「ただいまー、って言っても誰もいねぇか」
久しぶりにホームに帰ってきたオレは、誰にともなくそう呟くと、ブーツを脱ぎ捨てた。
ブーツを脱いだ足が、外気に触れてひんやりと気持ちいい。
しばし、ひんやりとした感触を味わったあと、脱ぎ捨てたブーツを揃えて、玄関の端に寄せる。
こうしておかないと、仲間達が帰ってきた時に、靴ぐらい揃えて置け、と小言を言われるからだ。
ブーツを寄せ終え、オレは荷物を降ろすためにリビングへと向かった。
荷物といっても移蔵球が数個入っているだけの腰袋なのだが。
「ふー……」
オレは腰袋をソファーの上に放り投げると、ソファーに座り込み、前にあるテーブルに足を乗せ、大きく息をつく。
そしてそのまま目を瞑り、時々首を回したりしながら、くつろいだ時を過ごした。
「……風呂、入ろ」
しばらくしてから、そう独り言を呟くと、オレはゆっくりとソファーから立ち上がり、長旅の疲れを癒すために風呂場へと向かった。
(ん?)
風呂場の近くまできた時、かすかに音が聞こえてきた。
耳をピンと立て、音を探る。
どうやらシャワーの音のようだ。
(おいおい、まさか出しっぱなしで出かけたんじゃねぇだろうな)
嫌な想像が頭をよぎる。
仲間の内の1人と連絡を取ったのは2日前が最後。
その仲間は、オレと連絡を取ったあとすぐに、ホームを離れている。
とすると丸2日もの間、シャワーは出しっぱなしだったということになる。
(んだよ、あのバカ! 家出る前に家の中のことぐらい確認しとけっつーの!)
多少、苛立ちながら、オレは風呂場へと足を速める。
脱衣所の扉を開けると、オレは一直線に浴室の扉へと向かった。
だが、ふと途中まできて、脱衣所の籠の中に服が入っていることに気がついた。
(あれ……この服は……アルファスか?)
籠の中に入っていた服は、連絡を取った仲間とは別の仲間、鷲鳥人のアルファスの物だった。
(なんだ、帰ってきてたのか)
そう思ったオレの頭に、1つの意地の悪い考えが浮かんだ。
(久々に帰ってきてくつろごうとしたってのに、ちょっととはいえ苛つかせたんだ。
少しくらい驚かしたって、バチは当たらねぇだろ)
まったくもってとってつけたような屁理屈めいた理由だったが、自然と口の端がつり上がるのが自分でも分かる。
オレは急い着ている物を脱ぎ捨て、籠に放り込むと、浴室の扉の側に近づき、音を立てないように、そっと扉を開ける。
湯煙が開いた扉から流れ込んできた。
脱衣所の冷気でアルファスに気付かれないよう、オレは体を滑らせるようにして、すばやく浴室へと入り込み、扉を閉める。
浴室の中を見回すと、ぼやけた翼の生えた背中が湯気の中に見えた。
(よし、気付かれてねぇな)
オレは足音を立てないように、気配を殺して慎重にアルファスの座っている方に向かう。
翼の生えた背中が、徐々にくっきりと見えてきた。
(……あれ?)
輪郭がはっきり分かる所まで近付いて、オレはあることに気付いた。
その背中はかすかに上下しており、後ろから見ても分かるほど、右手が動いている。
その右手の動きにはオレは覚えがあった。
(まさか……)
気配を殺し、アルファスの正面にある鏡に映らないように注意しながら、オレはそっと近付いていく。
耳を動かし、聞き耳を立てると、シャワーの音に紛れて荒い息遣いが聞こえてくる。
(……間違いねぇ)
オレはその荒い息遣いを聞いて確信した。
アルファスがしているのは間違いなく自慰行為だ。
アルファスは普段そんなことに興味を示さない。
そういった類の話を振っても、相手にされないか、冷めた答えが返ってくるだけだった。
そんなアルファスが今、自慰行為に没頭している。
仲間の自慰行為を見てしまったというに背徳感は、オレに強い興奮を与えた。
無意識のうちに、股間の肉棒が頭を上げる。
次いで、真面目なアルファスをメチャクチャにしてやりたい、という衝動が湧き上がってくる。
そんな邪な考えを持つオレが近付いてきていることに気付いていないアルファスは、一心不乱に自らを慰めている。
絶頂が近いのだろう、右手の動きが早くなる。
オレはもう直ぐ側まできていた。
普段のアルファスならば、気配を殺していても気付かれてしまうような距離だが、行為に夢中になっているせいか、今は気付く様子すら見せない。
右手の動きがさらに早くなる。
あとものの数ストロークで達するだろうところで、オレは声を掛けた。
「手伝ってやろうか?」
その瞬間、アルファスの体がビクッと跳ね上がるように震えた。
完全に不意を突かれたようで、怒張した肉棒を隠そうともしていない。
アルファスは振り返り、信じられないようなものを見るような目でオレを見つめ、呟く。
「……ケルカ……?」
その呟きには、なぜここに?、と言いたげな響きがこもっていた。
「ホントは明日帰ってくるつもりだったんだけどよ、かったるくなったから途中で切り上げて帰ってきちまった。
でも、そのおかげで滅多に見れねぇモンが見れたんだからラッキーだったな」
ニヤリとオレが笑うと、アルファスはバツが悪そうに視線を逸らす。
股間に目をやると、先程まで刺激し続けていた肉棒は完全に萎えてはいたが、先端からは先走りを滴らせている。
オレの視線に気付いたのか、今更ながら股間を隠し、顔を逸らすアルファス。
それを見て、オレはさらに意地の悪い言葉を吐く。
「続きをどうぞ。 ここで見ててやるから。
それともホントにオレが手伝ってやろうか?」
「…………」
アルファスは完全に困惑しきった様子で黙り込んでいる。
普段のアルファスからは想像もできない、恥じらいを含んだその様子に、ますますオレの欲望は強くなる。
「まだイってねぇんだろ? 我慢するのは体によくねぇぜ?」
オレは自分の興奮を高めるようにして、そっとアルファスの耳元で囁く。
「だ〜いじょうぶだよ、他の連中には黙っててやるからさ」
アルファスは黙ったまま動かない。
オレの欲望は、興奮のあまり、肉棒の先端から先走りを滴らせるほどに高まっている。
オレはなおも囁く。
「オレは見てぇんだよ……
アンタがヨガリ狂って鳴き叫ぶところが……
アンタがメチャクチャに乱れるところがよ……」
「…………」
「…………」
お互いに黙ったまま、微動だにしない
重苦しい沈黙の中、シャワーの音だけが浴室内に響く。
やがて沈黙に耐えかねたオレが、再び囁きかけようとした時、アルファスが立ち上がろうと動いた。
その瞬間、オレはほとんど反射的にアルファスの腕を掴むと、彼を浴室の床へと押し倒していた。
オレは覆い被さるようにしてアルファスの上に四つん這いになり、彼の金色の瞳を覗き込む。
「…! ……!」
自分がどういう状態に置かれたのかに気付いたアルファスは、オレを払い除けようと、声もなく暴れる。
だが、きっちりとオレが両手足を押さえ込んでいるので、払い除けることができない。
「どけっ!!」
怒声を発し、アルファスはそれでも力いっぱい抵抗するが、力ではオレの方が勝っていることは明らかだったため、必死の努力も徒労に終わる。
その必死の抵抗を見たオレの欲望は、もはや歯止めの利かないところまできていた。
下で暴れるアルファスの一瞬の隙を突いて、その硬い嘴に口付ける。
一瞬にしてアルファスの動きが止まる。
すぐ間近にアルファスの金色の瞳がある。
その目は驚きのあまり大きく見開かれていた。
オレはそっと口を離すと、囁くように言った。
「……目を見開くのはいいからよ、口、開けてくんねぇ?
アンタの嘴の形だと、舌が入らねぇんだよ……
これじゃ、キスになんねぇだろ?」
鷲鳥人であるアルファスの嘴は先端が曲がっているため、無理矢理舌を入れることができない。
そのため、口を開けてくれるように言ったのだが、アルファスは顔を逸らして応じない。
オレは小さく溜め息をつく。
「はぁ……ま、いいや。
じゃあ、さっさと本番にいこうか」
それを聞いたアルファスの表情が強張る。
だがアルファスが抵抗を始めるより早く、オレは行動に移る。
オレは四つん這いの状態から体を沈め、アルファスに密着させる。
太腿の辺りに明らかに異質なモノがあるのが分かる。
オレは擦り付けるようにして太腿を動かす。
「う……待て……やめろ……!」
おそらくオレの体毛に肉棒が擦れて刺激されているのだろう。
心持ち荒くなった息遣いで、オレに拒否を示すアルファス。
しかしその言葉とは裏腹に、刺激を続けられたアルファスの肉棒は硬さを増してくる。
「くっ……! やめろ……動くな……!」
オレを押し退けようとアルファスが再び抵抗を始めるが、それに構わずオレは体毛を擦り付け続ける。
やがてアルファスは抵抗をやめ、ギュッと目をつむり、されるがままになっていった。
「うぅ…ぁ…ぅ……」
時折、堅く閉じられた口から呻きにも似た喘ぎ声を漏らす。
「いいねぇ、その顔。 最高だ。
男に責められて、必死になってそれに耐えてる顔なんてよ。
普段のアンタからは想像もできねぇくらい、いやらしい顔してるぜ、今。
最初はあんなに嫌がってたのに、今はこんなにチンポを勃起させてよ。
見なくても形が分かるぐらいにデカくなってんじゃねぇかよ。
淫乱なこと、このうえねぇぜ……なぁ、アルファスさんよ。」
必死の様子で快楽に耐えているアルファスをオレは言葉で責める。
その間もずっと体毛で肉棒を愛撫し続ける。
ゆっくりと押しつけるように太腿を肉棒に擦り付け、かと思えば少しだけ足を浮かせて、肉棒の表面を体毛でなぞるように撫でるなど、オレは緩急をつけてアルファスを責め立てる。
そうやってしばらく愛撫を続けていると、急にアルファスが、押さえつけているオレの手を強く握り締めてきた。
同時に太腿に感じるアルファスの肉棒の硬さが増したように感じる。
「もう限界なんだろ?
ほら……出しちまえよ……」
オレはアルファスを見下ろしながら囁く。
そして太腿をグッと強く、アルファスの肉棒に押しつけると、小刻みに素早く動かす。
「ぁぁあ…ぐ…ぅぅ……あっ…あああぁぁぁ!!」
絶頂の叫びが浴室に響く。
アルファスの肉棒がビクンと震え、温かいモノが放出されるのを太腿に感じた。
肉棒が何度となく脈打ち、そのたびに太腿に熱を感じる。
「……どうよ、男にイカされた気分は?」
オレは目をつむったままグッタリとしているアルファスに問い掛ける。
だがアルファスは何も答えず、胸を大きく上下させているだけだった。
オレはゆっくりとアルファスから離れると、太腿に目をやる。
オレの太腿とアルファスの肉棒の周辺には、白濁した液体が大量に付着していた。
「すげぇ量だな、オイ……
アンタ一体、どんだけ溜まってたんだよ……」
オレは太腿についた精液を指ですくい取って眺め、半ば呆れた口調で呟く。
「でもまぁ、これでスッキリしただろ?
けど、オレはまだスッキリしてないんだよなぁ、コレが。
抜いてやったんだから、アンタの穴、貸してくれよ」
ようやく息が整ってきたアルファスに再び覆い被さりながら、オレは彼の首筋に頬擦りし、耳元で囁く。
そして、オレがアルファスの太腿から肛門へ向かって指を這わせ、その指が穴へと到達するかしないかの刹那だった。
「おわっ!?」
オレの口を驚きの声がついて出た。
アルファスが覆い被さっていたオレを掴み、横に投げ飛ばすように払い除けたためだ。
突然のことで対応できなかったオレは、浴室のタイルの上に転がる。
何が起きたのかを把握したオレは、アルファスの方に目を向ける。
するとアルファスはこちらに背を向け、足早に浴室を去っていくところだった。
勢いよく浴室のドアが開けられ、そして閉められる。
その様子をオレは黙って見ていた。
浴室と脱衣所を隔てる曇りガラスを通して、脱衣所の様子が少しだけ見て取れる。
どうやらアルファスは体を乾かすこともせず、服も着ないで脱衣所から出ていくようだ。
脱衣所のドアが浴室のドアと同じように勢いよく開けられ、閉められる。
その一部始終を見ていたオレは、その場に立ち上がると顔を下に向ける。
視線の先には、アルファスの吐き出した大量の精液と、突き上げるように怒張し、先端から透明な粘液を溢れさせた自らの肉棒があった。
オレはそっとその肉棒を握り、2・3度扱くと、ふと思い直して手を止める。
そして視線を中空に泳がせ、考える。
(……さっきのあの様子なら、今日、間違いなく堕とせるな……よし!)
オレは考えを決めると、肉棒に添えた手を離し、シャワーの所へと向かった。
このあと、オレとアルファスとの間で行われる行為を想像し、欲望に歪んだ笑みを浮かべながら。
俺は服も着ないまま、部屋に戻ってきた。
部屋に入ると扉に鍵をかける。
拭きもせずに出てきてしまったので、濡れたままの翼が重く感じられる。
ふと右手を見ると、脱衣所に置いてあった『熱気』の封魔晶が握られていた。
どうやら急いで出てきたために持ってきてしまったらしい。
俺は封魔晶に魔法力を込めると、瞬時にして体の表面の水分が気化し、翼の重みが消えた。
軽く翼を動かしながら、封魔晶を近くの机の上に置く。
そして、持ってきた服を着ようとした時、自分の下腹部に目がいった。
股間付近を覆う羽毛に、乾いた精液がこびり付いている。
鳥人の男根は、平時は体内に納められているために、つい今し方まで見えていた男根は今は見えない。
羽毛に隠れている、男根の収められた縦のスリットにそっと指を当てる。
先程、ケルカにされた行為が思い出されてくる。
未だに心臓は早鐘を打つようにうるさく鳴り響いており、少しでもそれを鎮めようと、俺は深呼吸をした。
2・3度、深く深呼吸をして気分を落ち着かせると、手近にあったティッシュを数枚抜き、こびり付いた精液を擦り落とし、服を着始めた。
服を着終えると、部屋の窓を開け、ベッドの上に腰掛けた。
そしてそのまま何をするわけでもなく、ボーッとして窓の外を眺める。
何も考えずに窓から見える風景を眺めていると、突然、先程の行為が頭をよぎる。
俺は頭を振り、それを忘れようとするが、忘れようとすればするほど鮮明に思い出されてきてしまう。
誰もいないと思っていた場所での自慰行為。
それを近しい者に見られてしまったということの恥ずかしさ。
射精寸前で行為を止められてしまったことのもどかしさ。
ケルカの体の重みと体毛の感触。
そして絶頂に達した瞬間の快感。
思い出されるたびに、達した瞬間に収まった情欲が再び頭を持ち上げてくる。
下腹部のスリットから男根が排出され始めるのが、自分でも分かった。
無駄とは思いつつも、俺はそれらの出来事を考えないようにしてうつむき、目をつむる。
しばらくの間、静寂が部屋を包み込む。
「ふぅー……」
下腹部の異変がしだいに治まってくると、自然と大きな溜め息が口を突いて出た。
「溜め息ついてどうしたの?」
突然の問い掛けに、俺はビクッと体を震わせて顔を上げた。
目を開けた先には、またもいつの間にやら侵入してきたのか、ケルカが薄笑いを浮かべながら下着1枚で立っていた。
「アンタが封魔晶持ってっちまったから、こっちまで生乾きで部屋まで戻るハメになったぜ……」
そう言いながらケルカは机の上に置かれた封魔晶を手に取り、発動させる。
文句を言ってはいるが、その声の調子からは不機嫌さや苛立ちは感じられない。
むしろ喜んでいるようにすら感じる。
風呂場での出来事を喜んでいるのかどうかは分からないが、その様子が今の俺には実に不愉快だった。
「お前……さっき自分が何をしたのか分かっているのか?」
不愉快な気分のせいもあり、声の調子に険がこもるのが自分でも分かった。
だが、そんな俺の不機嫌さを含んだ問い掛けに、ケルカは動じる様子もなく、逆に嬉々とした様子でこちらを見て答えた。
「分かってるに決まってるだろ?
アンタをイかせてやったんだよ」
「…………」
ケルカの性格を考えれば、そんな答えが返ってくるとは思っていたが、実際にこうもあっさりと答えられると、重ねて文句も言うことができずに言葉に詰まってしまう。
忘れようとした先程の出来事が、再び脳裏をよぎり、俺はまともにケルカの顔を見ることができずに顔をそむける。
顔を逸らした俺に、手に持った封魔晶を机の上に戻しながらケルカが問いかけてくる。
「気持ちよかっただろ?
イク時の気持ちよさは、相手が女だろうが男だろうが変わんねぇのさ。
ま、経過が違うだけで結果は同じってやつだ。
けどよ……」
そう言いかけた時、ケルカの声の調子がにわかに変わったのに俺は気付いた。
「オレはまだ気持ちよくなってねぇんだよな……」
それを聞いた俺は、嫌な予感がしつつもケルカの方に顔を向ける。
その瞬間だった。
シュッ!
「!?」
俺は何かスプレーのような物を顔に吹き付けられた。
吹き付けられたものが少量、目に入り、思わず目をつむる。
「な、何を……!?」
「いやぁ、普通にやったんじゃアンタの場合、堕ちないかなぁとか思ったからよ、ちょっと催淫剤を吹き付けさせてもらったんだよ」
淫靡な調子の声でケルカが答える。
「さ、催淫剤だと……?」
目を擦りながら、再び問い掛ける俺。
「そう、催淫剤。
この前、ソドムに行った時に買ってきたんだ。
結構、値が張ったけど、それに見合うだけの効果はあるって話だ」
そう答えたケルカの気配が、徐々にこちらに近付いてくる。
目はまだ見えないが、おそらく今、俺の目の前に立っているだろうことが分かる。
「常態維持切ってる今なら、コイツも充分効くだろ。
1度入っちまったら常態維持は意味ねぇからな」
ようやく目の違和感が消えてきた俺は、目を開いて前を向く。
すると目の前には、いつの間に下着を脱いだのか、あらわになったそそり立つケルカの肉色の肉棒があった。
男根の先端には、玉のようになった先走りが、今にも滴りそうな勢いで溢れている。
「さっきはヤり損ねたからなぁ……
今度はキッチリとヤらせてもらうぜ」
そう言ってケルカは肉棒をビクンビクンと動かす。
振動で先端に溜まっていた先走りが、糸を引いて床に落ちる
その様子に俺は淀んだような興奮を覚えた。
鎮まったはずの肉棒に再び血液が集まる。
「効いてきただろ?
即効性で強力な物らしいからな。
もう少ししたらコレが欲しくて欲しくてたまらなくなるぜ」
ケルカは自分の肉棒に手を添え、ユルユルと撫でながらニヤリと笑う。
その間にも俺の肉棒はスリットから頭を出し、痛いほどに勃起し始めていた。
全身をくまなく倦怠感が襲い、指先が燃えるようにジンジンと熱い。
息は荒くなり、喉が酷く渇く。
頭は朦朧とし、時折、眠りにつく寸前のような感覚を覚える。
まるで、風邪を引きながら酒に酔っているような感じだ。
「ほ〜ら、こいつが欲しくなってきただろ?」
焦点を合わせるのに精一杯の俺の目の前に、ケルカはいきり立った肉棒を突きつけ、囁くように言う。
「触ってみろよ……」
そして俺の手を掴み、自分の肉棒へと持っていった。
「や、やめろ……」
俺は触るまいとしてケルカの手を振りほどこうとするが、まるで力が入らない。
「なんだよ、全然力が入ってねぇじゃねぇかよ。
随分、強力なんだな、この薬」
赤ん坊の手でも扱うかのように、力の入らない俺の手を上下に振ったり、前後に動かしたりしながら、感心した口調で呟くケルカ。
手を弄ばれている間も、俺は振りほどこうと必死に力を込めるのだが、その努力は意味をなさなかった。
俺がそうして無駄な努力を続ていると、ケルカが突然、グイッと俺の手を引いた。
そして、
「!」
俺の指先がケルカの亀頭に触れた。
先走りのヌメリが指先に伝わる。
ケルカはさらに俺の手を引き寄せると、今度は指先だけではなく、掌全体で肉棒に触らせた。
初めて触れる勃起した他人の肉棒。
自分のソレとは違った硬さと熱を掌に感じる。
触れた瞬間に溢れ流れた先走りが、掌と肉棒との間に入り込み、ヌルヌルとした感触を掌に伝える。
俺はそのまま握り込むように肉棒を掴むと、先走りを塗り広げるように上下に動かした。
俺が手を上下させると、その動きに合わせてケルカの鈴口から先走りが溢れ出てくる。
新たに溢れた先走りを掌につけると、ソレをケルカの肉棒に塗り広げた。
そして先走りに塗れた肉棒を握り、優しく擦り上げる。
「ホントにスゲェわ、この薬……
アンタが自分からこんなことしてくれるなんてよ……」
突如、頭上から降ってきたケルカの声に、俺はハッと我に返った。
見上げると、ケルカは淫靡な目で俺を見下ろしていた。
俺は朦朧とした意識の中で、自分が何をしていたのかに気づき、慌ててケルカの肉棒から手を離そうとした。
だが、それに気付いたケルカに手首を掴まれてしまい、肉棒から手を離すことができない。
「せっかくここまでしてくれたんだ、最後まで付き合えよ……」
俺の顔を覗き込むようにしてケルカが顔を近付ける。
獲物を見つけた狼の顔をしたケルカの顔を見ると、得体の知れない奇妙な高揚感が襲ってくる。
息は荒くなり、心臓の音が耳につく。
激しく勃起した俺の肉棒は、ズボンの前を押し上げていた。
「アンタもこんなに興奮してんだからよ……」
そう言ってケルカは、俺のズボンの先端を指先でつつく。
その刺激に俺は思わず腰を引く。
しかしケルカの指先は、なおも俺のズボンの先端を弄ぶ。
俺はその刺激に肉棒をヒクつかせながら、再び意識が朦朧としてくるのに気付いた。
薄れては覚め、薄れては覚めを繰り返す意識の中で、遠くの方からケルカの声が聞こえてくる。
「……ヤろうぜ……」
薄れた意識にはっきりと響くその声に、俺は首を縦に振って答えた。
オレは身を屈め、アルファスの首筋にそっと舌を這わせた。
アルファスの体がピクッと反応し、口から息が漏れるのが聞こえる。
首筋を舐め上げながら、オレはゆっくりと、手馴れた動きでアルファスの着ている物を脱がしていく。
完全に薬が効いているのか、アルファスは抵抗もせずに、むしろ脱がしやすいように体を動かしていた。
そして最後の1枚、トランクスタイプの下着に手をかけると、持ち上がって濡れたシミを作っている先端を、爪先で引っかくようにして刺激しながら、脱がしていった。
弾かれたように飛び出す、いきり立った肉棒。
オレは首筋を舐めるのをやめ、アルファスの前にしゃがみ込むと、そっとソレを掴み、首筋を舐めたのと同じようにして舌を動かす。
根元から先端に向かって舐め上げ、先端の割れ目を舌先でつつく。
それから竿の部分を横から咥え込み、牙が当たらないように注意しながら上下に舐める。
「あぁ……」
その刺激にアルファスの口から淫靡な喘ぎ声が漏れ出す。
上目遣いに上を見ると、アルファスがなんとも淫らな顔でこちらを見ていた。
快楽に崩れたその顔は、普段とは別人のように見える。
(まずは1発、イかせてやるか…)
そう思い、オレは動きを変え、激しくアルファスの肉棒を責め立てた。
竿の部分から口を離すと、舌先で鈴口の部分をなぞる。
「うっ…あっ…」
強弱をつけて鈴口をなぞっていると、舌の先端に塩辛い先走りが溢れてくるのを感じた。
どうやら相当感じているらしく、アルファスの顔を見ると、痛みに耐えているかのようにギュッと目をつむっている。
オレは上目遣いにアルファスの顔を見ながら、肉棒を刺激し続ける。
鈴口をなぞるのをやめ、今度は肉棒全体を口に含む。
そして口内の肉棒を舌で責め始めた。
「……! ……!」
もはや声も出ないようで、アルファスは嘴を食いしばり、オレの舌が敏感な箇所を這うたびに、体をビクンビクンと痙攣させていた。
(そろそろだな)
射精が近いことを感じ取ると、オレは竿を手で扱き上げ、同時に頭を前後に動かし、口内で肉棒を吸い上げた。
すると…
「……っ…ぐぅぅぁああああぁぁぁぁ!!!」
絶叫と共にアルファスが果てた。
2度目とは思えないほどの勢いと量の精液が、オレの口内に吐き出される。
オレはソレを飲み込んだが、飲み込みきれなかった幾らかの精液が口元から溢れ出し、ベッドにこぼれた。
吐精を終えたアルファスはそのまま上体をベッドに預け、胸を上下させてグッタリとしている。
オレは仰向けに横たわるアルファスの腰に手をやり、グイッと引っ張り動かし、うつ伏せにさせ、腰を持ち上げる。
そしてその場にしゃがみ込むと、垂れ下がった尾羽を持ち上げ、そこに隠された穴の周りを指の腹で回すように撫る。
その刺激にピクッと一瞬アルファスの体が反応するが、オレはそのまま穴の周囲を撫で続ける。
しばらくそうして撫でていると、しだいに穴が弛緩し始めた。
オレは鼻先を穴に近付けると、舌を突き出し、その周りを突ついたり舐め上げたりして、さらに弛緩させようと刺激を続けた。
穴を愛撫している間、アルファスは身じろぎもせず、眠ったように動かなかった。
オレは十分に穴の周りの筋肉がほぐれたことを確認すると、ベッドにこぼれた精液を指ですくい取り、それを穴に近付ける。
「……アンタ、ここ使ったことあんのか?」
穴とその周囲に精液を塗り付けながら、動かないアルファスに尋ねる。
「…………」
アルファスは答えを声に出さず、首を横に振ることで質問に答えた。
「そうか……じゃあ、ちょっと痛てぇかも知れねぇな……」
そう言ってオレは指を、ほぐれた穴の中に埋めていった。
「……くっ……」
指先が穴に入った瞬間、アルファスが小さく呻いた。
痛がっている様子ではないので、オレは構わず指を穴に出し入れする。
そして、指の数を2本、3本と、ゆっくりと慣らすように増やしていった。
指を増やすごとに、アルファスがわずかに呻く。
3本はさすがにきつそうで、呻き声に痛みをはらんでいた。
「じゃ、そろそろ入れるぜ……?」
オレは指を引き抜くと、立ち上がり、突き出された尻に片手を添え、もう片方の手で自らの肉棒を握る。
いきり立った肉棒を擦りながら、徐々にアルファスの穴に近付けていき、先走りに濡れた亀頭を穴に擦りつける。
そうして先走りを潤滑剤にして、ゆっくりと肉棒を穴に差し込んでいった。
「……いっ…つ……!」
「ちょっと我慢してくれよ……そのうち、気持ちよくなるからよ……」
痛みに顔をしかめるアルファスに声をかけながら、オレは両手を尻に添えると、ゆっくりと前後に腰を動かした。
グチュッグチュッという粘着質のモノが擦れる音と、嘴を食いしばったアルファスの口から漏れる、喘ぎとも呻きともつかない声だけが、静まり返った部屋に響く。
「さすが、初めてってだけのことはあるな……
いい締まりしてやがるぜ……」
少しづつ腰を動かすスピードを上げながら、オレは体をかがめ、アルファスに覆い被さるようにしてアルファスの耳元で囁く。
痛みなのか快楽なのか、顔を歪めたアルファスは、何も言わずにただじっと耐えている。
「痛てぇか?」
とオレが尋ねると、
「…す…こし……!」
と搾り出すように答えた。
「少しだけなら上等だ……
なら、ちっとばかりハードにいこうか……!」
オレは語気を荒げてそう言うと、両手でアルファスの両翼を掴み、引き上げる。
「ぐぁ!?」
突然のことに驚きの声を上げるアルファス。
オレは腰の動きを止め、両手でアルファスの体を抱きかかえる。
「知ってるか? 痛みと快楽は紙一重なんだぜ?」
そう言うと、オレはアルファスの体を抱え上げ、体の位置を入れ替える。
ベッドの上にオレが座り、アルファスはオレに抱かれてオレの太腿の上に座る形になった。
もちろん、その間もオレの肉棒はアルファスの穴に飲み込まれたまま。
そして肉棒を突き挿したまま、アルファスの体を180°回転させる。
「はああぁあ!!」
急に穴の内部をかき回され、大きく喘ぐアルファス。
今、ちょうどお互いが向き合う形になっている。
少し目を上げれば、痛みのせいか快楽のせいか、歪んだアルファスの顔が。
視線を下に下げれば、今日2度の射精を果たしたにもかかわらず、熱く、硬く勃起してい肉棒が見える。
その肉棒は、2度も射精をさせられたせいか、腫れたように赤くなり、そして血管が浮き出していた。
ビクンビクンと脈動する肉棒は、グロテスクにも扇動的に見えた。
「じゃあ、そろそろラストスパートといこうか!!」
そう言ってオレは、激しく腰を突き上げた。
「ぎっ…!!」
食いしばったアルファスの嘴の端から苦鳴が漏れる。
それに構わずオレは激しく腰を上下させる。
グプッグチャッと空気の混じった粘性の音と、
「あっ! うぅっ! っ! あっ!」
アルファスの淫らな喘ぎ声が混じり、オレの気分は高揚してくる。
オレは腰の動きをさらに速め、そして片手でアルファスの体を支え、もう片方の手でアルファスの肉棒を握る。
オレが腰を突き上げるたび、アルファスの体も突き上げられるため、手を動かさずともアルファスの肉棒は扱かれ、先走りをオレとアルファス自身の腹に撒き散らす。
オレはアルファスが壊れるのではないかと思うほどの勢いで腰を振る。
ただひたすら快楽を貪る獣のように、オレはひたすら腰を振り続けた。
そして…
「う…おぉあああぁぁ!!!」
今日3度聞くアルファスの絶頂の鳴き声。
それとともにオレとアルファスの腹の間に聳えていた肉棒から、精液が勢い良く噴き出してきた。
白濁したソレはオレとアルファスの2人を汚す。
アルファスがイった少しあと、
「イ…くぞ! 中に出してやるからな!!」
射精のせいで収縮と拡張を繰り返す穴にうながされ、オレの肉棒がアルファスの中で震えた。
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
激しい叫びとともに、オレはアルファスの中に射精した。
何度も肉棒が震え、何度も精液を吐き出した。
肉棒の震えが止まり、何も吐き出さなくなっても、オレはアルファスの穴から肉棒を抜かずに、射精後の余韻に浸っていた。
穴と肉棒のわずかな間から、オレの放った精液が溢れ、ボタボタと音を立ててこぼれ落ちる。
その音を聞きながら、オレはアルファスを見た。
アルファスはもはや放心状態で、息をするのがやっとという風に見えた。
先程、自分の吐き出した精液に塗れた体を、オレに預け、肩で荒く息をしている。
その目はどこか虚ろで、嘴の端からは涎が垂れていた。
オレはそんなアルファスを強く抱き締めると、そのままアルファスとともにベッドに倒れ込んだ。
なんともいえない満足感と、征服感を感じながら。