首が飛ぶ。

まるでボールのように空に舞ったそれは、綺麗な放物線を描いて地面に落ちた。

噴水のような血飛沫を上げて倒れる、首のない体。

その血飛沫を浴び、真っ赤に染まる僕の体。

そして、倒れた首のない体の向こうに立つ、首を刎ねた男の体もまた、真っ赤に染まる。

いや、もともと男の体は真っ赤に染まっていた。

辺りに伏す無数の屍が流した血によって。

それはすべて、この男1人が築いたものだった。

今、この場に生きている者は、僕と男だけ。

僕の属していた傭兵団は、この男1人によって、僕1人にまでされてしまった。

頑強な体躯に厳めしい顔付き、そして1対の立派な角を生やしたその雄牛の男は、すべての仲間を斬り捨てた重く分厚い片刃の大剣を片手に、鮮血に染まった僕の姿を傲然と見下ろしていた。

その姿は、雄々しく、荘厳に見えた。

男は大剣を一振りして血を掃うと、何を思ったか鞘に収めた。

そして、目の前の僕に構うことなく踵を返し、惨場から離れた場所に置かれていた自分の荷物袋を担ぐと、1人、屍の平原を去って行った。

まだ子供にすぎない僕など、斬るに値しないということだろうか。

何事もなかったかのように歩き去る男の後ろ姿を見つめながら、僕は辺りを見回す。

もはや動く者はなく、音を立てる者もない。

ただ血臭を放つ屍が無数に散乱しているだけだ。

もう、ここにいても意味はない。

やがて禿鷹や野犬が臭いを嗅ぎ付け、喰い荒らしにくるだけだろう。

視線を戻すと、男の後ろ姿は、ゆっくりと小さくなっていくところだった。

居場所を失い、行く場所もない僕が取った行動は、僕自身にも意外な行動だった。

僕は顔に着いた鮮血を赤く染まった袖で拭うと、ゆっくりとした足取りで男のあとを追った。

別に仇討ちをしようというわけではない。

この傭兵団にそれほどの思い入れがあるわけでもないからだ。

ならばなぜ?

それは僕にも分からなかった。

ただ、もし漠然とした理由を付けるならば、鬼神の如き強さで仲間を屠っていった男に、何かしら心を惹かれるところがあったからかもしれない。

僕は男と付かず離れずの距離を歩く。

男は振り返りもせず、まっすぐに歩く。

僕に気付いてはいるのかもしれないが、もしそうであったとしても、振り向かないところを見ると、僕の存在を気にも留めてないようだ。

そうして僕は、男の後ろを付いて歩き続けた。

血が乾き、変色し、固まっても、僕は男のあとに付いて歩き続けた。

 

 

草原を越え、丘を越え、歩く。

そうやってどれほど歩いただろうか。

男は一度も振り返ることもなく、歩みを止めることなく進み続け、山間を流れる川の畔でようやくその足を止めた。

すでに日は暮れ始め、山間のこの場所は薄暗い。

しかし、川の流れるこの場所は、初夏のこの時期には、時間帯と相まって涼やかに感じられた。

男は荷物袋を降ろしてから、マントや上半身を覆うだけの簡素な鉄鎧を外すと、ブーツもズボンも脱ぎ捨てた。

血に汚れていない下着はそのままに、ほぼ裸になった男は、川に身を浸し、乾いた血をこすり落とし始める。

固まった血は、粕のようになり、川を流れていった。

次いで男はマントやブーツ、ズボンも川に浸し、洗い始めた。

鉄鎧は、濡れた手拭で乱雑に拭き洗う。

僕は、遠巻きにその様子を眺めていた。

程なくして、男は体と衣服を清め終えると、濡れたそれらはそのままに、川の上流に見える森の方へと向かっていった。

男の姿が遠ざかると、僕は手にしていた荷物の入った革袋を下ろし、男と同じように下着を残して身に付けている物を脱ぐと、同じように身を、そして衣服を川で清めた。

固まった血糊は、体と衣服共に、力を入れて擦らなければ落ちなかった。

僕が血糊に悪戦苦闘し、ようやくすべての血糊を落とし終えた頃、男が森から戻ってきた。

両脇には大小様々な大量の木の枝、そして2羽の兎が抱えられており、男は川の畔の少し広い所にそれを下ろすと、枝の中からいくつかを選んで、手慣れた手付きで火を起こし始めた。

間もなく火が起こり、くべられた枝によって大きくなる。

男は火が安定したのを見ると、濡れた衣服を火の熱がよく当たる岩場に広げ、自身は火の近くに座り、森で狩ってきたのであろう兎を、短剣を用い、これまた手慣れた手付きで捌き始めた。

それを見ながら、僕は岸へと上がり、火の熱が感じられるギリギリの境界線に座り、男と同じように衣服を広げ、火の恩恵にあずかった。

見れば、男は捌き終えた兎の肉を短剣に突き刺し、火で炙っているところだった。

日の傾きから、夕餉にはちょうど良い時間だ。

僕は革袋の口を紐解くと、中に入れてある干し肉を取り出し、男が兎の肉を炙っているのを見ながら食んだ。

しばらくして、肉が焼き上がったのか、男は豪快に肉を食らい始めた。

と、一瞬男と目が合った。

しかし、次の瞬間には、男は肉を食らう作業に戻ってしまったので、今の視線の交わりが何の意味を含んでいたのかは、よく分からなかった。

男は瞬く間に肉を平らげると、あとは何をするでもなく、脇に置いてある枝を折りながら、焚火の中に放り投げ、火が絶えないようにしていた。

僕は食事もそこそこに、その様子をじっと眺めていた。

男が枝を折る音と、焚き付けがパチパチと爆ぜる音が妙に心地よく、僕はそれを子守唄に、ウトウトとし、ついには眠りに落ちてしまった。

 

 

物音に目を覚ますと、すっかり夜は明け、ちょうど男が乾いた衣服を着終えて鎧を身に付け始めるところだった。

出発するつもりなのだろう。

僕は慌てて飛び起き、急いで乾かしてあった衣服を着始めた。

僕が半ばまで着終える頃、男はすっかり身支度を整え、こちらを一瞥もせずに、昨日兎を狩ってきた森の方へと歩き出してしまった。

男が森の中へ入って見えなくなってしまう前に、身支度を整え終えた僕は、足早に男のあとを追う。

森の中は朝だというのに薄暗く、湿っぽい空気が漂っていた。

木々を避けながら、道なき道を黙々と歩く男を見失わないよう、僕は苦労しつつも追った。

そうして追いすがること数時間。

ようやく森を抜けた頃には、太陽は真上にまで達しており、それまで歩き通しだったこともあって、太陽の日差しは非常に暑く感じた。

森を抜けた先には、緩やかな丘が幾重にも広がっており、短い草々が青々と茂って、わずかな風に揺れていた。

男は足を止めることなく、変わらぬ足取りで、まっすぐに進み続ける。

僕は疲労もさることながら、足の痛みに襲われて、追いすがるのがかなり辛い状態になっていた。

しかし、それでも僕は、足の痛みをこらえ、疲れをおしながら、男のあとを懸命に追った。

しばらく歩き、丘を3つほど越えたところで、少し離れた場所に小さな泉が湧いているのが見えた。

男は、今日初めて足を止めると、泉の方を見て、そちらに向かって進路を変える。

僕もそれに従い、泉の方へと歩を向けた。

泉は直径5mくらいの大きさで、深さはそれほどでもなさそうだが、何ヵ所かの湧水が1つにまとまった様を呈していた。

泉の一端からは小川とも呼べる流れが、丘の下方に向かって流れている。

男は、底の見えるほどに澄んだ泉の水をすくい、口に入れ、次いで荷物袋の中から水筒を取り出すと、中に入っていた水を捨て、新たに泉の水を汲んだ。

僕は男から少し離れた場所で、同じように泉の水を飲み、途中ですっかり空になってしまった水筒を革袋から取り出し、満たす。

しっかりと蓋をし、革袋に戻しながら、僕はチラリと男を見る。

男は泉の淵に座り込み、荷物袋の中から干し肉を出して、やや遅めの昼食をとっていた。

僕もそれに倣い、革袋から干し肉を取り出し、食む。

取り出しついでに、干し肉の量を確認するが、このままのペースでいけば、あと2日ほどで干し肉は無くなってしまう。

町にでも寄れれば、金の蓄えは多少あるので、なんとかもつのだが、男がどこへ向かっているのかが分からない以上、町に寄るという選択肢は、ないと思った方がいいのかもしれない。

となると、昨日男がしたように、どこかで食料を自力調達しなければならない。

幸い、荷物の中には、簡単な弓矢や釣竿を工作する為の道具や動物を捌いたりできる道具は、一通りそろっている。

材料があり、獲物さえ見つけられれば、なんとか食うに困ることはないだろう。

こんなことならば、通ってきた森の中で、弓矢や竿の材料になる木の枝でも拾ってくればよかった。

そんな後悔を感じながら干し肉を食んでいると、視界の片隅で男が立ち上がるのが見えた。

どうやら出発するらしい。

僕は遅れないよう、食んでいる干し肉を急いで飲み下し、男のあとを追った。

 

 

丘を、平原を、森を、山を、谷を越え、小さな村を抜け、さらに進む。

男の目的地は分からない。

ただやみくもに進んでいるようにも思えるし、どこかに目的地があるようにも思える。

そんな状態のまま、男と出会ってから早1週間が経とうとしていた。

途中で立ち寄った、というよりも通り過ぎた村で、わずかながら食料を調達できたのは幸いだったが、それはもはや3日程前に食い尽くしてしまっていた。

同じく、途中で分け入った森で拾った枝で弓矢を作り、それによって得られたわずかな食料も、昨日の朝で食い終えてしまった。

実際のところ、僕は狩りが苦手だった。

獲物が大量にいるならまだしも、まばらにしか確認できないような場所では、見つけるだけでも一苦労するのに、成功率も低いとあっては目も当てられない。

数日前の、獲物さえ見つけられれば、という自分の楽天さが恨めしい。

なんとかしなければ。

そんな僕の不安をよそに、今日も男は黙々と進み続けていた。

日は中天を過ぎ、汗ばむくらいの暖かさだ。

荒野に点在している岩々の1つに腰掛けた男は、遅めの昼食を取っていたが、食料の尽きた僕は、ただその様子を恨めしげに見ていることしかできなかった。

こんな荒野では、獲物など見つかろうはずもない。

食料調達をあきらめ、水だけを飲んで空腹を紛らわす。

男が昼食を終えるまで、何度となく腹の虫がなった。

 

 

その夜、男が野営地として選んだ場所は、山のふもとの森近くを流れる小川に程近い岩場だった。

男と出会った最初の夜の野営地に似ている。

その時と同じよう、男は小川で身を清め、同じように森へと分け入り、獲物を仕留めて戻ってきた。

一方の僕は、空腹のせいもあってか、肉体的に酷く疲れ、すぐさま小川近くの岩場に荷物を降ろしてへたり込んでしまった。

獲物を仕留めて何かを食べなければとは思うのだが、思うように体を動かすこともままならない。

少し離れた場所では、男が火をおこして、捌いた獲物を炙っていた。

肉の焼けるいい匂いが辺りを漂い、それがさらに僕の腹を刺激した。

獣の唸り声のような腹の音が鳴る。

それが聞こえたのか、男がチラリとこちらを見た。

が、すぐに視線を戻す。

そして、しばらくして、焼き上がった肉を食らい始めた。

それを見続ける僕の腹の音は止まらない。

むしろ大きくなっているような気さえした。

何とか腹を紛らわそうと、小川に這い寄り、頭ごと小川に突っ込んで水を飲む。

しかし、そんなことをしたところで、空腹が癒されるはずもなく、腹の音はますます酷くなっていった。

そんな風に僕が空腹相手に苦闘していると、不意に男が食事の手を止め、こちらを見た。

無表情な顔からは、何の感情も読み取れない。

しばらくの間、僕は男と視線を交わす。

すると、男は、炙っていた肉の刺さった串を1本手に取り、無造作にこちらに投げてよこした。

岩場に肉の刺さった串が落ち、香ばしい匂いを発する。

僕は肉と男を交互に見、男の次の行動を待った。

待っている僕の思いに反し、男は、何も言わずに、再び肉を食む動作に戻ってしまった。

突然の男の行動に、僕は少しの間だけ戸惑ったが、焼けた肉の匂いに耐えられず、慌てふためくように肉を手に取ると、思うさまに頬張った。

肉の脂が口いっぱいに広がる。

今日初めて口にする食事であるその肉は、この世の物とは思えないほどに美味かった。

貪るように肉を食らい尽くし、指に付いた脂まで舐め取ると、ようやく人心地がつく。

視線を上げて男を見れば、僕の視線に気付いたのか、男も僕を見返してきた。

男は、再び肉の刺さった串を手に取り、今度は差し伸べるように僕に向けた。

そして、軽く上下に串を振る。

取りに来い、という意味だと判断し、僕はそそくさと男のそばに近寄った。

男をこれほど近くで見たのは、初めて会ったあの時以来だ。

男の厳めしい顔は、無表情なのと相まって、何を考えているのかよく分からない。

だが、男が僕に肉をくれようとしているのは、その動作からよく分かった。

僕は、男の手からおずおずと串を受け取ると、少し離れて肉にかぶり付いた。

その様子を、男はじっと見ていた。

僕が食べ終わったのを確認すると、男は次の串を差し出す。

それが何度か続き、結局、僕は男の焼いた肉の3分の1ほどを食い尽してしまっていた。

最後に手渡された水筒の水を一気に飲み干すと、久し振りの満腹感からか、強烈な睡魔に襲われた。

パチパチと爆ぜる焚火の音を子守唄に、やがて僕は睡魔に負け、眠りに落ちていった。

 

 

目を覚ますと、すでに出発の用意を整えた男が、燃え尽きた焚火のすぐ脇に座っていた。

僕が目を覚ましたことに気付くと、男は顎を軽くしゃくる。

示された方を見れば、そこには僕の荷物がまとめられて置かれていた。

もう1度男を見ると、男は何も言わず、僕を見つめ返してくる。

男が出発の用意を整え終えているので、僕もそれにならって、まとめられた荷物を身に付ける。

すると、男は僕がそうするのを待っていたようで、すっと立ち上がり、もう1度僕を見、顎で森の方を指し示した。

そして、ゆっくりとした足取りで、森の方へと進んでいく。

その歩調は、昨日までと明らかに異なっており、僕がついていくのに、苦にならないくらいの速度だった。

諸々の男の行動から、男が僕に『ついてこい』と示しているのだということを、僕は察した。

僕は何も戸惑うことなく、男のすぐ後ろをついていった。

 

 

男との旅は快適だった。

僕に歩調を合わせてくれている為か、男についていくのは難しくはなかったし、食料や水の確保に困ることもなかった。

途中で野盗に襲われることもあったが、男があっという間に野盗を一蹴してしまった。

道中、ポツリポツリと男が話してくれたところによれば、男に目的地はないらしく、ただ気の向くままに旅を続けている、ということらしい。

男は寡黙ではあるが、聞いたことには答えてくれたし、旅を続けるうえで必要なことなどを積極的に教えてくれもした。

ただ、なぜ僕を助けたのか、ということにだけは、男は沈黙して何も語ってはくれなかった。

しかし、僕はそのことを気にすることなく、男から旅を続ける術を学び、男との旅の中でそれを活かしていった。

男と旅をするようになってから数日、今では男の料理番や、身の回りの世話などをするようになっていた。

そして、それから数日。

その日も、いつもと同じように野営地を見つけ、男の仕留めた獲物を僕が捌き、腹を満たして床に就いた。

いつもなら、そのまま朝まで眠ってしまう僕だが、なぜかその日は夜中に目が覚めてしまった。

焚火はすでに消えてしまっていて、辺りは月明かりに照らされているだけで、かろうじて物の輪郭が分かる程度の明るさだった。

眠い眼をこすって、何となく辺りを見回す。

と、男の姿が見当たらない。

用を足しているのかと思って、眠る前に男が用を足していた岩陰を見たが、男がいる様子はない。

不思議に思っていると、やがて男が見ていた岩陰とは違う方向から歩いてくるのが見えた。

どこへ行っていたのかと聞こうかと思ったが、男は戻ってくるなり横になり、こちらに背を向けてしまったので、聞きそびれてしまった。

声を掛けようかどうかと迷っているうちに、僕は再び睡魔に襲われ、そのままウトウトと眠ってしまった。

そして、次の朝には、そのことをすっかり忘れてしまっていた。

それからさらに十数日。

僕が男が夜中に出掛けていたことを忘れ去っていた頃、それは起きた。

 

 

遠ざかっていく物音に目を覚ます。

重い瞼を開ければ、辺りはほんのりと明るかった。

空を見れば、満月が皓々と光を放っていた。

真夜中だというのに、満月のおかげもあって、周囲の様子を確認するのに苦労はない。

僕を起こした物音が何かを探そうと、僕は辺りを見回す。

僕の正面には森が、背後には崖があり、僕は今、森と崖の合間にある岩場に横になっていた。

周囲の景色に異変はない。

ただ1つ、男がいなくなっていることを除いては。

頭に、いつだったかの夜中、男がどこかに出掛けていたことを思い出した。

僕はさらに周囲を確認する。

と、満月の明かりに照らされて、男が崖の淵を沿うようにして坂道を登って行くのが見えた。

気になった僕は、男に気付かれないよう、森の中へと入っていった。

崖と森は、ほんのわずかの道を残して並走しており、森の中からでも、崖の淵を登っていく男の様子は確認できる。

音を立てないよう、慎重に森の中を進む僕。

対照的に、男は足早に崖の淵を登っていった。

どれほど進んだだろうか。

あわや男を見失う、というところで、男が歩みを止めた。

男が止まったのは、緩く曲がった崖の淵にある大きな岩の横。

岩の向こう側に遮蔽物は何もなく、ただ満月と星々が輝いているだけだ。

男が岩の上によじ登る。

男の行動が何を意味しているのか分からない僕は、男が次に何をするのかをしっかりと確認しようと、男がよく見える位置、ほとんど森の端にまで移動した。

背の低い茂みに隠れたこの位置からは、岩の上に立った男を、真横に近い状態で見ることができる。

男はわずかの間、岩の上で満月を眺めていた。

と、突然、男が身に付けている衣服を手早く脱ぎ始めた。

男のこの行動に、僕は目を見張った。

僕の見ている前で、男は次々に衣服を脱ぎ、岩の上に放っていく。

程なく、男は一糸纏わぬ姿で、岩の上に仁王立ちになった。

筋骨隆々とした発達した肉体が、満月に照らされ、黒色の被毛が艶やかな光を反射している。

その雄々しい肉体もさることながら、僕がもっとも目を引いたのは、男の股間だった。

男の股間にある男根は、満月に向かってピンと上を向いており、臍にまで届きそうなほどに大きく、僕のモノと異なる形状をしていた。

僕が男の男根を凝視していると、男はおもむろに自らの男根に右手を伸ばし、握った。

そしてそのまま右手を大きく動かし、男根を掌で擦り始めた。

長大な男の男根の上を、同じく大きな男の手が滑る。

その長いストロークを素早く行っていくうちに、男の息遣いが荒くなっていくのが確認できた。

と同時に、空いた左手は、鶏卵ほどもある大きさを持った睾丸の入った玉袋を、やわやわと揉みしだき始めた。

息荒く男根を弄り回す男の表情は、月を見上げながら恍惚としており、吐息を吐き出す口は半ば開かれ、普段の厳めしい顔付きからは想像もできないほどに淫らに、だらしなく見えた。

そんな男の様子を見ていると、僕は、自らの動悸が早くなっていくのが分かった。

そして、男と同様の変化が、僕にも起こっていることを感じた。

ズボンの前を押し開けると、隙間から見える僕の男根は、男の男根と同じように、大きく、硬く変化していた。

もっとも、男ほどの大きさはなかったが。

僕は自らの体の変化に戸惑いを感じつつも、男の行為を食い入るように見つめた。

男がなぜそんなことをしているのかは分からないが、その行為には、何かしら興奮を喚起させるものがあり、見続けるうちに、僕の男根はさらに肥大し、もはや痛みすら覚えるほどまでになっていた。

と、その時。

パキッと、枝の折れる乾いた音が、僕のいる茂みの中から聞こえてきた。

突然の高い音に驚き、硬直した僕は、慌てて音の出所に目を向ける。

すると、茂みの中から、カサカサと枝の擦れる音を発しながら、黒い塊が素早く飛び出し、森の奥へと消えていった。

おそらくは小動物だろう。

物音の正体が分かり、ホッと胸を撫で下ろす僕。

しかし、その直後、僕はまたしても硬直することとなった。

男の方に視線を戻すと、今の音が聞こえたのか、男が驚きの色をたたえてこちらを凝視していた。

途端、僕の背筋を冷たいものが走った。

しばらくの間、視線を交わし、時が過ぎる。

沈黙と視線の交差の時は、やたらと長く感じられたが、あるいは実際はそれほどではなかったのかもしれない。

男は男根から両手を離すと、身軽に岩を飛び降り、いまだ硬直している僕の方へと歩み寄ってきた。

表情は平時と変わらぬ無表情で、先程までの淫らさやだらしなさは微塵も感じられない。

男が歩くたび、股間に聳えた男根が左右に揺れ、僕は目をしばたきながらそれを見つめていた。

程なく、男が僕の前に立つ。

僕は叱責されるのかと思い、体をさらに強張らせ、男の次の行動を待った。

男はしばしの沈黙のあと、スッと両腕を伸ばし、茂み越しに僕の体を掴んだ。

そして、僕を持ち上げ、茂みから僕を引っ張り出すと、今度は腕を引いて、先程まで男が登っていた岩まで、僕を連れていった。

僕を担ぐようにして支え、岩を登る男。

岩の上、ちょうど男が行為をしていた場所に着くと、男は岩の上に僕を降ろし、チラリと僕を見た。

初めは視線の意味するところが分からなかったが、その後の男の行動で、僕は意味を察することができた。

男は、僕の見ている目の前で、先程のように男根を握り、扱き始めたのだ。

おそらく、男は僕に、こっそりと隠れず、堂々と見ろ、と言いたいらしかった。

僕は目を皿のようにして、じっくりと男の行動に目を見張った。

男の右手が擦る男根は、間近で見ると、より大きく、太く感じられる。

プックリと膨らんだ先端部も赤黒い艶を帯び、それだけで僕の男根のもっとも太い部分よりも太く思われた。

男のストロークに合わせてリズミカルに揺れる玉袋の中の睾丸は、下手をすれば鶏卵どころか幼児の握り拳ほどもあるのではないだろうか。

その睾丸を、男は左手を使って、優しく揉み、弄んでいた。

やがて、男の男根に、さらに変化が訪れた。

膨らんだ先端部から、月明かりを反射する液体が溢れ始めたのだ。

一瞬、小便かとも思ったが、どうやら様子が違う。

液体は粘性が高いように見え、ストロークする男の右手が触れると、ニチャニチャと粘着質の音を立て始めた。

男は強弱速遅をつけながら男根を扱き、絶えることなく液体を溢れさせる。

少しして、男が男根をきつく握り、根元から絞り出すように扱いた。

すると、先端部から、玉のような液体が溢れ、糸を引いて滴った。

男はそれを左手の指の腹で受けると、さらに先端部を潤す液体までもすくい取り、大きく開いた股の間に左手を通した。

股を通した左手は、何やらモゾモゾと動いている。

僕は左手の様子を見ようと、男の後ろに回った。

そこで、僕はまたも目を見開いた。

男の左手は、肛門を擦っていた。

男は僕が後ろに回ったのに気付いたのか、尻の付け根で垂れ下がっていた尻尾をピンと上に持ち上げ、僕が見やすいようにしてくれた。

よく見えるようになった尻では、黒い被毛に隠れている赤い肛門を、先程の液体が付いた指がなぞり回していた。

すぼまった肛門は、指の動きに合わせて蠢いているように見える。

指は、肛門の淵をなぞるように、あるいは中心を押すようにして動いていたが、しばらくして、その動きを止めた。

かと思いきや、今度はそれよりも信じがたいことを行い始めた。

肛門の中心にあてがわれていた中指を、ゆっくりとではあるが、肛門の中に押し込んでいったのだ。

思いもかけない行動に、僕は息をのんだ。

男の中指は、僕の見ている前で、ズブズブと肛門内に埋没していく。

瞬く間に、男の中指は肛門にのまれ、見えなくなってしまった。

と思うと、男の肛門は、ズルリと中指を押し出した。

しかし、男はまた中指を肛門に押し込む。

そうして、また押し出す。

押し込む、押し出す。

それを繰り返す男。

と、男の息遣いがさらに荒くなった。

僕は元の位置に戻り、男を見上げた。

男の顔は、再び淫らに、だらしなく崩れていた。

男根を扱く手は、目にも止まらないほどの速さで動いていた。

肛門を弄る手も、せわしなく動いていた。

そして、男が天を仰いだ。

直後、男の、より一層膨らんだ先端部から、白濁した液体が迸った。

それは放物線を描いて飛び、男の男根が律動するたび、次々と迸っていった。

始めてみるその光景を、僕は驚きに口を開き、凝視していた。

やがて男根からの白濁液の迸りが収まると、男の男根は徐々に硬さを失い、垂れ下がってくる。

下を向き始めた男根の先端部からは、白濁液が糸を引いて地面に滴っていた。

一連の光景を固唾を飲んで見守っていた僕には、しかし、男が放った白濁液の正体が何かは分からなかった。

小便とは違う物だということは分かったが、男根にそれ以外の物を排出する機能が備わっているとは、露ほども知らなかった。

だが、白濁液の正体を探るよりも、僕は自身の体に起きている変化に戸惑っていた。

股間が張り詰め、痛く、そして奇妙だ。

男の男根のように硬さを帯びた肥大をしていることは、先程の確認からも明白で、それが痛みの原因となっていることも分かっていたが、新たに感じた奇妙さ、理解のしようもないものだった。

それは、男根の芯に、何か得体の知れない感覚器が備わっているような、何とも形容しがたいものだった。

答えの分からない奇妙さにもどかしくなり、僕は無意識的にか意識的にか、両手で股間を、ズボン越しに押さえた。

そんな僕の行動・異変に気付いたらしい男が、僕の方に体を向けた。

僕は何故か恥ずかしさを感じ、顔を伏せる。

伏せると、ちょうど視線の先に、男の男根があった。

すっかり萎えしぼみ、普段の大きさ・形に戻っていたが、それでも僕のよりは大きい。

男の男根を見ていると、股間の痛みと奇妙さが増した。

僕はどうしていいのか分からなくなって、恥ずかしいながらも、上目遣いに男を見た。

無表情のままの男と視線を交わすこと、しばし。

不意に男がその場にしゃがみ込み、股間を押さえていた僕の手をどけた。

そして、僕のとまどいをよそに、僕の上着を器用に脱がせると、ズボンと下着までもを一気に降ろしてしまった。

下着に引っ掛かり、その反動で硬くなった僕の男根が、パチンと音を立てかねない勢いで腹を打つ。

半ばまで皮を被っている僕の男根は、あろうことか、先程の男と同様、透明な粘性の液体を、その先端から溢れさせていた。

そのことに僕が驚き、困惑していると、男は片手を伸ばし、僕の男根をすっぽりと覆ってしまうほどに大きいその手でもって、硬くいきり立った僕の男根を握った。

男根を握られた瞬間、僕は驚きのあまり腰を後ろに引いてしまったが、男がすかさず空いた方の手を伸ばして腰を後ろから押さえた為、わずかばかり腰を引けただけで逃れることはできなかった。

男は、僕の男根を握ると、自分自身にしたのと同じように、僕の男根を大きなストロークで扱き始めた。

先端部から溢れていた透明な粘液が、男根と手の間で擦れ合い、クチャクチャと音を立てる。

同時に、今までに味わったこともないような感覚、くすぐったさを超えたような、そんな感覚が、僕の男根を中心として、全身に広がった。

それは紛れもない快感で、僕の頭は即座に真っ白になり、ただただ男のされるがままになり、男が僕の男根を扱く手を、ぼやけた視界で見ていることしかできなかった。

男のストロークは、僕の男根がさほど大きくなかったこともあってか、自身に施した時のそれよりも小さくはあったものの、とてもゆっくりな動きで、男の手の中で、僕の男根がどういう状態なのかをよく見ることができた。

見れば、男の大きな手が根元に向かうと、先端を覆っていた皮が剥き上げられ、熟れた果実のように真っ赤な中身が露出する。

露出した肉は、透明な粘液と月明かりを受け、生々しい艶を放っていた。

男の手が戻ると、剥かれていた皮が元に戻り、同時に、露出した肉の表面を覆っていた粘液が、皮に押されて集まり、すぼまった皮の中心に、粘液の溜まりを作り出した。

その二動作を何度も何度も繰り返されているうちに、粘液の溜まりは泡となり、また次々と溢れてくる粘液によって、僕の肉棒と男の手はぬるぬるになっていく。

粘液による潤滑は、あまりにも心地よく、僕は男の手が男根を扱き上げるごとに、徐々に足が震え、腰が砕けていくのを感じていた。

そして、ついにその瞬間が訪れた。

僕の下腹部の内奥から、何か感じたこともないような衝動が沸き起こり、それが止めようもない波となって、男根内部へと押し寄せてきた。

それは、限界まで我慢した小便を放出する感覚と、わずかながら似ており、自分にはどうしようもできないことだということは、無意識のうちに理解できていた。

衝動はあっという間に破裂し、一際大きく膨らんだ先端から、男と同じ白濁液を放出。

同時に、意識が遠のくような快感が脳を直撃し、実際、一瞬ではあるが目の前が眩んだ。

なんとか意識を保ち、放出された白濁液を見れば、それは、すぐ前にいた男の顎の付近を直撃しており、黒い被毛に白い斑を作り出していた。

男の手の中で、僕の男根は幾度も震え、そのたびに、勢いを弱めながらも白濁液を放出し続けた。

何度も白濁液を受け、男の顎は白く染まっていく。

快感が治まり、白濁液も出尽くすと、男は僕の男根から手を離した。

見れば、その手にも白濁液が若干付着しており、男はおもむろに手を口元に寄せると、舌を出してペロリと白濁液を舐め取った。

意外な行動に目を瞬かせていると、男は顎に付いた白濁液おも指ですくい、舐め取ってしまった。

しばしその行動を見ていた僕は、好奇心に駆られ、わずかに男根から滴っていた白濁液を指ですくい、男にならって口へと運んだ。

なんとも言えない、苦い味が広がる。

決してうまい物ではなかった。

渋い顔をしている僕をよそに、男は次の行動に移った。

岩の上に座ると、仰向けに寝転がり、両手で自らの足を持ち上げ、股を開いた。

僕からは、男の男根も玉袋も肛門も、すべてが丸見えの状態だ。

男の男根は、いつのまにやら肥大しており、ビクンビクンと震えている。

その様を見ているうち、僕の男根もまた、萎んだ状態から張り詰めた状態へと移行していった。

すっかりといきり立った僕の男根を確認すると、男は片手で自らの肛門を弄り始めた。

指の腹で肛門のヒダを撫で、爪の先端でつつき、指を埋没させていく。

男の肛門は、僕の男根程もある指をすっかり飲み込み、グプグプと、空気の漏れるような音を立てていた。

男は指を引き抜くと、息を呑んでその様子を見ている僕に向かって、手振りで指示を出した。

それは、僕の男根を男の肛門に入れろ、という指示だった。

驚きに目を開く僕に、男はさらに大きく股を開いて催促する。

突拍子もない指示に、僕は戸惑いながらも、指示通りに行動した。

男の股の間にひざまずき、屹立した男根の先端を男の肛門にあてがう。

焦っているのか、興奮しているのか、自分でも分からないが、何度も挿入に失敗。

しかし、男はじっとその様子を見つめ、僕のするに任せているようだった。

何度目かの試みで、ようやく先端部が肛門内に侵入。

途端に、とろけるように温かい、それでいて柔らかい質感が、僕の男根の先端を包み込んだ。

未知の快感に、僕はたまらなくなって、ゆっくりとではあるが、一気に男根を根元まで挿入してしまった。

すっぽりと男根を覆う感覚に、僕は全身を震わせる。

続いて男は、半ば放心状態の僕に向かって、腰を振れと指示した。

僕は何も疑問に思うことなく、指示のまま、ゆっくりと腰を前後に降り始めた。

男の直腸内の、温かさとぬめりと締め付けとが、僕の男根に尋常ではない刺激を与える。

一気に思考を吹き飛ばすほどの快感が全身を巡り、僕はただひたすらに腰を振り続けた。

男は男で、僕に肛門を刺激されながら、自らの手でもって男根を扱き上げている。

時折、男の肛門がきつく締まり、それがまた何とも言えない強い快感を僕の男根に与え、締め付けが強くなるたびに、僕の口からは自然と嬌声が漏れ出してしまった。

あまりにも強すぎる刺激は、僕の男根をあっという間に高揚させ、僕は再び快楽の絶頂を迎えた。

男の肛門に呑まれていて見えないが、おそらく先程同様、白濁液を先端から放っていることだろう。

しかし、それでも僕の快楽への欲望は止まることなく、そこからさらに腰を振り続ける。

男も息荒く、激しく自らの男根を扱き上げており、扱くその手は、透明な粘液でグチャグチャと音を立てながら艶やかに光っていた。

それを見た僕は、自分でも何を思ったのか分からないが、ごく自然に男の男根に両手を伸ばしていた。

男の手の上から、添えるように両手を被せ、男の手の動きに合わせて動かす。

腰を振りながらの動作は、なかなかに難しいものだったが、腰と手の動きのリズムが一度合うと、その動作も決して難しいものではなくなった。

男は、しばらくの間、僕の手が添えられた手で男根を扱いていたが、僕がリズムを掴んだと判断すると、自らの手を男根から離した。

僕はそれを、扱け、という意味に受け取り、両手で男の男根を包み込むようにして扱き上げ始めた。

熱く、硬い男根を、両の掌で感じながら扱く。

その間も、腰を振ることは忘れない。

リズム良く快楽を貪り、与えているうち、ふと男の顔を見れば、平時の厳めしい顔付きはどこへやら。

目をトロンとさせ、だらしなく開かれた口からは舌がまろび出ているという、何とも淫らで浅ましいものだった。

普段の男の姿を知っている分、その差に対する衝撃は凄まじい。

そんな男の表情を見ているうちに、僕の胸には1つの優越感が生まれた。

僕は今、男を支配しているのだ、という優越感が。

今まで何を取っても男に劣っていた僕が、今は男の快楽を支配している。

たった1つのその優越感は、僕の心に得難い充足感を与えた。

それはとても強い精神的快楽だった。

その強い精神的快楽は、先程から味わい続けている肉体的快楽と合わさり、というより、肉体的快楽によってまともな思考ができなくなったところへ、強い精神的快楽が来た為、かもしれないが、とにもかくにも、それらは僕の心の中に、かつてないほどの嗜虐心を生み出した。

僕は、真っ白な頭の中で、その嗜虐心の赴くままに行動を始めた。

まず、腰の動きを止める。

肉体的快楽は一気に弱まったが、それでもまったくないわけではなく、男の中の僕の男根は、微弱ながらも、男の直腸内の温かさとぬめりと締め付けを感じていた。

微弱な刺激を受けながら男を見れば、男は肩透かしをくらったような、驚きにも似た表情を浮かべて僕を見ていた。

次いで僕は、男の男根から手を離した。

男が更に驚いたような表情を強める。

そして、何の行動も取らず、しばらく見つめ合う、僕と男。

やがて止まってしまった快楽を再び得ようと、男が自らの男根に手を伸ばし始めた。

が、僕はその手を押しとどめた。

男が奇妙な表情を作るが、構わず僕は男に男根を触れさせなかった。

代わりに、腰を振る。

すると、男の顔が再び崩れ、だらしなく変容していった。

視線を落とすと、触れられることのない男根がビクンビクンと脈打ちながら、透明な粘液を滴らせていた。

その先端を、空いた片手の指の腹で撫でてやる。

男は小さくビクリと全身を震わせ、小さく息を吐いた。

粘液で濡れた指を、竿、玉袋に這わせると、男の息遣いが不規則に乱れた。

表情は再び淫らに浅ましくなり、それが僕の嗜虐心を攻撃的なまでに刺激した。

すっかり冷静でなくなった僕は、あろうことか、男の男根を手ではたいた。

バチンと音を立て、男の男根が左右に大きく揺れる。

自分でも驚きの行動に、僕は反射的に男の顔を見た。

攻撃的な行動に、怒らせたのではないかと思ったからなのだが、実際にはまるで逆だった。

男は、僕の攻撃的行動を催促するかのように、切なげな目を僕に向けていた。

それが、僕の嗜虐心を最高潮にまで高めた。

僕は、男の手を押しとどめていた手までを使い、左右の手でもって、男の男根を叩いた。

僕の両手の間で、男の男根が左右に大きく弾む。

その先端から、透明な粘液を辺りに撒き散らして。

そこからはもう止まらなかった。

僕は徹底的に男の男根をいたぶった。

左右の掌ではたくのはもちろんのこと、拳に変えて殴り付けたり、先端部分を指で弾いたり、玉袋に収まった睾丸を握り締めたり。

快楽ではなく、痛みを与えるような行動を取り続けるたび、それでも男は快楽を得ているのか、喘ぎ声大きく、乱れた。

さすがに玉を握られた時は、痛みを感じたようではあったが、それでもほとんどの刺激に対して快楽を感じていることは間違いなかった。

そして、僕が片手で男根の竿部分を握り、もう片手で先端部分を左右からはたき続けていると、遂に男が絶頂に達した。

壮絶な吠え声と共に、僕の手の中で一層膨らんだ男根の先端から、物凄い勢いで白濁液が飛び出した。

途端に、男の肛門が、これまでにないほどに締まる。

予想していなかった強烈な締め付けに、僕も男と同じく、絶頂を迎えた。

互いに白濁液を吐き出し、同時に、荒々しく息を吐く。

やがて白濁液の放出も収まり、気分も落ち着くと、僕は男の肛門から男根を抜き放った。

男根の抜けた男の肛門からは、僕の放った白濁液が、ドロリと溢れ、岩の上に滴る。

それを見ながら、僕は体の疲れからか、それとも興奮状態が急激にさめた為か、あるいはその両方か、すっかり力を失い、男の上に前のめりに倒れ、そのまま意識を失ってしまった。

 

 

目が覚めると、僕は男の上にうつ伏せに倒れていた。

辺りは明るく、すっかり夜は明けたようだ。

顔を上げれば、男がいつも通りの無表情に僕を見ていた。

その顔を見ているうち、昨夜の出来事が一瞬にして思い出された。

見れば、僕も男も、全身をカピカピにさせていた。

急に恥ずかしくなり、僕は男から飛び退くように離れた。

男はのそりと起き上がり、慌てふためく僕をよそに、岩の上に散乱している自らの服と、僕の服を拾う。

そして、僕の手を引いて岩を降りると、野営地へと向かってあるきだした。

慌てて後について行く僕。

野営地までの道中、僕が恥ずかしさにモジモジしていると、男が独り言のように呟いた。

曰く、玉を強く握るのだけはやめろ、それ以外なら問題ない、とのことだった。

意外な言葉に顔を上げると、少し恥ずかしそうにした男の顔がそこにあった。

それを見て、僕は少しだけ苦笑いして、男の手を握った。

 

 

それからあと、旅の途中で僕と男の気持ちが昂ると、僕達はどちらからともなく、お互いの体を求め合った。

平時は厳めしく、強い男も、その時だけは淫らに、弱々しく、僕にされるがままになっていた。

それが僕には、たまらなく愛おしかった。