ここはとあるホテル街の一角に建つ、さして新しくもない、かといって古いわけでもないホテルの一室。
薄明かりが灯された妖しいその部屋で、部屋の様相とは場違いな、はしゃいだような早口の声が発せられました。
「マジで!? マジで勝ったら金払わなくていいの!?」
声の主は、ピンと立った長い耳を持つウサギ。
ウサギは目を輝かせて目の前にいる人物の顔を覗き込みます。
「うん〜、ホントだよ〜」
ウサギに覗き込まれた人物は、ウサギとは正反対な間延びした声で答えました。
声の主は、背中に硬い甲羅を背負ったカメ。
カメはニッコリと笑ってウサギの問いに答え、そのあとにこう付け加えました。
「でも〜、負けたら〜、料金もホテル代もちゃんと払ってもらうよ〜。
あと〜、負けたら〜、ボクが満足するまで付き合ってもらうからね〜」
「へへへ、分かってるって」
口ではそう言ったものの、実際にはウサギは上の空で、あまり聞いていないようでした。
それを知ってか知らずか、カメは声同様、ゆっくりとした動作で、部屋にあったコップを2つ手に取り、そのうちの1つをウサギに手渡しました。
「じゃあ〜、制限時間は1時間半だよ〜。
それで〜、勝負は〜……」
「ああ、分かってるよ、さっきも聞いたし。
要は、制限時間内に、どっちがこのコップに精液をたくさん入れられるか、だろ?」
カメが勝負の内容を説明しようとするのを遮って、ウサギが割り込みました。
「うん〜」
話を遮られたことに気を悪くした様子もなく、カメがうなずきます。
そして、自分のズボンのポケットの中から、ピンク色の液体が入った小瓶と白色の液体が入った小瓶を取り出しました。
「それじゃ〜、催淫剤と増精剤を吹きかけるからね〜」
そう言って、カメはまたゆっくりとした動きで、ウサギの鼻先にピンクの小瓶を近付けました。
「まずは〜、催淫剤から〜」
カメが小瓶の上についているポンプを押し込むと、その先からピンク色の霧がシュッと音を立てて噴き出しました。
ウサギはその霧を、鼻で目一杯に吸い込みます。
「次は〜、増精剤〜」
カメは、今度は白色の小瓶をウサギの鼻先に近付け、ポンプを押し込みます。
ウサギは、ポンプから噴き出た白色の霧を、再び鼻から吸い込みました。
「じゃあ〜、ボクにも〜」
そう言うと、カメは自分にも催淫剤と増精剤を噴きかけ、吸い込みました。
薬を吸い終わると、2人はどちらからともなく、身に着けていた衣服を脱ぎ始めました。
下着まで、すべての衣服を脱ぎ終えると、2人はコップを手に、ベッドへと向かいました。
ベッドへと向かう2人の股間では、催淫剤の効果によるものか、すでに屹立したペニスが揺れています。
ベッドに着くと、2人はコップを手にしたまま、向かい合ってベッドの上に座りました。
「おっ、ちょうど時間もピッタリだ。
今が8時だから、制限時間は9時半までだな」
ウサギが壁に掛かった時計を見て言いました。
「そうだね〜」
「……よし、時間だ! それじゃ、よ〜い……」
「スタ〜ト〜」
間延びしたカメの声と共に、ウサギとカメは同時に自らのペニスを扱き始めました。
「へへへ〜、オレってば早漏だからな。
催淫剤と増精剤で、回数と量が無制限になった今、お前に勝ち目はねぇぜ!」
決して自慢になるようなことではないことを自慢気に言いながら、ウサギは素早い腕の動きでペニスを扱きます。
一方、カメはというと、ウサギの言葉など聞いてはいない様子で、ウサギとは正反対にゆっくりとしたストロークでペニスを扱いています。
それを見たウサギが言いました。
「お前、そんなゆっくり扱いててオレに勝てると思ってんのか?」
しかし、カメはその言葉を一向に気にした様子もなく、手を動かし続けています。
ウサギは、なおも続けます。
「やっぱり早くイく時にはこうやって……は…やく…扱いて……ぅくぅぅう!!」
しかし、ウサギは言葉を最後まで言う間もなく、開始数十秒、1度目の射精に達しました。
構えたコップの中に、増精剤で増量された精液がドクドクと注ぎこまれていきます。
「おお、すげぇ……やっぱり増精剤使うと、量が全然違うな」
コップに溜まった自らの精液を見て、ウサギが感嘆して言いました。
「しかも、催淫剤のおかげですぐに続きが始められるしな」
そう言うと、ウサギは再びペニスを握り、扱き始めました。
カメはというと、ウサギが射精したことも意に介さず、相も変わらずゆっくりとしたストロークでペニスを扱き続けています。
それを見たウサギは思いました。
(この勝負、オレの勝ちだな!)
勝ち誇ったような笑みを浮かべたウサギは、先程以上の速さで腕を動かし、あっという間に2度目の射精に達しました。
およそ30分後。
「ふぅ〜……」
ウサギが溜め息をついてベッドに横たわりました。
手にしたコップには、半分近くまで精液が入っています。
その一方で、カメの方のコップには、まだ1滴の精液も入っていませんでした。
「この勝負、オレの勝ちだな。
お前はまだなんにも溜まってないのに、オレはもうこれだけ溜めちまったからな。
さすがに今から頑張ったって、お前のスピードじゃあ、もうオレを追い越せないだろ」
自分の勝利は間違いないと確信したウサギが、まだ1度の射精にも達していないカメに対して言いました。
カメは、まるでウサギを無視するかのようにゆっくりと手を動かし続けています。
そんなカメの動きを見たウサギは、まるで無駄な努力をご苦労様、といった感じで一笑に付し、
「んじゃ、せいぜい頑張ってくれや。
オレはちょっと疲れたから、休ませてもらうわ
ちょうど、催淫剤も切れたみたいだしな」
と言って、コップを床に置くと、そのまま目をつむってしまいました。
そしてそれから1分後、ウサギは静かに寝息を立て始めました。
目を覚ました時、状況が一変しているとも知らずに……
およそ50分後。
残り時間はあと10分程度といった頃に、ウサギは目を覚ましました。
「あ……やべ、寝ちまったのか……」
少し寝ぼけた様子でウサギが呟きます。
そして、覚め始めた頭で状況を整理しだしました。
(え〜と、確か、コップの半分くらいまでオレが溜めてて、あいつはまだなんにも溜まってなかったんだよな。
で、オレは休憩しようと思って横になってたら、いつの間にか寝ちまったってわけか。
ま、どうせオレの勝ちなんだし、別に慌てることもねぇか)
ウサギは、横になったまま呑気にそんなことを考えていました。
口の端には余裕の笑みすら浮かんでいます。
しかし、身を起こし、
「さてと……どうなったか……な…………!?」
カメのコップを見た瞬間、それの笑みは凍りつきました。
驚きに見開かれたウサギの目に飛び込んできたカメのコップには、2/3ほどにまで精液の溜まっていました。
「なっ!? そんなっ!?」
ウサギは床に置いた自分のコップを手に取りました。
ウサギのコップに溜まった精液は半分近く。
カメのコップには2/3もの精液が。
誰がどう見ても、カメのコップの方が、精液の量が多いです。
ウサギは、慌てて時計を見ますが、残り時間はすでに10分を切っています。
「くそっ!」
悪態をつきながら、ウサギは急いで催淫剤と増精剤を自分に噴きつけ、懸命に自分のペニスを扱き始めました。
その瞬間、
「う…んんぅぅ〜!!」
くぐもった呻き声をあげて、カメが射精に達しました。
ペニスの先端にコップを近付けると、カメのペニスの先端から、ウサギよりも少し多い程度の量の精液が迸り、コップに注がれていきました。
それを見たウサギは違和感を覚えました。
(!? 量はオレとほとんど変わらないのに、なんであいつのはあんなに溜まってるんだ!?
オレが寝てた時間は50分くらいだろ?
たった50分で、しかも30分間、1回もイかなかった奴が、あんなに溜められるのかよ!?)
混乱するウサギをよそに、射精後も、カメは変わらない、ゆっくりとしたスピードでペニスを扱き続けています。
ウサギは思わず手を止めて、疑問を口にしました。
「なんでお前、そんなに溜まってるんだ!?
量だってたいして変わらないのに、30分もイかなかった奴が、50分ぐらいでそんなに出せるのかよ!?」
それを聞いたカメはニッコリと笑いながら、ただし、ペニスを扱く手は止めずに答えました。
「最初の30分は〜、作戦だよ〜」
「!?」
「最初は〜、イかない程度に〜、あまり刺激しないようにしてたんだよ〜。
キミは扱くのが速いから〜、そのうち疲れちゃうと思ったんだ〜。
それに〜、キミみたいな性格の人間は〜、勝ちを確信すると〜、油断することが多いからね〜。
今まで〜、キミみたいな性格の人間は〜、必ずと言っていいほど〜、勝ちを確信したあと〜、疲れて寝ちゃってたからね〜」
ゆっくりと語ったカメのその言葉に、ウサギは激昂しました。
「じゃ、騙してたのかよ!?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ〜。
騙してたんじゃなくて〜、作戦だよ〜。
それに〜、キミが寝ないで続けてれば〜、キミの勝ちは確定してたんだよ〜。
全部〜、キミが油断して〜、寝ちゃったからいけないんだよ〜」
そう言われたウサギは返す言葉もありません。
確かに、カメの言うとおり、勝ちを確信して油断したのはウサギ自身ですし、眠らずに扱き続けていれば、カメがウサギに勝てる道理はなかったのですから。
「くっそ〜!!!」
ウサギは悔しがりながら一心不乱にペニスを扱き始めましたが、時すでに遅し。
残り時間が終了するまでに、ウサギは3回、カメは2回射精しましたが、結局ウサギが追い着くことはできず、勝負はウサギの負けということで終了しました。
「負けた……」
ウサギはガックリと肩を落として呟きました。
そんなウサギに、カメは立ち上がってゆっくりと近付き、。
「じゃあ〜、約束通り〜、料金とホテル代を〜、払ってもらうよ〜。
あと〜、ボクが満足するまで〜、付き合ってもらうからね〜」
と言って、ウサギのアゴを片手でつかんで上を向かせました。
上を向かされたウサギは、悔しげな顔でカメを見ましたが、約束は約束なので、何も言い返すことはできません。
カメはウサギを見下ろしながら、残った片手で自らのペニスを扱き、
「それじゃ〜、まずは〜、負けたキミに〜、敗者の証として〜、ボクの精液をかけてあげる〜」
屈辱にしかめられたウサギの顔に、増精剤で量を増した大量の精液をふりかけたのでした。