背徳の都ソドム。

姦淫、強姦、窃盗、強盗、傷害、殺人。

およそ犯罪と呼ばれる、あらゆる事柄が許される都。

そのルールなどない、完全な無法地帯であるその都市の一角に、無法者達の欲望を満たす場所がある。

その場所の名前はネロ・コロッセオ。

この都市の創設者の名を冠したその場所は、腕に覚えのある者を募り、大観衆の前で血生臭い殺し合いをさせるという、無法の都にふさわしい場所だった。

コロッセオは円形の巨大な建造物で、その収容人数は5万を超える。

そして、その中心には円形の闘技場があり、そこに突き立った石柱の天辺八方に、戦いの様子が大きく映し出される仕組みになっていた。

参加者は闘技場の上で戦うわけではない。

そことは別世界、誰の邪魔も入らない場所で戦うことになっている。

ルールはいたってシンプル。

どちらかが戦闘不能になるか死ぬまで戦うこと。

戦闘の際、魔法・魔術・技法・技術の使用は不可。

己の肉体か、用意した武器を使っての肉弾戦のみ可。

それがこの血塗られた場所のルールだった。

そして今、俺はそのルールにのっとって、戦いを繰り広げていた。

 

 

広い草原の真ん中で、俺とその白い狼獣人は対峙していた。

俺はバスタードソードを両手で持ち、腰溜めに構えている。

一方、狼獣人は、2mを超えるだろう、切っ先から柄の部分まで真っ白なトゥハンドソードを右手だけで軽々と持ち、体を斜にして構えていた。

狼獣人は、その白い毛皮を赤い斑が染めている。

斑は俺の血だった。

巨大な剣を構え、返り血を浴び、傲然と俺を見下ろすその白い姿は絵になる、と俺は思った。

俺の返り血を浴びた狼獣人は、悪魔的な強さの持ち主だった。

この試合が始まってから約7〜8分の間、俺は一太刀たりとも彼に与えてはいない。

彼は俺の繰り出す攻撃すべてをかわし、あるいは受け止めていた。

そしてそのたびに俺は反撃を受け、1つ、また1つと傷口を増やしていった。

「うおおぉぉぉぉぉ!!!」

声を張り、狼獣人に向かって、俺は突進する。

俺の手に握られたバスタードソードは、寸分の狂いもなく狼獣人の心臓目掛けて突き出される。

だが、その切っ先が狼獣人の体に突き刺さるほんの少し手前で、斜め下から振り上げられた巨大な剣が、バスタードソードを跳ね飛ばした。

その勢いで、俺の体がぐらつく。

俺が体勢を崩した瞬間、返す刀で、斜め上から白い刀身が振り下ろされた。

あまりにも素早いその反撃に、俺は回避することもできず、真っ赤な鮮血を迸らせ、その場に崩れ落ちる。

激痛と共に溢れてくる、真紅の血。

流れた血は、地面にひざまずいた俺の足元に血溜まりを作り出していく。

脱力していく中、目の前を見上げれば、体を朱に染めた狼獣人が俺を見下ろしていた。

目がかすみ、そのせいで表情は見えない。

そして、その数瞬あと、俺の意識は途切れた。

 

 

「……ぅ……ん……」

俺は小さく唸り、目を覚ました。

目を覚ました場所は、あの広大な草原ではなく、薄暗い部屋の中。

周囲に目をやると、部屋の中には大きなベッドが1つと、隅の方にトイレが1つだけ。

壁には窓はなく、鉄製の扉が1つあるだけだった。

(……そうか……負けたのか、俺は)

置かれている状況を把握し、自分の体を見回す俺。

体のあちこちにあった傷はすべて癒え、俺の意識を断ち切った最後の一撃でできた傷も、完全に消えていた。

ソドムという都市柄、服はまったく身に着けておらず、完全に全裸。

そんな中、俺の目に、両手首にはめられているブレスレットが飛び込んできた。

よく見ると、そのブレスレットには封身石が1つずつはめ込まれている。

俺は外そうと試みるが、引こうが何をしようが外れる様子はない。

(……当たり前か……)

小さく溜め息をつき、納得する俺。

封身石がつけられている理由を、俺は知っていた。

ネロ・コロッセオで行われている試合。

実のところ、試合で敗者が死ぬということは、全体の2〜3割程度でしかない。

それは試合の主催者が、どちらかが戦闘不能になった時点で試合を終了させるからだ。

主催者は戦闘不能になった敗者を治療すると、ある者達に引き渡す。

ある者達というのは、ネロ・コロッセオの会員になっている者達だ。

試合を見にくる観客達は、血が見たい、殺し合いが見たい、という者達がほとんどだが、その観客達の中に、それとは別の目的を持って見にくる者達がいる。

それが会員。

一般にはほとんど知られていない彼等は、試合に気に入った者が出場すると、その意向を主催者に伝える。

主催者はそれを聞き、その者が死なないように審判し、敗者となった時点で隔離して治療を施す。

そして敗者に封身石をつけ、会員に引き渡す。

会員の目的は1つ。

それは、敗者を犯すこと。

封身石は決して抵抗できないように、という措置。

この暗い部屋は、おそらく敗者を会員に引き渡す場所なのだろう。

(今更ジタバタしたところでどうしようもない……)

以前、聞いたことのある話を思い出し、置かれている状況を受け入れる俺。

と、その時、鉄製の扉が音もなく開いた。

そちらに目を向けると、そこから10〜11人の人物が部屋の中に入ってきた。

入ってきた者達の種族は様々で、獣人もいれば、竜人も鳥人もいる。

そんな中、彼等に混じって人族の男が1人だけいた。

「彼の名前はレティアル。

 見てのとおり、狐の獣人でございます。

 封身石で力は奪ってありますので、ご安心を」

人族の男は笑みを浮かべながら、後ろに並んでいる者達に説明する。

「では、時間は今から12時間となっております。

 時間がきましたら、声をかけさせていただきますので、どうかそれまでごゆっくりとお楽しみください」

そう言うと、男は部屋を出て、扉を閉めた。

ガチャリ、と扉に鍵をかける音がする。

その途端、中に入ってきた者達が一斉に動き出した。

彼等は全員男で、全員が下品な笑いを浮かべて、俺の方に歩み寄ってくる。

全員の股間には肉棒がいきり立ち、歩くたびに揺れ動いていた。

「12時間かぁ……ってことは1人当たり1時間ちょっとってとこだな」

「今日は何発イけるかなぁ……へへへ」

「ああ……オレ好みの面だ……」

男達は俺を取り囲むと、口々に好きなことを言い始めた。

「最初は誰が行く?」

「誰だって構わねぇよ。 結局全員がヤるんだからよ」

「じゃあ、まずはオレが味見してやるよ」

男達の中の1人、馬獣人がそう呟くと、俺を床に仰向けに押し倒した。

「クヘヘ、なかなか美味そうなチンポじゃねぇか。

 んじゃあ、さっそく……」

そう言って、馬獣人が俺の股間に顔をうずめる。

その刹那、俺は肉棒にヌメッとした感覚を感じた。

「ぅあ……!」

思わず声を漏らす俺。

それを聞いた男の1人がはやし立てる。

「感度がいいな、こいつ。

 ひょっとしてしゃぶられるのは初めてか?」

言いながら、男は俺の尻を撫で回した。

ほかの男達も、思い思いに俺の体を弄ってくる。

ある者は耳の裏を、ある者は尻尾の付け根を、ある者は毛皮に隠れた胸の突起を、それぞれに嬲る。

男達の手が体を這い回るたびに、俺は身をくゆらせて抵抗を示すが、抵抗すればするほど、男達は面白がって俺を責め立てた。

俺の肉棒を咥え込んでいる馬獣人も、生暖かい舌で竿を舐め回し、雁首をなぞりながら鈴口に舌を挿し入れてくる。

そして、男達に嬲られ始めてからわずか1分後。

「ぐぁぁぁああぁ!!」

薄暗い部屋に絶叫を響かせ、俺は馬獣人の口内に射精してしまった。

熱い精液が尿道を通り抜ける快感に、俺は身を震わせる。

「ははは! こいつ、もうイきやがった!」

「随分と早漏だな、オイ。

 そんなんであと12時間も耐えられるのかよ」

「心配ねぇよ。 店から大量に催淫剤と増精剤をもらってきてある。

 撃ち止めになったら、大量に吸わせてやればいいさ」

好き放題に言う男達。

俺はそれらの会話を遠くで聞きながら、射精の余韻に浸る。

だが、男達がそれを許すはずもなく。

男達は、虚脱感に陥っている俺の体を乱雑に刺激した。

馬獣人が俺の肉棒から口を離すと、肉棒に向かってほかの男達が群がる。

1本の肉棒に絡みつく、何本もの手。

「うあ! や、やめろ! まだ、出したばかりで……ぅぅぅ!」

敏感になった肉棒を揉みくちゃにされ、俺は悲鳴を上げる。

それを聞いた虎獣人の男が、何か液体のような物が入った小瓶をを取り出して、俺の鼻先にちらつかせた。

「これは催淫剤だ。

 こいつをこうやって吹きつければ……」

そう言うと、虎獣人はシュッと、小瓶の中の液体を吹きつけた。

「!?」

甘い香りが鼻腔を刺激し、それと同時に頭が熱っぽくなる。

すると、揉みくちゃにされている肉棒からの感覚が、くすぐったさから快感へと徐々に変わっていった。

「何発も連続でイけるようになるんだぜ〜……へへへ」

俺の様子の変化に気付いたらしい虎獣人は、説明を付け足す。

そして、自らの肉棒を手に取ると俺の上体にまたがり、それを俺の目の前に差し出して、

「ホラ、コレを咥えな」

と言って、無理矢理肉棒を俺の口にねじ込んできた。

「ぅご!? むぅうぅ!」

口を塞がれ、出す言葉はすべて呻き声に変わる。

虎獣人はニヤリと笑うと、腰を前後に動かし始めた。

「んぐぅ! ごぉ! ふぐ!」

虎獣人の肉棒が口内を蹂躙する。

熟れた桃のような亀頭が喉の奥を突くたび、俺はえづきそうになった。

そのせいで、涙が目に溢れる。

それを見た虎獣人が意地悪そうに笑い、

「オイ、お前等! こいつ泣いちまったぞ!

 もっとしっかり楽しませてやれよ!」

後ろを振り向いて、俺の肉棒を取り合っていた男達に向かって言った。

男達は顔を見合わせ、ニヤッと笑うと、一斉に俺の股間に顔をうずめる。

そして次の瞬間、

「!? んぐぅぅぅぅ!!」

今までにない強烈な刺激が、俺の全身を貫いた。

何枚もの舌が、激しい舌使いで俺の肉棒を、袋を舐め回す。

俺の肉棒は、何人もの男達の舌の中で跳ね回った。

どこをどう刺激されているのかなど、俺にはもう分からなかった。

それまで手で揉みくちゃにされていたこともあり、ものの数秒も持たずに、俺は2度目の射精をしてしまった。

勢いよく精液が鈴口から噴き出し、舌の間で踊る肉棒の動きに合わせて、辺りに飛び散っていく。

それでも男達は肉棒を嬲るのをやめない。

執拗な責めに俺の肉棒は萎えることなく、男達の舌の間で暴れ回った。

と、その時、両手に熱い手ごたえを感じた。

虚ろな眼差しで両手を見ると、手の中には、勃起して先走りにまみれた肉棒が。

右手には猫獣人、左手には竜人の肉棒が、それぞれ押しつけられていた。

2人は無言で俺を見下ろし、目で、扱け、と命じる。

俺はそれに応え、押しつけられた肉棒をつかむと、上下に扱き始めた。

肉棒はすぐにグチャグチャと淫猥な音を立て始める。

両手に熱い感触を感じながら、濡れた肉棒を強弱をつけて扱く。

先走りの溢れる鈴口をなぞり、少しだけ爪を立てて裏筋の部分を引っ掻く。

「あぁ……もっと、もっと激しく扱いてくれ!」

嬌声を漏らしながら、竜人が言う。

俺はその言葉に従い、握る力を強め、上下に扱くスピードを速めた。

その途端、

「ぐふぅぅうぅ!!」

左手の中の肉棒がビクンと震え、先端から大量の精液を吐き出した。

吐き出された精液は雨のように降り注ぎ、自らの体と、俺の左半身を汚していく。

するとそれを合図にしたように、

「あっ、い、くぅ!!」

「ぅっがぁぁぁぁ!!」

猫獣人と虎獣人が叫び、肉棒をビクつかせながら射精した。

「んげぅ!?」

虎獣人が射精したことにより、大量の精液が口内に流し込まれ、その不快な感触と息苦しさに、むせ込む俺。

口の中を、精液を吹きながら、虎獣人の肉棒が踊る。

その量の多さに、俺の口はすべての精液を飲み込むことができず、口の端からは収まりきらなかった精液が溢れ出していった。

一方、猫獣人の方は竜人と同じで、ほとんど真上に向かって精液を噴き上げていた。

それがまた降り注ぎ、俺の右半身を白く染めていった。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

息を荒げながら、虎獣人が俺の口から肉棒を引き抜く。

グポッと音を立て、唾液と粘液と精液に塗れた肉棒が姿を現した。

先端からはそれらの液体が混ざり合ったものが滴り、俺の顔を汚す。

虎獣人は満足そうに笑うと、俺の上からどいた。

するとすぐさま別の男が俺の上にまたがった。

「さぁ、早くしゃぶれよ」

次にまたがった隼鳥人の男が、脈動する肉棒を突き出す。

俺は躊躇なくそれを咥え込むと、今度は自ら積極的に頭を動かして刺激した。

「おぅ、いいぜぇ……」

隼鳥人は満足気に笑う。

いつの間にやら両手に握られている肉棒が、猫獣人と竜人のものではなく、豚獣人と牛獣人の肉棒へと変わっていた。

俺は何も言われずとも、それを握り、扱く。

唸り声のような呻きが、豚獣人と牛獣人の口から漏れる。

先に果てた虎獣人・猫獣人・竜人の3人は、俺を見下ろしながら自らの肉棒を扱いていた。

濡れに濡れた3本の肉棒は、扱くたびに粘液の飛沫を俺の顔に降らせる。

すでに俺の顔は粘液でベトベトになっていた。

そして、俺自身は3度目の射精をしようとしていた。

下の方では、どうやら誰かが主導権を握ったらしく、1人の人物が俺の肉棒を咥え込んでいた。

隼鳥人の体が邪魔で、誰が咥えているのかは分からなかったが、いずれにせよその責めは的確で、俺はあっという間に絶頂へと導かれてしまった。

「っ! っ!」

声もなく、俺は精液を噴射した。

何度も脈打つ肉棒から、どれだけの精液が出たのかは分からないが、その快感は1度目、2度目よりもはるかに大きかった。

やがて俺の肉棒が誰かの口から開放されると、今度は両足が持ち上げられた。

何人もの手が両足をつかみ、あらわになった肛門を何本もの指が擦ってくる。

俺は指を受け入れやすいように、肛門を開いた。

同時に、何本かの指が腸内に入ってくる。

指は容赦なく俺の中をかき回し、奥へと侵入してきた。

しばらくすると、指がすべて引き抜かれ、今度は何か太い物が挿し入れられた。

俺はソレがなんなのか、目で見ずとも理解できた。

誰かの太い肉棒は、遠慮のない強引な動きで俺の中を突き上げる。

初めての挿入だというのに、俺はなんの痛みも感じなかった。

それどころか逆に快感すら感じる。

それはひょっとしたら、射精後間もない肉棒が乱雑に扱かれているせいかもしれない。

強烈な快感の波に身をゆだね、俺は快楽を貪った。

「オイ! ちゃんと動きやがれ!」

いきなり上がった怒声に、俺は我に返った。

見ると隼鳥人が怒った顔で俺を見下ろしている。

両隣を見れば、豚獣人と牛獣人も不満そうな顔で俺を見ていた。

俺は慌てて頭と手を動かした。

3人の不満分を取り戻すかのように、高速で手を動かし、口内のモノを吸い上げる。

しばらくの間、湿った音と男達の呻く声だけが部屋に響いた。

どれくらいの時間、そうしていたのかは分からなかったが、その間、俺を含めて誰1人として絶頂を迎えた者はいなかった。

そして、それは起きた。

「はぁ、はぁ、イくぞ、もうイくぞ……うぉぉぉぉぉ!!」

まず、俺の口内を犯していた隼鳥人が果てた。

口内に再び精液が流し込まれる。

その刹那、

「んんんぎぃぃぃ!!」

「おあぁぁぁ!!」

「ああ! イく! イくぅぅぅぅ!!」

自らの肉棒を扱いていた虎獣人・猫獣人・竜人の3人が、ほとんど同時に達した。

降り注ぐ3人分の精液。

するとそれに触発されたように、

「ぶぎぃぃぃ!!」

「んぐぉぉぉぉ!!」

俺が扱いていた豚獣人・牛獣人が同時に射精した。

2人の精液が俺の手を汚している最中、今度は下の方で複数の絶叫が上がる。

同時に、下半身に感じる熱い液体。

おそらくは自ら扱いていただろう者達が、同時に達したのだろう。

そんな中、俺は体内に何かが流し込まれる感覚を覚えた。

俺の肛門を犯していた者が射精したに違いない。

そして、ついに、

「うぐっぅぅぅおおおお!!!」

ほかの者達よりも一際大きな声で叫び、俺は4度目の射精を果たした。

 

 

それから約11時間30分。

俺は10人もの男達によって、ひたすら犯され続けた。

催淫剤の効果が切れるたびに催淫剤を吹きつけられ、精液が枯れると増精剤を吹きつけられた。

何度イったのかも、何度気を失ったのかもよく憶えていない。

全身、粘液がついていない所などない、というほどにまでグチャグチャにされ、肉棒と肛門が激しく痛んだ。

睾丸が空になるまで精液を吐き出し、胃が満たされるまで精液を飲み込んだ。

肉体はこの12時間のことを忘れられないほどに記憶していたが、精神の方はこの12時間のことをほとんど記憶していなかった。

ただ、すべてが終わったあと、誰かが俺をこの暗い部屋から運び出してくれたこと、そして、その人物からかすかに漂うシトラスの香りが、雄臭い臭いを12時間も嗅ぎ続けた鼻を、爽やかに癒してくれたことだけは、しっかりと記憶していた。

 

 

柔らかな光が目を、ほのかなシトラスの香りが鼻をくすぐる。

その光と香気に包まれ、俺は目を覚ました。

気付けば体を包む柔らかな感触。

俺はベッドの上に寝かされていた。

まだ意識の定まらない中、上体を起こして、周りを見回す。

光の差す部屋の中は、見覚えがあった。

それは、まぎれもなくネロ・コロッセオの客室だった。

「ようやくお目覚めか?」

突然、聞こえたその声に、俺は一瞬で目を覚ました。

声のした方に視線を向けると、そこには窓から差す光を全身に受けた全裸の狼獣人が1人。

「お前は……」

窓際に立っていたその狼獣人は、白い体毛に光を反射させ、こちらを見ていた。

俺はその狼獣人を知っていた。

というよりも、忘れられるはずがなかった。

その狼獣人は、先の試合で俺を負かした男なのだから。

狼獣人はゆっくりとこちらに歩み寄り、俺の寝ているベッドに腰かけた。

シトラスの香りが鼻をくすぐる。

その香りが、地下室で完全に意識を失う前に俺を地下室から運び出した人物と、目の前の狼獣人を結びつけた。

「お前が、俺をここに?」

「ああ。 ま、勝者の特権ってやつだ。

 支配人に話つけて運んできたんだ。

 オレのことは憶えてんだろ?

 ……あ、そういやお互い、まだ名前も知らなかったな。

 オレの名前はケルカだ。 アンタは?」

「……レティアルだ」

相手の名乗りを受け、俺も名乗る。

お互いの名を知ったところで、俺はある疑問を口にした。

「……なぜ、俺を助けたんだ?

 お前になんのメリットがある?」

「助けた? そいつぁ違うな。

 オレはアンタを金で買い取ったんだ。

 助けたわけじゃねぇよ。

 それにメリットなら、ちゃんとあるぜ」

そう言うと、ケルカは俺の体にかけられているタオルケットごしに、俺の股間を鷲づかみにしてきた。

「うっ!?」

いきなりなその行動に驚いた俺は、反射的に身を引き、ケルカの手から逃れる。

それを見て、ケルカはニヤリと笑った。

「こういうメリットだよ。

 敗者は勝者に何されても、文句を言う資格なんざねぇのさ。

 アンタもあんな試合に出てる以上、そんなこたぁ承知のうえだろ?

 なら、おとなしくオレに食われちまえよ」

俺に顔を寄せ、凄みを利かせて言うケルカ。

試合中は余裕がなかったので分からなかったが、よくよく見てみれば、年齢は25〜26といったところだろうか。

俺よりも年下だというのに、漂わせている雰囲気は、どこか抗いがたいものがある。

まるで、自分よりもはるかに格上の年長者を相手にしているような感じを受ける。

実際、戦いの点では、彼の方がはるかに格上だったのだが。

「どうする? 抵抗するかい?

 無駄だってこたぁ分かってると思うけどな」

俺が何も答えないことを無言の抵抗と判断したのか、ケルカが聞いてきた。

ベッドから立ち上がり、こちらを見下ろすケルカの股間のモノは、すでに天を突いている。

それは、ケルカの言葉どおり、抵抗しても無駄、ということを暗に示していた。

「……好きにすればいい。

 お前の言うとおり、俺にはお前を拒む権利はない」

「そうかい。 じゃあ、好きにさせてもらおうじゃねぇか」

そう言うと、ケルカはタオルケットを剥ぎ取った。

ケルカの前にさらけ出される俺の裸体。

股間のモノは弛緩したまま。

ケルカは俺の下半身に覆い被さるようにベッドの上に乗ると、弛緩したままの俺の肉棒を手に取り、扱き始めた。

「意外とキレイな色してるじゃねぇか。

 形もオレ好みだし。

 アンタ、男との経験はあんのか?」

俺の肉棒を評価しながら、ケルカが尋ねてくる。

「……地下でのことが初めてだ」

「へぇ、そうかい。

 けど、地下にいた連中よりも、オレの方が上手いぜ」

言って、ケルカは俺の肉棒を扱き続ける。

確かに、自ら上手いと言うだけあって、ケルカの刺激の仕方は、地下室にいた連中とは違っていた。

男を楽しませることを知っている動きだ。

的確にツボを刺激してくる。

ただ上下に扱くだけではなく、亀頭の表面を滑るように撫で、カリの溝を爪先で引っかき、裏筋をさすりながら、鈴口を開くようになぞる。

下の双球をもう片方の手で転がし、蟻の門渡りと呼ばれる場所も適度な圧力で押してくる。

その刺激に、俺の鈴口からは先走りが溢れてくる。

「ぅ…はぁ……」

先走りが潤滑剤となって、さらなる快感を得る俺の肉棒。

俺は知らず知らずのうちに、声を漏らしていた。

「感度がいいじゃねぇの。

 どうよ? 気持ちいいか?」

分かっているくせに尋ねてくるケルカに、俺はうなずき答えた。

「そうか。 んじゃ、こんなのはどうよ?」

そう言うと、ケルカは先走りに濡れた俺の亀頭を握り、手首をひねるようにして回し始めた。

「うあぅぁぁぁ!!」

強烈な刺激に、俺はベッドの上でのたうつ。

グチャグチャと音を立て、俺の肉棒がケルカの手の中で暴れた。

そして、急激なその刺激に驚いたかのように、

ビュッ! ビュビュッ!!

俺の肉棒は、俺の意に反して大量の精液を吐き出していた。

「オイオイ、もうかよ!?

 まだ始まって1分ぐらいしか経ってねぇぞ」

突然の射精にケルカも驚いたようで、俺の肉棒と顔を交互に見ながら言った。

その手の中では、俺の肉棒がいまだに脈打ち、精液を溢れさせている。

「しっかも、結構出るな〜。

 寝てる間に増精剤吸わせたっていっても、こりゃ出すぎだろ」

肉棒から手を離し、半ば呆れたように呟く。

俺の肉棒は、もう精液を吐き出すのをやめているが、それでもケルカの手を白く染め、俺の腹には大量の精液の溜まりができるほどの量を吐き出していた。

しかし、俺の肉棒は萎えることもせず、上を向いていて脈動している。

「ま、いいや。 たまにゃ早漏の相手も悪くねぇ。

 見たとこ、アンタもまだまだ満足してねぇみてぇだしな。

 時間かけて、たっぷり楽しませてもらうぜ」

ケルカがニヤリと笑いながら、俺の上半身にまたがる。

俺の目の前で揺れる、いきり立ったケルカの肉棒。

それは、かなり大きなモノで、先端からは一筋の先走りが流れ出ていた。

「アンタのモノが回復するまで、オレのをしゃぶってもらおうか」

そう言って、ケルカは肉棒を俺の顔に突きつけてくる。

俺は目の前に差し出された肉棒をゆっくりと咥え込んだ。

不思議と嫌悪感はなかった。

塩気を含んだ先走りが口内に広がる。

ケルカは自ら腰を動かそうとしなかった。

そのおかげで俺はえづくこともなく、自分のペースで肉棒をしゃぶることができた。

頭を前後させ、口内に侵入してきた肉棒を舌全体を使って刺激する。

肉棒を舌の上に乗せて竿と亀頭の下を滑らせ、鈴口の辺りを突くようにして舐める。

肉棒の部位の中でも、最も感じやすい場所と言われるカリの部分も、舌先でその輪郭をなぞるようにして刺激した。

片手は抱きかかえるように腰に回し、もう片方の手は尻尾の付け根を握る。

時折、肛門の周囲にも指を這わせた。

今、俺が使っているテクニックは、すべて地下室で俺に行われたものだ。

俺は覚えているかぎりのテクニックを使って、ケルカを責めた。

「へぇ、2回目のわりには慣れたもんじゃねぇか。

 なかなか上手いぜ」

ケルカが俺の頭を撫でながら言った。

その口調からは、感じているのかどうかは判断できなかった。

「さて、と。 そろそろこっちは回復したかな?」

身をそらせてケルカが俺の肉棒を握った。

十分な硬さを取り戻した俺の肉棒が、その手の中で熱く脈打つ。

「ハッ! 早漏な分、回復も早ぇな。

 もういいぜ、口離して」

言って、ケルカは自身の肉棒を俺の口から引き抜いた。

そして、俺の上から降りると、仰向けに寝ている俺の足元まで移動し、両足を天井に向けて持ち上げた。

「ぅお!?」

腰を高く持ち上げられたせいで急にきた浮遊感に、思わず声を上げてしまう俺。

股間の方を見ると、俺の股の間からは、笑みを浮かべたケルカの顔が。

「いい眺めだ。 チングリ返しっていうんだけどよ、この体勢。

 結構好きなんだよな〜、オレ。

 な〜んか相手を支配してるって気がすんだ」

そう言うと、ケルカは精液で濡れた俺の股間を舐め回してきた。

ケルカの舌に弄ばれ、袋の中で2つの睾丸が動き回る。

「ぅっ!」

袋の中心を通る筋を舌の先でなぞられた時、俺の肉棒がビクンと跳ね上がった。

鈴口から先走りが溢れ、跳ね上がった勢いで俺の顔に滴る。

ケルカの舌はそのまま竿の方へ。

最も感じる部分であるカリや鈴口の部分は避け、じらすように竿の部分だけを舐め上げてくる。

だが、それだけでも俺は肉棒を脈打たせ、先走りを溢れさせてしまう。

溢れた先走りは次々に俺の顔の上に滴り落ち、いつしか俺の顔は先走り塗れになってしまった。

「へへへ……いい顔になったじゃねぇか。

 粘液まみれで、すっげぇやらしいぜ、今のアンタ」

執拗に竿を舐めながらケルカが言う。

「う…う……」

俺の竿はすでに2度目の爆発を迎えようとしていた。

それに気付いたのか、ケルカが肉棒を舐めるのをやめた。

物欲しそうに蠢く俺の肉棒。

それを見たケルカはニヤッと笑うと、今度は蟻の門渡りと呼ばれる場所をチロチロと舐め始めた。

「ひっ!」

快感というよりも、むしろくすぐったいような感覚に、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。

ケルカは構わずに、舌を徐々に肛門の方に移動させてきた。

その刺激に肛門がヒクつくのが、自分でもよく分かった。

舌が肛門に辿り着くと、ケルカはヒクつく肛門のひだを広げるようにして丁寧に舐め回してくる。

時折、肛門にキスをし、内部にまで舌を挿し入れてきた。

「……そろそろか?」

ボソリと呟くと、ケルカは俺への刺激をやめた。

ケルカが俺の体から手を離したことで、俺の体はドサッとベッドの上に倒れ落ちる。

そして、今度は俺の上体を抱え、その場にあぐらをかいて座り込んだ自身の上に移動させた。

「充分慣らしたから、もう入るだろ」

そう言うと、ケルカは自身の肉棒の切っ先を俺の肛門にあてがう。

「せーの」

ズブブ……

掛け声と共に、ケルカの肉棒がゆっくりと俺の肛門を貫いた。

「いっ…つぅ……!」

小さな穴が無理矢理広げられる痛みに、俺は歯を食いしばりながら呻いた。

ケルカの肉棒をすべて飲み込む頃には、知らず知らずのうちにケルカに抱きついていた。

かすかなシトラスの香りが、ケルカの白い毛皮から漂っている。

俺はその香りを嗅ぎながら、ケルカの体に身を預けた。

「……よぉ、もう入ったぜ?

 そろそろ動いてもいいか?

 あんまり抱きつかれてんと動きにきぃんだけど……」

「う…あ、すまん……

 でも、少し慣れるまで待ってくれ……」

「仕方ねぇなぁ……どれ、じゃあその間に……」

そう言うと、ケルカは俺を引き離して身をかがめ、俺とケルカの腹の間ですっかり縮こまってしまった俺の肉棒を口で咥えた。

「うはぁ!!」

ビクンと身を仰け反らせて反応する俺。

先程までのじらすような愛撫とは異なり、今度の愛撫はより直接的なものだった。

頬の内側に亀頭を擦るつけながら、鈴口とカリの溝を舌で乱暴に舐め回す。

萎えていた俺の肉棒はまたたく間に硬度を取り戻し、ケルカの口内で暴れ回った。

「あぐぅぅぅ!!!」

爆発寸前で止められた俺の欲望は、あっという間に甦り、ケルカの刺激が続く口内で爆発した。

2度目の噴射は1度目のそれよりも強烈な快感を伴っていた。

吐き出された精液を、ケルカが音を立てて飲み込んでいく。

だが、俺の肉棒から何も出なくなっても、ケルカは口を離そうとはしなかった。

それどころか、腰を揺さぶりながら、さらに俺の肉棒を責めてくる。

「ま、待て…! ひぃっ! あっ!」

肛門のからのかすかな痛みと快感、そして肉棒のこそばゆさに、俺は悲鳴を上げた。

その瞬間、

シュッ!

「!!」

俺の鼻腔に甘い香りが充満した。

ケルカがいつの間にか手にしていた小瓶の中の液体が、吹きかけられたのだ。

俺はそれがなんなのか、よく知っていた。

それは間違いなく、俺が地下室で散々吹きつけられた催淫剤だった。

肉棒のこそばゆさと肛門のかすかな痛みが、完全に快感にすりかわる。

執拗に肉棒に舌を絡め、腰を突き上げるケルカ。

「……っ!!!」

前と後ろからの激しい刺激に、俺は3度目の射精を迎えた。

2度目の射精から、まだ1分と経っていない。

再びケルカの口内に注ぎ込まれる俺の精液。

それでも、ケルカは俺の肉棒から口を離さない。

「!!……!!……!!」

俺はもう何がなんだか分からなくなった。

強烈すぎる快感に、もはや声も出ない。

口からは涎を垂れ流し、目からは涙を溢れさせ、必死に意識をつなごうと、快楽に耐える。

その間も、俺は4度目、5度目、6度目と射精を果たしていた。

睾丸の中はとうに空になっているだろう。

肉棒が空撃ちを繰り返し、そのたびに俺の意識は飛びそうになる。

「……ぷはっ! さぁ…そろそろ、イくぜぇぇ!!

 おおぉぉぉぉ!!!」

俺の肉棒から口を離し、ケルカが叫んだ。

そして、

ビクッ! ビクン!! ビクン!!

『っっっ!!!』

俺とケルカの全身が同時に震えた。

まるで、ホースから水でも流し込まれているかのような勢いで俺の中に注ぎ込まれるケルカの精液。

腸内で、ケルカの肉棒が暴れ回り、それが俺の前立腺を刺激し、俺も何度目か分からない射精を果たした。

「……っ……っ……」

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」

俺は体を痙攣させ、ケルカは大きく息をしている。

その間、俺とケルカの結合部から、逆流したケルカの精液がベッドの上にこぼれるのが分かった。

「ふぅぅぅ…………さ、じゃあ、もう1回イっとくか?」

「!?」

大きな溜め息のあとのそのケルカの言葉に驚き、俺はケルカを見下ろす。

するとケルカは邪悪にも見える笑みを浮かべ、手にしていた催淫剤入りの小瓶をちらつかせた。

 

 

 

 

 

ケルカが満足し、すべてのことが済んだのは、日もすっかり暮れたあとだった。

その頃には、部屋に、そしてケルカの毛皮から漂っていたシトラスの香りは、すべて雄の臭いに変わっていた。