「……はっ!?」

周囲に冷たいものを感じ、オレは目を覚ました。

辺りを見やると、上方から差し込む光に照らされたそこは地底湖だった。

(気絶……していたのか、オレは?)

状況が飲み込めず自問するオレ。

数拍呆けたあと、ハッとなって状況に気付いた。

オレは考えをまとめるよりも早く、近場の岩に向かって泳ぐ。

動いた瞬間、頭がクラリときて、意識が遠のきかけた。

辺りの湖水に混じった血を見るかぎり、どうやら血を流しすぎたようだ。

だが、今はそんなことに構っている余裕はなかった。

(あいつ等、どうなったんだ!?)

頭をよぎる最悪の結末。

岩に上がり、不安を振りほどくように頭を振って水気を散らすと、一気に上空に向かって跳躍した。

地底湖の天井に開いた大穴を抜けて地上に出る。

すると、穴からいくらも離れていない場所で、ジーク・シーザー・アーサーの3人と、魔術師が対峙していた。

少し離れた場所にはゲートキーパーが浮いている。

アーサーの右足に目をやると、右足が再生しているのが分かった。

どうやら回復できたらしいが、3人とも体中に傷を作って疲弊しきっており、地面に座り込んでいた。

オレが気絶している間に、魔術師達と交戦していたのだろう。

「クーア……!!」

地面に降り立ったオレに最初に気付いたのはジークだった。

オレの姿を見るなり、苦痛にしかめた顔をパッと輝かせ、叫ぶ。

その呼びかけに、ほかの者達も気付いたようで、一斉にこちらに目を向けた。

「ほぅ……生きていたのか。

 まぁいい。 あと少しでこの子供達の始末も終わる。

 貴様はそこで子供達が殺される様を見ているがいい」

邪悪な笑みを浮かべてそう言うと、3人の方に向き直る魔術師。

その言葉を合図にしたかのように、近くに浮いていたゲートキーパーが動き出す。

ゲートキーパーは3人には目もくれず、真っ直ぐにオレに向かって飛来してきた。

オレはゲートキーパーをかわし、すぐさま魔術師を討とうと考えたが、思うように体が思うように動かない。

「――!?」

出血と頭部への一撃のせいだろう。

反応の遅れがたたり、ゲートキーパーをかわすことができなかった。

完全にオレの失策だった。

目覚めと共に回復魔法を掛けておくべきだったと後悔するが、時すでに遅し。

ゲートキーパーは、回避の遅れたオレの足を払い、転倒しそうになったところを後ろから羽交い絞めにした。

「…く…そっ……!!」

オレは必死にもがくが、その抵抗むなしく、振りほどくことができない。

それを見た魔術師は、

「ふふふ……ははははは!!

 せいぜいあがけ! そして見届けろ!

 お前の大切な者達が殺されるところをな!!」

勝ち誇った高笑いを上げ、魔法の詠唱を始めた。

満身創痍のジーク等3人は、地面にへたり込んだまま、その様子を見つめていた。

『汝が死するを望むれど、汝が命数、我知らず』

徐々に完成していく魔法の詠唱。

オレは完成させまいと必死にもがく。

だが強靭な力で押さえ込まれ、まるで身動きが取れない。

『されど我が意は退く事知らず、汝が悶死を真より願いて、怨嗟の言の葉囁かん』

そんなオレの努力を嘲笑うかのように魔術師は詠唱を紡ぐ。

3人は身動きもせずに、絶望的な眼差しを魔術師に向けている。

『来たれ、彼の地の招き手よ!』

そして詠唱が完成した。

あらん限りの力を振り絞り、ゲートキーパーの縛めを解こうとするオレ。

それを押さえつけるゲートキーパー。

狂気と邪悪の笑みを浮かべ、3人を見下ろす魔術師。

絶望に染まった瞳で魔術師を見上げる3人。

その瞬間。

音もなく、黒い線が走った。

指先程の太さのその線は、遠く瓦礫の町から一直線に伸び、地面に座り込んだ3人の頭上を越え、今まさに魔法を行使せんとしていた魔術師の胸を貫いた。

「……?」

狂気の笑みを引きつらせ、断末魔の悲鳴すら上げずに、魔術師は地面に倒れ伏す。

それが、この瓦礫の町を作り出し、そこに住む者達を、そしてアーサーの両親を死へと追いやる原因を作った者の、あまりにもあっけない最期だった。

魔術師が倒れ伏した直後、オレの背後でゲートキーパーが空気を震わせた。

その震えには困惑の色が感じられる。

自らを創造した者が絶命したことで混乱しているのだろうか。

ゲートキーパーはオレの縛めを解くと、上空へと上昇していった。

突然の出来事に呆然とするオレ達。

だがオレはすぐに気を取り直し、魔術師を貫いた闇線の出所に目を向ける。

いまだ呆けたままのジーク等3人をかばうようにして前に立ち、瓦礫と化した町に油断なく目を走らせる。

町は静寂に包まれ、マテリアの姿も声もない。

時折、風音が聞こえることと、風に揺れる煙が見えること以外、廃墟の町にはなんの変化もない。

しかし、魔術師を絶命せしめた闇線は、間違いなく町の方向から伸びてきていた。

見える範囲に何も見当たらない以上、おそらくは廃屋となった家の陰から、何者かが闇線を放ったと考えるのが妥当なところだろう。

しかもかなりの力を持った何者かが。

と、その時。

町から吹きつけてきた風の音に、何者かの声が混じった。

『虚……印す……壊の…美』

風の音に混じっているために、細かなところまでは聞き取れないが、

『……く印は…麗なれ……、内……りては……べし。 印、贄………み尽…、拉ぎ……象、破……ん』

オレは声の出所と思しき場所に凄まじい力が集束していくのを感じ取った。

同時に、聞こえてくる声が何を意味しているのかを悟り、背筋が凍りつく。

『…せ、……汝……。 美……境…数あれど、等し…………は醜…なり』

ふと後ろを見やれば、座り込んでいる3人も力の集束を感じ取っているのか、体が小刻みに震えており、その瞳には恐怖が浮かんでいた。

『抗す…意味………と知れ。 圧……定…、不変…』

オレ達が戦慄を感じているうちにも、その言葉は完了した。

強大な力の解放を感じ、刹那、上空で何かが激しく軋む音が響く。

上を見やれば、空を浮いていたゲートキーパーを包むように、巨大な黒い半透明の球体が出現していた。

その球体の中で、ゲートキーパーは、まるで何かに握り潰されているかのように圧縮されていく。

手を、足を、その寸胴のような胴体に向けて引きつけ、成人程の大きさだった黒いシルエットが、今はもう子供程度の大きさしかない。

それすらも段々と圧し縮まっていき、やがて、耳に残る音を残して球体が消えたあとには、豆粒大にまで圧縮されたゲートキーパーが、ドンッという音を立てて地面に落下した。

「今のは……」

後ろで、アーサーが搾り出すようにして、かすれた声を出す。

「『圧戮』。

 五大禁魔の1つで、半透明の球体内のすべてのものを圧縮し、葬り去る魔法だ」

アーサーの呟きにそう答えたのは、オレでも、ましてやジークでもシーザーでもなかった。

だが答えたその声は、聞き覚えのあるものだった

オレは声の出所、すなわち、闇線の放たれた場所、そして力の集束していた場所に目を向ける。

「よう」

崩れかけた建物の陰から突然現れたその人物は、気安く声をかけてきた。

オレはその人物をよく知っていた。

「……へ? クーア? あれ?」

後ろでジークが間の抜けた声を上げた。

見れば、シーザーもアーサーも、オレとその人物を不思議そうに交互に見つめている。

だが、それもそのはず。

歩いてくる人物はまったくオレと同じ顔形をしていたからだ。

違うのは、色だった。

着ている服の色、肌の色、髪と眉の色、そして瞳の色。

彼の着ている服は、黒地に銀の刺繍が施された服。

肌は浅黒く、髪と眉は、闇のような黒。

瞳の色は、闇夜に輝く月のような銀色を呈している。

不敵ともいえる笑みを浮かべたその人物は、ゆっくりとこちらに向かって歩き出した。

「……双子?」

後ろでシーザーが呟く。

「あいつの名前はルーア。

 まぁ、確かに双子みたいなもんだな……」

オレ達がやり取りしている間にも、ルーアはこちらに歩み寄ってくる。

オレは、笑みを浮かべたままのルーアを睨むように見据え、一挙手一投足を余さず警戒する。

「そんなに警戒するなよ。

 手負いで、しかもお荷物を3つも抱えたお前とやり合うほど、オレは野暮じゃないさ」

からかうように笑い、無造作に右手を天にかかげるルーア。

かかげると同時に、その手の中に闇が生まれ、その闇は音もなく黒い弓に姿を変えた。

ハッと息をのむ音が後ろから聞こえる。

オレはとっさに3人をかばうようにして構えた。

ズキンと激しい痛みが、肩口の傷から伝わる。

痛みに顔をしかめるオレを見て、ルーアはニヤリと笑みを刻み、弦に左手の指をかけると、矢の番えられていない弓を真上に向けた。

その刹那、青く輝く一条の光が、まるで矢のように弓に番えられる。

ルーアは弦を一杯に引き絞ると、青い光条を真上に向かって撃ち放った。

放たれた光条は、キラキラと音を立てて大気を裂き、はるか上空を目掛けて突き進む。

そして光条がわずかな青い輝きになるほどにまで小さくなった時、輝きが弾けた。

弾けた輝きは無数の青く煌めく水滴となり、地上に降り注ぐ。

煌めく青い雨は、傷付いたオレ達の体を優しく打ち、大小様々な傷を癒しながら体力を回復させていく。

数秒後、雨がやむと、オレ達の体からは完全に傷が消え、疲労感もまったくなくなっていた。

『マーシフルレイン』。

回復技法の1つで、効果は今の通り。

「……どういうつもりだ?」

合点のいかないルーアの行動に、オレは警戒を解かぬままルーアを睨み言う。

それに対し、ルーアは笑み浮かべたまま答える。

「このゲームで及第点を取ったご褒美だよ。

 そっちのお子様3人組みが予想以上に頑張ったんでな」

「ゲーム? 及第点?」

後ろのアーサーが問い返す。

「そう。 ゲーム。

 簡潔に説明すると、そこに転がってる魔術師をそそのかして、ゲートを開かせたのはオレだ」

「なっ!?」

アーサーが驚きの声を詰まらせる。

「条件がよかったんだよ、この町は。

 森の奥に住み着いた怪しげな魔術師、その魔術師に不審を抱いている扇動しやすそうな住人、低ランクのマテリアしか相手にしたことのないような低レベルな自警団。

 一騒ぎ起こさせるにはもってこいの町だ。

 森に入った家族を殺して、それをいかにも魔術師がやったように見せかけ、魔術師がやったんだと住人を扇動して、魔術師を森から追い出させる。

 そして、冤罪で森を追われ、町の住人を憎むようになった魔術師にゲートを開かせて住人をマテリアに襲わせる。

 魔術師と住人の怒りと憎しみ、絶望に満ちた顔は、結構見ものだったぞ」

嬉々とした口調で説明するルーア。

そんなルーアに、アーサーは体を小刻みに震わせ、問い詰める。

「なんで……なんでそんなことを……!」

「決まってる。 楽しいからさ」

「――っ!!」

いともあっさりと言い放つルーアに、アーサーは言葉を失った。

ルーアはオレの方に目を向け、さらに言う。

「お前がこの世界に来てたってのもあるけどな。

 お前の行く先々に低ランクのマテリアが出現するようなゲートをいくつか開き、お前をこの近隣の町に誘導して、そこでこの町の情報を聞かせる。

 近くの町がマテリアに壊滅させられた、なんて聞いたら首を突っ込むだろ、お前?」

「……ああ」

「どうせこの町にはゲートキーパーにかなう奴なんていやしなかったんだ。

 お前が来た方が、ギャラリーとしては見てて楽しい。

 もっとも、ゲートキーパーごときにおされてたのは、なんとも情けなかったけどな。

 相性の問題があったにしても、封身石をもう1つ外せば楽勝だっただろうに」

そう言ってルーアは、両手をオレに見せつけるようにしてヒラヒラさせた。

それを見たオレは、ハッと息を飲み、声をかすれさせる。

「お前……!」

「はっ! 焦るなよ。

 まだ2つ外してから10分も経っちゃいない。

 いくらなんでも、そんな簡単に世界は壊れないよ」

言いながらルーアはポケットから移蔵石と呼ばれる石を取り出し、その中から封身石のついたブレスレットを取り出すと、右手首にはめた。

「何? どういうこと?」

ジークの呟きが聞こえる。

「世界の理ってやつさ。

 一見、何をしても壊れそうにない世界にも、実は強度ってやつがあるんだよ。

 ま、暇だからちょっと講釈してやるよ」

ジークの呟きが聞こえたのか、ジークを見ながらルーアが言う。

「世界は、大別すると4種類に分かれる。。

 大世界、中世界、小世界、そして特異世界。

 この全4種類の世界には、それぞれに許容強度ってやつがあってな。

 大世界は240、中世界は220、小世界は200。

 この3世界は、今言った数値より高いレベルの者が1人でもいると崩壊を始める。

 特異世界の場合は、大・中・小の3世界と違って決まった規模がないから、一概にこのレベルで崩壊が始まるってことは言えないけどな。

 で、この世界は小世界。

 許容強度は200。

 封身石を2つ外したオレのレベルは206。

 だからオレが封身石をつけずにいたら、この世界は崩壊を始めてたってことだ。

 どうだ? 分かったか?」

ルーアは話し終わると今度はオレの方に目を向け、さらに言葉を続けた。

「クーアが封身石を外さなかったのもそのためさ。

 ほんの少しの間でも許容強度を超えたら、世界にひずみが生じるかもしれない。

 だからあえて外さなかったんだろ?」

「ああ……」

「外せば1分と経たずにケリは着いただろうに。

 相変わらず世界に優しい奴だな、お前は」

からかいを込めた口調で言うと、ルーアは肩をすくめる。

「オレが外してた時間は7〜8分ってところか。

 小世界でレベル206だとすると、どこかで地震が起きたか、津波が起きたか、あるいは火山が噴火したか。

 その程度のひずみは生じてるだろうな。

 ……まぁ、どうでもいいことだ。

 こんなチンケな世界が壊れようがどうしようが、オレの知るところじゃない」

まったく悪びれた様子のないルーア。

むしろ、たわいもない悪戯がばれた子供のような、そんな様子だ。

「さて、ゲームのネタばらしも終わったところで、そろそろオレは行こうかな」

ネタをばらして満足したのか、この場を離れるために、ルーアは『転移』の詠唱を始めた。

しかし、

「待てっ!!!」

アーサーがそれを引き止めた。

ルーアが詠唱をやめ、アーサーを見る。

「お前がすべての元凶なんだな!?

 お前が町を……町のみんなを……僕の父さんと母さんを殺したんだな!?」

アーサーが怒気を孕ませ、声を張り上げる。

それを見たルーアは、小さく溜め息をつき、

「だから、さっきそう言っただろ?

 理解できなかったのか?

 ならもう1度言ってやるよ。

 オレがすべてを仕組んで、この町を壊したんだよ」

と、うんざりしたような口調で言った。

それを聞いたアーサーは、

「ふざけるな……ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」

身を震わせ、絶叫する。

その手はサーベルを強く握り締め、その足は大地を固く地面を踏み締めている。

「ダメだ! よせ! アーサー!!」

「ああああぁぁぁぁぁ!!!」

オレは止めようと声を荒げるが、アーサーの耳には届かない。

それどころかアーサーを包む怒気はさらに増していた。

目つきはこれ以上ないほどに険しくなり、閉じられていた翼は威嚇するかのように広げられている。

踏み締められた大地はひび割れ、アーサーの周囲の大気は、アーサーの怒気に呼応するかのように震えていた。

「……ふん」

その様子を見ていたルーアが小さく鼻を鳴らす。

その途端、背中に悪寒が走った。

「!!!」

それは殺気だった。

世界中の殺意を集め、さらにそれを増幅したかのようなそのドス黒い殺気は、焦るオレを、怒りに狂うアーサーを、そして後ろにいるジークとシーザーを襲う。

「あ……ぁ……」

たちまちのうちに霧散するアーサーの怒気。

その代わりに、アーサーの全身を恐怖が包んだ。

恐怖に覆われたその体はガタガタと震え、目には涙が浮かんでいる。

ジークとシーザーの方に目をやれば、2人ともその場にへたり込み、全身を震わせ、涙を流しながら失禁していた。

そして、オレはルーアに視線を向ける。

先程まで笑みを浮かべていたルーアの顔は一転し、笑みが完全に消え、無表情にこちらを睨み据えていた。

険しいわけでも、穏やかなわけでもない無表情な瞳は、妖しく銀色に光っている。

冷たい、などと生易しい形容ができないほどのその銀の瞳は、明確な殺意をたたえたままアーサーを睨んでいる。

「ガキが……分際をわきまえろよ」

ルーアが静かに言う。

心を鷲づかみにするかのような冷酷な声で。

「ルーア!! やめろ!!!」

極度の恐怖は、人間を死に至らしめる。

そのことを思い出し、そうなることを危惧したオレは、声を張り上げ、ルーアの注意をこちらにそらせた。

ルーアの銀の瞳がオレに向けられる。

中空でぶつかる、オレとルーアの視線。

数秒後、ルーアから殺気が失せ、無表情だった顔に侮蔑の笑みが浮かんだ。

「情けない。 たかだか殺気を当てられた程度で体がすくんで動けなくなるなんてな。

 そっちの2人なんて小便まで漏らしてるじゃないか。

 楽しいか? そんな弱い奴等と一緒にいて?」

「ああ、楽しいね。

 こいつ等が弱かろうが強かろうが、そんなことは関係ない。

 一緒にいたいからいる。

 オレがこいつ等と一緒にいる理由なんて、それだけで十分だ。

 もしこれ以上、こいつ等を苦しめてみろ。

 その時は、殺すぞ」

オレの言い放った言葉に、再びルーアの顔から笑みが消える。

だが、すぐにまた笑みを浮かべると、手をヒラヒラと振り、

「さっきも言ったように、お荷物抱えたお前とやるほど野暮じゃない。

 オレは帰らせてもらうよ。

 ま、せいぜい大事に育てるんだな」

そう言って、ルーアは『転移』の詠唱を始める。

しかし、その詠唱の途中、

「あ、そうそう」

思い出したかのように呟いた。

「最近、オレもガキを育て始めたんだ。

 人数は3人。

 3人共、ちょうどそいつ等と同じくらいの年だ。

 引き合わせてみたら面白いことになるかもな」

それだけ言い残すと、ルーアは『転移』を行使し、オレ達の前から去っていった。

ルーアが去ったあとには、虚空を睨み据えるオレと、いまだに恐怖に震えているアーサー達だけが、瓦礫の町に取り残された。