泉で揉み洗いし、それらを絞って泉の縁へと投げ出すと、今度は泉の中心の方へと進んでいった。

僕と違い、全身を水に浸すつもりのようだ。

泉の深さは、もっとも深い所で彼の胸元付近まであるらしく、そこで彼は体を沈めて、文字通り全身を水に浸した。

ザバザバと水をかき分ける音が響き、しばらくして、彼は泉から上がってきた。

縁に置いてあった麻の布で、全身の水気を拭き取る。

黒い毛皮なだけあって、全身が見事に周囲の闇に溶け込んでいた。

そのなかで、白い眼と、同じく白い立派な一対の角が、浮かび上がるように火の明かりに照らされて浮かび上がっていた。

と、不意に、彼が体を拭う手を止めた。

視線は、焚き火の向こう、森の方へと向けられている。

「誰だ!」

僕が視線を森へと移すより早く、彼が低く響く声で、森に向かって叫んだ。

一拍遅れて、僕が森を注視する。

さらにそこから遅れること数秒。

森の木々の合間から、2人の人影が浮き上がるように姿を現した。

驚いて、思わず立ち上がる僕。

1人は虎人、もう1人は獅子人。

共に男性で、体躯はブールに匹敵する程大きく見える。

「いや、お邪魔して悪いね」

肩に担いでいた大きな荷袋を地面におろしながら、少ししゃがれた気の軽い声で言ったのは、虎人の方。

皮の鎧をまとってマントを羽織り、腰に大剣を帯びた姿は、いかにも傭兵のそれに見える。

「てめぇらに用があるんだよ」

次いで、獅子人が口を開く。

腰巻にひざ当て、上半身は胸の中央にリングの付いたハーネスと手甲のみ、さらには腰に特大のモーニングスターという、いかにも盗賊然とした出で立ちが、ブール同様の低く響く声で発せられた粗野な言葉に似合っている。

2人は並んでこちらに向かって歩みを進めてきた。

そこへ、

「動くな!!」

と、ブールの怒号が飛んだ。

ピタリと止まる2人の歩み。

彼は2人を睨み据えながら続ける。

「俺はお前達など知らん。

 ビット、お前は?」

唐突に投げ掛けられた質問に驚きながらも、僕は首を横に振った。

目の前の2人など、見たこともない。

「俺達に用があると言ったな?

 だが俺達はお前達に用はない。

 さっさと立ち去れ」

吐き捨てるように言うブール。

それを受けた虎人は鼻で笑い、獅子人は顔をしかめて地面に唾を吐いた。

「チンポ丸出しでナニ凄んでんだよ、おっさんよぉ!」

獅子人の言葉に、ブールがピクリと眉根を寄せた。

一触即発の雰囲気だ。

それを虎人の気の抜けたしゃがれ声が抑える。

「正確には、あんた達に用があるわけじゃなくてね。

 その革袋の中身に用があるんだよ」

言って彼が指さしたのは、僕の後ろにある荷物の1つだった。

「あんた達、何日か前に盗賊潰したでしょ?

 あの盗賊さぁ、オレ達が目を付けてた奴等なんだよね。

 ……ああ、言い忘れてたけど、オレ達、賞金稼ぎなんだ」

頭の後ろを掻きながら言った虎人の言葉に、ブールは鼻を鳴らす。

「なるほどな。

 つまり、俺達が盗賊を潰したせいで、賞金がもらえなかった、というわけか?」

ブールが聞くと、虎人はニッコリと笑顔を顔に張り付けた。

「ご明察。

 で、もらえなかった賞金の代わりに、あんた達が没収した奴等のお宝を頂戴したいってわけね」

「ずいぶんとけちな了見だな」

鼻で笑ってブールが言うと、獅子人が鬣を逆立てた。

「人の獲物横取りしておいて何言ってやがんだ、おい!」

逆恨みもいいところだ。

こちらは2人が盗賊を狙っていたことなど知らないし、そもそもは盗賊の根城近くを僕達が通り掛かったら、向こうが吹っかけてきたというだけで、降り掛かる火の粉を払っただけなのだ。

たしかに、路銀の足しにと、根城をあさって、持ち主の知れぬ金目の物を失敬してはきたが。

とはいえ、それを説いたところで、2人、特に獅子人の方には効果はないだろう。

ここはおとなしく荷を渡すべきか。

元はといえばなかったものなのだし。

そういった意味を込めてブールを見やると、ブールは僕の視線を意味を理解してくれたようで、頷いて応えた。

「いいだろう。

 盗賊から巻き上げた物はすべて持っていくがいい」

「おっと、ずいぶんとすんなりと了解してくれたね。

 こっちは一戦交えるくらいの気持ちできたんだけど」

虎人が肩をすくめてこちらに向かってくる。

「ビット」

呼び掛けられて、僕は盗賊から接収した物が入った荷物袋だけを移動させると、ブールの元へと駆け寄った。

「あらま、別になんもしやしないってのに」

苦笑い交じりに虎人が言う。

彼は僕が移動させた荷物袋を開いて中身を確認すると、それを背負って僕達に背を向けた。

「じゃ、確かにもらってくよ。

 行こう、レオン」

獅子人に呼びかけ、そのまま森の方へと歩み去ろうとする虎人。

しかし、獅子人レオンは、微動だにせずに僕達の方を、というよりブールを睨み続けていた。

「おい、レオン?」

「……ティガよ、てめぇ、このままで済ませる気かよ?」

「いいだろ、別に」

「オレは全然納得いってねぇぜ!」

「おいおい、穏便に済むならそれにこしたことはないだろ」

「そうじゃねぇ!

 こいつ等のせいで、オレ等こけにされたんだぜ!?

 このままじゃ腹の虫が納まらねぇんだよ!」

何やら不穏な会話が続いている。

どうやらこのままでは終わらないらしい。

事の成り行きを見守っていると、虎人ティガが荷物を下ろしてこちらに向き直った。

「あ〜、なんていうかさ、言いづらいんだけど、いいかな?」

「……なんだ」

ブールが僕をかばうように前に出ながら言う。

「実はさ、オレ達、賞金稼ぎの組合に入ってるんだけどね、そこでこの前、散々馬鹿にされたんだよ。

 『あんなチンケな盗賊共さえ満足にやれねぇのか』ってね。

 いや、ちゃんと理由は説明したんだけどね、組合の仲間は性格悪いの多くてさ。

 それで、そのことでこっちのレオンがブチギレちゃったのよ。

 その時にすこ〜しやり過ぎちゃってさ、しばらくオレ達、仕事ができなくなっちゃったんだわ。

 で、レオンはそのことでまだ腹の虫が納まってないってわけ」

困り顔でのティガの説明に、僕もブールも呆れてレオンを見た。

完全な逆恨みだ。

馬鹿馬鹿しいにも程がある。

あまりの馬鹿馬鹿しさに、僕もさすがに抗議の声を上げる。

「でも、あれは盗賊が襲ってき――」

「うるせぇ!!!」

僕の抗議の声は、レオンの大音声にかき消されてしまった。

その目は血走り、手は腰に帯びたモーニングスターに伸びている。

「ティガよ、オレはもう我慢できねぇぜ!!

 こいつ等、ぶっ殺してやる!!!」

「あっ! オイっ!」

ティガの制止の声も聞かず、レオンがモーニングスターを構えてこちらに突進してきた。

「離れていろ!!」

ブールが叫び、僕は泉の方へと強く押す。

僕は吹き飛ばされるように泉に落ちた。

水音と共に泉に沈み、もがくように水面に出ると、ちょうどブールがレオンの攻撃を避けるところだった。

レオンの初撃をかわしたブールは、焚き火の所まで駆けて大剣を拾い、追い掛けてきたレオンの二撃目を受け止める。

体格も同等の2人の攻防は、かなり危うい一線で続く。

雄叫びを上げながらのレオンの攻撃をブールは無言でいなし、隙を見て攻撃を繰り出す。

レオンは獣の如き動きでこれをかわし、力任せの一撃を放つ。

どちらも当たれば致命傷となる一撃ばかりだ。

泉から這い出て、僕は固唾を飲んでその様を見守る。

一進一退の攻防は、時間を経るごとに変化していった。

徐々にブールの攻撃回数が増え、レオンを押してきているのが、素人目にも分かった。

目に見えて、レオンの表情に焦りの色が浮かび始める。

「こりゃまずいね」

不意に、背後から声が聞こえた。

驚いて振り返ろうとすると、首筋に硬い物が当たる。

視界に入ってきたそれが、大剣であると分かると、僕は背筋を凍らせた。

「動かないでね。

 なるべく斬りたくないから」

声が頭上から降ってくる。

ゆっくりと上に向ければ、いつの間に僕の背後に回ったのか、ティガがニコニコと笑って僕を見下ろしていた。

「お〜い!」

ティガがブールとレオンに呼び掛けると、声に反応し、2人が同時にこちらを向く。

僕とティガの姿を見止めた2人は、それぞれに表情を浮かべ、攻防の手を止めた。

「よくやったぜ、ティガ!」

「……っ!」

ポーズを取ってティガを褒めるレオン。

一方、ブールは肩を落として、憎々しげに僕の後ろのティガを睨み付けた。

「おっと、そんな射殺すような目で見ないでよ。

 ふっかけたのはこっちだけど、だからって、さすがに相棒を殺させるわけにはいかないからね」

大剣を僕の首筋に当てたまま、ティガは僕を抱えて2人の近くに寄っていった。

そして、少し離れた場所で、僕を下ろす。

もちろん、僕の首筋には大剣の刃が当たったままだ。

「抵抗しないようにね。

 じゃないと、この子の首が飛んじゃうよ?

 大丈夫、あんたが抵抗しなければ、この子に危害を加えるつもりはないから」

ブールを見据えながらティガは言う。

それと共に、大剣の刃がさらに僕の首に押し付けられた。

毛皮で覆われているからまだ切れてはいないが、もしも毛皮が無ければ皮膚が裂かれているだろうくらいの強さだ。

それを見たブールは、手にしていた大剣を地面に放り投げた。

音を聞いたレオンが、ブールの方に振り返る。

「へへへぇ……さぁ、観念しろよ、おっさんよぉ!」

嫌らしい笑い声と共に、レオンがモーニングスターを肩に担いだ。

そして、両手で握り締め、大上段に振りかぶる。

思わず目を閉じる僕。

「ちょっと待った!」

その時、突然ティガが叫んだ。

声に驚いて、3人共にティガを見る。

「何だよ!

 早くやらせろよ!!」

レオンの抗議の声に、ティガは首を横に振った。

「そりゃいくらなんでもやり過ぎだよ、レオン。

 もしもキミがそのおっさんを殺すつもりなら、オレはこの子を解放しちゃうよ?」

「はぁ!? なんだそりゃ!!」

「言葉通りの意味だよ。

 やり過ぎは良くない。

 こっちは獲物を横取りされただけで、しかもその代価も手に入ったんだし、オレとしては別にそれだけで良かったんだし」

声を荒げるレオンを、ティガは冷静に諭した。

「ぬぅぅ……」

レオンは唸りながら、ブールとティガを交互に見やっていたが、しばらくしてモーニングスターを地面におろした。

「じゃあ、半殺しならいいだろ?」

「まぁ、その程度なら」

「……腹の虫はおさまらねぇけど、仕方ねぇ」

まだ納得がいっていない様子ながらも、レオンはモーニングスターを手放した。

思い音が地面に響く。

「ってことだ。 命拾いしたな、おっさんよ」

拳をバキバキと鳴らしながら、半歩ブールに近付くレオン。

命の危機は去ったが、これからブールがどういう目に遭うのかは想像に難くない。

しかし、僕を捕えているティガの力は、僕の力ではどうしようもないほどに強く、振りほどくことなどできそうになかった。

そのうえ、もしも僕が抵抗の素振りを見せようものなら、僕は殺されてしまうかもしれないし、何より、ティガの気が変わってブールが殺されてしまうかもしれない。

僕に残された選択肢は、ただじっと、ブールに襲い掛かる災難を受け入れることだけしかなかった。

「オラァ!」

怒号と共に、レオンがブールの腹目掛けて、拳を打ち込んだ。

「グゥ!」

レオンの拳がブールの腹にめり込み、噛み殺した呻き声がブールの口から漏れ出る。

彼はやや前かがみになりながらも、それでも一歩も引かずに、レオンの一撃を耐えた。

「まだまだ続くぜぇ!」

言いながら、レオンはもう一撃、ブールの腹に拳をめり込ませる。

ブールの顔が苦痛にゆがむが、レオンは構わずに、連続して同じ場所を執拗に殴り付けた。

何度も同じ場所に打撃を受け、さすがのブールも耐えきれずに、体をくの字に曲げて、殴られた場所を手で覆ってしまった。

「いてぇか? いてぇだろ!?」

サディスティックな口調でレオンが問うが、前かがみになったブールは答えない。

そこへ、レオンの強烈な前蹴りが突き刺さった。

「ゲハァッ!」

腹部に強烈な一撃を食らい、ブールが後ろに吹き飛ぶ。

地面に仰向けに倒れたブールは、蹴られた箇所を両手で押さえながら呻いた。

「ケッ! まだ終わらねぇぞ、おっさん」

ブールに歩み寄り、彼が腹を押さえる両手の上に、足を置くレオン。

「オラ、オラ、オラ!」

掛け声をあげながら、レオンはブールの腹を、押さえた両手ごと踏みしだいた。

衝撃に、ブールが苦しげな息を吐き出す。

「まだしばらく気は晴れなさそうだね」

僕の耳元で、ティガが呆れた口調で呟いた。

僕はたまらず、

「やめさせてよ!」

と、懇願するが、ティガは軽く息を吐くと、

「そりゃ、オレだってこんなことする気はなかったよ。

 でも今止めたら、きっともっと酷い目に遭わされるよ、彼」

言って、僕を捕える腕に力を込めた。

「――っ!」

声にならない悔しさに歯噛みする僕をよそに、目の前の惨状は続いていた。

しばらくして、不意にレオンがブールの腹から足をどけた。

そして、ゆっくりとこちらを振り返ると、意味ありげでよこしまな笑みを浮かべた。

僕が笑みの意味を捉えあぐねていると、レオンはブールの足元へと歩を進め、おもむろに足を上げた。

直後、

「グワッ!?」

ブールが苦鳴を上げ、体を折り曲げた。

レオンは、あろうことかブールの股間に足を振り下ろしたのだ。

男の急所を踏み付けられて、ブールは激痛に身をよじる。

「よぉ!」

突然、レオンが僕に向かって声を掛けてきた。

顔には、あの笑みが張り付いている。

「オレ達よぉ、見てたんだぜ?

 てめぇ等が昨日の夜、ナニしてたかよ!」

『!!!』

僕もブールも驚きに息を飲んだ。

彼が何を言っているのか、理解するのは簡単だった。

昨日の夜、僕達はまぐわったのだ。

それを見られていた。

「てめぇ、こうやっておっさんのチンポ踏み付けてたよなぁ」

淫靡な笑みを浮かべつつ、レオンはブールの股間の上に置かれた足を縦横に動かし始めた。

「じっくり見物させてもらったよ」

声は背後のティガから。

「なかなかいい見世物だったよ。

 オレ達も股間が熱くなって、ついキミ達みたいにヤっちゃったよ」

「……え?」

ティガの告白の意味を受け取りかね、ボクは驚きの声が上げてしまった。

「驚いた? つまり、オレ達もお仲間ってことさ。

 どうやらレオンはこのまま彼を犯すつもりらしいね。

 なら、こっちも……」

囁かれ、僕は身を硬くした。

途切れた言葉の先に何が続くのかは、想像に難くない。

知らず知らずのうちに体が震え、その震えを察知したのか、ティガが耳元に息を拭き掛けてきた。

ぞくりと、背筋に冷たいものがはしった。

ややあって、ティガが悪戯っぽく笑う気配が伝わってきた。

「冗談だよ、冗談。

 とりあえずキミに手を出すつもりはないから、安心していいよ。

 でも、抵抗したら……分かるよね?」

声に冷たいものが含まれ、それが意味するところを知って、僕はいっそう体を硬くした。

「そう、それでいいんだよ。

 じゃあ、しっかり観察しようか。

 彼が犯される様子を」

ティガが告げると、まるでそれを合図にしたかのように、レオンがブールの股間から足をどけた。

「ヘッ! おっ勃ってきやがったぜ」

その言葉通り、足のどけられたブールの股間では、長く太い彼の男根が、強く血液を通わせ始めていた。

血流に合わせて肥大していく男根は、焚き火のゆらめきに照らし出され、妖しい艶を放っている。

「こんな状況で勃てるなんて、てめぇ、相当の変態マゾ野郎だな」

レオンがなじると、ブールは強く彼を睨み付けたが、レオンはそれを鼻で笑い飛ばした。

「反抗的な目じゃねぇか。

 気に入らねぇ!」

言って、彼は再び足をブールの股間に落とす。

「ッ!!」

股間を押さえ、悶えるブール。

そんな彼を、レオンはせせら笑いながら見下ろしていた。

「よ〜し、いいこと思い付いたぜ。

 おっさん、ここでセンズリこいてみろよ」

「な……に……?」

唐突なレオンの命令に、ブールは股間の痛みに耐えながら聞き返す。

「センズリしてみろって言ったんだよ。

 オレ達によ〜く見えるようによぉ!」

口角を鋭角にゆがめ、レオンは声を荒げた。

そして、親指の先を僕に向ける。

「じゃねぇと、あのガキ、どうなっても知らねぇぜぇ?」

レオンの声に応えるように、ティガの大剣が角度を変えてギラリと光った。

ブールの目がこちらを向き、僕の状況を察する。

わずかな逡巡のあと、彼は観念したように、のそりとその場に立ち上がり、股間に手を伸ばした。

彼の男根は、踏み付けられた痛みからか、萎えしぼんでいた。

それを再び勃てようと、彼は、平時でも長く太いそれを握り締める。

その様を、レオンはニタニタと笑いながら眺めていた。

パチパチと爆ぜる焚き火の音と、森の方から鳴り響く虫の音が支配する空間で、ブールは自らの男根を扱き始めた。

「もう少し近くで見物しようか」

ティガが耳元でささやき、僕の体を持ち上げると、ブールからやや離れた位置へと移動した。

彼が何か攻撃的行動を起こしても、即座に反応できるだけの距離だ。

しかし、彼の自慰行為を見物するのには、何ら支障のない距離でもあった。

「いい眺めだねぇ」

再び僕の耳元でささやくティガ。

目を逸らそうにも、僕の首筋には彼の持つ大剣の刃が当てられていて、それすら満足にできない。

目を閉じようとしたが、

「君もよく見て」

ティガに機先を制され、それもかなわない状況になってしまった。

そうこうしているうちに、ブールの男根は最大の大きさへと変化していた。

「ケッ! デケェな。

 気にくわねぇデカさだぜ」

レオンは、面白くなさそうにブールの男根を評した。

「キミのより大きいんじゃないの?」

笑い交じりにティガが言うと、レオンは何も答えずに舌打ちをした。

それを見て、ティガは面白そうに笑う。

「でも、持久力はキミの方がありそうだね。

 昨晩見てたけど、この子にヤられて、結構あっさりイっちゃったしさ」

「ヘッ! 早漏ってやつだな!」

ティガの言に気を取り直したのか、レオンはブールの男根を注視しながらせせら笑った。

当のブールは、歯噛みしながら男根を扱き続けている。

「まあ、その分、回数は多かったけどね。

 昨日だけで4発も出してたっけか?

 ケツに入れられながらしゃぶられて1発、チンコ踏み付けられて1発、チンコはたかれながら1発、ケツをほじられて1発」

「……よく憶えてんな、お前」

呆れたような声音で言うレオンに、ティガは薄く笑う。

「同じウケとして、ちょっと羨ましいくらいのイキっぷりだったからね。

 ……あっと、だからって、キミの攻めが不十分ってわけじゃないから、安心して」

フォローなのか、慰めなのか、よく分からない言葉を付け加えるティガ。

それに対して、レオンは気分悪げに小さく鼻を鳴らしただけだった。

「まぁまぁ、そんなに気を悪くするなよ。

 チンコはたかれてイクなんて芸当、オレには無理なんだしさ。

 見掛けによらず、相当マゾっ気が強いよね、おっさん?。

 正直、はたかれてイったの見た時は、ビックリしたよ」

「そのうち、玉殴られてイっちまうようになるんじゃねぇか?」

「ハハッ! そうなったら相当上級なマゾだね

 オレには到底真似できそうにないな。

 ま、真似したくもないけど」

2人の嘲笑が辺りにこだまする。

それを遮るように、ブールは目を閉じて一定のリズムで男根を扱き続けていた。

すでに亀頭の先端は先走りで濡れ光っており、扱くリズムに合わせて淫猥な音を発している。

吐き出す鼻息は荒く、押し殺してはいるものの、彼が快感を享受していることは明白だった。

「ひょっとして、そろそろイっちまいそうか?」

ブールの様子を見て、レオンが嘲る。

2人の言った通り、彼は快感に対して堪え性がない。

そして、ティガの言う通り、彼は性的な被虐心が強かった。

その2点から、たとえこんな状況であってさえ、彼が快感に負けることは、容易に想像できた。

事実、先走りの量から見ても、そろそろ射精が近いことが、何度も彼のそれを見てきた僕には分かった。

下半身の筋肉がわずかに痙攣し、睾丸がやや上がってきている。

鼻息は、もはや押し殺せない程に荒くなっていた。

そして、

「グゥ……!」

精一杯押し殺したつもりでも漏れ出してしまった声と共に、ブールは激しく射精した。

亀頭の先端から、男根の角度の延長線上に、メートル単位で白い粘液が舞う。

音すら聞こえてきそうな壮絶な射精は、数度にわたって行われ、精液の量も飛距離も凄まじかった。

それは、ブールの射精を初めて見た2人はもとより、見慣れた僕でさえ、目を見張るほどのものだった。

「……すっげぇ」

驚き半分、呆れ半分という調子で、レオンが呟いた。

視線は、精液をダラリと垂れ下がらせているブールの男根と、そこから放たれ地面に散乱した多量の精液に、交互に向けられていた。

僕の背後のティガも、感嘆のため息を漏らしている。

「こりゃ、量も飛距離もとんでもないね。

 お前でもこんなに出ないし飛ばないんじゃない?」

ティガの言葉に、レオンも思わずといったように『おお』と、うなずいて答えた。

一方で、ブールは射精後の虚脱感に襲われており、肩で大きく息を切らせていた。

「こりゃ、思わぬものを見ちまったぜ……」

徐々に萎え始めたブールの男根を見ながら、レオンは嬉々とした口調で呟く。

その口元は、粗野な性欲の表れのようにゆがめられていた。

「こんなもん見せられちゃ、こっちも黙ってらんねぇな」

レオンは、自らの股間をさすりながら舌なめずりをすると、僕達との出会い頭にティガが置いた荷物袋の元まで行き、袋の口を開けて中をあさり始めた。

少しして戻ってきた彼の手には、太いロープが握られていた。

「動くんじゃねぇぞ、おっさん」

言って、彼は、虚脱から覚めたブールの両手をロープでぎっちりと縛り、同様に両足も縛り上げてしまった。

ロープの太さからみて、いかにブールの力であっても引きちぎることはできないだろう。

両手足の動きを完全に封じられたブールの胸を、レオンは無造作に突いた。

縛られている為に踏ん張りの聞かないブールは、そのまま地面に仰向けに倒れる。

「こっちも縛っておくか」

次いで、レオンが僕の方に向かってきて、ブールに施したのと同じように、僕の手足をも縛り上げた。

「これでもう、脅しておく必要もないね」

ティガが僕の首筋から大剣を遠ざける。

刃が離れたことで僕は一時の安堵を得たが、状況は何一つ好転していないことに気付き、再び身を硬くした。

それを見て取って、ティガは大剣を収めながら言う。

「大丈夫だよ。

 命に関わるようなことや怪我は負わせたりしないから。

 といっても、これから彼には屈辱的な目に遭ってもらうけどね。

 もっとも、彼はマゾっぽいから、案外嬉しいかもしれないけど」

ティガの視線は、ブールに送られていた。

その目には、レオン同様、淫靡な色が濃い。

彼は倒れたブールへと歩み寄ると、

「そういうわけで、これからあんたを犯させてもらうよ?

 分かってると思うけど、妙な気は起こさないこと。

 あんたが抵抗しなければ、あの子には一切危害を加えないから」

そう言って念を押した。

ブールはティガと僕を交互に見やって、

「……約束は守れよ」

と、自らは抵抗しないことを、暗に受け入れた。

ティガが満足そうに笑ってうなずく。

安全が約束された僕は、それでも安堵はできなかった。

もしも約束を反故にされたら、何の意味もない。

何より、これによってブールが、僕の目の前で辱められることが確定してしまった。

「や――」

僕が『やめて』と声を発するより早く、ティガが手を挙げてそれを制した。

「キミも、妙な真似をしたら、彼がどうなるか、分かるね?」

その一言で、僕の動きも言葉も、抑え込まれてしまった。

もう僕達にできることは、無抵抗のまま、2人の気が済むようにさせるしかなかった。

 

 

並外れた体格の男が3人、焚き火に照らされ、一糸まとわぬ姿でひとところに集まっている様は、僕の目には壮観だったが、その気のない人々から見れば奇異そのものに映ったことだろう。

しかも、3人共に男根をいきり立たせているのだからなおさらだ。

行為はすでに始まっていた。

レオンは、跪いたブールの前に立ち、彼のそれよりも若干控えめな男根を、彼に咥えさせていた。

とはいっても、レオンのそれは体格に見合うだけの大きさは充分に備えている。

そのことからブールの男根が規格以上の物なのだということが、改めて分かった。

そんな彼の男根は、彼の背後に回ったティガによって握られ、上下に扱かれていた。

先走りと、今しがたの射精で放たれた精液にまみれた男根は、ティガの手の動きに合わせてグチャグチャと粘着質な音を響かせている。

「しっかりしゃぶれよ、おっさん。

 じゃねぇと、入れられた時にイテェ目に遭うぜぇ?」

ブールの2本の角を両手で掴んで、ゆっくりと腰を振りつつ、レオンが言う。

「なら、痛まないように、こっちもしっかりほぐしておこうか」

言ったのはティガ。

ブールの粘液でまみれた手の片方を、ブールの尻へと伸ばし、動かし始めた。

僕の位置からは、ブール自身の体に遮られていて見えないが、動きから彼の肛門をほぐしているのが分かる。

口、男根、肛門を犯され、ブールは屈辱に耐えるような表情を浮かべていた。

だが、それが次第に精気を失い、代わりに色を帯び始めるのに、そう時間は掛からなかった。

「ヘッ! 色気だしてきやがったな、おっさんよ。

 たまんねぇぜ、その顔……」

腰を振りながらレオン。

息が荒くなっているところから、射精感が高まっていることがうかがえる。

「こっちもだいぶほぐれてきたよ。

 もう指が3本も入ってるし、イけるよ」

気分を高揚させているレオンに、ティガがブールの肛門の具合を知らせる。

「まだそっちはいいや。

 とりあえず上澄み1発脱いときてぇからな」

そういうと、レオンはブールの口から男根を引き抜いた。

ブールの唾液にまみれたレオンの男根は、ヌラヌラと濡れそぼっており、焚き火の明かりを妖しげに反射している。

ビクンと脈動する様が、それをさらに助長させていた。

「さて、おっさん。

 これから1発ぶっ放すんだけどよぉ、あんた、口に出されるのと顔に出されるのと、どっちがいい?

 口に出されてぇなら咥えろ、顔に出されてぇなら扱け」

レオンが2択を突き付ける。

ブールからすれば、どちらも選びたくない選択肢だろうが、ほかに道はない。

しばしの逡巡ののち、ブールは縛られた両手をレオンの男根に伸ばした。

ブールがレオンの男根を両手で握り扱き始めると、レオンは嬉しそうに笑った。

「おうおう、顔射がお好みかい。

 ならその厳つい顔にタップリとぶっかけてやるよ。

 ……そうだ、いいこと思い付いたぜぇ」

言って、レオンは邪悪な笑みを、少し離れた所にいる僕へと向けた。

「ガキ、こっちに来い!」

「えっ……」

突然の命令に僕がすくんでいると、ブールが唸った。

「その子には手を出さない約束だろう!」

「危害は加えねぇよ、安心しろ」

僕に言ったのか、ブールに言ったのか、レオンは笑みを張り付けたままでそう言うと、僕を手招きした。

僕にも選択の余地がないことが、その笑みから察せられた。

恐る恐る、3人のそばに近寄る僕。

「そこだ、そこに座ってろ」

レオンが指さし指示したのは、3人から2mも離れていない地面の上だった。

角度的には、並んだブールの真横にあたる。

その為、それまでは位置的に見えなかったティガの行為がよく見えた。

ティガは熱心にブールの肛門を弄っていた。

人差し指、中指、薬指を束ね、その3本の指の根本が見えなくなる程まで、ブールの肛門に差し入れては引き抜く動作を、何度も何度も続けている。

それを続ける間も、もう片方の手でブールの男根を弄ることはやめていない。

握って扱くというよりは、撫でるという方が適切な程度の握力で、ブールの男根を優しく刺激していた。

「おい、ガキ!」

ティガの動きを観察していた僕を、レオンが見咎めるように呼んだ。

「相棒のケツが弄られるのを見るのが楽しいかよ?

 こっちはもっと面白れぇもん見せてやれるぜぇ?

 ……オラ、もっとしっかり扱けよ!」

再びブールの両角を掴んで、荒々しく怒鳴るレオン。

応えて、ブールは男根を握る握力を強め、扱く速さを増した。

「おおう、いいぜ…………ついでに舌出してチンポ舐めろや」

重ねて命令するレオン。

言われるまま、ブールは扱いている彼の男根に顔を近付け、舌を伸ばすと、男根の根元から亀頭に至るまでを舐め上げ始めた。

「おお……たまんねぇ……」

吐息を漏らし、レオンは恍惚の表情でブールの行動を見守る。

一方のブールも、虚ろな表情でレオンの男根を愛撫し続けている。

「もっと裏筋の辺りを舐めろよ……そこが一番キくんだからよ……」

鼻息を荒くしながら、レオンが命じると、すぐさまブールは裏筋を中心に舌を這わせた。

「ああ……」

レオンは、筋肉を痙攣させながら、夜空を仰いで嬌声を上げた。

ブールの竿を扱く手の動きと、裏筋の周囲を舐め回す舌の動きとに、レオンの射精感は高まり続けているようだ。

それから間もなく、レオンはブールの両角をきつく握った。

「おおお!! イクぜぇぇぇ……!!!」

宣言するが早いか、レオンの亀頭から大量の精液が迸った。

先程のブール程の量ではないにしても、大量と呼ぶにあたいする量の精液は、目前にいたブールの顔面に容赦なく叩き付けられていった。

射精の寸前、レオンは男根の角度を、すべての精液がちょうどブールの顔面に命中するように調整した為、まさにそれは叩き付けるというのにふさわしかった。

黒い被毛に覆われたブールの顔面が、みるみるうちに白く染まっていく。

10を超える精液の吐出が終わる頃には、ブールは目も開けられない程の精液を浴びる羽目になっていた。

直前まで裏筋を舐めていたことから、間違いなくいくらかの量の精液は口に入ってしまっただろう。

肩で息をするレオンは、満足気な表情で、自らの精液で染まったブールを見下ろしていた。

僕には、今のレオンの気持ちが何となく分かってしまった。

僕も何度かブールの顔に射精したことがあるが、あれは何とも言えない征服感をもたらしてくれる。

おそらくレオンも同じ心情で、今、ブールを見下ろしているのだろう。

「……どうよ、なかなかいい眺めだったろうが」

息を荒げたまま、レオンは僕を見下ろして言った。

「…………」

僕は何も答えられなかった。

気に入らない、が、確かに今のブールの状態は扇情的ではあった。

実のところ、浅ましいことに、僕の股間はすでにはちきれんばかりに勃起していた。

ブールがこんな目に遭わされているというのに、だ。

先走りが溢れ、下着を汚しているのも分かる。

僕は混乱していた。

ブールを犯す2人に対する嫌悪はある。

しかし、いざブールが犯され始めると、僕の股間は否応なく反応してしまったのだ。

理性としての嫌悪、本能としての情欲。

その狭間で僕は揺れていた。

「ヘッ! 絶景過ぎて声も出ねぇか?

 さて、次はどうしてやろうかね」

言いつつ、レオンは自分達の荷袋へと歩み寄り、中からいくつかの棒状の器具を取り出した。

そして、ブールの前に戻りながら、慣れた手付きでそれらを組み立てていく。

完成したのは、両端に枷の付いた1m程の棒だった。

次いで、彼はブールを地面の上に仰向けに転がすと、両足を縛っている縄を解き、代わりに枷の付いた棒をブールの両足にはめた。

両足にはめられた枷によって、ブールは再度足の動きを封じられると共に、足を閉じることができなくなってしまった。

「いい格好だぜ」

レオンは自らに向かって開脚し、恥部をさらけ出しているブールをニヤついた目で見下ろして呟いた。

彼はさらにブールの両足を掴むと、乱暴に持ち上げてひっくり返し、尻を空に突き上げる体勢を取らせた。

「ケツもいい具合にほぐれただろうし、まずはコイツを突っ込んでやるよ」

再度荷物袋をあさっていたレオンが取り出したのは、男根を模した張り型だった。

長さ太さはブールのそれより一回り小さい。

しかし、それでも一般的な男根の大きさよりも一回りは大きいだろう。

「あのガキのちっせぇチンポよか気持ちよくなれるぜ?」

僕を見て、レオンがせせら笑う。

実際、彼の持つ男根の張り型は、僕のそれの倍の大きさはある。

ブールは僕の男根でさえ喘ぐのだから、効果はてきめんだろう。

そんなことを思いつつブールの方を見れば、彼は自らの男根越しに張り型を凝視していた。

(……あっ)

ボクはブールの表情の変化に気付いて目を剥いた。

焚き火に揺れる彼の表情からは、それまでの屈辱的な色が薄れ、淫靡な色が濃くなっている。

それは、いつも僕との行為に及ぶ際のそれとよく似ており、彼が恥も外聞も捨てて乱れる前兆ともいえる表情だった。

「さ、こっちにおいで。

 ここからじっくり見物しよう」

駆けられた声に我に返ると、ティガが僕を手招きしていた。

彼が指し示したのは、自らの前、ブールの体の正面がよく見える位置だった。

ブールの表情を観察しつつ、僕はティガに招かれるままに移動した。

「さて、そんじゃ、突っ込むぜ」

レオンが、ブールの毛皮からすくい取った彼自身の精液をまぶした張り型を片手に宣言する。

そして、空いたもう片方の手をブールの尻に添え、張り型の先端を彼の肛門目掛けてゆっくりと下ろしていった。

位置の関係でブールの表情は伺いづらいが、男根がビクンと大きく痙攣したのが目に入った。

それはまるで、張り型が挿入されるのを心待ちにしているような反応だった。

「入るぜ」

レオンの言葉と同時に、張り型の先端がブールの肛門に押し当てられた。

「……ん、おお、おあぁぁぁぁ……!」

ミチミチという音が聞こえてくるような光景と共に、ブールの口から呻き声が漏れ出した。

「おっほ! すっげぇキツいぜ、この穴!

 こりゃ、ぶち込んだらたまんねぇだろうなぁ!」

嬉々とした声をあげながら、レオンは張り型をブールの肛門に押し込んでいく。

張り型は見る間に飲み込まれていき、ブールの肛門はあっという間に張り型を根本まで飲み込んでしまった。

「ヘッ! 全部飲み込みやがった」

驚きか嘲りか、言うとレオンは、張り型の持ち手をグイグイと円運動させ始めた。

「おっ……おおぅ……ぐっ……!」

張り型が腸内で暴れ回る刺激に、ブールは体をわななかせて呻く。

「いい反応するじゃねぇかよ、おっさん。

 ティガの奴よりいい反応だぜ」

レオンが僕の後ろのティガに意味ありげな視線を送る。

「ノーコメント」

ティガは笑い含みにそれを受け流した。

面白くなさそうに鼻を鳴らし、レオンは視線をブールに戻と、グイッと大きく張り型を動かした。

その途端、

「おうっ!?」

ブールが一際大きな声を上げた。

「ハッ! いいとこに当たっちまったか!?」

ブールの反応に、レオンは喜悦の表情を浮かべた。

そして、張り型を大きく動かし回す。

「ここか? それともこっちか!?」

「おっ! あっ! あっ! はっ!」

レオンが張り型を動かすたびに、ブールの口から断続的に声があがる。

色を帯びたその声は、間違いなく彼が快感を受けていることを証明していた。

全身の微細な痙攣は止まらず、時折、嬌声と共に大きな痙攣を引き起こす。

両手足を封じられた体を仰け反らせ、男根からは先走りをほとばしらせた。

「ハハッ! こりゃ面白れぇ!」

子供のように喜びながら、レオンは張り型を動かし続けた。

「んぁ! ああああ!! はぁぁっ!!」

ブールは体を仰け反らせたまま硬直する。

動くのは、快感に反応する男根と、見開かれた瞳のみ。

その瞳が、僕の視線とかち合う。

「……っ!!!」

ブールの見開かれた目が、いっそう大きく開かれた。

そして、ブールの動きが完全に止まる。

僕にはブールのその反応の意味が分かった。

それは、僕の目の前で醜態を晒すことの羞恥と、それを享受してしまった申し訳なさからくる反応に違いなかった。

しかし、僕はそれを情けないとは思わないし、責めることもしない。

というよりも、する資格がない。

なぜなら、

「……濡れてるね」

耳元で囁かれ、同時に股間に刺激が加えられ、僕は体の毛を逆立たせた。

囁き、刺激を加えたのは、ティガだった。

彼の指は、痛いほどに勃起した僕の男根の先端を、衣服越しに撫で回していた。

見れば、布がじんわりと湿っており、彼の指の腹には僕の先走りが、わずかながら付着している。

「さて、困ったね。

 どうしようか、これ?」

不気味な程に優しい声音で問われ、僕はブールを見る。

ブールの視線は、僕の股間に注がれていた。

いつの間にか、レオンも動きを止めて僕を見ている。

「……我慢する?

 それとも…………キミも参加する?」

理性を奪うような悪魔のささやきが、僕の長い耳に染み込んでいく。

「オレ達はキミに手出ししないって約束したから、これ以上は何もしてあげられないけど、もしキミが望めば……」

ティガは言葉を切り、再度僕の男根に添えた指をゆるゆると動かした。

言葉の先は分かっている。

僕は、反射的にブールを見た。

再び、彼と視線が交わる。

(……ああ、もう、だめだ……)

ブールの視線に混じった色を見て、僕の理性は砕け散った。

 

 

獣のまぐわい。

兎と牛と、虎と獅子。

4人が乱れ、交わるそこに、もはや邂逅時の敵意や殺意など、微塵もなかった。

そして、理性も。

ただただ、4人が4人共、快楽の波に溺れ、流されていくだけだ。

全身を先走りと精液にまみれさせ、僕達は快楽を貪り続ける。

何度果てたか分からない。

ブールの、ティガの中に差し込み果て、レオンに咥えられて果て、自ら扱いて果て。

頭の芯が痺れる程に、僕は快感に酔った。

やがて、長いまぐわいの時は終わりへと近付く。

「……そろそろ夜明けだ」

ブールの男根を扱いていたティガが、空を見上げて呟いた。

つられて見上げれば、空は薄っすらと白み始めていた。

虫の音もいつの間にかやんでおり、直に、鳥達の声が聞こえ始めるだろう。

「ヘッ! 夜が明けようが構わねぇよ。

 もっと楽しもうや」

ブールの肛門に男根を突き刺したまま、レオンが、出会った当初とはまるで別人に思える気さくな口調で言う。

交わりを続けるうち、いつの間にやら僕達に対する怒りが霧散したらしいことは、行為を続けている最中に分かったことだが、するとどうやらこれが彼の性格の地らしい。

そんなレオンの言葉を受けて、ティガがブールの男根から手を離して言う。

「なら、最後にもう一発ずつイこうか。

 さ〜て、と、最後はどうやってヤろう?」

ティガは元々僕達に対する敵意はあまりなかったようで、こちらは出会った当初とほとんど変わらない。

「ん〜、あらかたヤり尽くしちまったからなぁ……」

言いつつ、レオンもブールの肛門から男根を抜き放った。

そして、僕とブールを見て続ける。

「おめぇ等はどうしたい?」

尋ねられた僕とブールは、顔を見合わせる。

「……俺は別に、何でも構わん」

これまでの行為の最中で、両手足の戒めは解かれていたブールは、手首をさすりながら、いつも通りの静かな口調で言った。

その口調からは、これまでにされた屈辱から来る負の感情は、まったく感じられない。

「僕も別に……」

それは僕も同じことだった。

行為を重ねるうち、当初のいさかいはなくなり、僕達は快楽のもとに打ち解けていた。

「何だよ、主体性のねぇ奴等だなぁ。

 もっとこう、こういう体位でヤりてぇとか、こういう風にイきてぇとか、ねぇの?」

拗ねたようにレオンが言うと、

「俺達はお前のように変態ではないからな」

と、ブールが返した。

それを聞いた僕とティガは思わず噴き出した。

「それ、あんたが言っていいセリフじゃないよ」

「同感」

ティガの言葉に、僕が賛同する。

何しろ、4人の中で、もっとも変態的と言える絶頂を披露したのはブールだったのだから。

男根を3人の足で踏みにじられて果て、肛門を指でくじられただけで果て、ティガとレオンの要望に応えた僕に男根をはたかれて果て、挙句の果てには、2人が予想したように、僕に睾丸を枯れ枝で打ち据えられて果てたのだ。

最後の1つは、変態というより、異常といった方が適切なのではないだろうか。

「む……」

指摘されたブールは唸って黙り込んでしまった。

「ん〜、これでお別れってんでも構わねぇが、それじゃ面白味がねぇしよぉ……」

唸り、考え込むレオン。

が、しばらくして何かを閃いたように、顔を明るくした。

「閃いたぜ! 最後はいっちょ、センズリ大会といこうじゃねぇか!」

「はぁ?」

気の抜けたティガの反応に、レオンは僕達を見回す。

「だってよぅ、事の初めの1発目は、ブールのおっさんのセンズリだったじゃねぇか。

 だから最後の締めもセンズリで締めようや」

言うが早いか、僕達の答えを待たず、レオンは仁王立ちになって自らの男根を握り締めた。

「おいおい……」

呆れた調子でティガがため息を漏らすが、レオンは構わず扱き始める。

右手で竿の部分を握り込み、左手の指の腹で竿と亀頭の繋ぎ目の裏筋を撫でる。

レオンの最大の性感帯は裏筋だ。

粘液でヌルついた左手の指の腹は、さぞかし良い刺激を与えていることだろう。

息荒く自らの男根を刺激し続けるレオンを、いつしか僕達は黙って見続けていた。

そんな僕達に誇示するように、レオンは様々に男根への刺激の仕方を変えていった。

亀頭を中心に竿から玉袋から、やわやわと撫でる。

竿を両手で掴んで、先走りと精液の混合液が飛び散る程豪快に前後に扱く。

竿と玉袋の根本を握り込み、その形がくっきりとなるようにしてから、掌全体を使って撫で回す。

様々な方法で男根を刺激しては、息荒く、自らを昂ぶらせていった。

そして、最後は、最初にしていたように、右手で竿を扱き、その動きに合わせて左手の指で裏筋を撫で、

「おお……イくぜっ!!!」

宣言して、絶頂を迎えた。

さすがに、ここに至るまでに出し過ぎたせいで、精液はほとんど出ず、鈴口から白い糸となって滴るだけだった。

「はぁ〜…………さすがにもう、これっぽっちしか出ねぇや」

満足の吐息を吐き、鈴口から滴っている精液を見て、レオンは呟いた。

そうして、その場にドカッと腰を下ろすと、ティガを見た。

「次はオレね」

視線の意味を察したティガが立ち上がる。

そして、下生えの上に投げ出されていた張り型を左手に取ると地面に立て、その上に腰を落とし始めた。

ゆっくりと、正確に、張り型の上に腰を下ろすティガ。

ズブズブと張り型が彼の肛門に飲み込まれていき、やがて見えなくなった。

蹲踞の姿勢を維持したまま、彼は左手を背後から回して張り型を地面に固定し、腰を上下に動かし始める。

次いで、右手で男根を握り、前後に扱き始めた。

粘着質な音は、男根と肛門、両方から。

双方からの刺激を受け、ティガの表情が次第にとろけていく。

溢れる先走りは、上下動に合わせて糸を引きながら、彼の前の下生えの上に滴っていった。

「……ぁあ……そろそろ……!」

虚ろな目に妖しい光を灯しながら告げると、ティガは右手を男根から離した。

その直後、

「あっ……!!」

短い嬌声と共に、彼は射精した。

右手という支えを失った男根は、彼の続ける体の上下動に合わせて、上下に大きく振れ、溢れた精液は微量だったが、動きに揺さぶられて大きく飛び跳ねた。

次第に体の動きも収まっていき、最後には張り型を肛門から抜いて、ティガもその場に腰を下ろした。

「今日、もう何度イったのかな……」

疲れ切った口調で言って、ティガは僕に視線を向けた。

次は僕の番、ということらしい。

僕は立ち上がると、右手で男根を握って扱き始めた。

3人と違い、包皮が常時向けていない僕の男根は、動きに合わせて大きな粘着質な音を辺りに響かせ始めた。

包皮が亀頭の上を滑る感覚が、とてつもなく気持ち良い。

しばらくそうして扱いていると、レオンから野次が飛んできた。

「ビット坊、それじゃ普通すぎてつまんねぇよ。

 もっとこう、面白れぇヤり方しろよ」

(そんな無茶な……)

思い、僕が手を止めて困惑の視線を送ると、レオンはニヤッと笑う。

「そうなぁ、せっかく皮余ってんだから、そん中に指突っ込んでヤるとかよ」

「…………」

おそらく、彼がそれを見たいだけなのだろう。

そういった魂胆が見え透いていたが、仕方なしに僕は言われた通りにしてみた。

右手で包皮を剥ききり、亀頭に左手の人差し指を添わせると、包皮を元に戻した。

包皮は難なく戻り、人差し指ごと亀頭を包み込む。

このまま包皮を剥き戻ししようか、ほんの数拍迷ったが、何となしに人差し指のほうを動かしてみた。

「んっ!」

思いのほか強い刺激が走った。

溢れた先走りが潤滑剤となって、包皮と亀頭の間を指が滑る。

両方に与えられる摩擦は、これまでに経験したどの快感とも異なり、時折当たる爪の先が刺激に強弱と緩急をつけた。

新感覚の刺激に、僕は堪らなくなって膝を震わせる。

特に指先が裏筋を擦った時は、膝から崩れる程の快感の痺れが走った。

刺激に溺れた僕は、そこを重点的に責め立てた。

右手は包皮が剥けないように固定したまま、しこたま包皮と裏筋の間を擦り続けていると、やがて限界が訪れる。

「ひぁっ……あっあっ!!」

情けない声と共に、僕は快感の限界を超えた。

包皮口からドロリと精液が溢れ、左手の人差し指を伝って滴る。

それを見ながら、僕はその場に尻餅を着いてしまった。

指を引き抜くと、それに追随するようにして、包皮内部から精液が溢れた。

肩で息をしながら、僕は顔を上げてブールを見た。

ティガとレオン、2人の視線もブールに向かっている。

「…………」

ブールが無言で立ち上がる。

そして、右手で男根を握ろうとした瞬間だった。

突然、レオンがブールに飛び付いた。

「ッ!?」

ブールが仰向けに地面に倒れる。

「何を――!?」

驚きの表情を浮かべるブールの男根を、レオンががっしりと握り込んだ。

「ヘヘッ! ブールのおっさんのセンズリは、もう見たからな。

 最後の一発はオレ等で抜いてやんよ」

言うが早いか、レオンは握ったブールの男根を扱き始める。

「それも、そうだね」

レオンの行動に反応したのはティガ。

倒れたブールに這い寄ってその上体に達すると、両手の指で乳首を弄り始めた。

残された僕は、少しの間2人に蹂躙されるブールを眺めていたが、やがて2人に触発されるように彼に近付き、肛門を刺激し始めた。

「んっ……おっ……」

僕達3人による責めに、ブールの体が反応し始める。

レオンに握られた男根は硬さを帯び始め、ティガに弄られた乳首は硬く立ち、僕に指を抜き差しされている肛門は伸縮を繰り返す。

3点を責められ、ブールの表情は徐々に崩れていった。

僕達は思い思いにブールを責め続けた。

そうしてしばらくして、レオンが僕に目配せした。

「……?」

意味を捉えあぐねて眉根を寄せていると、レオンは顎でブールの男根を指し示す。

ふと、視線が合ったティガも、僕とブールの男根を交互に見て、うなずいてみせた。

(……僕がイかせろってこと、かな?)

そう判断して、僕はブールの肛門から指を抜き、レオンの代わりに男根を握った。

レオンがブールから少し離れ、それを見たティガも離れる。

ブールを見れば、彼は、行為中、いつも見せるとろけた視線を僕に送っていた。

僕は彼の視線に応え、行動を再開した。

男根を両手で支えて扱き上げ、舌をその表面に這わせる。

2本の前歯で裏筋を擦り、鈴口を突き刺し、引っ掻く。

竿と亀頭を舐め回しながら、両手で玉袋の中の睾丸を転がすと、ブールの竿はビクビクと痙攣を始めた。

ピシリと指先で睾丸を軽く弾けば、彼は小さく呻いて筋肉を収縮させる。

しかし、竿と亀頭を舐められると、それもすぐに収まった。

ここに至っても止めどなく溢れる先走りを口に含むと、雄の匂いが口内に充満する。

竿の痙攣が激しくなってきた。

そろそろ限界だろう。

僕は大きく口を開けると、ブールの男根を咥えこんだ。

口内一杯に満ちた彼の男根を、舌と頬と、時に歯を使って擦り上げる。

両手は竿を、そして睾丸を揉みしだき、口の動きと同期させた。

そして、いよいよブールの男根が口内で膨れ上がった。

僕はこれまでになく頭を前後に振って男根を刺激し、両手で睾丸を弄り回す。

「おあおおおぉぉぉぉ!!!」

絶叫が頭上から降ってくる。

僕は力一杯に男根を吸い上げ、同時に睾丸を弱く握り締めた。

途端、喉の奥を、熱い塊が直撃した。

「おおぉぉぉ…………」

次第に弱くなるブールの声に合わせて、男根が縮んでいく。

精液の出なくなった男根から口を離すと、僕は口内に残った精液を、ゴクリと音を立てて飲み込んだ。

ブールは大の字になって地面に倒れたまま、腹で大きな呼吸をしていた。

そんな彼と、ゲフッと僕が息を吐き出す様を、ティガとレオンはニヤニヤと見つめていた。

 

 

「じゃ、これで」

「じゃあな、お2人さん」

身支度を整えたティガとレオンの2人は、それだけ告げると森の中へと消えていった。

来た時よりも荷袋を1つ増やして。

2人の背中を見送って、僕とブールはどちらからともなく顔を見合わせる。

「…………行くか」

「…………うん」

いつものように、言葉短く言った彼に答えて、僕はうなずいた。

僕も、そしてきっとブールも、言いたいこと、言うべきことはあるだろう。

しかし、僕達はそれらを胸に秘め、いつものように準備をし、いつものように出発した。

何も言わずとも、お互いの気持ちは分かっているから。

 

 

 

 

 

数日後。

街道沿いにある村の食堂で僕とブールは昼食をとっていた。

と、突然、食堂のドアが大きな音共に開かれた。

驚いてそちらを見れば、そこには見知った2人が立っていた。

『あ……』

僕とブールの驚きの声が重なった。

「おあっ! 見つけた!!」

2人のうちの片割れが発する聞き覚えのある大音声が僕達に届いた。

「何で……?」

思わず僕が呟くと、ずかずかと大股で店内をこちらに進んできたその人物は、憤怒の形相を顔に張り付けて、勝手に僕達の席の空いた椅子にドカッと腰を下ろした。

「何でもクソもねぇよ!!

 おっさん、メニューの料理全部持ってきてくれ!!」

怒気を孕んだ声で、その人物は店主に向かって叫んだ。

「おい、あまり無駄遣いするなよ」

いつの間にやら近付いていたもう1人の人物が、咎めるように言う。

「……なぜここにいる?」

ブールの低く寡黙な声に、咎めた人物が答える。

「いやあ、色々とあってね。

 オレ達、賞金稼ぎの組合、クビになっちゃったんだわ」

『は?』

その人物の答えに、僕とブールの2人は、再び声を重ねた。

 

 

店に入ってきた2人は、誰あろう、ティガとレオンの2人だった。

ティガの話によると、僕達と出会ったあのあと、組合に戻った2人とほかの賞金首の間で、再びもめごとが起きたらしい。

かいつまんで言うと、レオンが『すこ〜しやり過ぎた』相手からの報復があり、それに応戦したレオンが、今度は『だいぶやり過ぎた』そうだ。

その結果、2人は組合を追放された、とのこと。

「……はぁ」

呆れ果てた相槌を僕が打つと、ティガは苦笑いをする。

一方、当事者のレオンは、テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々を、片っ端から口に運んでいた。

どう見てもやけ食いだ。

「それで……『見つけた』とは?」

腕組みをしていたブールが、ティガに問い掛ける。

そういえば、たしかに、そんなことを言った気がする。

問い掛けに対し、ティガは耳の後ろをポリポリと掻き、

「いやぁ、特に行くあてもなかったもんでね。

 で、まぁ、レオンはこの調子だし、どうにも困り果てちゃってさ。

 そこで思いついたのが、あんた達のことだったんだよ」

「……どういうことだ?」

「あっ、勘違いしないでくれよ?

 別にあんた達が原因だ、なんて言おうってわけじゃないんだ。

 ただ、ほら、アレだ。

 オレとレオンの2人で気ままに旅に出てもよかったんだけどさ、『旅は道連れ世は情け』っていう言葉があるじゃない?

 だからさ…………まぁ、簡潔に言うと、一緒に旅とかどうかな〜って」

『……は?』

思いもよらなかった提案に、僕とブールは三度声を重ねた。

そこへ、料理を貪っていたレオンが口を挟んだ。

「要はアレよアレ、色々と『具合』が良かったから、一緒に旅しようぜってこった!

 言っとくが、断っても無駄だぜ!

 勝手についてくからな!」

『…………』

これはどうにも断っても無意味そうな調子だ。

僕とブールは、顔を見合わせることしばし。

ブールは深いため息をついて、

「……勝手にしろ」

と、一言、2人がついてくることを遠回しに肯定した。

「おう! 勝手にするぜ!

 んじゃ、よろしくな、お2人さん!」

「よろしく。 ……あ、路銀の心配はしないでいいよ。

 こっちはこっちで勝手にやってるからさ」

交互に挨拶する2人を見て、僕とブールは苦笑いを浮かべた。

 

 

これまで静かだった旅だが、これからは騒がしくなりそうだ。